東方烈風録~Phantasm Storm Savior~ 作:フウ@東方二次創作
太陽の畑の周りを走る剣城。
幽香はその様子を向日葵の世話をしながら眺めていた。
「…凄い胆力ね…彼…。」
花壇の手入れに慣れた剣城は、自分の仕事を早く終わらせていた。
その後、
―――――
「俺、走りに行って来る!」
―――――
と言う発言に、幽香は正直驚いていた。
「…でも…何故そこまでして…?」
―――――
「俺を強くしてください!」
―――――
そんな事を言った剣城の表情は、まさに真剣そのものであった。
「…そう言えば…。」
幽香は彼が幻想入りした時の事を思い出す。
彼が幻想入りすると共に持っていた、キャリーケースに入っていた大量の荷物…着替え、寝袋や携帯テーブル、歯ブラシなどの生活必需品、数日分の保存食、テレビにもつなげることが出来るゲーム(つまりはswitch)、有名作家の小説、パソコン、カードゲームの箱…
人間の世界で、あの荷物をどのような用途でキャリーケースに入れて持って来るのか、幽香には分からなかった。
「アレは…元々一体どういう用途で持って来たものなのかしら…?」
剣城についての謎は深まるばかり。
…幽香は、ふと思った。
「私…何でこんな事、考えてるのかしら…」
今まで、こんな事を考える事なんて無かった。
人間なんて…正直嫌いだ。野蛮、自分勝手、愚か、軟弱…。彼女の人間に対する印象はそんなものであった。
勿論人間の知り合いも居るには居た。―でも、その者と一緒に暮らそうなんて、思いもしなかった。
…なのに…。
「ハッ…ハッ…ハッ…!」
この太陽の畑の為に、強くなりたい。
普段なら馬鹿な願いだ、と捨てるはずであるが…
彼の瞳には、強い覚悟が…"凄み"があった。
ゲームをする彼、普段なら迷惑だと思うはずであるが…
…彼は、本当に楽しそうにゲームをやっており、いつの間にか興味を持ち始めていた。
そして今、ジョギングをする彼。
―彼の眼は本気だ。だが…彼は笑っている。楽しんでいる。
「…不思議な子ね…。」
今は只、そう思うだけであった。
その後、午前の特訓、昼食、午後の特訓を終わらせ自由時間となった剣城は、部屋でゲームをしていた。
―と、
「…それ、やってて面白いの?」
「ああ、面白いぞ。幽香もやってみたらどうだ?」
「…そうね…。」
幽香は今まで、ゲームというものを知らない。
当然幽香は興味を持たず、何時もの様に紅茶を飲みながら本を読むのみ…
「…やってみようかしらね…?」
―という訳にもいかなかった。
「オッケー、それじゃあ二人プレイに切り替えるぜ~。」
剣城がやっているのを見て興味が湧いてしまった幽香は、吸い込まれるようにコントローラーを握りに行ったのである。
「…それで、これはどういうゲームなの?」
「『ス〇ブラSP』っていうゲームさ。取り敢えず一通り教えていくぞ。」
剣城は幽香にトレーニングモードを通して操作を一通り教えていく。
―すると…。
「おお幽香上手い上手い!」
「ありがとう。理解出来たわこのゲーム。」
1時間もすれば、幽香はレベル9のCPU相手にかなり良い戦いが出来るようになっていた。
「そっち行ったわよ剣城!」
「OK喰らえ!!」
ミュウツーが吹き飛ばした相手のカズヤを剣城の剣術miiが回転斬りで吹き飛ばす。
この戦いは剣城&幽香コンビが勝利を飾った。
「勝った…」
「スゲーな幽香…1時間でこれだもん…。」
幽香は1時間の間に操作方法から使用キャラの立ち回り、バースト手段まで何となくだが覚えてみせたのである。
「…どうだ幽香?楽しいだろこれ。」
「…まあ、小説にも飽きてきた頃だし、暇つぶしくらいにはなりそうね。」
幽香は何時もの態度を崩さずに言う。
「嘘つけーい。内心では楽しい癖に…」
「あら、どうしてそう言えるの?」
「ほらだって…やってるときの幽香、マジで楽しそうだったぞ。」
剣城に核心を突かれ図星になる幽香。
「…別に…ほら、次行くわよ!」
「はいはい…!」
結局2人のゲームは、夕ご飯になるまで続いた。
※ ※ ※
―夜…幽香はあまり眠れずに居た。
「…一体…何なのかしらこれは…。」
今日は、剣城にいささか振り回されていた一日だった。
剣城のランニングを見て、剣城と一緒にゲームをして、
さらに風呂を上がった後はカードゲームも軽くやった。
「妖怪である私に…人間の遊びをさせるなんて…。」
―怒りは、自然と湧いてこなかった。
むしろ、楽しかった。
普段の幽香なら、起きて花の世話、怪しい人間や妖怪が入ってきたら即排除。
たまに遊びに来る妖精たちの相手をし、一人でまた花の世話、時に本を読み…そんな生活だった。
何の不自由も感じない、寂しさも不思議と感じない毎日。
―だった筈なのに…。
「…はあ…。」
幽香は別の布団で眠っている剣城の顔を見ながらため息をつく。
嫌いであるはずの人間の男と、今日で4日も同じ屋根の下。
なのに剣城は…ちっともブレやしない。
―――――――
「おはよ~幽香。」
「OK喰らえ!!」
「手伝うぜ。幽香。」
「俺を強くしてください!」
―――――――
風原剣城は、時に元気で、時にお調子者で、時に優しく、時に真剣で…。
彼女の知らない…「初めて」の人間であった。
―――――――
「ふふふ…危険度極高に人間友好度最悪…孤高の花妖怪さんが、あの人間と暮らし始めてから良い顔するようになったじゃない?」
―――――――
八雲紫に言われたその言葉が、未だにどうしても引っかかっていた。