これもう、アレですね、週一ですね。すいません…
エタるつもりは毛頭ないのでよろしくお願いします。
煩わしい目覚ましの音を聞きながら重い瞼を開く。
目をこすりながら時計を見た。時計の針は八時三十分を指している。もう一度目をこする。
視力が悪くなったのだろうか……僕が今見た時計は八時三十分を指している。
……あ、今三十一分になった。
違う様だ。僕は――寝坊した。
今日は仮免試験の日だ。
何度見ても時間は八時三十一分のままだ。
この時間は、本来学校にいなければいけない時間。
この時間に皆でバスに乗って向かう……と聞いていた。
そして試験開始時間が十時。場所はおおよそここから車で片道一時間、今から会場まで急いで向かってギリギリ間に合うかどうかだ。
僕の背中を冷たい汗が流れる。
「……っ!」
さぁ、急げ。置換隷。
顔を洗い、トイレを済ませ、胃に食べ物と水分をぶち込む。制服は昨日準備していたので着るだけ。久しぶりに着た気がするが今はその感慨に浸っている場合ではない。
時計の針は八時四十五分を指している。
ギリギリタクシーを捕まえられれば行けるはずだ。
「ありがとうございました!行ってきます――」
僕は昨日ぶりにこの部屋から出た。自分一人で出るのは初めてかもしれない。
浮かんでくるいろんな考えを飲み込んで僕は走り出した。
今から個性を使う許可を得るための試験に行くのに無断で個性は使えない。そんなことをしたら即失格もあり得る。
部屋から出てホールを通り抜けると、そこには見覚えのある黒い車があった。……というか昨日助手席に乗ってた。
「あ、置換くんやっと起きた?乗りなさい――行くわよ」
「っ――先生!」
「はいはい、そういうの今はいいから早く乗りなさい」
「……ありがとうございますっ!」
僕が助手席に乗り込み扉を閉めると同時に先生は車を走らせた。しばらく車に揺られていると先生が声をかけてきた。
「……ごめんなさいね。早く起こせばよかったんだけど……疲れてそうだったからギリギリまで休ませてあげたくて」
「いえ……僕が起きなかったのが悪いので……」
「書き置き……おいたけど見てないわよね、うん……ごめんなさい」
試験内容はわからないけど……分からないからこそ気合が入るってもんだ。
「あ、そうだ。相澤くんからめっちゃメッセージ来てたんだった……運転中だし……電話してもいい?」
「大丈夫ですよ」
「ありがとう」
先生は車が信号で止まったタイミングでスピーカーモードにして電話をかけた。電話が繋がると相澤先生のいつもの様子からは想像できない大声が聞こえた。
「ミッドナイト!!置換はどうしたんすか」
「っ――……ごめんなさい。こっちも色々あってね」
「すいません、こっちも大声出して……で、置換は来れるんすか?」
「えぇ、私が連れてくわ。心配せずに会場で待ってなさい」
「わかりました。じゃあ置換はお任せします。こっちもこいつらの面倒見なきゃいけないので――」
覚えのある声が電話越しに聞こえる。
「あー!置換って聞こえたぞ!相澤先生っ!あいつ元気してるのかッ?」
「ッ――置換……?」
「……置換くん……?」
「あ、おい、お前らまだバス動いてるだろうが危ねぇから動くな!」
相澤先生は小声で返事を返した。
「すいません、うるさくなりそうなんで電話切ります。ミッドナイト……置換のことよろしくお願いします」
「えぇ、責任持ってちゃんと送り届けるわ」
電話が終わるとしばらく無言の運転が続いた。
だんだんと不安になってきた。
先生の授業は受けてたけど…実技とか全然だし試験大丈夫なのかとか、久しぶりに会うけどみんな仲良くしてくれるのかとか、そもそも自分の忘れてることだったりいろんなことに対しての不安だ。
「あら、置換くん緊張してるの?大丈夫よ、あれだけ鍛えたし新しい力だってあるでしょう?」
「義手、使ってもいいんでしょうか――」
「サポートアイテムありきの試験よ。義手なくちゃ置換くんは片腕だけになるしアンフェアすぎるでしょう?」
「ただ……私から一つ縛りを出そうと思うの」
「縛り……?」
「えぇ、縛りよ。義手……使うのは二種類だけにしておきなさい」
「二種類……ですか?」
二種類……?どうしてだろう。出来ることは多い方がいいと思うけど……
「そう、二種類。出来ることが多すぎると本来できたことも出来なくなったりするのよ。だから慣れるまでは……そうね……一番と三番あたりにしておきなさい」
「選択肢が多いからこそ迷っちゃう……ってことですね」
「えぇ、そう言うことよ」
一番の鋼線碗と三番の銃腕か……
僕の個性の都合上三番はそもそも相性がいい……ただそもそも手の形をしてないからみんなに変な風に見られちゃうよね。なら基本使うのは一番……?……うん、どうしようかな。
思考を巡らせていると先生が僕に声をかけた。
「さーて、そろそろ着くわ」
周りを見渡すといつのまにか見覚えない景色だ。いつのまにか変わり映えのしない高速道路から降りていた様だ。
「到着よ、ここが試験会場、国立多古場競技場よ」
「ここが……合格出来るかな……」
「なーに弱気になってるのよ……出来るか、じゃなくてするのよ。この試験に合格して仮免許を取れればあなたは、みんなは晴れてセミプロに慣れるのよ。だから、頑張ってきなさい――」
「っ、――はい!」
「いってらっしゃい、置換くん。ファイト!」
「……いってきます」
僕は車から出て会場へと歩き出した。
♦︎♦︎♦︎
会場に入ると入り口に相澤先生が待っていた。
「ったく、やっと来たか置換。説明会が始まる急げ」
「……はい、ありがとう、ございます!」
僕は急いでホールに入った。当然遅刻ギリギリだから最後尾だ。ホール内は三十メートル×五十メートルほどの大きさでありそこに受験者がみちみちに入って居た。
スーツを着た白髪の男性が壇上に立つ。
白髪の男性は気怠げに話し始めた。
『えー……ではアレ、仮免のヤツを、やります』
『あー……僕、ヒーロー公安委員会の目良です。好きな睡眠はノンレム睡眠。よろしく』
『仕事が忙しくて、ろくに寝れない……!人手が足りてない……!眠たい!
――そんな信条の下ご説明させていただきます』
『ずばりこの場にいる受験者千五百四十人……一斉に勝ち抜けの演習を行ってもらいます』
目良さんのその発言に周りがざわついた。
受験者千五百四十人、合格人数は………何人だろうか。
周りを見渡す、知らない学生がほとんどだ。ただ僕より少し前の方にA組のみんながいた。
久しぶりだけどみんな元気そうだ。よかった……
ただ随分と離れていた気がする。どうしてだろうか
『よって試されるはスピード!条件達成者先着百名を通過とします』
周りは驚愕の声で満たされた。
目良さんは気にせず続ける。
『で、その条件というのがコレです』
そう言い見せたのは掌より少し小さいサイズのターゲットマーカーとボールだった。
『受験者はこのターゲットを三つ、体の好きな場所。ただし常に晒されている場所に取り付けて下さい。足裏や脇などはダメです』
『そしてこのボール六つを携帯します。このターゲットはこのボールが当たった場所のみ発光する仕組みで三つ発光した時点で脱落とします』
『三つ目のターゲットにボールを当てた人が倒したこととします。そして二人倒したものから勝ち抜きです。ルールは以上』
六つのボール、ターゲット三ヶ所に自分は当たらない様に相手にだけ当てる。
……うん、いける。この試験なら問題なく通れそうだ。ボール自体は相手のもの、落ちているものを使っても問題なさそうだし……
なら、躱すこともボールを当てることも僕の得意分野だ。
問題があるとすれば――対人戦であるという事。
知らない個性、知らない人その人たちがどういう行動をするのか掴めない。完璧な未知。
『えー……じゃ展開後ターゲットとボール配るんで全員に行き渡ってから一分後にスタートとします』
『各々苦手な地形、好きな地形あると思います。自分を活かして頑張って下さい』
っ、ボールを渡された開始まで後一分。同校での協力は禁止されていない。確実性を上げるためにもみんなのところ行った方が――
『四』
あ、みんないた!葉隠さんは見えないけど手袋あるし多分いる……かな?一部我が強い人達はいないけど……
『三』
声を――いや、ダメだ。今はかけられない。みんなの意思をこっちに向けるのは悪手。
『二』
なら、さりげなく合流……か?
『一……』
あぁ、もう。考えをまとめる時間が足りない!とりあえず近くに行ってから、考える!
『STRAT!!』