推しのために死に続ける話。   作:三つ首黒虎

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ギリギリ、セーフというやつですね!
もっとシリアスを、書きたい……
そんな私の願望は置いておいて本編へどうぞ。



53話 ビッグ3

 

 ホームルームが始まった。

 クラスにはまだ空席が二つありなんとも物悲しい気分にさせてくる。

 僕の席が空いていた時も皆に同じ気持ちをさせていたのかもしれない。

 

「じゃあまァ……今日からまた通常通り授業を続けていく」

 

 相澤先生は相変わらず気怠そうにしている。

 

「かつてない程に色々あったがうまく切り換えて、学生の本文を全うするように。今日は座学のみだが後期はより厳し訓練になっていくからな」

 

「何だ芦戸?」

 

 芦戸さんの席へ視線を向けると後ろを向き梅雨ちゃんに何かを話していたのだろう、それを注意されたようでビクッと驚いていた。

 

「ごめんなさい。いいかしら先生」

 

 梅雨ちゃんは何か質問があるようで手をあげている。

 

「さっき始業式でお話に出てたヒーローインターンってどういうものか聞かせてもらえないかしら」

「そういや校長が何か言ってたな」

「俺も気になっていた」

「先輩方の多くが取り組んでらっしゃるとか……」

 

「それについては後日やるつもりだったが……そうだな。先に言っておく方が合理的か……」

 

 相澤先生は髪をわさわさと掻きめんどくさそうに続ける。

 

「平たく言うと校外でのヒーロー活動。以前行ったプロヒーローの元での職場体験……その本格版だ」

 

 そう、そうらしいのだ。影人さんたちが言うにはインターンという以前の職場体験の本格版があるらしい。

 自分の事を、思い出したいのであれば

 その制度を使用して自分たちの元へ来るように……とのことだった。

 オファーは出してくれるそうだからあとは先生の許可次第。

 僕はすでに行くことを決めている……行かなければいけない。全てを思い出すために。

 

 ――っと、危ない。先生の話を聞かないと。

 すでにインターンについての話は終わりかけているようだった。

 

「まァ、体験談なども含め後日ちゃんとした説明と今後の方針を話す。こっちも都合があるんでな。

 じゃ、待たせて悪かった。マイク」

 

『一限は、英語だ――!!すなわち俺の時間!!久々登場、俺の壇上。待ったか ブラ!!!』

『今日は詰めていくぜ――!!!アガってけー!!イエアア!!』

 

「「はーい」」

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 そうして日が経ち、緑谷くんが先んじてクラスに戻ってくる日になった。

 どうやら爆豪くんと大喧嘩をしてその罰として謹慎が言い渡されたとの事だった。

 

 緑谷くんは目を見開きつつも大きく頭を下げた。

 

「ご迷惑おかけしました!!」

 

 いろんな人に息巻くるように謝まりつつもすごい熱意を感じる。

 

「この三日間でついた差を取り戻すんだ!」

 

 三日間授業を受けられず、かなり遅れが出ている……と思っているのかもしれない。

 いや、確かに遅れてはいる。ここ数日の進行具合はかなり早かった。

 

 緑谷くんの本当にヒーローになりたい、みんなに追いつきたいというのがひしひしと伝わってくる。

 もしかしたら、追いつくどころかある箇所においては追い抜いているかもしれないのに――

 

 

 チャイムがなり授業が始まった。

 

「じゃ緑谷も戻ったところで、本格的にインターンの話をしていこう――入っておいで」

 

「?」

 

 ドアが開き、二人が男で一人が女……若い男女三人組が入ってきた。

 

「職場体験とどういう違いがあるのか――直に経験している人間から話してもらう。

 多忙な中都合を合わせてくれたんだ。心して聞くように」

 

 

「現雄英生の中でもトップに君臨する三年生三名――」

 

 ――通称、ビッグ3の皆だ。

 

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 僕たちは今体育館にいた。

 あの後、ビッグ3の三人から自己紹介があった。

 

 一人は、鋭い眼つきにとがった耳、黒髪、かなりのネガティブな男子生徒。

 あまりのネガティブさに少し引いた……

 

 一人はねじれた水色のロングヘアを持つおしゃべりで好奇心旺盛な女子生徒、

 その質問の多さに勢いに圧倒された。見た目に反して、やばい子だった……

 

 一人は逆立てた金髪にカートゥーンアニメのような白目がない目、筋肉質な明るく陽気なお調子者の男子生徒。

 自己紹介のオオトリにギャグをかましたけど……見事、スベっていた。

 

 凄いことに、キャラが随分と……なんていうのだろう――えっと、風格なんてとても感じられない濃い三人組だった。

 

 そう、僕たちはスベった通形先輩の提案で戦うことになったんだ。

 だから、体育館にいた。

 通形先輩は柔軟体操を行い、天喰先輩は壁に向かって、波動先輩は芦戸さんの角を弄っていた。

 

「ミリオ……やめた方がいい。形式的にこういう具合でとても有意義です。と語るだけで充分だ」

 

「皆が皆上昇志向に満ち満ちているわけじゃない、立ち直れなくなる子が出てはいけない」

 

 「あ、聞いて、知ってる。昔、挫折しちゃってヒーロー諦めちゃって問題起こした子がいたんだよ、知ってた!?

 大変だよねぇ、通形、ちゃんと考えないと辛いよ、これは辛いよー」

 

 常闇くんが、切島くんが、先輩を立てつつも自分たちは弱くない……と吠えた。

 しかし、そんな彼らに対し通形先輩は飄々と返した。

 

「うん、いつどっから来てもいいよね。一番手は誰だ!?」

 

 緑谷くんが一歩前に出た。

 

「僕……行きます!」

 

 続く様に、僕と轟くんを除いた他の皆も構えた。

 僕は一歩下がり通形先輩から距離を――――違う。

 そうじゃない。逃げの姿勢は、もう辞めた。

 

 いつでも個性を使える様構えながら一歩踏み出した。

 されど、思考はやめず、自身の脳裏によぎった疑問を深掘りする。

 

 先生が何も言わなかったことが――妙に引っかかる。

相澤先生は、普段なら無駄な戦いはさせない。

 

 それに「お客じゃない」とはいえ、インターンを推奨するための話なら、わざわざ戦わせる必要もないんじゃないか?

 

 なのに、一人対A組

 この戦いに、どんな意図がある……?

 

 

 結果はすぐ僕たちの前に訪れることになった。

 僕らの二つ歳上、その二年の大きさを僕らは目の当たりにする。

 

 

 緑谷くんが駆ける、打ち込んだ拳が、空を切った。

 その瞬間、通形先輩の服がふわりと落ちる。

 

 すり抜けた!?

 

 迷う暇もなく、続いてレーザーが発射される。

 イヤホンジャックが地鳴りを挙げた。

 だが――全てすり抜けた。

「消えた……?」

 

「後ろだ!!!」

 

 耳郎さんの背後――気づいた時には、すでに拳が振り抜かれていた。

 ドッ……! という鈍い音と共に耳郎さんが吹き飛ぶ。

 上鳴くんも巻き込まれ、そのジャックが二人を縛りつけた。

 

 そして、瞬く間に――

 八百万さん、常闇くん、瀬呂くん……皆が次々と、一撃で沈んでいった。

 

 この一瞬でA組の遠距離持ち達は地面に倒れ伏していた。

 多分だけど、これが目で追えていたのは、個性の関係上動体視力が鍛えられていて、全てを一望できる位置にいた僕だけ……いや、緑谷くんも見えていた可能性がある。

 

 すり抜けに、ワープが使える個性。

 

「おまえら、いい機会だ。しっかりもんでもらえ。

 その人……通形ミリオは俺の知る限り――最もNo.1に近い男だぞ」

 

 それだけじゃない。あの一瞬五秒程で皆を倒したフィジカル。

 個性だけじゃない、肉体を鍛え上げてこそのあの強さ、なるほど。確かに今の僕たちじゃ勝ち目はない。

 

「あとは近接主体ばかりだよね」

 

 今僕たちが立っているのは個性の差、通形先輩が言う様に遠距離持ちではなかったから狙われなかっただけなんだ。

 

「何したのかさっぱりわかんねぇ!!」

「すり抜けるだけでも強ェのに……ワープとか……!それってもう――」

「無敵じゃないすか!!」

 

 

 それでも、勝ち目は無いのだとしても、舐められたままじゃ終われない。

 

「よせやい!」

 

 そう、まるで無敵の様に見える個性。

 すり抜けとワープ、一貫性のない個性。だけどどちらも一つの個性から派生した能力のはずなんだ。

 個性は一人一つ、それは例外を除けば定まったルールなのだから――

 

「何か、からくりがあると思うよ!」

 

 緑谷くんの声が耳に入る。

 そう、からくりがあるはずなのだ。一人一つの個性である以上この二つには――

 

「すり抜けの応用でワープしているのか、ワープの応用ですり抜けているのか……

 どちらにしろ直接攻撃されているわけだからカウンター狙いでいけばこっちも触れられる時があるハズ……!」

 

「何してるかわかんないならわかってる範囲から仮説を立てて、とにかく勝ち筋を探っていこう!」

 

 通形先輩は駆け出し地面に沈む――

 

「探って、みなよ!」

 

 どちらにしてもまず確かめないと――!

 

 一歩踏み出す靴の音、それをトリガーに個性を使用

 自身と先輩を置き換える。

 

「お?おぉ?」

 

 通形先輩は一瞬驚いた様だけど、すぐに姿勢を安定させ地面に潜ろうとする。

 

「ふっ、ダメ……ですよ」

 

 僕は、地面から首だけを出した状態でそう言った。

 そうだった。通形先輩には脱出ギミックがあるんだろうけど僕にはそう、一手間挟まないとないのである。

 だから、地面に沈んだ通形先輩と置き換わったのであればこうなるのは必然だった。

 

「緑谷くん!地面!!」

 

 僕の言葉にハッとした表情を浮かべた。

 もしかしたら緑谷くんは完璧には見えていなかったのかもしれない。

 それでも僕の言葉で原理こそわからないけどワープには地面が鍵になっているという情報を得た。

 

 僕より頭が回る彼なら対策を見つけてくれるかもしれない。

 

 ……というか、危なかった。もう少し地面に沈んだ状態で個性を使用したら地面深くに生き埋めになるところだった……顔だけとはいえ出ていて助かった。

 

 さて、一度は沈むことを防げたけどこれは一度回避しても仕方ないこと、本人に潜ろうとする意思があればあのワープもどきは使えるだろう。

 

 事実今も緑谷くんにワープを使い背後に迫っている。

 しかし、緑谷くんはそれを読んでいたみたいで蹴りを叩き込む。

 しかしその蹴りはすり抜けカウンターを決められた。

 

「ほとんどがそうやってカウンターを画策するよね。

 ならば当然、そいつを狩る訓練!するさ!!」

 

 そこからは一瞬だった。

 緑谷くんがやられた隙をつかれ他のみんなも腹部に一撃を入れられた。

 

 だけど、まだ僕が動ける。

 もう僕は動けないだろうという意識の外。

 さっきの緑谷くんの蹴りで地面は割れ、瓦礫ができている。

 

 それならば、と。舌を鳴らした。

 僕は油断しているであろう通形先輩の背後を取る。

 

「うん!ふぅ、終わったんだよね――キミ含めてね!」

 

 見えてないはずの、意識の外からの攻撃だったはずだ。

 僕は振り向き様、腹部に強烈な一撃を撃ち込まれていた。

 

「とまァ――こんな感じ、なんだよね!」

「わけもわからず全員腹パンされただけなんですが……」

 

「俺の個性強かった?」

「強すぎっス!」

「ずるいや、私のこと考えて!」

「すり抜けるしワープだし!轟みたいなハイブリッドですか!?」

 

「いや、一つ!透過なんだよね!君たちがワープと言うあの移動は推察された通りその応用さ!」

 

「全身個性発動すると俺の体はあらゆるものをすり抜ける!あらゆる!すなわち、地面もさ!!」

 

「あっ……じゃああれ……落っこちてたってこと……!?」

「そう!地中に落ちる!!そして落下中に個性を解除すふと不思議なことが起きる。質量のあるモノが重なり合うことは出来ないらしく……弾かれてしまうんだよね」

 

 

 質量あるモノが重なり合うことはできない……

それなら、さっきの僕は地面に弾かれていなきゃおかしい。なのに、僕は地面と重なったまま、埋まっていた。

 

 ……何だこれ。

 通形先輩の「透過」と、僕の「置換」……根本のルールが違う?

 

 

 いや、それなら……僕の個性は、一体……?

 他の事象は分からないけど、少なくとも通形先輩の個性にはそのルールが適応されている。

 ならば、何故……?僕にはそのルールが適応されない?

 思考が渦巻き通形先輩が何か言っているが頭に入ってこない。

 

「つまり俺は瞬時に地上へ弾き出されてるのさ!これがワープの原理。体の向きやポーズで角度を調整して弾かれ先を狙うことができる!」

 

「……?ゲームのバグみたい」

「イーエテミョー!!」

 

 

 いや、そもそも僕が置換した時通形先輩は透過していた。にも関わらず個性が使えた……

 そして、その時点でそこには地面があった、僕が置換した時僕と重なり合うことになった地面は……どこに消えた――?

 

 

「攻撃は全てスカせて自由に瞬時に動けるのね……やっぱりとっても強い個性」

 

「いいや、強い個性にしたんだよね。発動中は肺が酸素を取り込めない。吸っても透過しているからね。同様に鼓膜は振動を、網膜は光を透過する。」

 

「ありとあらゆるものがすり抜ける。それは何も感じることができず、ただただ質量を持ったまま落下の感覚だけある……ということなんだ」

 

「わかるかな!?そんなだから壁一つ抜けるにしても

 片足以外発動、もう片方の足を解除して接地、そして残った足を発動させすり抜け、簡単な動きにもいくつから工程が要るんだよね」

 

「急いでる時ほどミスるな。俺だったら……」

「おまけに何も感じなくなってるんじゃ動けねー……」

 

「そう案の定俺は遅れた!!ビリっけつまであっという間に落っこちた。この個性で上を行くには遅れだけはとっちゃダメだった!!」

 

「予測!!周囲よりも早く!!時に欺く!!何より予測が必要だった!そしてその予測を可能にするのは経験!経験則から予測を立てる!」

 

 考えなくてはいけない、この個性についても。

 以前ははモノとモノ、モノと自分しか置き換えることができなかった。

 でも今はそれだけじゃなく他人とモノ、他人と自分も置換することができるようになった。

 それは、なんで……?

 

「長なったけどこれが手合わせの理由!言葉よりも経験で伝えたかった!インターンにおいて我々はお客ではなく一人のサイドキック!同列として扱われるんだよね!」

 

 いつから、そんな事が出来るようになった……?

 

「それはとても恐ろしいよ。時には人の死にも立ち合う……!けれど恐い思いも辛い思いも全てが学校じゃ手に入らない一線級の経験」

 

「俺はインターンで得た経験を力に変えてトップを掴んだ!ので!恐くてもやるべきだと思うよ一年生!!」

 

 思い出せない――つまり、それを知る為には僕の失われた記憶が関わってきている……?

 

「お客……か。確かに職場体験はそんな感じだった」

「危ないことはさせないようにしてたよね」

 

「そろそろ戻ろう」

 

 相澤先生のその言葉で思考の渦から意識を現実に戻した。

 僕の中に今その答えはない。

 なら、今考えてもしょうがないことだ。

 インターンで成果を得れるといいんだけどな。

 

「「ありがとうございました!!」」

 

 そうして僕たちのお腹に甚大なダメージとともにその日は何事もなくいつも通りに終わっていった。





次回作予告。
 
 ぼくは――報われることのない、恋をした。

 ぼくは、この世界の結末を知っている。
 今は思い出せない遥か昔――松本副隊長、市丸隊長この二人の切ないあり方を観た。
 彼女の涙を識っている。
 好きな人には笑っていて欲しい、当然だ。
 だから、僕のやることは決まっている。
 そう――あの男を救うこと。

 黒崎一護に対して告げた台詞
 
『強い目になった 良かった 今のキミになら 任せて殂ける……?』

 ふざけるな。彼女を残して勝手に満足して殂く、そんなこと許せるわけがない。
 彼女にずっと残り続ける痛みを残して、自分勝手に満足して死ぬなんて許せない。
 お前は生かす、絶対にだ。
 そう、僕の命に変えたとしても――

 
♦︎♦︎♦︎
 
「ざまぁ……みろ……」

 やっと、お前の糸目、開かせてやったぞ……
 僕に……だって……できる……んだ――

♦︎♦︎♦︎

 以上、ぱっと書きたいなーと思ったBLEACHの嘘予告シナリオでした。
 多分、書きません。
 さてさて、長い後書き失礼しました!

本日も読んでくださりありがとうございます。
良き一日をお過ごしください。
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