推しのために死に続ける話。   作:三つ首黒虎

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そういえば、皆さん見ました?ヴィジランテのXアカウント。
そう、ミッドナイトの登場が確約されました。
分かりきってはいた事ですが、はい。また動く彼女が見れると思うと……クるものがありますね。

終わりが定まっている彼女、せめて過程は楽しく過ごして欲しいものです。

それはそうとこの世界では救いますけどね。私の傲慢ですぜ。
死ぬ推しを救いたい、これはそこから始まったのだから──


46話 個性とすれ違い

46話 個性

 僕の個性……置換――以前は出来なかった。しかし、なぜか出来るようになった事象。

 二日前病院で検査した時に医者に告げられた一言。

 

「キミの個性因子が変異を起こしている。これは――」

 

  医者から告げられたその一言を耳にして僕の個性"置換"の何が変わったのかその場で検証をさせてもらった。その結果判明した……変化したのは、いや進化したのは――個性の対象。

 

 ずっと直感的に出来る気がしていたんだ。だけど何故か出来なかった――自分以外の"人"に対する個性使用。

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 僕の目の前には気絶してる受験生がいる……だけど、最後のターゲットを狙われ脱落してしまいそうな青山くんを見て――僕の手は音を響かせていた。

 

 ――残機が二個ある僕、そして残機が一個しかない青山くん。他の人は誰も気づいていない。この流れのまま一次試験を突破できると思っている。

 

 それはそうだ。

 フィクションなら、このまま順調に突破していたはず。

 ……でもここは現実だ。ヒーローを目指すものは諦めない。

 だからこうなる事はある種の必然、勝利の女神は諦めないものに微笑む。

 

 

 ――ただし、ここに僕がいなければ、だ。

 知らない人とクラスメイト、命がかかっているわけでもない天秤は当然後者に傾く。人として知っている方を優先したいのは当たり前だ。

 そもそもこれは早い者勝ちの勝ち抜き試験だ。

 

 

 僕は青山くんにボールが当たる直前に入れ替わった。

 僕の残るターゲット二つのうち一つにボールが命中……再び、青山くんと入れ替わる。

 

 

「――はぁ、当てられちゃったよ」

 

 もうこれ以上当たるつもりはなかったのに。それでも後悔はない、余計なお世話こそヒーローの本分。

 やりたい事をやるのだ、やりたい事をやった上で救うのだ。

 

「……え?」

「…………」

「……まじ……かよ……あと一個、だったのになぁ」

 

 青山くんを狙っていた一人の男子生徒、僕はその青年の背後の瓦礫と置き換わる。

 

「ごめんね……」

 

 僕は少しの罪悪感を覚えつつボールを当てた。

 同時に青山くんは呆然としながらも目の前に気絶していた受験者のターゲットにボールを命中させていた。

 

 

『零名!百人!!今埋まり!!終了!です!ッハ――――!!』

 

『これより残念ながら脱落してしまった皆さんの撤収に移ります』

 

 

 これで雄英高校A組全員は合格。本来であれば上がれた人物を落としたと言う少しの罪悪感こそあれ無事第一次試験通過となった。

 

♦︎♦︎♦︎

 

 試験後A組のみんなを探していると青山くんに話しかけられた。

 

「ねぇ、えっと……置換……くん?合ってるかな……?あんまり話した事無かったけど……Merci……おかげで次の試験にいけたよ」

「気にしないで。たまたま気づけたから助けただけなんだ。ヒーローになるなら余計なお節介してもいいでしょ?」

「うん……本当にありがとう……置換くん。二次試験もがんばろうね。じゃあ僕からも一つconseil……もし、尾白くんと、葉隠さんと喧嘩してるなら……仲直りしてね。せっかくの友達で学校生活を共にするクラスメイトなんだから――」

「?うん、ありがとね」

 

 ……?喧嘩。何言ってるんだろう。特にした覚えは無いけど。何かに怒ってるのかな。まぁ、考えても仕方ないか二人に聞けばわかるかな……

 

「あ、ごめん。一つ聞いてもいい?青山くん、A組のみんなってどこいるのかな?」

「あ、あぁ……desole、こっちだよ――」

 

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 みんなのところに向かっていると難しい表情をしている尾白くんと、いつものように服が浮いている葉隠さんがいた。

 

 

「……」

「ね……置換くん元気そうだったね」

「そう……だな」

「た、たぶんさ!なんか理由があったんだと思うんだ」

「あぁ……だろうな。あの時のあいつあんなにボロボロだったんだ」

「許して……あげようよ」

「そうだな――」

 

 僕はとても懐かしい感情と意味のわからない少しの罪悪感を抱きながら話しかけた。

 

「おーい、二人とも――」

「「!」」

 

 二人は僕の声を聞き振り返った……と思う。尾白くんは振り返ったけど、何せ葉隠さんは顔が見えない。

 

「置換……」

「置換くん……」

「久しぶり!元気してた?」

「……あ、あぁ……」

「え、……うん」

 

 何故だろう。二人と僕の間に温度差を感じる。

 やっぱり何かしちゃったのだろうか――

 

「ねぇ、僕……二人に何かした……?」

「ッおまえ……本気で言ってるのか……?あんな事を言っておいて忘れた?」

 

 尾白くんは拳を握りしめ口をつぐみ、葉隠さんは驚愕の声を聞かせる。

 

「え……置換くん?」

「もういい――お前なんか知るか」

「尾白くん!!」

「え、え?何で……」

 

 尾白くんは足早に僕の元から去っていく。僕の頭は疑問符で埋め尽くされた。

 気づかないうちに悪いことをしたのかもって思って、ただ質問しただけなのに、何で……?

 

 思考に潜ろうとする僕に葉隠さんの震えた声が聞こえた。

 

「ね、置換くん。流石にそれは……ダメだよ。酷いよ」

 

 そう言った葉隠さんもゆっくりと確かな足取りで僕の側から去って行った。

 

「なん……で」

 

 どうしてこうなったんだろう……なんで、久しぶりに会った友達と話そうとしただけで、こうなっちゃったんだろう。

 何かが悪かったのだろう。彼はあんな事を言っておいて……と言い激怒した。ならぼくは何かを言ったはずなのだ。

 だってあんなに僕なんかと仲良くしてくれた二人が……あんなにいい友達だったあの二人が、あんな表情をするなんて……間違いなく関係を壊す何かを――

 

 胸の奥から込み上げてくるものがある。しかし、それは溢れ出させてはいけない。何をしたかも分からないけれど自分が犯した罪なのだろう。

 いや、そもそも分からないこと自体が罪なのかもしれない。

 それに――何故かどこか心の中でこうなって当然だろうと納得もしている。

 

 僕の中から消えたオニガワラオニヒトという人物の記憶、そして空白の二週間。失われた右腕、変貌した右目、進化した個性"置換"。

 

 何かはあった。僕が見ようとしていない――忘却しているだけで確実に"何か"はあったのだ。

 探さなければ――そして、二人ともう一度、前みたいに話せたら……いいな。

 

『二次試験の説明を行います。一次試験通過者の方はホールにお集まりください』

 

 放送が聞こえた。二次試験の案内だ。

 

 何にしても――今は、この感情は心の底に仕舞い込もう。僕が勝ち上がるために落とした人の為にも、そしてこんな僕に付き添ってくれた先生の為にも、僕の目的のためにも合格しなければ――

 

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 ホールに到着した。やはり開始時いた人数に比べかなり少ない。千五百四十一人が百人まで減ったんだから、人口密度も薄まると言うものだろう。

 

 

『えー、百人の皆さん。これご覧ください』

 

 先ほど僕たちがいたフィールドがモニターに表示された。

 そしてフィールド内のあらゆる所から爆発音が響き渡る。

 

「……」

 

『次の試験でラストになります!皆さんはこれからこの被災現場でバイスタンダーとして救助演習を行ってもらいます』

 

 そうか、やっぱり本格的な救助訓練をやる気なんだ――

 




ある二人の会話

「あぁ、くそっ」
「尾白くん……」
「あんな事言うつもりじゃなかったのに、仲直りしたかったのに……あいつどう言うつもりで……」
「流石に私もあれは酷いと思ったけど……ねぇ、置換くん、少し雰囲気おかしくなかった……?」
「雰囲気……?」
「まるで林間合宿前の彼みたいに見えた──」
「まぁ……確かに少し話した感じ病院の時よりそっちのが近い気はするな……」
「気になることはあるけど、置換くんミッナイ先生と一緒に居たって聞いてるし終わったら聞いてみようよ」
「そだな、うん」
「でも、今はそれは一回おいといて試験、がんばろ!」
「そう……だな。お互い頑張ろうぜ」
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