東方烈風録~Phantasm Storm Savior~ 作:フウ@東方二次創作
その少年は、住宅街を歩いていた。
片手には旅行用のキャリーケース。耳にはイヤホンを差し、スマートフォンから流れる音楽に身を委ねている。
足取りは一定で、速くも遅くもない。
だが、その表情には焦点が合っていなかった。
――このまま、どこか遠くへ。
理由はない。ただ、戻る場所がないだけだ。
アスファルトの道を踏みしめながら、少年は歩き続けていた。
ふと足を止め、空を仰ぐ。
雲に覆われた灰色の空が、どこまでも広がっている。晴れる気配はない。
そのとき、スマートフォンが震えた。
画面に表示された名前を見て、少年は一瞬だけ眉をひそめる。
母。
彼は何もせず、スマートフォンをポケットに戻した。
着信は切れ、音楽だけが再び耳を満たす。
歩き出す。
見慣れた街並みを、まるで他人事のように通り過ぎながら。
(……行く当てもないのに)
そう思いながらも、足は止まらない。
止まってしまえば、何かに追いつかれてしまう気がした。
やがて、意識がぼやけ始める。
景色が滲み、足元の感覚が遠のいていく。
(ああ……)
次に浮かんだ思考は、意外なほど静かだった。
(……ここで、終わりか)
声にならない息が漏れ、少年はそのまま前のめりに倒れ――
気が付けば、背中に柔らかな感触を覚えていた。
仰向け。
視界いっぱいに広がる、抜けるような青。
つい先ほどまでの曇天が嘘のような空。
そして、視界の端に揺れる黄色。
向日葵。
それを最後に、
※ ※ ※
一面に広がる向日葵畑の中を、ひとりの女性が歩いていた。
花々を見渡すその表情は、穏やかで、どこか楽しげでもある。
今日は邪魔者もいない。
弾幕を放つ必要もなく、ただ静かに花を愛でるだけの時間。
――少し、退屈ではあるけれど。
そんな考えが、頭の片隅をよぎった、そのとき。
「あ……あ……」
掠れた声が、風に混じって聞こえた。
女性は足を止め、わずかに眉を動かす。
ため息をひとつつき、声のした方へと歩みを向けた。
畑の端。
向日葵の影に倒れ伏す、一人の少年。
人間が、こんな場所に。
一瞬、立ち止まり、手を伸ばしかけて――止める。
少年の顔を見た瞬間、そこに浮かぶ感情に気づいたからだ。
深い疲労。
そして、消えかけた生への執着。
「……はあ……」
再び、ため息。
風見幽香は、静かに少年を抱え上げた。
それが、
風原剣城と風見幽香――二人の物語の始まりであった。
皆様お久しぶりです、初めましての御方は初めまして。フウと申します。
こちらの小説は私が中学生時代に初めて趣味で書いたオリ主ものの幻想入り小説…を、別サイトに載せたもの…を、リメイクしたものとなります。
突飛な展開や独自設定、オリジナル異変などの要素がございますが、暖かい目でご覧ください。