東方烈風録~Phantasm Storm Savior~   作:フウ@東方二次創作

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第4話 幽香の「初めて」

 太陽の畑の周りを走る剣城。

 幽香はその様子を向日葵の世話をしながら眺めていた。

 

「…凄い胆力ね…彼…。」

 

 花壇の手入れに慣れた剣城は、自分の仕事を早く終わらせていた。

 その後、

 

―――――

「俺、走りに行って来る!」

―――――

 

 と言う発言に、幽香は正直驚いていた。

 

「…でも…何故そこまでして…?」

 

―――――

「俺を強くしてください!」

―――――

 

 そんな事を言った剣城の表情は、まさに真剣そのものであった。

 

「…そう言えば…。」

 

 幽香は彼が幻想入りした時の事を思い出す。

 彼が幻想入りすると共に持っていた、キャリーケースに入っていた大量の荷物…着替え、寝袋や携帯テーブル、歯ブラシなどの生活必需品、数日分の保存食、テレビにもつなげることが出来るゲーム(つまりはswitch)、有名作家の小説、パソコン、カードゲームの箱…

 人間の世界で、あの荷物をどのような用途でキャリーケースに入れて持って来るのか、幽香には分からなかった。

 

「アレは…元々一体どういう用途で持って来たものなのかしら…?」

 

 剣城についての謎は深まるばかり。

 …幽香は、ふと思った。

 

「私…何でこんな事、考えてるのかしら…」

 

 今まで、こんな事を考える事なんて無かった。

 人間なんて…正直嫌いだ。野蛮、自分勝手、愚か、軟弱…。彼女の人間に対する印象はそんなものであった。

 勿論人間の知り合いも居るには居た。―でも、その者と一緒に暮らそうなんて、思いもしなかった。

 …なのに…。

 

「ハッ…ハッ…ハッ…!」

 

 この太陽の畑の為に、強くなりたい。

 普段なら馬鹿な願いだ、と捨てるはずであるが…

 彼の瞳には、強い覚悟が…"凄み"があった。

 ゲームをする彼、普段なら迷惑だと思うはずであるが…

 …彼は、本当に楽しそうにゲームをやっており、いつの間にか興味を持ち始めていた。

 そして今、ジョギングをする彼。

 ―彼の眼は本気だ。だが…彼は笑っている。楽しんでいる。

 

「…不思議な子ね…。」

 

 今は只、そう思うだけであった。

 

 その後、午前の特訓、昼食、午後の特訓を終わらせ自由時間となった剣城は、部屋でゲームをしていた。

 ―と、

 

「…それ、やってて面白いの?」

「ああ、面白いぞ。幽香もやってみたらどうだ?」

「…そうね…。」

 

 幽香は今まで、ゲームというものを知らない。

 当然幽香は興味を持たず、何時もの様に紅茶を飲みながら本を読むのみ…

 

「…やってみようかしらね…?」

 

 ―という訳にもいかなかった。

 

「オッケー、それじゃあ二人プレイに切り替えるぜ~。」

 

 剣城がやっているのを見て興味が湧いてしまった幽香は、吸い込まれるようにコントローラーを握りに行ったのである。

 

「…それで、これはどういうゲームなの?」

「『ス〇ブラSP』っていうゲームさ。取り敢えず一通り教えていくぞ。」

 

 剣城は幽香にトレーニングモードを通して操作を一通り教えていく。

 ―すると…。

 

「おお幽香上手い上手い!」

「ありがとう。理解出来たわこのゲーム。」

 

 1時間もすれば、幽香はレベル9のCPU相手にかなり良い戦いが出来るようになっていた。

 

「そっち行ったわよ剣城!」

「OK喰らえ!!」

 

 ミュウツーが吹き飛ばした相手のカズヤを剣城の剣術miiが回転斬りで吹き飛ばす。

 この戦いは剣城&幽香コンビが勝利を飾った。

 

「勝った…」

「スゲーな幽香…1時間でこれだもん…。」

 

 幽香は1時間の間に操作方法から使用キャラの立ち回り、バースト手段まで何となくだが覚えてみせたのである。

 

「…どうだ幽香?楽しいだろこれ。」

「…まあ、小説にも飽きてきた頃だし、暇つぶしくらいにはなりそうね。」

 

 幽香は何時もの態度を崩さずに言う。

 

「嘘つけーい。内心では楽しい癖に…」

「あら、どうしてそう言えるの?」

「ほらだって…やってるときの幽香、マジで楽しそうだったぞ。」

 

 剣城に核心を突かれ図星になる幽香。

 

「…別に…ほら、次行くわよ!」

「はいはい…!」

 

 結局2人のゲームは、夕ご飯になるまで続いた。

 

※ ※ ※

 

 ―夜…幽香はあまり眠れずに居た。

 

「…一体…何なのかしらこれは…。」

 

 今日は、剣城にいささか振り回されていた一日だった。

 剣城のランニングを見て、剣城と一緒にゲームをして、

 さらに風呂を上がった後はカードゲームも軽くやった。

 

「妖怪である私に…人間の遊びをさせるなんて…。」

 

 ―怒りは、自然と湧いてこなかった。

 むしろ、楽しかった。

 

 普段の幽香なら、起きて花の世話、怪しい人間や妖怪が入ってきたら即排除。

 たまに遊びに来る妖精たちの相手をし、一人でまた花の世話、時に本を読み…そんな生活だった。

 何の不自由も感じない、寂しさも不思議と感じない毎日。

 

 ―だった筈なのに…。

 

「…はあ…。」

 

 幽香は別の布団で眠っている剣城の顔を見ながらため息をつく。

 嫌いであるはずの人間の男と、今日で4日も同じ屋根の下。

 なのに剣城は…ちっともブレやしない。

 

―――――――

「おはよ~幽香。」

「OK喰らえ!!」

「手伝うぜ。幽香。」

「俺を強くしてください!」

―――――――

 

 風原剣城は、時に元気で、時にお調子者で、時に優しく、時に真剣で…。

 彼女の知らない…「初めて」の人間であった。

 

―――――――

「ふふふ…危険度極高に人間友好度最悪…孤高の花妖怪さんが、あの人間と暮らし始めてから良い顔するようになったじゃない?」

―――――――

 

 八雲紫に言われたその言葉が、未だにどうしても引っかかっていた。

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