「あはっ。ミノリ、鼻黒いよぉ」
「鈴っちゃん、他人の事言える恰好?」
前を歩いていたチノモリちゃんの声。
「そういうチノモリちゃんこそ、真っ黒じゃない」
「僕はええねん、元々割と黒いやろ」
確かに、チノモリちゃんが着用している服は黒に近い、暗い色合いだ。
「でも、洗いたくはありますね。泉に行きましょうか?」
「そだね。あー、セラちゃんも誘おうか?」
そう言ってチノモリちゃんを追い抜いていく五十鈴。
「なんだ、ミノリらも泉行くのか?」
列の戦闘を歩いていたトウヤとルンデルハウスが振り返る。
「俺たちも汗だくなんだけどな…」
「ご婦人の方が切実なのだ。我慢したまえ、トウヤ君」
「ルデ公は紳士やなぁ。トウヤんも見習いや」
トウヤの肩がポンと叩かれる。
「別に一緒にいけばいいじゃない」
「い、五十鈴ちゃんっ!」
ケロッと言った五十鈴の言葉にセララが慌てて手を振る。
五十鈴も気づいたようで、こちらも慌てて言葉を継いだ。
「一緒にって言うのは、一緒に池を使うって意味じゃなくて!!あたしたちは、茂みの泉で身体を拭けばいいし、トウヤ君とルディは行けの方で顔でも身体でも洗えばいいでしょってことだよっ!」
「そ、そうですよねーっ!」
誤魔化し笑いをするセララを見やり、五十鈴に視線を戻したチノモリちゃんがやれやれと首を振った。
「……鈴っちゃん、ちょっと警戒心なさすぎなんちゃう?最初、完全に素やったやろ」
「う………」
「わぁっとるけどな。年頃の乙女としてどーなん?って小一時間くらい説教垂れよか、真剣に悩んだで僕」
気ぃつけや、と言ってチノモリちゃんはするりと先へ抜けていく。
「あれ、どこ行くんだ?」
「引率の人らぁに報告。みんなは先に泉の方行っときぃ」
「え、それは悪いですよ」
「ええからええから。僕は平気っちゅーか、まぁ暑ぅなかったわけやないけど…とにかく先行っとけ」
途中で説明が面倒になったように言われ、残された5人で顔を見合わせる。
「………まぁ、ああまで言うのなら従った方がいいんじゃないか?」
「そう、ですね…」
若干の困惑をはらみながら、ミノリたちは踵を返した。
結局、彼女が泉へ向かったのはミノリたちが戻ってからだった。
ミノリたちが戻ったところ、木陰で昼寝を決め込んでいるのを見つけたのだ。
「実は眠気の方が勝っとったんよな、これが」
起こされて、照れたように笑ってから泉に向かう彼女の後姿を見送って、五十鈴はため息を吐いた。
「年頃の乙女としてどーなのはどっちなんですかねぇ…」
中身男なので身繕いが雑ぅなのは仕方ない。
本人の気質?それもまぁありますがねぇー