パチパチと、松明が放つ火の間を、一人の少女が駆け抜けていく。
その後ろを追う足音。この洞窟に住まう魔物たちのものだ。
およそ一人の冒険者が対処する数ではないそれを引き連れて、少女は足を止めずに走り続ける。
少女が足を向けた先は、行き止まりの小部屋。
迫る壁を見て、魔物たちの鳴き声に嘲笑が混ざった―――ような気がした。
「―――ま、計画通りなんやけどな」
小部屋の壁に向かって、少女が跳躍する。
そのまま、宙を蹴って一度。壁を蹴って三度、天井に頭をぶつけそうなほど跳躍した少女が、漸く武器を取り出す。
「
隣に浮く
視線を奥へ動かし、全ての魔物に着いたのを確認して―――
「―――
引き金を引くと同時に身を翻す。銃口から発射された幾多の弾丸が宙を舞い、魔物たちへ一斉に襲い掛かる。
およそ世界観に似つかわしくない光の銃弾を受け、次々に地へ伏せる魔物たちの中心に、少女が華麗に着地を決める。
「これでレベル16、と。先は長いなーホンマ」
その視界に映し出されたレベルアップの表示を流し、少女はため息を吐いた。
それは、ほんの出来心。
たまたまアップデートの宣伝が流れてきた、ジャンル黎明期から続く老舗MMORPG『エルダーテイル』の初心者無料キャンペーン。
偶にはこういう懐かしいのもいいか…とダウンロードしたのが間違いだったのだろう。
メインクラスを決定し、いざキャラメイク―――となったその瞬間で、記憶は途切れている。
「人生何が起こるかわからん、一寸先は闇とはゆーけどやな…」
魔物から素材を剥ぎ取りながら、少女はぼやく。
魔物の気配も周辺から失せ、他の
「ゲームや思たら異世界招待券やし、そもそも身体はこのゲームのモンちゃうし、性別も変わるし。散々や…まぁ、悪いことばっかやないけど」
粗方剥ぎ取りを終えた少女は、天井を仰いで息を吐く。
キャラクターネーム、チノモリちゃん。
メインクラス、
サブクラスーーー
それが今の、自分を表すステータス。
――――これは、異世界となったゲームの世界に。
『別のゲーム』から迷い込んでしまった一人の冒険者の話。