推しのために死に続ける話。   作:三つ首黒虎

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お久しぶりです。
今回は導入ですね。
また短いんですけど次話が多分…長くなります。
では。お楽しみください


68話 鳴動

 

「あれ、病院――?」

 

 僕が目を覚ますとそこは病院だった。

 

「ん……?」

 

 少しぼんやりとした頭を振り払い、直前の出来事を思い出す。

 

 あ……

 そうだ……カイと会ったんだ。

 記憶を呼び起こした時、カイの声が頭に響いた。

 

『隷くん、大丈夫……?

 クソ◼️が接続を無理やり切ったから頭痛かったりしない?』

 

 うん、大丈夫だよ。

 ありがとねカイ。

 

『まさかここまで観てるなんて思ってなかった。

 そこまで関心が向いてるなんて思ってなかった……ごめん』

 

 大丈夫、気にしてないよ。

 それで……アレは、なんなの……?

 

『アレは◼️だよ。

 オレたちをおもちゃとしか観てない害悪だ。

 クソにも劣る◼️◼️だ』

 

 ……やっぱり、分からない。

 言葉は聞こえているけどその言葉を脳が拒否しているみたいに頭に入ってこないんだ。

 

『そう、だよな。

 今はこの話やめよう。また邪魔されるのも不快だし。

 アレはどうやら隷くんの個性について触れるのを嫌がるらしい。それだけ覚えておいて』

 

 ……そうだね、やめておこう。

 朧げだけどカイのヒントのおかげでなんとなく掴めているんだ。

 だから、もう一歩だと思う。

 

『そっか、なら……こっちも危ない橋を渡った甲斐があったや……

 ごめん、少し休む。ちょっと疲れた……』

 

 ……おやすみ、カイ。

 ありがとう……

 

 

 そうして、僕は僕の中……?で起きたことを思い出した。

 次はここにいる理由を記憶の海から探り出す。

 

 怪我と熱で意識を失ったミッドナイトを病院前まで運んで……そうだ、前のめりに倒れて僕も意識を失ったんだ。

 

 

 その証拠に額が少し腫れており、切り傷があるのかガーゼが貼られていた。

 その傷に向かい指を伸ばす。

 

「――いっ」

 

 パックリと切れていたみたいだ。

 ベッドの横に備えられていた鏡を覗くとガーゼに赤く血が滲んでいる。

 

「……赤い、血――」

 

 脳裏に何がフラッシュバックした。

 

 ――あれ、血塗れなあの人を病院まで運んで……

 

 そうだ、血塗れで身体が熱かったんだ。

 どのくらい時間が経ってる!?

 

「……ミッドナイトは!?」

 

 あの時、息はあったけど……まさか、まさか……

 僕が不安に呑まれそうになった、その時だった。

 

「まったく、ここをどこだと思っている。

 少しは静かにしろ……」

 

 男の気怠げな声が聞こえた。

 僕はこの男を、知っている――?

 

「……え」

 

 そう、その男は目の下に濃いクマを作り、

 よれた白衣を纏いくたびれた表情でベッドまでくると僕を見下ろした。

 

「……久しぶりだな」

 

「松戸……砕壺」

 

 僕は男を睨みつけた。

 この男は、ヒーロー仮免試験の時の医者だ。

 そしてこの男は、梢さんと仲良さげに話していた――

 

「……そういうのは面倒だ……

 はぁ……貴様らのおかげで俺の計画が台無しだ――」

 

「――」

 

 なにを、言って――

 

「……信じる信じないは勝手だがあの女は無事だ。

 その上で聞け。信用はしなくていい……というよりするな」

「――は、え?」

「あの女に裏切られてすぐ信用するなぞ、頭がおかしい阿呆のやることだ」

「……あの女を追っていたんだ。

 もしかしたら……と些細な希望を抱いたのが間違いだった……

 ……こんな事になる前に、とっとと殺しておけば良かった」

「こ、ろす――?」

 

 その言葉を発した瞬間目の前の男の気配が豹変した。

 鋭い殺気が走り、病室の空気が一瞬で冷えた。

 

「――あぁ、俺の恋人を殺したアイツを殺すために俺は生きてきた」

 

 でもその瞳に宿っていたのは、憤怒だけじゃなかった。無力感と、押し隠した哀しみが滲んでいた。

 

「アイツは、どこだ。

 どこに行った――?」

 

 病室に広がった殺気、それが僕に向けられる。

 だけど、不思議な事に怖くなかった。

 それは殺気ではあったけど……哀しみであり、痛みであり、怒りだった。

 それに、僕にも居場所は分からない。

 だから何も答えることができなかった。

 

「……」

 

 分からないことを読み取ったのか、そもそも答えない僕に痺れを切らしたのか松戸は口を閉じた。

 

「……そうか。ならい――」

 

 松戸が何かを言おうとした時だった。

 病室の静寂が、まるで耳鳴りのように張り詰める。

 その張り詰めた空気を破るように、僕の携帯が震えた。

 

「構わん、出ろ。」

 

 松戸の声が淡々としているのに、瞳だけが鋭く光っている。

 

「……ありがとうございます。」

 

 僕は指先を震わせながら携帯を取り上げ、表示された名前を見た瞬間に息を呑む。

 

 どうしたんだろうという疑問。

 だけど、このタイミングで電話が来る事に少しの不安を感じる。

 

 指先をスライドさせ通話を繋いだ。

 ガヤガヤと騒がしい音がする。

 尾白くんと、葉隠さんそれと誰かが話しているみたいだ。

 

 誰だろう――?

 

「なぁ、置換ほんとに大丈夫か?今俺ら梢さんといるんだけどさ――」

 

「――え?」

 

 

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