推しのために死に続ける話。   作:三つ首黒虎

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お待たせしました!
今までは原作をほぼなぞり主人公おまけ感覚すごかったけど………
初…?原作を元にそこから主人公が加わったことによる変化でございます。
戦闘描写って難しいね…



7話 戦闘訓練3

「戻るぞ、爆豪少年。好評の時間だ」

 オールマイトが爆豪の肩に手を置き言った。

「勝ったにせよ、負けたにせよ、振り返ってこそ。経験ってのは活きるんだ」

 爆豪を慰めるようにそう言うとオールマイトはモニタールームへ歩き出した。

 

 なお、緑谷は小型搬送用ロボで保健室へ運ばれて行った。

 それはそうだろう、アレだけの怪我だ。早くリカバリーガールに見せなければ。

 

 視点はモニタールームへ戻る。

「まぁ、つっても……」

 

「今戦のベストは飯田少年だけどな‼︎!」

 オールマイトがそう言うと飯田は驚いたようだ。

「なな‼︎?」

 

「勝った、お茶子ちゃんか緑谷ちゃんじゃないの?」

 梅雨ちゃんがそう質問をする。

 

「何故だろうなぁ〜〜〜?わかる人‼︎?」

 オールマイトが生徒に尋ねる。

 

 すると、八百万が手を挙げた。

「ハイ、オールマイト先生。それは飯田さんが一番状況設定に順応していたから。爆豪さんの行動は戦闘を見た限り私怨丸出しの独断。そして先程先生も仰っていた通り屋内での大規模攻撃は愚策」

 

「緑谷さんも同様の理由ですね。麗日さんは中盤の気の緩み、そして最後の攻撃が乱暴すぎたこと。ハリボテを核として扱っていたらあんな危険な行為出来ませんわ」

 

「相手への対策をこなし且つ、核の争奪をきちんと想定していたからこそ、飯田さんは最後対応に遅れた。ヒーローチームの勝ちは訓練だという甘えから生じた反則のようなものですわ」

 

 怒涛の解説にまるで時間が止まったように、皆黙ってしまう。

 

 

 オールマイトは震えながら親指を立てサムズアップをする。

「ま……まぁ、飯田少年もまだ固すぎる節はあったりするわけだが……まぁ……正解だよ……くぅ……!」

 心なしか悔しそうだ。

 

 八百万は腰に手を当て胸を張り

「常に下学上達!一意専心に励まねばトップヒーローになど、なれませんので!」

 そう言った。

 

 

 場所を移し第二戦。

 Bチーム、障子目蔵、轟焦凍

 vs

 Iチーム、置換隷、尾白猿尾、葉隠達

 

 Bチームがヒーロー側、僕たちIチームがヴィラン側のようだ。

「うおー‼︎二人とも私ちょっと本気出すわ、手袋もブーツも脱ぐわ」

 葉隠さんは先の試合を見て興奮したように張り切っている。

「うん……」

 尾白くんは頬を掻きながら女の子なのにそれで良いの?と思っているようなそんな感じに見える。

 

「え、あ、うん、……えっ⁉︎脱ぐの⁉︎」

 僕は驚き聞き返した。

 女の子がそう簡単に全裸になって良いのだろうか。

 

「脱ぐわ、私本当に見えなくするなら全部脱がなきゃならないもの」

 羞恥心というものはないようだ。

 昔から透明の個性があった故の弊害だろう。

 ちょっぴり裸の女の子が横にいるとドキドキする。

 

 

 

 

 さぁ、そろそろ会場に行かなければ。

 時間だ。僕たちヴィラン側はまず核の置く位置、そして罠を前もって設置することができる。

 他チームより人数は多い。つまり、他のチームに比べ一人分出来ることが多いということだ。

 

「どうしよっか?」

 僕は二人に尋ねる。

「んー、轟くんも、障子くんも強そうだよね」

「個性は確か、轟が凍結?、障子がなんだろう、パワー系なのかな」

 

「僕らは体力テストのしか見てないし他にも出来る事は多いと思う。だから、自分たちの出来ることを教え合おっか」

 

「そうだね!私はね“個性"透明化。私は見られないの。ただ服は見えちゃうから完全に“個性"使うなら全部脱がなきゃ行けないんだ〜。戦うよりは偵察がとくいかも!」

「透明化!かなり便利そうだ。」

 

「俺の“個性"尻尾だ。尻尾を腕のように自由に動かせる。攻撃に使ったり物を動かしたりそんなことができる。あとは好きで武術かじってるから近接格闘は得意かも……」

 

「尻尾!そう!もふもふしてる!触って良い?触るね!」

 そう言い葉隠さんは尾白の尻尾を触り出した。

 尾白くんは見えなくても葉隠さんの感触がわかってしまうのだろう。少し赤くなっている。

 

 

 

 空気を変えるように僕は話し始める。

「えっと、それじゃあ僕の“個性"は置換。モノとモノの位置を置き換えることができる。置き換えられるのは僕を中心として直径十メートル以内、ちょっと変な癖ついてるから拍手しないと置換出来ないんだ。」

 

「置換は体力テストの時自分を入れ替えてたけど……他の人も入れ替えられるのか?」

「あ!そうだよ!出来たらかなりすごいんじゃない⁉︎」

 

「えっと、それは出来ないんだ。認識のせいで出来ないのか、僕の個性の練度が足りないのか、そもそもできないのかわからないけど、自分しか置換できないんだ」

 

 そう、そうなのだ。当然過去試したことがある。でも出来なかった。僕が置き換えられるのは自分と何かモノ。あるいはモノとモノの置き換えだけだ。

 

「そうなのか……、それでもかなり便利そうだよな」

「うん!すっごい便利だよ」

「ありがとう」

 

 

 

「うん、大体話せたかな?じゃあ、葉隠さんが偵察、尾白くんがメイン防衛、僕は罠仕掛けたりの補助要員かな」

「そうだね!」

「うん、それで良いと思う」

 

 みんなの意見が統一されたところでオールマイトの声が聞こえた。

「ヴィラン側大丈夫かな〜?そろそろ始めるよー」

 

「あ、やばっ、罠仕掛けてないや。急いでいろんなところに設置してくるね」

「うん、ありがと!じゃあみんな所定の位置に」

「じゃ、皆がんばろうぜ」

 

 尾白くんの号令に合わせて僕と葉隠さんは

「「うん」」

 と返した。

 

 

 

 僕は罠を仕掛けながら考えていた。

 さぁ、はじまる。ちゃんとした僕の初戦闘と言っても良いかもしれない。

 今回の敵は轟くん、障子くん、どちらも強そうだ。

 轟くんに至っては推薦組だ。

 だけど僕たちは三人いる。それなら――

 

 そんなことを考えていると。

 訓練が始まった。

 

 インカムから声が聞こえる。

「二人とも、入り口から普通に入ってきた。障子くんが身体から口とか耳とか出してる」

「ありがとう葉隠さん、なら障子くんが索敵メインでするかもしれないね」

「だな、じゃあ葉隠さんは一回下がった方が良いかもしれない」

「わかった!一旦後退するね」

 

「四階北側の広間に一人、もう一人は同階の、どこか……素足だな……、もう一人は一階にいるぞ……」

[障子目蔵 “個性"複製腕!触手の先端に自身の身体を複製することが出来る!]

「透明のやつが伏兵として捉える係か」

 

「外出てろ、危ねぇから。向こうは防衛戦のつもりだろうが……」

 

 ――俺には関係ない――

 

 嫌な予感がした。

 轟くんの個性は氷結?あんなことを言っている、もしや規模はッ――インカムを使い二人に伝える。

「二人とも、飛んでッ」

「え?わひゃ」

「ッ!」

 

 その瞬間――

 ビルは凍りついていた。

「大丈夫⁉︎、凍ってない!⁈」

「う、うん、飛んでって言われたのに驚いて滑った瞬間に凍ったみたい。だから凍ってはいないけど……冷たーーーい!」

「ありがとう!危うく凍るところだったッ」

 今のビルを巻き込む一撃で罠の大半が死んでしまった。

「二人とも、多分相手は油断してる。障子くんがこっちの場所を把握するなら動かなければ油断して登ってくるはずだ。だから二人は四階で動かず待ってて」

 

 

「三人とも動いてはいない。多分凍ったんだろう」

「そうか、なら行くぞ」

 

 どうやら、二人は入ってきたようだ。

 それなら最初の階段に先ほど仕掛け直した第一の罠、ワイヤートラップがある。

 気づくかはわからないけどもし気づかないなら何かしらのダメージを与えられるだろう。

 

 きたッ

「轟、止まれ。そこに何かある」

「ん?あぁ、これか。何あっても大丈夫だろ」

 そう言いながら罠を踏む轟。

 罠の起動音である鈴が鳴らされる。このタイミングで僕の個性置換だ。柏手を叩く、発動させた閃光弾を上から落ちてきているビー玉と置き換える。

「危ないっ」

 そう言いながら轟を庇おうとする障子、だが轟は上から落ちてきた閃光弾に対し閃光が炸裂する前に

「――凍れ」

 

 なっ、そんなことが……

 凍っていた。罠で起動した閃光弾。二人の視界を潰しその間に僕で攻めようと思っていたが……

 これじゃあ、ダメだったようだ。

 

 インカムを使い二人に知らせる。

「一個目の罠失敗、一旦後退するね」

「おっけー!」

「わかった。気をつけてな」

 

「すまない、一人動けるのに気づけなかった。だが、一つ言わせてくれ轟!わざわざ罠とわかっているなら避けろ」

「害ないなら無視して進めば良いだろ」

 そう言い争う言葉を聞きながら僕は後退した。

 

 

 

 

 次の罠だ。次は落とし穴である。ヒビの入っていた床の下の階層にビー玉を仕掛けてある。凍ってはいるが僕の個性ならどうにでもなるはずだ。

 あの二人が下に来た時点でビー玉を手榴弾と置き換えれば良い。

 天井に設置する際は尾白くんに手伝ってもらった。流石に僕じゃ届かない。

 

「轟、次は気をつけてくれよ……」

 障子くんは目と耳を腕から生やしながら索敵している。

「……」

 

 

 来た、

 そう、そこだ。あと一歩進んでくれ。

 

 ――――今――――

 

 手元にある手榴弾のピンを抜き、柏手を鳴らす。

「轟!今、何か聞こえ――」

 

 手元の手榴弾は設置されていたビー玉と置き換わる。

 必然、ヒビの入っていた床は手榴弾の衝撃で砕ける。

 それにより二人の乗っていた足場は崩れ、崩れ――

 崩れて、いない――?

 凍っている。崩れ落ちている床がそのまま氷漬けにされていた。

 

「ったく、さっきから小賢しい……」

「すまない、気づけなかった。」

 

「っ、轟そこ!誰かいる」

 障子くんの言葉に轟が視線をこちらに向けると同時に僕は下がる。

 凍っていた。先ほど僕がいた場所は容赦なく凍りついていた。

 

「ごめんバレた。また後退するッ」

 僕はそう言いながらビー玉を床にばら撒く。

「なんだ?」

「なんでも良い、全部凍らせれば一緒だ」

 

 個性を発動させる前に凍らされた。

「ッ」

 先ほどの床の起爆で置換対象が凍っていても個性が使用できることはわかっている。

 だが……いや、まだ不確定のままの方がいい。相手に情報を与えては行けない。

 あっちの方が強いのだから――――

 

 

 

 

 核のある階層まで後退した僕は二人に話しかける。

「僕たち一人一人じゃ、あの二人には敵わない。だから一緒に戦おう」

「うん!もちろん、最初からそのつもりだよ」

「任せろ。最初に動いたきりジッとしてたから、ちょっと退屈してたところだったんだ」

 二人は笑顔でそう言った。

 

 

 

 

 

 二人が核のある四階に上がってきた。

「よくきたね」

 僕は階段の入り口で二人を出迎える。

「あぁ、出迎えありがとよ、つまらねぇ出し物だったよ」

 轟はそんなことを言いながら一歩、また一歩とこちらに近づいてくる。

 

 怖い、氷結相手にどう戦えばいい…

 僕の個性は置き換えるだけ。もし、全身凍ったらどうしようもない。だから、僕は知らない轟くんを信じるしかない、轟くんがクラスメイトを氷像にしないことを。

 さぁ、いこう。僕にできるのは置き換えるだけ。

 相手に個性を使う隙を与えるな。

「尾白くん!葉隠さん!障子くんよろしくッ。戻ってくるまで僕が時間を稼ぐから――」

「うん」

「おう!」

 二人は物陰から出て障子に襲いかかる。

 

「なッ、凍っていたんじゃ」

 そう驚く障子に尾白が一撃を与え、別室に殴り飛ばす。

「凍りそうだったけど、凍ってないよっ!」

「そう、作戦だったのさ。偶然避けれた。また凍らされたら今度は避けられなかったから。せこいけど騙させてもらった」

 

 

 

 二人は無事仕事を果たし障子くんを連れて行ってくれたようだ。

 なら後は僕が仕事を果たすだけ――

 

「……それで、名前……なんて言ったっけ。あぁ、そうだ。置換……だったっけ。俺に対して一人で時間稼ぎ……するんだっけ?」

「うん、そうだよ。二人とも厄介だけど。それでも障子くんの索敵能力は怖いからね」

「無理だろ……お前弱いだろうし」

「そうだね、僕は君に比べれば弱い、弱すぎるくらいだ。だから、だからこそ――――」

 

――――――時間稼ぎだ。

 

 僕はそう言いながらポケットのビー玉を両手に握りしめて空中にばら撒く。

「それはさっき見たぞ……」

 そう言いながらビー玉を凍らせる轟くん。

 

 だけど、これはフェイク。

 僕たちヴィラン側の敗北条件は僕たち三人が捕獲テープを巻かれること。そして、核を確保されること。

 すでに相手はこの核のある階層に来てしまっている。

 そう、僕の個性は置換。

 だからまずはこの核を逃すッ――

 

 手を叩く。

 その音と共に下の階に投げたビー玉の一つと核が置き換えられる。

 

「な、核が……」

「うん、これも僕たちの敗北条件だからね。また隠させてもらったよ」

 

「まぁ、いいだろ、お前ら全員捕まえたらそれで終わりだ。だから……まぁ、なんだ。凍っとけ」

 そう言いながら手をこちらに向ける轟くん。

 

 当然、僕は置き換える。

 ここにヒーロー側が攻めに来るのはわかっていた。

 だから、前もって仕掛けていたんだ。ビー玉をこの階層のあらゆるところに。

 さぁ、まずは後ろだ。いつも通り後ろに行って攻撃を仕掛けよう。柏手の音と共に僕は置き換わる。

 

「残念、後ろだよ」

 僕は後ろから轟くんに殴りかかる。

 直前彼は気づいたけど、遅い――――

 もうすでにそこは僕の射程圏内だ。

 

 僕は右の拳を振り上げそのまま轟くんの胴体に向け捻りこむ。まずは一撃――

 

「ぐっ」

 うめき声を上げながら轟くんはよろめく。

「クソッ」

 そして、そんな言葉と共に手を前に出し個性を発動させる。当然僕は柏手を鳴らし、個性を使用し氷結を避ける。

 

 そして、二撃目だ――

 個性を使用し後ろに回り、今度は左手で背部に打撃を加える。

「ガッ」

 

 いける、これなら、時間稼ぎじゃなくて倒せるかもしれないッ。

「どうしたの?雑魚……じゃなかったっけ」

 僕は個性を使用し轟くんの後ろに回りながら今度は右足を軸に左足で蹴りを仕掛けようと――

 その瞬間、轟くんの口角が上に上がった気がした。

「いってぇ……だけど……」

 

「――捕まえた」

 

 蹴りは当たった。当たったのだ。その瞬間轟くんは自身の蹴られた腹部ごと僕の足を凍結させた。

 

「止まったな?」

 

 やばっ――置換をしなければ――“個性"を――

 カチ、カチ、と氷のぶつかる音がする。

 手を――叩けない……?

 なぜ、何故……?視線を手に向ける。すると手が凍っていた。

 

「置換、お前は“個性"を使う時手を叩くよな?二度の罠の作動時、そしてお前が個性を使う時いつも手の叩く音が鳴り響いていた……」

「だから、俺は考えた。もしかしたらお前の個性は手を叩かなければ使えないのではないか……と。逃げない以上どうやら正解らしいな」

「なん……で……」

「あぁ、次はなんで来る位置がわかったのか?か。二撃両方とも後ろからだったからな、三発目もそうじゃないかと思ったら大正解だ。幸いお前の攻撃は柏手がなった後に訪れる。分かりやすかったぞ」

「さ、あとは捕獲テープを巻いて――」

 

 そうか――そうだったんだ。

 ありがとう轟くん、君のおかげで僕は成長できそうだ――

 

 

 

 

 

 そして場面は切り替わる。

 

「葉隠さん!大丈夫か⁉︎」

「う、うん……まさか、まさか……こんなに強かったなんて……」

 

「体力テストの時のことを忘れたか?俺の個性複製腕は身体の一部を触手から生やすことが出来る。目を生やせば視界が増え、耳を増やせば聴力があがる。手を増やすことでパワーの増強だってできる。」

 

「だけど……だからって!俺だって普通より強いって自負があったんだぞ⁉︎それが……」

「私の位置だって……なんで……」

 

「いかんせん、俺は異形型、この見た目だからな……強くなくてはならなかったのだ。葉隠の方は単純だ、音だよ」

 

「そう……か、異形型個性は、偏見が……」

「あぁ、そうだ。だが同情はしてくれるな」

「音……、どうしろって言うのよ……」

 

「いいや、まだだよ、葉隠さん。まだ終わってない。置換だってまだ戦ってる。音がするだろう?」

「うん……なら、諦めてなんて入れないねッ!行こう、尾白くん‼︎」

「おう!!」

 

 障子くんは守護者のように両手を広げ私たちを出迎える。

「来いっ‼︎」

 

 走って障子くんに迫っていた尾白くんが尻尾を使い跳ねる。

 そこで尾白くんに視線を向けられたところで……私は

 インカムを外し私が行く方向とは反対に投げる。

 声は出さない、障子くんに情報をあげちゃうから。

 

 コンコンっとインカムが紙面とぶつかり音を出す。

 ――気になるよね、戦いの最中だもん。変な音がしたらそっち向いちゃうよね。

 かなり耳は良さそうだったのだ。ビル外から内側の音を聞き分けられるくらいだ。

 だから、私は複製腕で作られたその耳元に辿り着き――すぅぅぅぅぅうと思いっきり息を吸い

「わっっっっっっ‼︎‼︎」

 大声を出す。

 

「――――――ッ」

 そうだよね、障子くん、かなり耳いいんだもんびっくりするよね。そしたらさ、尾白くんに対する警戒なんて緩んじゃうよね。

 

 当然、そのチャンスを尾白くんは逃さない。

 彼は武闘家だと言っていた。卑怯なのはわかっている。でも、武道とは弱者が強者に勝つためにたどり着いた手段。

 だから、この隙に与えられる一撃は何より重い。

 

「ありがとう、葉隠さん。そして、悪く思わないでくれよ、障子」

 尾白くんは左手を伸ばし、右腕を引く。

 次の瞬間、左手を捻りながら引き、右腕を捻りながら前に突き出す。

「――正拳突き」

 その一撃は障子くんの鳩尾に突き刺さった。

「ッ、ッ……ぐッ……」

 

 障子くんは鳩尾に手を当て膝をついた。

「…ガッ…………」

 

「やったね!尾白くん!」

 私はそう言って尾白くんに駆け寄る。次は轟くんだ!

 そう言おうとした瞬間

「まだ、葉隠さん‼︎まだ終わってない‼︎」

「……そう……まだ、まだだっ……」

 その言葉を耳にすると同時に私の目の前には白いテープが広がっていた。

 

「……確保……」

「うっそぉ……確保されちゃった……」

 

 

 

 悲しいけど、捕まった以上この訓練に参加はできない。なら、この二人の戦いを目に焼き付けて今後の糧としなければいけないだろう。

 

 膝をついていた障子くんは重そうに身体を起こす。

「いい……一撃だった……」

 

「終わってないって……自分で、言ったけどさ。マジかよ……全力の正拳突きが入ったんだぞ」

 尾白くんは驚愕を浮かべている。

 障子くんが立ち上がったのを見ていつまでも驚いてはいれないと思ったのだろう。尾白くんは自分の頬をパンと一度両手で叩き

 「けどさ、ダメージはあるだろ。障子、こっから先がほんとの勝負だ」

 障子くんにそう言い放った。

 

「……」

 障子くんは喋るのも辛いのだろう、無言のままだ。

 

 尾白くんが障子くんに向かって駆け出すのと同時に障子くんは触手から手を生やし迎撃の準備をしている。

 

 先手は障子くんだ。増強された腕力での一撃、それが尾白くんに向かって突き進む。

 尾白くんはそれを、尻尾を地面に跳ねさせ跳躍することで回避する。そのまま障子くんの真上に行ったと思えば、足を天井につけ蹴り付ける。必然、それは上空からの落下攻撃。脚力と重力を味方につけた一撃となる。

 

 ギリギリ間に合ったであろう障子くんの防御と尾白くんの拳がぶつかった瞬間、階層全体に衝撃が響き渡る。

「くっ……」

「ぬ……」

 

 尾白くんは落下攻撃による自傷ダメージ、障子くんは防御したとはいえ落下攻撃によるダメージ、どちらもダメージを受けているのか、ふらついている。

 

 

 

 ――あ、気づいてしまった。

 尾白くんに捕獲テープが巻かれたことに。

 

「いってぇ…だけどまだ……」

「えっと、尾白くん、私たちの負けだよ……捕獲テープ……巻かれてる……」

「え……いつの間に……?」

 

「あぁ……あの一撃の最中巻かせてもらった……」

 

 そうなのだ。あの落下攻撃の最中、障子くんの触手から手を生やしそのままテープを巻きにかかっていたのだ。

 この勝負は戦闘で勝てばいいわけではない。捕獲テープを巻かれた時点で終わってしまう。つまり、勝利条件をちゃんと認識していた障子くんが一枚上手だったのだ。

 

尾白くんは頭をぽりぽりと掻くと

「あー……悔し……、そりゃそうだ。格闘技の試合じゃないんだから……そうなるなぁ……」

 

 反省する尾白くんに対し障子くんが言った。

「だが、葉隠との連携、そして二発ともいい攻撃だった……俺も動けん……」

 

「そっか、そっか、ならまぁ……しゃーない。次は勝たせてもらうよ障子目蔵」

「……」

「尾白くん、尾白くん、障子くん。気絶してる……」

「マジかよ……最後の気力でやったってことか……ほんとすっげぇな。障子……」

 

 

 

 

 

 場面は置換対轟に舞い戻る。

 「さ、あとは捕獲テープを巻いて――」

 轟くんがそう言うと同時だった。

 

 そうか――そうだったんだ。

「ねぇ、轟くん、知ってる?」

「?」

「僕の尊敬する人曰く、拍手ってさ、魂の喝采なんだって」

「?」

「ありがとう、僕の全身を凍らせないでくれて。君を優しさを信じてよかった」

「ッ⁉︎」

 その瞬間、僕を凍らせようとしたのだろう。

 しかし僕の方が速い。

 

 僕は凍ったままの両手を広げ胸元でぶつけ合わせる。

 そう――拍手とはそれ即ち――

「魂の喝采ッ!!」

 

 個性の発動。別に手を叩かなくても個性は使えるんだ。ただ、調整が効きにくいだけで。

 ぶっちゃけ、あの台詞は言いたかっただけ、かっこいいじゃん?あの台詞。

 そう、それにそうすることで僕の個性の発動条件を疑わせることができる。直接手を叩かなくても発動できるのでは……?と。

 

 僕はその場から消えていた。

 僕のいた場所には一本の氷柱が聳え立っていた。

 先ほども言ったが手を叩くと言う行為は個性の調整のための行為。だから必然、それをしなければ……

 こう言うことも起こりうるってだけの話。

 

 置換は成功した。でも、置換先が悪かった。下り坂になっている氷の上。置換された際加速度は零になるとはいえ、どうしたって重力の影響は受けてしまう。

 さらにもともと片足を上げた状態で置換していた。それも悪かった。バランスが取れてない状態での下り坂、しがも凍っているんだ。

 

 ――あとは、もう、わかるだろう?

「あ、ガッ、グ、ぐぺ……きゅう……」

 僕は落ちたさ、転がり落ちた。そのまま頭を打って気絶したさ……

 この訓練は負けたけど気づきは得たよ。

 だから、無駄じゃない……

 でも相変わらず最後締まらないなぁ……また気絶してるし……僕。

 

「…………は?」

 轟くんは攻撃に備えていたのだろう。しかし、攻撃はされることはなく、事実としてあるのは三メートルほど離れたところに倒れている置換だけ。

 

 捕獲テープ巻けばそれで終了だ。

 

 

 なんともいえない表情で置換に捕獲テープを巻き訓練は終了した――

「ヒーローチーム!Wiiiiiiin‼︎!」

 少し気の抜けたような、そんなオールマイトの勝者宣言がビル一帯に響いた。




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