推しのために死に続ける話。   作:三つ首黒虎

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ハイ……1週間投稿すぎてごめんなさい。
前回調子乗って2話連続で出したからって油断してました。
本当はカイ編描き切ろうと思ってたんです…
無理なので分割します!

どうぞ。
此度も楽しめれば幸いです。


60話 VSカイ

 

 廃神社に僕の慟哭が響く。

 

 だけど……そんな様子とは裏腹に

 なぜか僕は冷静だった。

 

 ――そっか、そうなんだ。

 どれだけ怒っても限度を超えると冷静になるんだ。

 

 ……どうしようか。

 カイはミッドナイトの命を握っていると言っても過言ではない。

 つまり、離さなさせなければいけない。しかも、安全な所に……だ。

 

「――いいねぇ!うん、やっと俺を観てくれた!!!

 嬉しいよ、隷くん……あはははは!!」

 

 涙……?なんで泣いてるんだろう。

 

 ……あぁ、なんだ。

 もしかしたら……

 本当に僕のことが好きなのかもしれない。

 ……ただその表現の仕方を絶望的に間違えただけで――

 

 それなら、まだ望みはある。

 手放させなければ、僕は“戦い”にすら至れない。

 あの人が救えるのなら、僕はどうなってもいい。

 

「――ねぇ、カイ」

「ん?どうしたんだい?」

 

 とても嬉しそうに笑っている。

 僕はカイが握っているモヤを指差す。

 

「――離してよ」

「いやだよ?当然じゃないか」

 

 僕は落ちていた木片を拾い上げ、乱雑に折る。

 一度躊躇うように身体が強張る。

 だけとそれを気力で留め自身の左の脇腹に突き刺した。

 

「っぐ――」

「――っ、な、なにしてるのさ!!隷くん」

「……っ、あぁ、だって君は僕に殺して欲しいんでしょ?――僕の中にずっと残りたいんでしょ?

 でもさ、僕はあの人しか見ない。

 なら無理じゃないか……」

 

 痛みを飲み込み気力を込める。

 痛い、痛いがそれよりミッドナイトが死ぬことの方がもっと痛くなると識っている。

 

「だから、せめてもの抵抗だよ

 僕のお願いを聞いてくれないから

 僕はこの場で、君の目の前で、

 君を観ずに自害しよう――」

 

 目の前のカイが息を呑んだ。

 自身の内側からも静止の声が聞こえた気がする。

 それでも、僕はやめない。

 

「……あぁ、信じられない?なら――」

 

 二本目をとり右眼を目掛けて――

 

「や、やめて。それは違う……。ダメだ。あんなものが覗いている世界なんて、隷くんのいない世界なんて――」

 

 カイの言葉を聞き右眼を刺そうとしていた、

 ――その手を止めた。

 

「……うん、じゃあさ。それをどうすればいいか」

「わ、わかった……戻す、戻すから。

 だから絶対君は"自殺をしちゃだめだよ"」

 

 少しその言い方が気に掛かったが無視をした。

 

「……大丈夫なら、握手しよう。隷くん――」

 

 解放してくれるなら、そのくらいは大したことではない。そもそもがブラフだ。

 僕はカイに近づくために歩をすすめた。

 

「――わかった」

 

 お互いの手が届くところまでたどり着く。

 未だカイの左手はモヤを掴んでいる。

 

 カイが右手を伸ばし、僕も手を伸ば――

 カイがほんの一瞬だけ、表情に笑みを溢した。

 

「っ――」

 

 一瞬の空白。なんだ、カイはやっぱり間違えてるだけの普通の人だったんだ――そう僕が考えた直後。

 ――カイの右手は僕の木片があった腹部を貫いていた。

 

「っっっっーーーー!」

 

 何故、なぜなぜ――?

 頭の中を疑問が埋め尽くす。

 当然なぜそんなことを、という疑問もある。

 だけど――

 

 ……どうして、こんなにも彼女は壊れているのに

 どこかでまだ、ただの少女だと信じようとしたんだろう――

 

 どう考えても信じるべきではなかった。

 そもそもこの状況を作ったのは彼女だ。

 精神的におかしくなければこうはならない。

 それでも、僕はこの子を救いたいと未だに願う。

 自分の不可思議さを少し笑う。

 

「さぁ、隷くん。

 これは契約だ。俺はこのまま"これ"を元に戻す。

 だから君はこの先『何があろうとも、自害することはできない』"」

「っ、っ……」

 

 あまりの想定外、

 刺した場所を抉られ、それだけじゃない。

 何か内側を書き換えられているような――

 

 

 長考をしようとする思考に反して、僕の身体はすぐさま距離をとる。

 

「ありゃ、残念。もうちょい近くにいてもよかったのに……」

「ど、どうして……」

「……ん?どうして……?いやいや契約だよ契約」

「契……約……?」

 

 契約……?どう言うこと……?

 

「まぁ、知っての通り俺の個性は"接触"と"観測"だ。

 で、裏技があるんだ。“個性"のバグ、抜け道だよ」

 

 ……裏技。

 そう聞き僕は思い出したものがあった。

 通形先輩の個性だ。

 あれも、何かしらのバグを用いて現象に変換しているように感じた。

 

「観て、触れる。それなら形がないものでも触れて変えられるんだ。そう、例えば『◼️』とか。

『◼️』ってね、弄れるんだ。形を変えればそれが出来ないようになったり、出来るようになったりする。

 相手の中に触れてって前提はあるんだけどさ。

 ただ、やっぱり物事は等価交換で……

 その人が等価値と思っているものを与えないといけないんだよね」

 

「……え?」

「今回で言えば、もう戻しちゃったけどさっきのやつと君の命はほぼ等価値って認識してたみたいだね。

 ……ほんっっとに気に食わないことにね」

「何を言ってる……?」

「ん?『◼️』だよ『◼️』。分かるでしょ?君だってそれを観たから、観えたから“個性"が進化したんだ」

 

 聞こえない。カイが言っていることのほとんどが聞き取れている。

 カイの口元が確かに動いていて、

 だけど、その音だけが"黒く染まってまるで抜け落ちたかのように"聞こえない。

 まるでその単語自体が、この世界から存在を許されていないかのように――

 

「ま、いいさ。さぁ、解放したよ?これでいいんだろう?」

「ぐ……、ぬ……」

 

 ……本当に……?

 

「あぁ、悲しいなぁ。信じてもらえないのは悲しいよ――」

「……」

「電話でもしてもらえれば一瞬だけど――あいにく持ってきてないもんね……」

「……」

「あぁ、じゃあ観せてあげるよ。

 ――さぁ、右眼に集中してみて」

 

 カイの言う通り右眼に意識を向ける。

 朧げに白くなったその視界は映すモノを変えた。

 

 病室だ。

 ミッドナイトが寝ている。

 

「――――――」

 

 あくびをして目を覚ました……みたいだ。

 世界が遠くなっていく。

 また朧げに白くなり、元の景色へと帰ってきた。

 

「ね?戻っただろ。まぁこれも信用できない……っていうならもう無理だ。証明は出来ないし――」

 

「いや、いい。信じるよ、キミは嘘つかないって――」

 

 それに、契約もよくわからないけど自殺出来ないだけだろう。

 大したことじゃない。

 

 満足そうに笑みを浮かべると、カイは謳うように手を広げ舞う――

 

「さ、やろうか。俺の人生最後の晴れ舞台」

 

 心の底から楽しそうに――

 

「好きな人を観続けて、好きな人に終わらせてもらえる」

 

 とても、幸福そうに――

 

「そんな素敵な逢瀬を」

 

 どこまでも、狂っていた――

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 戦闘が始まりわずが五分の間に僕は血塗れていた。

 しかし、出血はどれも止まっている。

 

「ほらほら、どうしたの!?隷くん、動きが鈍い……よっ!」

 

 カイが腕を振るう。

 それに触れた空気が刃、風刃となり僕を襲う。

 僕はそれを置換を使い回避する。

 

 だけど、

 その回避した先にも空気の刃が存在して切られ、その風の持つ熱で傷口を焼かれる、そんなことを繰り返していた。

 

 だから幸か不幸か出血はそこまでない。

 斬られそれを焼かれ跡を残されただけだ――

 

 避けている、僕は間違いなく避けているはずなんだ。

 だが、避けた先にまた新たな風刃が用意されている。

 まるで、僕のいる場所がわかっているみたい――

 

 

 ……わかって、いる……?

 

『うん、

 いやぁほんと俺ってば天才だよな。

 こんなの思いつくなんて……

 隷くんに俺の眼をあげて隷くんの眼は俺が持つ。いつでも隷くんを近くに感じられる。いつでも見てもらえていつでも見れる』

 

 思考によぎった可能性、僕は右眼に手を添えた。

 その瞬間、カイの表情は大きく変わった。

 まるで不出来な生徒によく出来ましたと誉める先生のように、満足そうな笑みを浮かべた。

 

「そう、だい!せい!かーい!!

 俺はね君の視界をずっと観てたよ。

 だから避ける場所がわかった。当然でしょ?」

「――」

 

 絶句する僕に対し少し寂しそうだ。

 

「ねぇねぇ、もっと喋ろうよー、最期だよ?全くサービスしてよね」

 

 少し不貞腐れ気味そう言ったカイは言葉を続ける。

 

「で、それがわかったらどうするの?隷くん。どうしたら勝てるのかな?」

 

 僕は無言で右眼を閉じた。

 ヒーロースーツのコートを破り、その布を右眼を覆うように巻く。

 

「うん、うん。そうだよね、そうなるね。

 だけど、それで避けれるのかな?」

 

 僕の視界は半分になった。

 見えていたものが見えなくなる、戦闘場面での片目を閉じる自殺行為。

 

 当然、カイを視界に収めていても、彼女は風に乗る。

 そう、触れられると言うことは、足で風に触れる。

 それはつまり、風の上に乗れると言うことに他ならない。

 

 大気を流れる風すら動く歩道のように滑りながら軽やかに移動する。

 

『――!、聞こえるか!?』

 

 僕は腕を取り戻した代わりに義手という武器を失った。

 

 斬られ熱で無理やりその傷を塞がれ、痛みでおかしくなりそうだ。

 だけど、やはりこの子を止めてあげたいと言う願いは消えない。

 

 何故なんだろう、何も知らない、記憶にもない見せられた想い出に感化でもされたのだろうか。

 

 分からないけど、今はこの情動に従いたいんだ。

 ミッドナイトを救いたい、それは変わらない。

 でも、この子も救いたいんだ。

 

 寂しがり屋で、人との関わり方がわからない悲しい少女を――

 

『聞こえるか!?隷、もう少しで――引き上げられ――』

 

 ……鬼人……?

 なんで、どうして聞こえるんだ。

 気づいたらいなくなってたじゃないか。

 

『いいか――は、この世界の――だ。お前の中に残ってる――と合わされば、まだ――かもしれない』

 

 なんでいなくなるんだ。

 聞こえないよ。

 もっとはっきり――

 

『あぁ、やっぱり邪魔が――やがる。

 いいか――は待て。時間を――!』

 

 何かを伝えようとしてる――?

 待て……?時間……?

 

「さ、隷くん。続き、やろうか」

 

 時間を、稼げ……かな?

 どちらにしても今の僕は目を閉じて避ける事しかできない。

 鬼人を、信じよう。

 

 幸い、攻撃のテンポも読めてきた。

 あの子は戦うものじゃない、今までもスペックのゴリ押しでどうにかなって来たのだろう。

 ……いや、そもそも彼女に僕を殺す気はない。

 遊んでいるのか鍛えているのか、

 それこそ言っているようにこれすら最期の会話の一部なのか――

 わからない、わからない――が。

 話してみよう、もう一度。

 

「ねぇ!!カイ。君はどうして僕に好意を寄せるの――?」

「ん?恋バナ?いいね〜、好きな人とそう言うの話したかったんだ!」

 

 食いついた――!

 それでも、攻撃は止まない。

 

 でも時間は稼げる――!

 カイは続けた。

 

「俺はね……君に感謝してるんだ。

 君がいたから救われた。

 君と過ごした時間があったから今ここに俺がいる!!!」

 

『それは――――――だろうが!!』

『あっ、てめぇ。――そこだけ反応――なよ!!』

 

 僕の中が騒がしい。

 ――鬼人と、もう一人……

 思い当たるのは一人しかいない。

 

「過ごした……?僕にそんな覚えは――ない」

「何言ってるんだ?一緒に過ごしたじゃないか――」

 

 話を続けよう。

 

「ねぇ、カイ――キミにとって僕は何だったの?!」

「何……?そんなの決まってる。世界だ。

 君が俺の世界の中心で、何よりも必要なもの。

 君がいないならこんな世界なんて――」

 

「――滅びればいい」

「――え?」

 

 いま、彼女の深淵が見えたような――

 さらに進めよう。

 

「なら、どうして!!

 僕を苦しめるようなことするのさ!!」

「――苦しめてなんていない!守ってるんだ。

 この世界から。この世界の真実から――

 もう、俺は失いたくない。

 そして、失わなせたくないから!!!!」

 

 話が……

 違うよ、君は……

 何処かでおかしくなったんだ。

 

 僕はUSJ以前に君と会っていない。

 だから、そんな失うものなんてあるはずがないんだ――

 なら、誰だ――?

 この嘘の記憶をこの少女に見せたのは――

 

 

「なにを、いってるんだ……

 君がやってることはどう考えても好きな人にする事じゃない」

 

「好きな人には喜んで欲しい。

 笑っていて欲しい。

 いつも楽しそうにしていて欲しい――」

 

 だから、君のそれは違う、と思う。

 似て非なるものだ。

 

「その為なら自分が苦しくても

 どうなっても、好きな人の為に!というなら

 好きな人のことを一番に考えないと、おかしいじゃないか――!」

 

 それは愛ではなく、恋ではなく――

 

「ただの――――!!!」

 

 

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