記録の地平線~記された器~   作:Chirumori

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暗夜の強襲

「あれは、どうだ?」

「あそこも気配はないわ。無人やな」

トウヤの声に答えるチノモリちゃんの声が、夜闇に消えていく。

ミノリたち6人は合宿のメンバーから大きく先行し、チョウシの町へ向かっていた。

道中で小屋を誰かが見つけるたびに、チノモリちゃんは無人であることを告げる。

最初こそ半信半疑な面々だったが、呼びかけてみて本当に無人だった、というのが続いて今や誰も言わなくなった。

(そもそも、ダンジョンでの索敵も一番だったよね、彼女)

少し前を歩く少女の後ろ姿を見ながら、ミノリは少し前の事を思い出していた。

 

「あのね。わたしたちは、あの町を、守るべきだと思うの」

そう口を開いたミノリは、他のメンバーも同じ想いだとすぐに確信できた。

それでも、漠然とした切迫感が消えないまま、ミノリは言葉を続けた。

「それはね、えっと。……助けなきゃならない理由はないです。でも、ううん……」

「なんやミノリん、そないなとこで悩んどるんか?」

意外そうな声にえ、と声が漏れる。他のみんなも同じだった。

「ふっ、そんな悩める少年少女にこの言葉を贈ろう。―――『誰かを助けるのに、理由がいるかい?』」

気障っぽく前髪を払い、キリッとした顔でそう宣う彼女に、ミノリは―――否、全員が絶句させられた。

「…いやまぁ今のは受け売りやけど。みんな助けたい思とるんやろ?やったらそれが理由でええやん」

流石にふざけ過ぎたと悟ったのか、表情を戻してチノモリちゃんは続ける。

「僕はあの町、結局行かずじまいやったから、あの町の連中の顔なんざ知らんけどや。それでも、このまま知らん顔して帰るのは気ぃ悪いくらいは思うんよ。ミノリんらは行ったんやろ?やったら尚更やろしな」

少女は顔色一つ変えずにそんな事を言う。だが、それではまるで―――

「やから僕は、他ならぬ僕自身のためにあの町を助けに行く。みんなもそのくらい気楽ぅに行った方がええで?どうせ気持ち重ぅすることなんかこっからいくらでもあるやろうしさ」

自分のために、誰かの命を背負う。

そんなことでいいのだろうか、と逡巡するミノリを見て、「ミノリんは真面目やなぁ」とチノモリちゃんが苦笑する。

「―――そうだなっ!」

賛同の声が響く。意外な事に、その言葉に真っ先に頷いたのはルンデルハウスだった。

「ふふふっ、ボクともあろう者が正直取り乱していたようだ。そうさ、僕らは冒険者だ。ここで逃げ出しては何のために冒険者になったかわからない。それは本末転倒じゃないか。……〈緑小鬼(ゴブリン)〉なにするものぞさっ!」

「そうだよなルディ兄!このままアキバに帰るなんてできるわけないよなっ!」

二人意気投合し腕を組む男子を、心配そうに五十鈴が見やる。

「いやぁ、青春やなぁ。火ぃつけてもうたやろか」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよっ!どうやって!?どうやって町を守るんですか。あの町には城壁もないですし、敵の数は私たちの2倍はいるんですよっ!」

笑いながら言うチノモリちゃんに、悲鳴のようにセララが異議を挟む。確かに、それは重大な問題だ――――

「それはミノリが考える」

「そこはミノリんの領分やろ。な、我らが軍師殿?」

2人がかりのスルーパスをまともに受けて、ミノリは面食らって瞬きをした。

というか軍師殿って。そんな言われるような人間じゃ

「誰がどない言おうとこのパーティーのブレインはあんたやからな。アテにしとるで」

―――先手を打たれた。言う側は気楽なものだ、とため息を吐きながらミノリは思考を回した。

 

 

―――あの後、引率の3人に見つかって(「ルデ公とトウヤんがあんな大きい声出してりゃそらなぁ」とチノモリちゃんは言っていた)、作戦のブラッシュアップと幾つかの支援を受け、ミノリたちは夜の山に潜伏している。

「東から5体、こっちに向かっとる。その後ろ…前のから40mくらいか、4体の小隊。あと、北東に5,6体おる。…行けるか?」

「了解っ」

「わかりました、詠唱はじめます」

闇の中、視線を左上に向けて諳んじるチノモリちゃんの声に、頷いたトウヤが駆けていく。

ミノリは闇の中に目を凝らす。直継に貰った〈月光妖精の雫(ムーンフェイ・ドロップ)〉の効果でよく見えるが、気分の問題だ。

尤も、これを使っているのはミノリだけだ。駆けていくトウヤに「ダメージ遮断呪文」を投射しながら、ミノリは斜め前のチノモリちゃんを見やる。

「トウヤん、接敵。敵2小隊、交戦状態(アクティブ)。9体来るで、気張りや」

「はいっ。カウントダウン、お願いします」

…敵の数やら感知状態まで把握している事にはもう、誰も何も言わなくなっていた。どうせ聞いてもはぐらかされるだけなのは目に見えているし、彼女はそういうものだという共通認識ができあがりつつあるのもある。

「5,4,3,2…」

カウントダウンが終わると同時に、セララが〈友なる柳(ウィロー・スピリッツ)〉を発動させ、後衛を足止めする。

「おし、ほなこっちもっ!」

それを見届けて、チノモリちゃんも天に矢を放つ。『ディメンショナル・レイ』という名らしいスキルが発動し、第1部隊のいる地点を囲うように光の弓が浮かび、矢を打ち下ろす。

突然の攻撃に浮足立つ〈緑小鬼(ゴブリン)〉たちへ、戻ってきたトウヤが斬り込んでいく。

更に混乱したところに、ルンデルハウスと五十鈴が畳みかける。

「〈友なる柳(ウィロー・スピリッツ)〉、効果時間終了です!」

「オッケー、行くでトウヤん!」

「おう!」

続けて第2部隊へとトウヤが斬り込む。先頭を駆ける〈緑小鬼(ゴブリン)〉に、チノモリちゃんが引き絞った『重点矢(グラヴィティ・ポイント)』の矢が刺さる。

だが、〈緑小鬼(ゴブリン)〉の狙いは動かない。当然だ、矢のダメージは掠り傷程度にしかなっていない。

―――無論、矢そのものがメインの技ではないからだ。直後、矢からブラックホールじみた空間が生まれ、小隊全員が引き寄せられていく。

慌てて隊列を立て直そうとするのを、トウヤが横薙ぎの一撃で打ち倒して阻止する。

地に倒れた〈緑小鬼(ゴブリン)〉たちを、チノモリちゃんが放つ『怒涛矢(ミリオンストーム)』の矢の嵐が穿ち、その命を削りきっていく。

「…おし、他に交戦状態(アクティブ)の奴ぁおらん。一旦終わりやな」

くるり、と弓を回して、彼女が戦闘終了を告げた―――




闇夜で光るレーダー無双。
旧版ではアイテム扱いでしたが、NGSではシステムの一部となっているためマグは持ち込む形です。ただし当然、旧版みたいなステータス補正や支援行動はなし(付随して旧版フォトンブラストも使用不可)。作中ではまだ未検証ですが、一応物は食えます。
その代わり、NGSのシステム上マグが処理していると思しき周囲の探知(素材だけじゃなく左上のレーダーも担当している解釈)や、メインメニューの管理(マグからエフェクトが出るので)などもできる解釈です。大体全部マグって奴のせいなんだ……
あと今更ながら、旧版からNGSでPAの威力下がってそうでそこまでの低下ではないなぁ…とか思ったり。いや一部ぶっとんでるのありますけど旧版。

因みに旧版PAのみ漢字+フリガナになっているのはesの影響です。かっこいいからショウガナイネ。

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