推しのために死に続ける話。   作:三つ首黒虎

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お久しぶりです。
やはりあれですね、無意識に呪術が…僕の脳を侵食するようで。
ハイ、細かいことを読んでいただければ察していただけるかと。

それでは、どうぞ。
お楽しみいただければ幸いです。


91話 闇に差し込む光

 

 時間を跨ぐ僕の心には絶望の奔流が流れ込む。

 

 何度も死んだ記憶があった。

 

 友達を殺した記憶があった。

 

 他人を……ヴィランを蟲のように鏖殺した記憶があった。

 

 あの人が死ぬ記憶があった。

 

 裏切られた痛みがあった。

 

 仲間が死んだ瞬間があった。

 

 自分の弱さへの嫌悪があった。

 

 戦うことへの恐怖があった。

 

 世界の理不尽があった。

 

 自分の無力感があった。

 

 自分が“ニセモノ”である自覚があった。

 

 全てがぐちゃぐちゃに混ざり合ってまるで世界が真っ暗になる。

 心の中に……痛みと絶望と、苦しみと辛さが溢れている。

 心が折れそうだった……いや、もうほぼ折れている。

 ありとあらゆる黒い感情が心の中で渦を作り僕を引き摺り込もうとする。

 

 堕ちて仕舞えば楽なのだろう。

 壊れて仕舞えば楽になれるのだろう。

 そんな誘惑が僕を誘う。

 

 だけどそれはできなかった。

 

 暗闇にも差し込む光の中にそれはあった。

 みんなの想い、願い、希望。

 確かに僕を照らしてくれる。

 それでも、一歩足りない。

 その絶望感を拭うには何かが足りなかった――

 

 ――僕の心は折れようとしていた。

 

 

 ……ふと納得をした。

 こんなものばかり押し付けられたから白いあの場にいたオリジナルは壊れてしまったのだと……

 

 明るい記憶を体験した僕で尚潰れる重圧、

 絶望に常に潰されていたオリジナル。

 なら、その明るい記憶がないのに……

 彼は何を心の頼りにして意思を繋ぎ僕を救ってくれたのだろうか――

 

 

 彼の願いは二つしかなかった。

 推し――ミッドナイトを救うこと。

 そして、微かに残った意思、あの漢への憧れ。

 

 前者は世界が違う故に救えなかった。

 どれだけ願っても正史は確定している。

 

 後者は……勇気がなかった。

 友達もおらず、ただ家に引き篭もるばかり。

 彼への憧れこそ抱いても、二十数年引き篭もった彼には家から出る一歩を踏み出せなかった。

 だから、強い憧憬だけがあった。

 

 カミサマの言葉で彼女を救えるかもしれないと知った。

 そして、人生をやり直せるかもしれない……と気づいた。

 

 ……実際はそんなことはなかったけど。

 神様にオリジナルをこの世界に入れることは出来なかった。

 僕のようなニセモノに記憶を転写して送り込む。

 

 それでも、オリジナルにとって僕は救いだったのかもしれない。

 自分の記憶、過去を持つものが推しと出会い、会話して、一緒に日常を過ごし、助けることが出来るかもしれない。

 それに、現実では果たせなかった彼への憧憬……それに手が伸びるかもしれない……と思ったから。

 

 そう、オリジナルの原初の憧れ。

 その憧れ故に僕に強く刻まれた記憶。

 

 あぁ、絶望的な状況でも彼がいれば何とかなる。

 そんな希望を見せてくれた背中……

 オリジナルにとってのヒーロー――東堂葵の言葉が僕の中に蘇った。

 

 コレは虎杖にかけた言葉。

 ――絶望の底にいた彼に東堂葵がかけた救いだ。

 

『ブラザー……オマエ程の漢が小さくまとまるなよ。

 俺たちは呪術師だ』

 

『俺と、オマエと!!釘崎!!Mr.七海!!

 あらゆる仲間、俺たち全員で――呪術師なんだ!!』

 

『俺たちが生きている限り、

 死んでいった仲間達が真に敗北することはない!!』

 

『散りばめられた死に意味や理由を見出すことは、

 時に死者への冒涜となる!!

 ――それでも!!』

 

 

『――オマエは何を託された?』

 

 

 

 彼は東堂の背中に憧れていたはずなのだ。

 誰よりも誰よりも憧れて、でも自分は推しを助けられなくて。

 代わりに意思を継いだ僕がこの……僕のヒーローアカデミアという世界に降り立った。

 

 オリジナルは僕を何度も助けてくれた。

 タイムリープはオリジナルが起こしてくれていた。

 あの視点だからこそできる個性の使用。

 

 ――決して僕がやっていたわけではなかった。

 だからこそ、オリジナルの最後の願いを僕は叶えなくてはいけない。

 ニセモノだとしても……いいや、ニセモノだからこそ。

 本物から託されたものを、願ったことを叶えなくちゃいけない。

 ――例え、僕がどうなろうとも――

 

 

 

 だけど、オリジナルにはなくて……

 僕にはあった記憶。

 

 

 ――そこには光が差し込んでいた。

 

 願いがあった、世界を超えてなお叶えたい願いが。

 優しさがあった、どれだけ壊れていても友人を大切にした優しさが。

 光があった、その人を見るだけで、話すだけで満たされる優しい光。

 祈りがあった、彼女の幸福だけを願うそんな眩しい祈り。

 

 どれだけ絶望に包まれても確かにそこに光はある。

 弱々しくても、消えかけていても、それでも確かにそこにあった。

 それを僕は識った。

 

 どれが欠けても僕は立ち直れなかった。

 推し、親友、恩人、そして――東堂葵。

 

 いいや……今も立ち直ってはいない。

 折れたまま立ち上がっているだけ、

 それでも……

 

 『――オマエは何を託された?』

 

 別世界のカイに一泡吹かせろと個性を託された。

 だから僕は観なくちゃいけない、その願いを無駄にしないために。

 

『いつか……このクソ野郎に、一泡吹かせてくれるって信じてる』

 

 鬼人に、僕の生涯最高の親友に俺は楽しかった、

 満足だって言葉、祈りと個性を託された。

 だから僕は鬼のように力強く生きなければいけない。

 

『だから、振り返るな、前を向けって言ってんだろ……』

 

 

 この世界のカイに人を救った事実とその個性を託された。

 だから僕はカイを救ったみたいに他の人に手を触れ救わなくちゃいけない。

 

『キミは間違いなくこの世界で一人を救ったんだ。

 俺と言う一人の女を絶望の底から救い上げてくれたんだ

 だから、ありがとう。

 キミに会えてよかった――』

 

 

 僕は……

 

 あの人の笑顔が僕の脳裏をよぎった。

 

 僕は――!!

 

「――それでも……

 僕は……願いを、祈りを……託された――!!!」

 

 それに――

 

 世界が照らされる。

 闇に光が差し込むように、世界は暗いものだけではなかった。

 絶望だけではなかった。

 どれだけ辛くとも、希望が確かにそこにあったのだ。

 

 僕がタイムリープの終着点に達した時、

 知らない記憶が頭の中に流れ込んだ――

 

 

 誰かの記憶……これは“僕”じゃない。

 

 ――誰の……?

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 ……これは、なに……?

 女の子……小さい、小学生……くらい……か?

 

 わたしはひとりだった。

 ひとりぼっちでつらくて、さびしかった。

 でも、おや?ってのができるって。

 

 みんなやさしかった、

 おかあさんもおとおさんもおばあちゃんも……

 でもね、じこ?ってやつでおかあさんとおばあちゃんいなくなっちゃった。

 

 それからおとおさんひとりでわたしのめんどうみてくれてたんだけど……

 きゅうにむしするようになったの……

 かなしいからなんでってきいたらたたかれた……

 おとうさんきらい。

 

 きょうはこせいのけんさ?につれていかれた。

 でもむこせー、なんだって。

 

 おとーさんがわたしをたたく。

 いたい、やめて、なんで、

 へんなにおいのするののんでるし

 口にぼうくわえてからけむり?はいてるし……

 しらないにおいさせてかえってくるし……

 なんでそんなことするんだろう……

 

 おとーさんが、わらってる。

 きょうはおじさんのいえにいってっていわれた。

 まえみたいにやさしいおとーさんだった。

 ずっとこんなおとーさんならいいな。

 

「ねぇ、◼️◼️。

 おとーさんお願いがあるんだ、聞いてくれるかい?

 知り合いのおじさんがね、◼️◼️に興味があるんだって……

 いってくれるかな……?」

 

 すこしいやだったけど、おとーさんがこのおとーさんがずっといるためだとおもってがまんする。

 いたいのはいや、

 

「うん」

 

 おとーさんはなにかかみをぺらぺらとめくってる。

 ……あれはなんだろう?

 

 でも、やさしいおとーさんがかえってきたからおねがいきかないと。

 

「いってきます」

 

 

 おじさんにあうと、べっどにねかされた。

 やめてやめてっていってもむりやりしばられて……

 はりをさされてちをぬかれた……

 そのひはそれだけだった。

 

 まわりからしくしくとなくこえがきこえる。

 

 つぎのひもはりをさされた。

 こんどはからだになにかいれられたみたい。

 

 あたまがいたい。

 からだがおも――

 

 それから何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も永遠に続くような地獄を味わい続けた。

 

 励まし合った子もいたけど、私を売って自分だけ助かろうとする。

 そんなことを繰り返していると、

 人を助けようとか……信じようというのが馬鹿らしくなった。

 

 私が血を出しても、手が腐り落ちても、

 泣いても、叫んでも、誰も助けてくれない。

 

 ふと気づいたのだ。

 私は捨てられたのだ、売られたのだと。

 母も祖母も私を置いて死んだ、

 父は私に暴力を振るい売った。

 ――人は信用ならないものだと。

 

 その後もずっと実験を受け続けた。

 ……だけど、それでも私は死ななかった。

 

 個性が覚醒した。

 ある日共鳴という個性が使えることに気づいた。

 

 

 最初の共鳴は自分から使ったのではない。

 隣で苦しんでいた少女が言った。

 

「ちょうだい、それ、ちょうだい」

 

 みんなはそう言って私を笑顔で囲む。

 

「――どうして、みんな私を見て笑ってるの。

どうしてみんな苦しんでるのに、私だけすぐ治るの……?」

 

 私の中に小さなそんな疑問を残して。

 そして思った、

 これは……本当に人なのだろうか。

 自分の痛みすら無頓着でただ意味もなく死んでいく…

 そんなの……まるで蟲じゃないか……

 

 私は生きた、生き延びた。

 後から思えば実験が終わるまで無意識に周囲の人間に病の、痛みの押し付けを繰り返したのだろう。

 だから私は生き残った。

 

 それでも身体は限界だった。

 病を押し付けたとはいえ身体の体力は戻らない。

 欠損部位は戻らない。

 

 だから羨んだ。

 ずるい、ずるい、あなただけ健康なんてずるい。

 

 その職員は私に優しくしようとしていた。

 何か目的があるのだろうと思った。

 可哀想、可哀想、助けてあげるからね……とことあるごとに言っていた。

 

 だから"助けてもらった"。

 身体をもらった。

 

 数年振りの健康な身体。

 痛みもない、重くもない、関節も痛まない。

 腕が動かせる、足で歩ける。

 

 小さい頃当たり前にやっていたことがどれだけ素晴らしい事だったのか気づいた。

 

 身体を動かしていると辛そうにしている自分の身体が蠢いていた。

 

「ご、めんね……こんなに……つらかったんだね」

 

 何か言っている。

 理解できない、

 捨てたとはいえ自分の身体だ。

 こんな身体にしたこの場所に対する怒りが沸々と湧いてきた。

 

 だから、この身体に残っている病を全てこの施設の人に押し付けた。

 

 施設は壊滅し、

 私の本当の身体も限界だったのだろう……すぐに生命を終わらせていた。

 危なかった、危うく私も死ぬところだった。

 

 たまに散歩してご飯を食べて寝る。

 そんな日常を繰り返していると一人のスーツ姿の男が訪れた。

 

 こいつは……AFO……?

 なんで――

 

 何やら不気味な気配を携えているが興味はない。

 とりあえず、自身で身体を傷つけそれを男に押し付けた。

 

 ――効かなかった。

 私は叫びながら傷を押し付け続ける。

 だけどその男は傷ができると同時に再生し、

 まるでこたえた様子はなかった。

 

 一歩一歩ゆっくりとしかし確かに近づきその男は私を抱きしめた。

 

 人の温もり、だけどこれは"あの男"を思い出す。

 私は目の前の男を手に持っていた枝で突き刺した。

 しかし男は構わず抱きしめ続け話を始めた。

 

「……辛かったね、君はいいんだよ。

 やられたことをやり返して……

 だってあれは人じゃないんだから……

 それに、そっちの方が気分がいいだろう?」

 

 だんだんと思考がぼんやりとしてこの男が言っていることが正しいように感じた。

 

「……うん」

 

 気づけば私は攻撃をやめていた。

 

「大丈夫……そのための力も上げよう。

 君の個性には……これが合うかな……」

 

 何かが私を包み込む。

 身体に宿る個性が増えた感覚があった。

 

「これがあれば君は迷わない。

 なぁに、大丈夫だとも……

 君を傷つけるものはどこにも居ない」

 

 どうやらその男は私に個性を与えたようだった。

 そんなことが出来るなんて聞いたことはない。

 だが事実として個性が増えた。

 認識固定、そんなよくわからない個性だ。

 

 しかしそれからの私は迷うことがなくなった。

 心の奥底にあった不安な気持ちそれが見えなくなったように視界が晴れやかで、素晴らしい気分だった。

 だが、信じない。

 こいつも何か目的があるはずだ。

 今のままでは潰せない。

 だから、力を得なくてはいけない。

 

 最初は武術を覚えた。

 蟲に技を乞うのは嫌だったけど強くなるためだ。

 身体が老いれば別人の身体を奪い、

 技術を覚えて不要になれば蟲を潰した。

 

 技術の成長には限度があった。

 私にはそもそも向いていなかった。

 

 

 そんな時関西弁の女の身体を奪った。

 どうやら婚約者がいたみたいだった。

 その親たちは殺した。

 だって親はクソだから。

 

 でも婚約者は可哀想だから生かしてあげた。

 なのに何度も追ってくる。

 だから男の記憶を奪った。

 殺すのは……なんか嫌だった。

 この身体の記憶があったからかもしれない。

 

 

 そして、ふと思ったんだ。

 武術ではダメだった。

 だから研究を始めた。

 個性についての研究を――

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 ……これ、は――

 この記憶は……あいつの記憶だ。

 

 そして目が覚める。

 僕はあの時に戻っていた。

 

 僕と猿夫と透が三人であいつを倒した直後。

 そして、彼女が乗っ取られたあのタイミングに――

 

 

 

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