やったね!
いやぁ、狂ったキャラを観測するの楽しいですね。
ではでは、どうぞ。
最新話です。
ふわふわと身体が浮き上がるような心地よさに身を任せ僕は目を覚ました。
梢さんが心配そうな表情でこちらを伺っている。
「……大丈夫かいな?」
「……ありがとうございます。僕、カイの元へ――行かないといけない気がするんです」
「そかそか、ほいで場所はわかったん――?」
その質問と共に梢さんの手のひらが再び僕を捉えようとする。
彼女の個性は共鳴。
共鳴することで記憶を読んだり、深層心理へ潜る補助をすることができる。
つまり、このタイミングでの個性使用は僕の記憶を読み取り実力者だけでカイの元へ向かい捕縛しようと言うのだろう。
そう、そうなのだ。こんな重大なものをインターン生に任せるわけがない。
だから、僕は――個性を使った。
彼女だけは僕の手で止めないといけない、そんな気がしたから――――
「――理由はまだうまく言えないけど、僕が行かなきゃいけないんです」
「ちょ――」
僕はそのまま病室を飛び出した。
不思議なことにヒーロースーツは入口に置かれていた。なら、これも想定内なのかもしれない。
梢さんに少しの申し訳なさと感謝を抱きスーツを抱え病院を飛び出した。
♦︎♦︎♦︎
年齢と身長が全くあっていない少女は誰もいなくなった病室で一人呟いた。
「はぁ……まったく、そない急がんでもええやろ……
――幸い、少し触れて記憶は読めたからええか……」
スマホを取り出し電話をかける。
「もしもし?あー、場所はわかったで。
ん?一応ヒーローやから後輩のサポートしてやらんとね。
場所は――や。
十分以内にこんと罰でゲームデータ全削除やかんな」
「――――――」
「しるかアホ……はよせんかいボケェ!」
♦︎♦︎♦︎
カイは大事なものをぬいたと言っていた。
それが何なのかはわからないが急がなくてはいけない。
大事と言い切る以上それが長時間身体から抜けているのは決していいことではないはずだ。
場所はそう遠くない。
神栖原市、そう神栖原市だ。
カイ曰く、そこの大通りから森に入りしばらく歩くと旧神社が存在しているらしい。
そこが、"あの場所"と言うことだった。
“個性"の連続使用、それによりすでに神栖原市には到着している。
該当する森、と呼べるものは一箇所しかない。
個性をさらに使用すること五分後……
僕はその森の前に立っていた。
――――
――――
頭にノイズが走る。
……え?ここ、見たことが、ある……?
いや、ないはずだ。僕は神栖原市に来たのは初めて……だよね……?
鈍痛を訴える頭を抱えながら生い茂った草をかき分け先に進む。
少し開けた、人が草を踏んで道のようになっている場所を見つけた。
――――
『待ってよーー!』
『やだね、オレを助けるなら追いついて見せやがれ――』
――――
……え?
なに、これ――僕は知らない。
息が詰まる。頭が割れるように痛い。
「――はっ、はっ、はっ……」
呼吸も荒く頻回になっている。
それでもミッドナイトを救うため僕は足を進めた。
――――
『なぁ、隷くん。オレは――キミに救われて――』
――――
違う、僕はこんな記憶知らない!
それは僕のものじゃない!!
――――
『僕は、◼️◼️を救うよ――あの人じゃなくて◼️◼️を――』
『――ごめん、そんなこと言わせて……』
――――
開けた場所に辿り着いた。
「――神、社……?」
確かにそこにあった。すでに廃れた、苔が生え木材は崩れボロボロになった社がそこにあった。
――――
『ねぇ!!隷くん、隷くん!!!!』
あーあ、この世界は失敗か。ダメだよちゃんと推しを救わなきゃ……
『お前……、何だ……?』
……ん?へぇ……分かるんだ。ボクのこと。
あぁ、プロトタイプか。そりゃそうだ。僕が作った素体だもんね、縁をたどりって触って観れば観測は容易い、と。
『なに、言ってやがる……』
あぁ、いいんだこれはキミには関係ない話。
だってこの世界は――からね
――――
倒れている僕と、空を睨むカイ、そしてこの声は――
朦朧とする中、声の主を思い出そうとする。
確かに僕はこの声を聞いたことがあるはずだ。
足音が、聞こえた。
音の方に視線を向ける。
神社の影からカイがゆっくりと笑顔を浮かべながら出てきた。
いや――、それは笑顔じゃない。
他人の絶望を愉しむ者だけが浮かべる――嘲りの笑みだった。
「やぁ、隷くん」
「…………」
「嬉しいよ、やっぱり俺たち相思相愛なんだね」
「なに、言ってるの……?」
「あれ、ここまで来るとき
いろいろ観たでしょ?俺の個性」
「……観測」
「そう!やっぱりわかっちゃうかぁ。
ほんとはねそう言うこと出来ないんだよ」
――まて、カイ、キミ右目はどうした……?
「ねぇ、カイ。右目はどうしたの……?」
「ん?あぁ、心配してくれるのかい?ありがとう!!
だけど大丈夫、ほら――そこにあるから!!!」
そう言ってカイは僕の顔を指差した。
……いや、顔というのは正しくない、僕の右目を……だ。
「……え?」
「ん?だって来るとき観ただろう?あれは俺の眼があったから出来たこと、観測の共有なんて出来るもんじゃないんだぜ?」
「俺の眼、いやこれは僕の眼だろう……?」
「ん?あぁ!それは大丈夫――ほら」
カイは胸元に手を入れたかと思うと瓶を取り出した。
何かが浮かんでいる。
……楕円上の、何か……
それは――目玉だった。
「――え?」
見覚えのある、眼の色、当然だ。
だって毎朝見ている、洗面台の前で僕はそれを誰よりも……
――――
『置換……お前、右眼――そんな赤色だったか?』
尾白くんはそう言った。
それに、意識し出してからおかしい。二人に被さってへんなモヤモヤが蠢いている……
見えるようになったモヤ。
――――
「あ……」
「うん、
いやぁほんと俺ってば天才だよな。
こんなの思いつくなんて……
隷くんに俺の眼をあげて隷くんの眼は俺が持つ。いつでも隷くんを近くに感じられる。いつでも見てもらえていつでも見れる」
つまり、僕のこの眼は……カイのもので――
「おぇ、おぇぇぇぇ……」
「しかもだぜ、それは俺の眼なんだ。
だからいつでもキミの視界を覗ける。
キミの見ているものを観て感じれた」
「おぇぇぇ――」
右腕が震えているような気がするがそんなことよりも 吐き気が止まらない。
「あぁ、でもさそのせいでみたくもないもの観たりしたんだよね。
ほら、あの女……人が観てるとも知らずにイチャイチャイチャイチャしやがって、まじふざけんな」
何か言っている。
「誰だっけ――あぁ、ミッドナイトとか言ったっけ。
まぁいいさ、あいつはもう直ぐ死んで俺は君に見てもらえる」
ミッドナイト……
「――ミッドナイト……!」
嘔気を意思の力で抑えカイに視線を向ける。
何かを――掴んでいた。
どこかで観たことのある"それ"はミッドナイトの纏うモヤそのもので、
知らなくても確かにそれが核であると感心できるモノだった。
怒りも吐き気も全てを忘却し、モヤを解放させようと――
咄嗟に手を叩き個性を発動させようとした。
「あぁ、やめた方がいいと思うよ。手放したら元に戻らず消えちゃうし――」
叩こうとした手が、止まった――
「――――――!!!」
思考は混ざり、感情とぶつかり合う。
それでも何かを叫びたくて、でもその言葉が見つからない。
漏れたのは音の断片、言葉にならない声の塊。
怒りがあった、悲しみがあった、哀愁があって、
カイという名も、やめろという静止も、返せという願いも全てが混じり合った声の塊。
そんな僕の慟哭が辺りに木霊した。
それに返すかのようにカイの歓喜の叫びが反響した。
「……あハぁ、アは、アハははハハは――!!!!!」