「ほい、ルデ公に鈴っちゃん」
「む、すまないな」
「あ、ありがと」
果汁を混ぜて冷やされた水を二人に渡し、僕は砂浜に腰を下ろした。
朝方から始まった
視界左上のレーダーを見やれば、海の中は赤い敵性反応でびっしりだ。そりゃ終わるわけがない、と改めてため息を吐く。
「ほな、支援行ってくるわ」
「大丈夫ですか?」
僕は結局、基本はいつものパーティーで行動しつつ、みんなが休憩のローテーションに入ったら一人後方から支援攻撃を撃ちに行くスタイルになっている。
なんせMP切れによる長期離脱とは無縁の身である。その分、朝からほとんど休みなしなのは仕方ないが。
「大丈夫や、気にすんな。そっちこそちゃんと休んどきや」
ひらりと心配してきたミノリに手を振りながら、砂浜を蹴って駆け出す。
参加者パーティーの防衛線から漏れ出た一体めがけて
「ありがとう、助かった!」
「気張りや、まだまだ終わらんで!」
言葉だけ投げて踵を返し、上陸している
奮闘しているのは引率者パーティーだ。直継が狙いを引き受けた群れを、にゃん太がずんばらりと切り裂いていく。
「支援一発、置いときます!」
「頼もしいですにゃあ。ですが、無理は禁物ですにゃ」
ディメンショナルレイの定点爆撃だけを群れの中心に放ち、直継の背中を通り過ぎる。
目指すのはさらにその先。参加者パーティーの中でもレベルが低く、パーティー連携の訓練まで行っていなかった海岸組が奮闘している場所だ。
「あ、チノモリちゃん!」
「マリエはんか。どうにか保っとるみたいやな」
行きがけの駄賃に
「せやな。無理にパーティー単位にせんと、個人個人で即興で連携してもろてるのがええみたいや」
「まぁ、一朝一夕でパーティーはやられへんもんな」
話ながら
「けど、それでローテできてんの?」
「そこはほら、HPやったらウチが回復できるし」
えへん、とたわわな胸を張る彼女の顔は青い。
定期的な回復しかしていないだろうに、MPは既に半分を切っている。
それだけ無理をしているのだろう、と僕はため息を吐いた。
「…向こうが動くまでは僕も暴れるさかい、あんまり無理しぃなや」
「ありがと、チノモリちゃんも頑張ってな」
見送られながら、僕は乱戦状態の砂浜へ駆け出した。
あれから数時間。
途中ミノリたちがセララの仕掛けた警報代わりの〈
僕はこちらを頼まれて、パーティーからも離脱した。そっちの方が効率的だと
「おう、チノモリちゃん」
MP切れ―――HPはほぼ問題ないのは流石Lv90台だ―――での休憩から復帰しようとしていた直継がこちらに手を上げる。
「直はん、どないしたん?」
「いい知らせだ。もうすぐ、アキバの部隊を乗せてオキュペテーが来る。到着さえすれば、戦線はぐっと楽になるはずだ」
「マジ!?」
「無論、我々がそれまで保たせるのが大前提ですにゃー」
援軍とは望外の知らせだ。思わず立ち上がる僕に、にゃん太さんが釘を刺す。
「班長の言うとおりだ、が…今のところ、戦線は安定してる。ミノリたちには多分、マリエさんから念話で伝えられてるだろうが…あっちの戦況も知りたい、行ってくれるか?」
「了解、こっちは任せます!」
久々に―――少なくとも戦闘を始めてからは初めて―――砂浜に背を向け、チョウシの町を駆け抜ける。
ミノリとはフレンド登録は済ませてある。メニューからフレンドの位置を表示し、レーダーも頼りに駆け寄り―――
「―――は?」
レーダーに映った反応は、4つ。
胸騒ぎを抑え、グライドから自由落下に切り替え、降り立った僕の視界に入ったのは―――
泣きながらルンデルハウスの遺体を囲む、4人の姿だった。
原作でも屈指の曇らせイベントです。回避はできませんでした。
だってそりゃ、燃費ほぼ気にせず暴れられる戦力とか、敵戦力が多い方に配置しますよねぇ……?