「づっ……かれたぁ………」
数時間のダンジョン攻略を終え、外に出たチノモリちゃんが大きく伸びをする。
他のみんなも大なり小なり疲弊している。
無理もない、とミノリは小さく苦笑した。
最初の二連戦を終えてから、ミノリたちは何度も戦闘を繰り返した。
時にはトウヤからルンデルハウスに
そのたびにフォローに回っていたのが彼女なのだ。一番疲れていてもおかしくはない。
…武器は弓なのに格闘を交えて接近戦までこなすのは驚いたが。聞けば、あれも特技の一部らしい。
「お疲れ様ですにゃー。成果はありましたかにゃー?」
「はい、ばっちりですにゃん太さん!」
夕飯だろうか、良い匂いのする鍋をかき混ぜながら、にゃん太が話しかけてきて、セララが嬉しそうに応えている。
「…ミノリん、飯の後ちょっと話できひん?」
急に小声でそう問われ、ミノリは危うく跳び上がりかけた。
「チ、チノモリちゃん?かまいませんけど…」
「ほな、頼むわ」
頷いて、紫のツインテールを振りながら少女は背を向ける。
………話ってなんだろう。ミノリは首を傾げた。
「それで、話ってなんでしょう?」
ちょっとみんなからは離れた場所で、ミノリはチノモリちゃんと向かい合っていた。
「…ミノリんは今日の戦闘、どない思う?」
「どない、というと…?」
「パーティーとしてどうやった、っちゅーことや。アンタの意見が聞きたい」
えっと、とミノリは口ごもった。
「なんで私にそれを…?」
「あん中ならアンタが一番理屈っぽそうやったから。あ、褒めとるんやで?」
少女は苦笑いして手を振る。悪意はなさそうな言葉に、ミノリはほっと息を吐いた。
「で、質問に戻るけど…どない思た?」
「えっと…正直、未熟だったと思います。チノモリちゃんがすぐ動いてくれて、致命的な局面にはなりませんでしたけど」
「まぁ、やんなぁ…」
腕を組んだチノモリちゃんが大きく息を吐く。
「…正直、これは僕の失敗でもあると思うねん」
「えっ?」
「動き過ぎた。もっとトウヤんを動かさんと、トウヤんのためにならんかったんちゃうかな。もちろん、他のみんなにも」
確かに、それはそうだ。一人に負担が集中するのは、パーティーとしては欠陥だ。
とはいえ、とチノモリちゃんは難しい顔をした。
「多分やけど、この危機感…他のみんなはまだ持っとらんよなぁ」
「………」
頷く。多分、トウヤもまだ危機感を抱いてはいないだろう。
「多分、みんなが漠然とでも危機感抱いてくれへんと進めなさそうと思うんやけど…」
「そう、ですね…」
「けどこの調子で進んで危機感抱くレベルに行くと、もう引き返すのも難いとこまで行ってそうなんよなぁ…」
首をひねる目の前の少女を改めて見つめる。
身長はミノリと大差ない。だが、その肢体は明らかに子供のそれではない。身長さえ除けば、マリエールと向こうを張れるプロポーションをしている。
実はこっそり見比べて、セララや五十鈴と目を合わせて項垂れたりしたほどだ。
それゆえ、年齢が読みづらい。顔自体は幼げだが、その表情には大人びた思慮深さがある。
つくづく読めない人だ。
「ま、今ここで二人で悩んでもしゃーないか。悪いな、付き合うてもろて」
「いえ、こちらこそありがとうございます」
頭を下げ返すと、少女は満足げに頷いてテントへと戻っていく。
その姿を少しの間見送って…ミノリは「あ」と声を上げた。
「…全然MP減ってなかったの、どうしてか聞きそこねちゃった」