推しのために死に続ける話。   作:三つ首黒虎

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お待たせしました。
いつもより少し早めですが、どうぞお楽しみいただければ幸いです。




79話 喪失と決意

 

 

 目が覚める。

 辺りは白い空間に包まれていた。

 

  ――ッ

 

 額にずきりとした痛みを覚える。

 同時に身体から何かが離れ……

 そして……何かが僕の中から失われたのを感じた。

 

 ……帰って、きた……?

 

 自身の身体に力を込めて拳を握った。

 

 身体が、動く、痛みも感じる。

 ――帰って来られた。

 

 冷や汗が背中を伝う。

 

 僕の、最後の記憶は――

 

 

 

 そうだ、カイ……

 

 ねぇ、カイ……?

 

 冗談……やめてよ、いるんでしょ……?

 

 ……カイっ……カイ!!どこ行ったの!!

 

 返事がない。いくら呼んでも、叫んでも何も返ってこない。

 

『――隷』

 

 ――カイ!!

 

『俺だ、アイツは……』

 

 鬼人……ねぇ……カイは、どこに行ったの……?

 

『アイツはお前を助けるために逝ったんだ』

 

 助ける、ため……?何いってるの、ここに、僕の中にいるんじゃ――

 

『もう……いねぇよ……

 ……個性を封じる科学、そんなんを簡単に見つけられるわけねぇじゃねぇか……』

 

『お前が苦しんでるって知って、あいつは別の世界を見続けたんだ。何百、何千の世界の今を――』

 

 ……カ、イ…………

 

『全てはお前を助けるために、苦しんでほしくないから……』

 

 僕、を……

 

『あいつが言うには世界には壁がある。

 ただ……魂だけならそれをすり抜けられた』

 

 なら……なんで……!!

 

『……あいつにゃ、言うなって言われてたが……

 ま、ノーカンか――代償があったんだよ』

 

『なぁ……隷、あいつの個性で不思議に思う事はなかったか?

 なぜ、最初にあった時に腕を爆発物に変えられたのか、なぜショッピングモールで会った時に視界を奪われたのか』

 

『あぁ、前者はまだしも後者なら観測の個性があったから……と言えるかも知れねぇ。

 だがよ、前者は?どうやって腕を爆発物に変えるんだ?』

 

 ……そ、れ……は……

 

『あいつが、他世界を見て他の技術を持ってきていない、となぜ言える。

 そして、それを乱発しない理由はなんだ?』

 

 そんな、の……ちが……う、カイはいる。

 死んでなんて――

 

『いつまでも逃げんなよ、隷。

 単純だ。

 ――やってはいけなかったからやらなかった』

 

 ――――っ。

 

『なぁ、隷……そうは思えないか……?』

 

 …………

 

『そもそも、俺があいつを治そうと取り憑いた時もアイツの魂は、崩れかけだった。

 あそこまでぼろぼろだったんだ。肉体にも支障は出ていたんだろうさ』

 

 ――そ、れは……

 

『隷――お前は、何を託された』

 

 

 っ――!!

 カイ、は――……。

 

 ♦︎

 

「ちゃんと、救ってあげろよ……隷、くん」

 

 

「……つぎは、キミの番だ――」

 

 ♦︎

 

『なぁ、お前は誰を救うんだ――?』

 

 ぼ、く……は――

 

『あいつは、満足して逝ったよ……

 おれが見たんだ間違いない』

 

 ぼく、は……

 

『で、お前はうじうじとしてる――と。

 じゃあ、あれだな……あいつは無駄死にだな』

 

 無駄死に……なんて――!

 

『――なら、てめぇはいつまで下向いて蹲ってんだよ。

 命を賭して隷を救ってそれの結果がこれか――?』

 

『とんだ――無駄死にじゃねぇか』

 

 無駄死に……なんて……

 

『なぁ、隷。

 その身体よこせよ、俺が上手く使ってやる』

 

 ……鬼、人が――?

 

『先公だって救ってやるし、友達だって、みんなだってそう……

 お前の個性ならそれくらい余裕なんだよ』

 

 ――あぁ、確かに。

 

『終わったら身体も返してやる、それでいいだろ――?』

 

 それも、悪くないのかも――

 

『出来ねぇわけがねぇ。

 お前は心が折れない限り何度でも挑戦できる。

 ――永遠にだ、求める結果を得るまでずっと繰り返せる』

 

 永遠、に――

 

 ♦︎

 

 僕の名を呼ぶ。

 

 尾白君が――

 

「よ、置換」

 

 葉隠さんが――

 

「置換くん!」

 

 

 カイが――

 

「隷くん!」

 

 睡さんが――

 

「あら……どうしたの?

 置換くん……?」

 

 

 ♦︎

 

 脳裏に記憶が蘇った。

 みんなと関わった記憶、みんなが僕を呼んでくれた記憶だ。

 

 

 ……いや、だ。

 僕は、観ているだけなんて耐えられない。

 確かに救えればいい、そう思う。

 

 だけど、それでも、いつか救われるからってみんなが死んでいく様をただ観続けていられるわけがない。

 

 ――僕は傍観者じゃなくて当事者にならないといけない。

 

『どうだよ、隷。

 悪くねぇ提案だろう?』

 

 鬼人、そうだね。

 悪くないかもしれない――でも。

 

『んだよ』

 

 君の言い方は……何度だってみんなを、友達を、睡さんを見殺しにしていいって、見殺しにするってことだろう?

 

『あぁ、そうだな。

 そうする方が効率がいい』

 

 なら――僕はそれを許容できない。

 例え……効率がよかろうと、

 みんなにとってはただ一度の人生なんだ。

 何度僕が繰り返したってそれは変わらない。

 その人の根本は一緒なのかもしれない。

 でも、そのみんなと過ごした時間はその人たちだけのもので、戻った世界のみんなとは何の関係もない。

 

  

『……』

 

 だから、僕はそれを許容できない。

 僕が救う。

 僕が僕の意思で少しでも犠牲を減らすんだ。

 

『――ハッ。

 そうかい。じゃ好きにしろや』

 

 うん……そうさせてもらう。

 ――ごめんね、言わせたくないこと言わせた。

 

『……気にすんな、それがダチってもんだろ』

 

『……そろそろ限界か……

 んじゃ、最後に忠告だ、隷』

 

 ――?

 

『梢との戦いについてだが……

 怒りに呑まれるな、そして絶対に殺すな』

 

 なにを――?

 

『いいか、怒りに呑まれると殺意につながる。

 そして殺すとお前の中の鬼が目覚める。

 だから自分を律せ、確固たる意思で闘え――』

 

 鬼、人……?

 

『俺にゃ、出来んかったが……お前なら……ま、何とかなんじゃねぇの――』

 

 その声を最後に鬼人の声が掠れて消えていった。

 

 どういうこと――!?

 ねぇ、鬼人……!!!

 

 ……鬼人の返事はなかった。

 でも、まだ僕の中にいるのを感じる。

 

 だから今はそれから目を逸らしてこれから始まる梢との戦いに目を向けた。

 

 ――一人、か。

 当たり前なのになんか、寂しいや。

 

 僕の中でカイが、鬼人がいつもわいわいやってたからなのかな……

 

 でも、まだだ。

 終わってない、始まってすらいない。

 

 まずは、個性の確認だ。

 置換の個性……うん、使える。

 観測の個性が……あ、れ……?

 

 道路を歩いていた人に視線を向ける。

 今まではっきりと見えていたそれ、魂の輪郭とも呼べたそれは――朧げだった。

 

 輪郭が薄く、焦点が合わなかった。

 まるで、合わないメガネを掛けているようだ。

 

 ……でも、使えるだけ上等だ。

 朧げでも魂の輪郭は見えるから人同士の置換もできる。

 

 影の個性も……動く。

 再生の個性……問題ない。

 力の個性……少し、弱い……?

 

 いや、これはむしろ持て余していたくらいだから問題はないか……

 

 でも、なんで――?

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 ――さぁ、時間だ。

 このくらいの時間でスマホに――あぁ、やっぱりそうだ。

 

 

 スマホから着信音が響く。

 ポケットから取り出しスマホの画面に視線を向けた。

 

 尾白猿夫

 

 その文字がスマホに表示されていた。

 

 ……来た……

 

 指が鉛のように重い。

 やっとの思いでスマホの画面をスワイプして電話に出た。

 

『――たでた。大丈夫か?すぐ出なかったけど……』

「……。うん、ごめんね、ちょっと掃除しててさ。

 手を洗ってたんだ」

『そっか、ならよかったぜ。ぼちぼち事務所に――

 あ、いたいた』

 

 電話がぷつりと切れると外から微かに声が聞こえてきた。

 

「――い。置換ーー!」

「置換くーーん!!」

 

 振り返ると車の窓から少し離れた位置でまるで手を振っているように上下に動いている手袋…葉隠さんと小さく揺れている尻尾が見える。

 

 さぁ、どうする。

 思考を回せ、置換隷。

 

 ここに来るヴィランは梢と……もう一人の脳無――影人だ。

 

 

 目前に車が止まった。

 確認できるのは三名だ。

 運転席に梢、後部座席に尾白君と葉隠さんだろう。

 

 敵の姿を焼き付けようと、運転席の梢を見た。

 それと同時に後部座席から二人が出てくる。

 

「よ、久しぶり」

「やっほー!元気そうでよかった」

 

 いた、あれが……梢……?

 運転席に座っているものがいた。

 僕にはそれが人には見えなかった――

 

 そう、それは僕にとって蟲だった。

 僕から大切な物を奪う害虫。

 悪、悪で、敵である――蟲がそこにいた。

 

「――お、元気そやなぁ……れ――」

 

 蟲の顎がカタカタ動いたと同時に視界が赤く染まる。

 憎しみが、怒りが、恨みが僕の中から……いや、どこからか流れ込んでくる。

 

 額にずきり、と痛みが走った。

 

 

 ♦︎

 

『んじゃ、最後に忠告だ、隷』

 

 ――?

 

『梢との戦いについてだが……

 怒りに呑まれるな、そして絶対に殺すな』

 

 ♦︎

 

「――ッ」

 

 そう、だ。鬼人は……なんで言っていた……?

 

 ♦︎

 

 『いいか、怒りに呑まれると殺意につながる。

 そして殺すとお前の中の鬼が目覚める。

 だから自分を律せ、確固たる意思で闘え――』

 

 ♦︎

 

 そう、怒りに呑まれてはいけない、と……

 そう言っていたはずだ。

 

 僕は、赤く沸騰した視界を閉じて一度息を吸った。

 そして――蟲を……梢を、殺さぬよう、力を弱めて――前方に投げ飛ばした。

 

 二人の悲鳴が耳に入ったが今はアレから視線を逸らせない。

 

 車と共に投げ飛ばされた梢は土煙に包まれている。

 

「――ガハっ、ゴホッ、ゴホッ……」

 

 何度か咳き込むと声が聞こえた。

 

「――なんや、今回は……殺してくれへんの……?」

 

 ――ッ。

 なにを、言っている……?

 こいつは、何を――

 

「――なん、で……」

 

「ゴホっ……あんさんの、声な……心地よかったから……また、聞きたかった、んけどねぇ……残念やわぁ……」

 

「どういう――」

 

 こと……僕がそう口に出す前にアレは答えた。

 

「……あらら?気づいてへんかったん?

 それは、勿体無いことしたなぁ……」

 

 畳み掛けるように言葉が続く。

 

「言ったやろ?うちの個性は共鳴。

 ただ、うちはあんさん――隷くんに同じものを共鳴させただけ」

 

「――共鳴」

 

「不思議に思わんかった?

 隷くんは、そんなにすぐ人を殺せるほど……怒りに任せて人を殺せるほど……強くないやんなぁ……?」

 

 そう……僕はそんなに好戦的では、ない。

 そこだけが引っかかっていた。

 だからこそ、梢を殺せる場面でしくじり、あの未来に至ってしまったのだから……

 

「なら、単純な話やな?

 隷くんはなぁ……?うちの脳と共鳴した、だけなんよ」

 

 脳、と――共鳴。

 なんで、僕はあいつの個性なんて――

 

「あはっ、今うちの個性はくらってないはず……なんでも思ったやろ?

 いやいや、くらってるでずぅぅぅっと……

 だって、ずっとうちは君のそばでみてたんやから――」

 

 なにを、言っている。

 こいつは――

 

「隷くんの中にはカイがおったなぁ……?」

 

「なに、を――」

 

「えーと、鬼の子と……あぁ、シャドウもおったか」

 

「おま、えは――何を」

 

「でも、やっとカイ消えてなぁ?

 嬉しかったわぁ……隷くんがさらに壊れるって――」

 

「お、い――なにを――!!」

 

「なのにあいつ……余計なことしやってからに……」

 

 コレは、さっきから何を、まるで僕の中に居たみたい――

 

「はぁ……白けた……と思ったんけどな……?

 でも……まぁ、キミが壊れそうなのみててゾクゾクと……思わず、達してしまうかとおもたわ――」

 

 

 ――居た、?

 何かずっと違和感がなかったか――?

 僕が戻った直後、いつも身体から何かが抜ける感覚――

 そんなものが、なかったか……?

 

 いいや、あった。

 ……あったはずだ。

 あいつは……ずっと僕の中に居た?

 僕の脳をおかしくして、人を……みんなを殺させた……?

 

 ふざ――

 

「――えぇねぇ。その表情――

 最高に、唆るわぁ――」

 

 ――違う。

 怒りに呑まれたとはいえ、僕が最初に殺したからだ。

 今みたいに梢を殺さなければ……ああいう結果にならなかったかもしれない。

 

 僕は見ているだけだった。

 だからと言ってそれを人のせいにしてはいけない。

 そう、最初に殺したのは僕でその結果の破滅。

 

 ……そう、だよね。

 アレは、僕の罪だ。

 例え、狂わされようとも……

 どうあってもアレは僕の罪――だ。

 

 だからこそ、次は間違えない。

 間違えちゃ、いけない――

 

「ありゃ……その表情はあんまり好かんなぁ……」

 

 一度表情が曇った梢だったが、すぐにその表情を持ち直した。

 

「――ま、ええか。

 何度やっても死ぬのは痛いし、今回は隷くん殺して次いこか」

 

「どういう、こと……」

 

「ほんま、ズルいで、隷くん……

 巻き戻りなんて使ってたなんて……勝てないやんか……」

 

「なんで、お前がそれを――!!!」

 

「はぁ……さっきも言ったやろ?キミん中に居たって。

 んなら、問題ですわ……うちは、いつから、キミの中んに居たんでしょう――?」

 

 いつから、だ。

 いつから僕は敵が変に見えるようになった?

 いつから僕は……

 

「ま……さか……」

 

 ……まさか、僕が、影に落ちた時……から……?

 

「影に、閉じ込められた……あの時――から、か……?」

 

 梢の口角が大きく上がった。

 

「だい、せい、かぁい!!」

 

 なんで、僕はあいつの個性なんて受けてな――

 

「うちは、隷くんがうちに攻撃した時に個性を使ったんや」

 

 あの、時だ――

 僕が、影に堕ちることになったきっかけ、

 そして、本来であればこの直後に起きる事象……

 

「そりゃ、うちも死ぬおもたさかい、足掻けることは足掻くやろ?

 だから、うちの個性共鳴を使った」

 

 でも……なんで共鳴を――

 

「……まだ信じてたんか。

 ……ダメやよぉ?ヴィランの言うこと信じちゃダメやって教えてあげたんけどなぁ……」

 

 共鳴の個性について嘘をつかれていた……?

 

「僕を……騙したな……?」

 

「ほんま、物分かりの悪い子やの……

 騙してなんかおらへんよ。嘘をつくなら本物を混ぜた方がバレにくい、ただそれだけや――」

 

 ……本物を混ぜる……?

 共鳴の個性は記憶を読める……これは事実。

 それなら、まだその先が――ある。

 

 

「そもそも……共鳴という個性で何故、記憶が読めるのか僕は不思議だった」

 

 そう、それが嘘でないとするならば記憶が読めたという事実は――

 

「それは結果じゃなくて、過程だった――?」

 

 梢の笑みがより深くなる。

 

「あはっ――またまた大正解や」

 

「そや、共鳴で記憶が読めるのはうちとその人の心が、魂が重なり響き合うから。

 せやからうちはその人の記憶が読める」

 

「この個性の本質はな……?

 その相手と同じになれることや」

 

「同じ、に――」

 

「当然相性ってもんもある。

 せやけど、例外は何事にも存在する――」

 

 共鳴の個性、同じになる。

 梢が僕の精神を傷つけようとした理由、松戸の恋人の身体……

 ――全てが繋がろうとしていた。

 

「お前は、身体を奪える」

 

 梢は当然のように返事を返す。

 

「そやな、この身体やて、うちの身体やない」

 

「お前が、身体を奪えるのは条件がある」

 

「そや、奪うためには条件がある。

 それが分かったんか――?」

 

「おまえ、は――その人の精神を破壊することで……その身体を無理やり乗っ取ることが、出来る」

 

「ほんで?」

 

「だから、僕をあの二人に襲わせた。

 友達に殺されかけたなら僕は絶望感に浸る。

 もし、あの二人を僕が殺したならそれはそれでいい。

 付け入る隙ができるから――」

 

 

「――上出来や」

 

「そう、隷くんの個性にはずっと目をつけていたんよ。

 アレがあんなに執着する人物の個性、生半可なものじゃないはずや……ってな」

 

「事実そうやった。

 置換、観測、影、力、再生、少なくとも今んキミん中には五つと……うちの個性共鳴が混ざっとる」

 

「なら――そんな個性を持つ身体を使えるならうちは……もっと長生きできる」

 

 梢が静かにそう呟くのと同時に……

 こちらに近づく足音が聞こえた。

 

「――なぁ」

 

 尾白くんが僕達に……梢に近づこうとしている。

 

「お前達は……何、言ってるんだよ」

 

 ――ダメだ、尾白くん。

 

「殺しただの死んだだの……」

 

 そいつから、離れて――

 

「……意味、わかんねぇよ……説明――」

 

 尾白くんが梢の肩に手を置いた瞬間。

 

「いややぁ、ごめんな?忘れてたわ……」

 

「ただ……一つええか……?

 ……蟲がうちに、触んな――」

 

 僕は彼と入れ替わっていた。

 同時に衝撃。梢の影に僕の右腕が捩じ切られた。

 噴き出た血が梢に降りかかる。

 

「――っぐ……」

 

 痛い……けど耐えきれない程じゃない。

 

 梢は目を細めると頬についたそれを舌で舐めとった。

 

「おっと……ついやってもうた……

 ……ごめんなぁ?隷くん……痛かったやろ……」

 

 ……そんなこと……思ってない、癖に――

 

「――置換!!

 ご、ごめ……おれ、そんなつもりじゃ――」

 

 

「だ、いじょう、ぶ。

 痛いのは、慣れてる……それに――」

 

 僕の右腕は逆再生するかの様に元の形を取り戻した。

 地面に散った血液はそのままに僕の腕は再構成された。

 

「二人は――逃げて――!」

 

 置換を使い二人を遠くの車体と置き換えた。

 

 

「――へぇ……外から見るとそうなってるんやなぁ……

 その個性、シャドウのやつやろ……?」

 

「……なら、やりようはあるんよねぇ……」

 

 梢は僕に向かって足を進める。

 余裕を持って、まるで簡単に殺せるとでもいいたげに――

 

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