東方烈風録~Phantasm Storm Savior~   作:フウ@東方二次創作

9 / 10
第8話 現在、過去、そして―

ゼノラスが山奥に消えて数時間後、博麗神社―

 

「幽香と同居中…それ本当なの…?」

 

 霊夢が信じられないと言ったような表情で剣城を見る。

 

「ああ本当だ。幽香が霊力の使い方とか、応用方法とか色々教えてくれて…昨日なんて戦いの相手にもなってくれたしな。」

「戦いの相手って…どうなったんだ?」

 

 恐る恐ると言った様子で訊く魔理沙。

 剣城はそれに笑顔で答えた。

 

「あんまり歯が立たなかったぜ…一撃入れるので精一杯だった。」

 

 驚いたような顔をする霊夢たち。幽香に対して一撃入れるだけでも大金星である。

 さながらなろう系のような空気感である。

 

「因みにですが…"武器を創造して操る程度の能力"でしたっけ…?あれで剣を創り出したのは分かるんですけど…剣技はどこで学んだのでしょうか…?」

「あれは…ガチの我流だな。能力で補正は掛かっているとは思うが…」

 

 妖夢は愕然とした。

 妖夢から見れば、剣城の剣は無駄が多すぎる粗削りな剣。

 霊力による身体強化により剣をとにかく素早く振っているだけ。

 だがそれでも、素人があれほどの動きを出来るのは凄いことである。

 

「…とにかく今回の件、協力感謝するわ。」

 

 霊夢はペコリと頭を下げお礼を言った。

 

「どういたしまして。それじゃあ…またな!」

 

 幽香と剣城は帰路に着いて行った。

 

「風原剣城…おもしれ―奴だな。」

「カッコ良かったですね…あの時の剣城さん。」

「剣城さんのあの強さ…一体どこから…。」

「…厄介なものですね。」

 

 思い思いの感想を発する4人。

 そんな中、霊夢は別の事を考えていた。

 

(風原剣城も気になるけど…あの巨大な妖怪…一体何が目的なのかしら…。)

 

 そんな霊夢の思考の答えは、暫く出そうになかった。

 

―――――

 

「…剣城…その…。」

「うん?」

 

 幽香の家…二人で夕食を食べている中、幽香が口を開いた。

 

「その…ありがとう…。」

 

 ぎこちなく感謝の言葉を口にする幽香。

 剣城はコップの水を飲み込んで言った。

 

「幽香こそ、ありがとな。」

「…え…?」

「…俺、家から出る前に、思ったんだ。何で幽香があんなこと言ったろうって…。んで、分かったんだ。」

 

 剣城は、幽香の眼をまっすぐ見つめて言った。

 

「幽香の言う通り、俺はまだここに来て一週間も経ってない。この前幽香と戦った時も完敗だったし…。だからさ…幽香は言いたかったんだろ?力の使い方とか、使う意味もまだあまり分かっていない人間が来るなって…。」

「…え…?」

 

 ―どうやら剣城は真面目に勘違いをしているようだった。

 思わぬすれ違いに内心焦る幽香。

 

「俺は幽香を…ここを守りたくて行ったんだ。そしてその思いは、これからも変わらないつもりでいる。だから幽香…。これからも、一緒に戦わせてくれ。」

 

 至って真剣に話す剣城。

 ―幽香はこの状況を受け入れ、

 

「…分かったわ。」

「ありがとう!」

 

 立ち上がり頭を下げる剣城。

 そのまま剣城は、ご飯の続きを食べ始めた。

 

――――――――――

「…寝てる。」

 

 幽香は、眠れなかった。

 ぐっすりと眠っている剣城の事が、どうしても気になったから。

 

「…剣城…。」

 

 幽香は考えていた。どうして彼は、どうしてそこまで「守る」と言う事に執着しているのか。

 剣城と出会って一週間経たず…分からない事はまだいっぱいある。

 剣城を知りたい―幽香がそんな事を想っていると…

 

「う…ううう…!」

 

 ―剣城から、苦しむような声が発せられた。

 魘されている、そう幽香が理解するのに時間はかからなかった。

 ―でも、どうして?そう思っていると―ふと思い出した。

 

――――――――――

「そうか、俺、忘れ去られたのか…。」

「…嫌…かな…。俺、戻りたくない…。」

――――――――――

 

 ―そんな事を、剣城が暗い顔で言っていたのを。

 

(…もしかして…。)

 

 ―気付けば幽香は、剣城の傍に座り込み頭を撫で始めていた。

 

(…剣城…。アンタも色々、苦労していたようね。)

 

 暫く剣城の頭を撫でる幽香。

 

「…私は剣城の身に何が起きたかを知らない…。そして、それを話す義務は剣城には無い…。

だから…私に出来ることは、こうして頭を撫でてやる事だけ…。」

 

 ―でも、知りたい。知って受け止めたい。

 

 ―段々と、瞼が重くなってきた。

 やがて幽香は、剣城に寄り添い、抱きしめるような体勢で眠りに落ちた。

 

 

―――――――――――――――

 

 

 家族からの関心は、全く向けられなかった。

 

 

 父親がブラック会社を辞めた事で、母親は離婚―それによるストレスからか、シングルマザーとなった母親は、剣城に当たる事が多くなった。

 

 

 母親は男を嫌悪するようになり、SNSに毒を吐くようになり、剣城に強く当たる事が日常となった。

 

 

 過酷なバイトを強制され、稼いだお金は奪われてこき使われた。

 

 

 学校でもそれは同じ―先輩からはパワハラを受け、友達は居ない。

 

 

 だが、高校二年生の彼には好きな子が居た。

 

 

 美しくて元気で、表裏の無い―そんな子だった。

 

 

 

「ええ風原?アイツダメダメ。イマドキガラケーなんて時代遅れにも程があるし、アイツバイトしてるんでしょ?デートもまともに出来ないし無理無理。ってか好きなものゲームとアニメって…だから友達居ないんでしょ?マジキモい。私に相応しい男ってのはね…」

 

 

 ―そんな陰口を聞いて、絶望するまでは。

 

 

 だがそんな状況でも剣城は折れなかった。

 

 

 親に隠れてアニメや特撮を見ていた。カッコ良い主人公に憧れた。自分の中の推しも見つけた。

 

 

 こっそり貯めたお金で中古のゲーム機を買いプレイした。

 

 

 奨学金を貰って大学へ行き一人暮らしをする―そんな生活を夢見ていた。

 

 

 

「ふざけたこと言わないで!お前は高校を卒業して働け!今すぐにでもだ!」

 

 

 

 ―心が、折れた。

 

 

 その言葉を聞いた夜―彼は、家を出た。

 

 

 彼の好きなゲーム、キャリーケース、食料、お金を持って。眼には、光が灯っていないかった。

 

 

 ―その過去を、剣城は夢の中で追体験していた。

 

 

 苦しい…辛い…

 

 

 悪夢に魘される剣城―

 

 

 …そしてその光景は、突如として終わりを迎えた。

 

 ―いつの間にか自分の真後ろに居る、幽香によって。

 

「ゆ…幽香…。」

 

 幽香から発せられるのは寝息だけ。

 

「寝てる…でも何で…」

 

 幽香が隣に居るという状況が信じられない剣城。

 

「…。」

 

 …だが、剣城は少し安堵しているような感覚を覚えていた。

 

(…いや、何で安心してるんだよ!)

 

 そう心の中で突っ込む剣城―

 

(…何でだろ…。)

 

 何故こんなにも落ち着けるのかがわからない剣城。

 本来ならば、顔を赤くするだとか…そんな反応をするのが普通なのだろう。

 だが、今の剣城は、"心から安心していた"。

 そう考えながら、剣城は幽香に布団をかぶせ、静かに目を瞑った。

 ―その日は、ぐっすりと眠ることが出来た。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。