推しのために死に続ける話。   作:三つ首黒虎

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この話にて分岐が挟まります。
投票期間は1週間。
その後執筆期間1週間取らせていただきます。
早ければ投票後すぐに執筆に入らせていただきます。

それでは、どうぞ
後悔なき選択を。


61話 選択

 

 それは愛ではなく、恋ではなく――

 

「ただの――――!!!」

 

 それは――ダメだ。

 言ってはいけない。

 愛も恋も、執着とは紙一重。

 それは、誰にも否定できないししてはいけないものだろう。

 

 もし言ったならそれは――

 自分にも返ってくる。

 ともすれば、僕の方が――罪深い。

 

 

「――え、あれ。あれあれあれあれあれあれあれあれ。

一番に、一番に、ここ、ここ、ここここここここここで……」

 

 ……どうしたんだろう。攻撃がやんだ。

 カイの様子がどうも変だ。

 

「君と――過ごした、はずなんだ。

 キミに、研究所から助けてもらって

 でも、キミはヴィジランテで……

 ヒーローは敵で、

 だから、俺……オレと二人でこの神社で過ごした、はずなんだ」

 

 その縋るような声にそうだ、と言ってあげたくなる。

 それでも違う。

 それは違うんだ。

 

「それは、僕じゃない。

 ――違うんだ」

 

「ごめん――僕は知らない。

 それは僕じゃない、誰かだ。

 それに――」

 

 それに、梢さんが僕のヒーロースーツと共に一枚の書類を紛れ込ませていた。

 ――カイ、と言う少女についてだ。

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 置換くん、

 一応私たちが今まで調べた情報で必要そうなものをここにまとめておく。

 

 この日本ではカイ、と言う少女は今現在存在しないことになってんねん。

 名称がないとややこしいから 便宜上カイ、と呼ばせてもらうな。

 

 というのも、観測という個性の少女は存在しとった。

 おった……が、出生届が出された直後に死亡したことになっててな。

 ほいで、その病院では子供が生まれた直後息を引き取ったと言う事例が四ヶ月に一度、頻度が多いと一ヶ月に一度起きていたみたいや。

 

 そして、その子供達は密かに研究所に引き取られ

 個性を強化薬の実験に使い潰されてたみたいやね。

 残念ながら、その研究所の主はわからへんかった。

 せやけど、優秀者の中におったよ。

 実験体、ka-10546。通称カイ。

 個性は"観測"

 強化薬を使うと別の並行世界すら観測出来たみたいでな。

 せやから、研究所としては手放したくなかったんやろな、別世界の技術や、当然欲しかったはずや。

 もし逃げれたとしてもすぐ捕まってまう。

 ……いや、そもそも逃げようとする思考すら思い浮かばへんかもしれん。

 やって、その子達は、生まれた時からそこにいて、何も学ばず、ただ実験だけを繰り返していたんやから――

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 

「君は、研究所から逃げれてなんて、いなかった」

 

「なら、俺、は……誰――?」

 

「君は、君の名前は――」

 

 僕の知るこの情報を可哀想なこの少女に突きつけなくてはいけない。

 少なくとも知らなかったとしても彼女は過ちを犯してしまっている。

 

「実験体、Ka-10546。通称――カイだ」

 

 カイの言葉が消えた。

 辺りは風が空気を撫でる音しか聞こえない。

 

 カイはポツリと救いを求めるように呟いた。

 

「……ねぇ、なら。この記憶は、なんなの……?」

「……、君が個性で観た、平行世界の記憶――だと思う」

 

「つらくて、痛くて、もう嫌で、

 そんな時別の世界の自分を観た。

 その自分は、楽しそうで、笑ってて――」

「あぁ、ぁぁぁぁあぁぁ――」

 

 風が世界を薙ぐ。

 

「――ぁぁぁぁああああああ!!!!」

 

 カイの周囲に木の葉が舞い出した。

 周囲の物は全てカイの元に集う。

 

 僕も吸い寄せられそうになり真横にあった木の幹を掴む。

 

『隷、もう――だ。――少しで』

 

 ダメだよ、鬼人。

 この決着は僕がつけないといけない。

 ――僕が原因なんだ。

 この泣き虫の女の子を救うんだったら僕がやらなきゃ、救われない。

 

『――。そっか……好きにやれや』

 

 ありがとう。

 それに、ここで女の子一人救えなくて、ミッドナイトを救えるものか――

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 カイの元へ吸い寄せられたものはまるでミキサーにでも掛けられたかのように微塵になる。

 

 廃神社はすでに跡形もない。

 カイの周囲には草すら残っていない。

 

 さらに恐ろしいのが、これの吸引力は弱まっていない……それどころか段々と強くなっている。

 

 今掴んでいる木が吸われ粉砕されるのも時間の問題だろう。

 

 どうしたらいい……?

 悩む暇はない、これは僕が彼女を追い詰めたから起きた事。

 すでにミッドナイトは解放され心配することは何もない。

 個性で距離を取ることに意味はない。

 逃げたところで何も解決なんてしない。

 

 個性でカイと僕を入れ替えても意味がない、

 だってこの暴風はカイから生まれている。

 

 入れ替えたとしても風の発生源が入れ替わるだけになる。

 

 思考を巡らせていると握っていた木の幹が浮き出した。

 

 っ、まず――

 

 個性を使おうと手を叩こうとした。

 その瞬間、頭部に衝撃が走り意識が遠のく。

 

 暗闇に飲まれそうになる中、口の中を噛み刺激を与えて意識を覚醒させた。

 しかしその遅れは致命的で、

 ――風に呑まれてしまった。

 

 視界は、回る、周る、廻る。

 ぐるぐるぐるぐるぐるぐると巡る。

 

 

 

 まるで奇跡のように、僕の身体は無事だった。

 強風で身体を動かすことはできない、口を開けることも出来ない、呼吸も苦しい。

 それでも僕の身体は吸い込まれた他の物質のように、すり潰されなかった。

 

 カイの、声が聞こえた――

 

「なぁ……どうすればよかったんだ?」

 

 ふいに、空間が反転する。

 僕の足元が抜け落ち、意識が引きずり込まれる――

 

 

 ――なぜ?

 

 疑問が浮かぶが考えても分かることではない。

 僕はうっすら瞼を開けた。

 

 最初に感じたのは白さ、無垢で、何もない、ただただ真っ白な空間。

 次に感じたのは泣き声。

 誰かが泣いている、しかしどこを見てもその声の主は見当たらない。

 

 あたりを見渡すと白い空間にところどころ何かが落ちている。

 

 今、出来ることは周囲を調べることしかなさそうだ。

 僕はそう判断して最初の落とし物の場所へ歩みを進めた。

 

 最初に落ちていたのは白い布……タオルだろうか。

 手を伸ばし、それに触れた。

 その瞬間、またしても景色が反転した。

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

『◼️◼️さん、産まれおった。

 女の子じゃよ』

 

 腹を裂かれた妊婦の女性と、ゴーグルのようなメガネをかけた高齢な男性がいる。

 そしてその男性が生まれた子供を抱き上げ口角を上げた。

 

『なんじゃと……!?このままでは……』

 

 大袈裟に驚く医者に対して妊婦の女性は力尽きたのか。

 ……いや、心電図が一本の線になっている。

 生命が失われた、みたいだ。

 

『……なるほど。こやつはなかなか面白い個性を持っているようじゃな……』

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

「いま……のは……?」

 

 どうやら、戻ってきたみたいだ。

 何故かは分からないけど、この空間にある物に触れるとその記憶が見えるのかもしれない。

 

 ただ、あの医者……一見普通だったんだけど。

 様子がおかしかった……

 

 似たようなものがないかあたりを見回した。

 

 二十メートルほど先にあった。

 "がくしゅうちょう"と書かれたノートだ。

 

 僕は足を進めそのノートに触れた。

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 場面はノートに何かを書く四歳くらいの少女の姿だった。

 

「なんで、みんなはみえないんだろ。こんなにいっぱいへんなものがみえるのに」

 

「きょうはー、これ!そらとぶおうち」

 

 どうやら、絵を描いているらしい。

 いろんな絵が描かれている。空を飛ぶ家、車、風呂敷。

 これは……なんだろう。ロケット?

 それに……丸いのが爆発している絵もある。

 

「ふんふんふ〜ん」

 

 少女は上機嫌に鼻歌を歌って絵を描き続けている。

 扉の開く音がした。

 

 誰かきたようだ。

 

 振り向くとそこには先ほど見たゴーグルをかけた高齢の医者がいた。

 

『おぉ……、今回は何を描いているんじゃ?』

 

 少女は寝っ転がったまま絵を描き続けている。

 

「あ、せんせい!きょうはねーそらとぶおうちとおかあさん!」

『ほうほう、それが観えたんじゃな?』

「うん、そだよ〜。おかあさんはいつむかえきてくれるのかな」

 

 再び医者は嫌な笑みを浮かべる。

 

『いつじゃろうなぁ……

 あぁ、そうじゃ。お願いしたいことがあるんじゃが……』

「どうしたのー?こまってるならてつだうよ〜?」

『おぉ、そうかそうか。助かるわい……こっちにきてくれるかの……』

「ちょっとまってね〜」

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

「また、みえた……」

 

 この子は……たぶん、カイ……だ。

 僕はカイの記憶を観ているのかもしれない。

 

 次を探そうと辺りを見回そうとしたが十メートルも離れていない場所にそれはあった。

 

「赤い……、いや黒い……?」

 

 赤黒い布だ。

 まるで血に塗れそれが固まったかのような――

 僕はそれに恐る恐る手を伸ばした。

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 少し成長した少女いた。

 六歳……くらいだろうか、頭に機械を取り付けられ鎖で縛られている。

 

「ぁぁぁぁァァァァァァ!!!」

 

 どれだけ叫んでいたのだろうか、もはや声になっていない。

 足元には失禁したのか水が滴っている。

 目や、鼻、口からも液体が垂れている。

 口から出ている液体に至っては赤い、血……ではないだろうか。

  

「ぁ、んで……」

『あぁ、理由……いるかの?

 ――強いて言えば知りたいからかの、

 異世界の技術を、知りたいんじゃよ。

 じゃから、まだ終わらんよ。

 お主の知識が全てわかるまでずっとこれを繰り返し続けるんじゃ――』

 

「おかあさん……」

『あぁ、言い忘れとった。お主の母は死んでおるぞ。

 お主が生まれた時にとっくにの……』

 

 その台詞を聞き少女の赤い瞳からハイライトが完全に消え、項垂れた。

 

『……壊れたかのぉ……。あの方に頼むとしよう。

 まだ、知りたいことは山ほどあるんじゃよ』

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

『やめて、よ。観ないで――』

 

「…………」

 

 カイ……

 君は――

 僕は、先に進まないといけない。

 

 次もすぐ見つかった。

 十センチほどの瓶に詰められた錠剤だ。

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

『さぁ、これを飲むんじゃよ』

「……」

 

 少女は老人の言うことに従う。

 錠剤を二錠受け取りそのまま飲み込んだ。

 

「あ……キミは。誰……?」

 

 誰もいない空間に話しかけている。

 

「れい、って言うんだね。じゃあ、れいくんだ」

 

 無表情だけど、辛そうだったその表情は乾いた笑いを浮かべている。

 

「そうなんだね、ゔぃじらんてっていうんだ」

 

 カイは一人誰かと話し続ける。

 

「たのしいね、れいくん。あははは!!」

 

『ふむ……別世界と繋がったようじゃの。ただあまりコチラと変わらなそうじゃ』

 

 医者は黙々と紙にメモをするとその場を後にした。

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

「……カイ」

 

 視界に涙が滲む。

 ただ生まれただけなのに、なんでこんな目に遭ってるんだ。

 この子は、何一つ悪いことなんてしてないじゃないのに……

 知っていた、こうなったんだろうと想像はできていたはずだ。

 でもそれを見せられると……こんなにも辛いなんて――

 

『いたい、いたいよ、おかあさん……』

 

 先に、すすまないと――

 

 今度は物ではなかった、そこには神社があった。

 気は進まないが、出来ることがない……

 ここから出るために僕はそれに触れた。

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 カイは一人、広場で走り回っている。

 

「やだね、オレを助けるなら追いついて見せやがれ――」

 

 まるで親しい友人と追いかけっこでもしているように――

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

「……こ、れは……」

 

 この台詞は知ってる。

 僕が、カイに見せられたあの場面……

 

 目を閉じ、開くと目の前にあった神社は朽ちていた。

 今まで僕がいた場所にあった廃神社だ。

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 カイは誰かを抱えて哀しんでいるようにみえる。

 

「なぁ、隷くん。オレは――キミに救われて――」

 

 でも、一人だ。

 無機質な実験場に一人。

 年老いた医者に観察されている。

 

「――ごめん、そんなこと言わせて……」

 

 そう言ったカイの目尻から涙が溢れた。

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 少し歩くと今度はUSJの入り口が現れた。

 

「……ここは――」

 

 ここは、カイと僕が初めて会った場所だ。

 

『いや、だよ……。つらいよ、なんで――』

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 これは……やっぱりそうだ。

 僕とカイがあったあの時。

 

「ふーん。俺の個性、しかも両腕の対価を入れ替えるだけで防げるとは思わないけど……。うん、いいね。気に入った。次はちゃんと会おうね?」

 

 でも、この時はまだ普通だった。

 そのはずだ。

 

 視点が変わる。

 これは、死柄木、トガ……黒霧……?

 ヴィラン連合の集会所だろうか。

 

 カイが嫌悪感を向けられている……?

 何故……?

 

 一人になったカイは呟く。

 

「なんで……れいくん、が……?」

「俺に逢いに生き返って、くれたんだ」

「そうだ。そうに違いない。あの顔、あの声、あの匂い、どこからどう観ても隷くんだ」

「……そうだ。運命だよ。俺とキミは結ばれるんだから――」

 

 

『あぁ……そうなるんだ。興味深いね、ドクター――』

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 場所が……戻らない……

 画面が切り替わるように廃神社が再び視界に現れた。

 これは、今の出来事だ。

 さっき会ったこと。

 

「やぁ、隷くん」

 

「…………」

 

「嬉しいよ、やっぱり俺たち相思相愛なんだね」

 

 そこからは知っての通り、僕らは敵対した。

 

「さぁ、隷くん。

 これは契約だ。俺はこのまま"これ"を元に戻す。

 だから君はこの先『何があろうとも、自害することはできない』"」

 

 謎の契約を結ばされて――

 

「――苦しめてなんていない!守ってるんだ。

 この世界から。この世界の真実から――

 もう、俺は失いたくない。

 そして、失わなせたくないから!!!!」

 

 守っている、と言う謎の言葉を伝えられて――

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 最初にいた真っ白な空間に戻ってきた。

 目の前には泣いている少女がいた。

 この少女に先はない、このまま戻れても巨悪に使い潰されるだけだ。

 

 

「もう……いやだよ。ねぇ――隷くん。

 俺を、終わらせて、殺してくれ――」

 

 それでも、全てを傷つけるこの可哀想な少女を救いたかった。

 死なせてあげるほうが幸せなのかもしれない。

 でも。生きて償うべきだと言う考えも――

 

 どうするべきだろうか。

 

 右腕を見る、この腕は鬼人が宿っている。

 精神体であっても、攻撃は通るはずだ。

 そしてあの子を消したらここから脱出することができるかもしれない。

 

 左手を見る、これは僕の腕だ。

 ここから、出られないとしてもこの子を慰めることができるかもしれない。

 

 少し悩み、僕は決めた。

 

 そうして彼女に手を伸ばした――

 

 

 




さぁ、キミたちの選択が物語の行先を決める

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