推しのために死に続ける話。   作:三つ首黒虎

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まだ深夜なのでギリ一週間に間に合ったという事で……


40話 義手

 

 目が覚め食事を摂りリハビリをする、仮の義手をつけトレーニングをしながら香山さんとの日常生活を送る。

 

 こんなことをしていていいのか、もっとやるべきことがあるのではないか……そんな事をずっと考えながら僕はこの日常を続けている。

 

 当然、外界の様子を知る術はない。

 あの日から、全てが終わった……いや、全てが始まったあの日からいったい何日経ったんだろうか。

 ここに来てから、認識している限り五度は覚醒と就寝を繰り返している。

 

 

 ある日のリハビリ後、香山さんから告げられた。

 

「そろそろ、動けるようになってきたし本格的に義手、作りましょうか」

「義手……?これじゃなくて……?」

「えぇ、流石にそんな腕の形しただけのものじゃヒーローなんて出来ないでしょう?それならちゃんとしたもの、作らないとね」

 

 香山さんのそんな言葉と共に勢いよく走る音が聞こえてきた。バンという大きな物音ともに今まで開くことのなかった部屋のドアが開いた。

 

「ここですか!私のベイビーを必要としている人は」

「…………えぇ……ただ、発目さん?もう少し静かに出来ないかしら……」

「ほうほう、なるほど。片腕がなくなったんですね!それはそれは色々なベイビーたちが試せそうですね――」

 発目さんはフフフと不敵に笑いながら僕の失われた腕に触れ、撫で回した。

 

「!?、!!?」

 

「あ、ほら。置換くん驚いてるじゃない。一旦離れなさいな」

 

 ミッドナイトの静止の声も無視し大波のような勢いで僕に迫った。

 

「ふむふむ、意外と関節部の筋肉はあるんですね。これならベイビーもいけるかな。いや、あっちのベイビーがいいかな。個性の兼ね合いもありますね。……あなたの個性はなんなんですか!?」

 

 発目さんは考え込む様にぶつぶつと話している。

 

 僕は発目さんのあまりの勢いに押され少し引いてしまった。

 

「っ……えっと……」

 

「あ、やっぱいいです。見せてください個性使うところ!そっちの方が早そうですさぁ!どうぞ!ここで!見せて下さい!!」

「いえ、ここじゃ狭いしトレーニングルームへ行きましょう。いいわよね?置換くん」

「――はい」

 

 尚、トレーニングルームへ向かう道中も発目さんに義手についてすごい勢いで尋ねられ少し疲れた……

 

「あなたはどんなベイビーが好みですか?ただただ硬さを求める?隠し機能?ロケットアーム?いっそ、腕という考えを無くして鞭などの武器にしてみるのもありかもしれませんね」

 

「え、あ、うん。そうだね。いいと思う」

 

 あんまり相性が良くないのかも知れない……

 このことちゃんと付き合っていける緑谷くんやみんなはすごい、と改めて思う僕だった。

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 発目さんは僕の個性発動を見た後少し考え込んだかと思うとトレーニングルームから走り去った。

 

「……えと、あの?」

 

 僕が香山さんに視線を向けると彼女は少し疲れた様に頭に手をやると言葉をこぼした。

 

「……えぇ、義手、取りに行ったみたいよ……?」

 

 しばらくして勢いよく大きな台車と共に戻ってきた。

 僕の方に来たかと思うとなくなった右腕に何か機械を取り付け出した。義手と接続するための部品なのだろう。

 

 さらにガチャガチャと台車内の道具をいじると一本の金属の塊を指差した。

 

「さ、これどぞ、ちょっと私じゃ持てないのでご自分で腕に当てて」

 

「……ぐ、ぐぐぐぐ」

 

 指差された物を左手で持ち――持ち、持ち上がらない?

 思わず僕は重さを尋ねた。

 

「えっと、これ……何キロ……?」

「えぇはい、計測はしてませんが、ざっと四十キロと言ったところでしょうか」

「よんじゅっ――それは重いよ!?」

「でも、硬いです。私の持つベイビーの中でもこの子は何より硬いです。あなたは強くなる為にヒーローになる為に義手を必要としている、とお聞きしましたが違いましたか?」

「――っ、ちが、わない。違わない!」

 

 そう、僕は強くならなければいけない。

 全身に力を込めこの重い金属を左腕で持ち上げる。そのまま右腕の接続部へと当てた。発目さんは僕に駆け寄ると接続部と金属を取り付け始めた。

 

「……いや、でも発目さん。これ、無理じゃない……?右腕上がらないんだけど……」

「……失敗は成功の母といいます。さぁ、次行きましょまう!」

 

 

 

 

 発目さんは新たな義手を僕に取り付けると話し始めた。

 

「こちらはどうでしょう!重さはほどほど二キロと言ったところです。操作性も十分細かい指の動きも可能になってます。さらに、そこにあるボタンを押すと――」

 

 義手を動かすと確かに動かしやすい。コップも持てた、箸の操作も出来そうだ。

 言われたボタンを押してみる。

 指先からなんか黒い液体が出た。

 

「醤油が出ます」

「醤油!!!?」

「はい、醤油です。朝ごはんの時欲しくなったので……あ、もちろん液体は変えられますよ?」

「あ、うん……」

 

「ふふっ――」

 

 

 大丈夫だろうか……ほんとに……

 

 

「さぁさぁ!やっぱり浪漫は欠かせません。義手といえば――」

「…………」

 

 発目さんに新しくつけてもらった義手を向けあからさまなボタンを押した。腕はまっすぐ発射され発目さんに向かっていく、当たるまでもう少しというところで発目さんは気づき避けた。

 

「って――危ないじゃないですか!!」

 

 僕は腕に巻かれた鞭を見せ発目さんに尋ねた。

 

「これは、鞭……ですね」

「義手です」

「義手……?腕に巻いただけだよね……?」

「義手です」

「あの……動かす度に少ししなってて怖いんだけど、ビュンビュン言ってるんだけど……」

「義手です」

 

「ぷっ……いやダメダメ真面目にやってるんだから……」

 

 

 

「個性との兼ね合いを考えてみました。あなたの個性は音に呼応して発動する様子が見受けられました。なので――」

 

 発目さんは僕の右腕につけた鉄の球と木箱、それを繋げる太い針金。

 

「……これ、何?」

「体鳴楽器です」

「…………?」

「打楽器です」

「……え?」

「ヴィブラスラップです」

「………………は?」

「まずやってみましょう。その鉄の球を木箱に当てます」

「……」

 

 僕は発目さんに胡散臭い目を向けながらも指示に従う。

 

 カーーーーッ!!!!と言う音がトレーニングルームに反響した。

 

 僕は発目さんにジト目を向けた。

 

「…………」

「この楽器の最大の特徴は最大で秒間50回の振動を可能にしています。つまり、あの音に合わせて個性使ってみてください。分かるはずです」

「……?…………っ!」

 

 そうか……!手を叩く、舌を鳴らすなどの一度しか音が響かないものではなく複数回一度で鳴らせるもの……

 それがあるなら、僕の個性はより……?

 試してみよう、その先に可能性があるならっ……!

 先ほどと同じ様に鉄球を木箱にぶつける。反響する音、それに合わせ個性を発動――――

 

「い"や"こ"れ"む"り"ぃ"ぃ"」

 

 ――速すぎて場所を指定できない!!僕と目の前にあった義手をただ高速で置換し続けてるだけだ――!!

 

「おぇ……きもぢわるい……」

 

 酔った……、置換酔いした……初めての経験だ。今までこんな経験、ないよ……。

 ただ、もし、もしこれを使いこなせたなら――

 

 香山さんがこれ以上は耐えきれないと言う様に大声で笑っていた。

 

「アハハハハハハハ、もう無理、お腹痛い。こんなの笑っちゃうわよ」

 

 香山さんに反応を返したいが気持ち悪くてそれどころではない。

 彼女は笑いがおさまったかと思うと謝りながら近づいてきた。

 

「あー、ふぅ……笑った笑った。こんなに笑ったの久しぶりかも。真面目にやってたのに笑ってごめんね。流石に我慢しきれなくて……」

 

 香山さんは一度咳払いすると僕たちに声を掛けた。

 

「さて、二人とも何かいいアイディアは浮かびました?」

「クライアントの無茶無知無謀に応えるのがデザイナーの仕事です!」

「変えて欲しいところはあるけど……全部、欲しいです」

「へぇ……」

「全部……?どうやって――あぁ、個性ですね。自分で腕を入れ替えるって事ですか」

「うん、それはアリね。状況に対応できるものに変える。判断力こそ必要になるけど……できるならかなりのアドバンテージになるわ」

「はい、なので発目さんには義手を格納できる物を作っていただければと――」

 

 





 ある発明家の少女

 えーと、最初のはまずもっと重く?
 醤油じゃなくて銃弾を出せる様にして欲しい?
 鞭はいらない……?
 ヴィブラスラップは戦闘にも耐え得るよう頑丈に?
 しかも、これを全て入れられる収納箱……考えることが盛りだくさんですね。

 えぇ、無茶振りですね。やる気が沸るというものです!!
 
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