「ん~~~、夕焼け小焼けで空気が美味い!よぉやったわ自分」
思いっきり伸びをして、少女は息を吐いた。
洞窟での交戦を終え、そろそろ夕方。街へ帰る頃合いだ。
「マグ、アイテムメニュー」
小声で指示すると、視界に重なるように"アイテムバッグ"のアイテムリストが表示される。
「装備更新にはまだちょっとかかりそうやなぁ…そっちも引き継げたら楽やったのに」
ついでに装備メニューからコスチュームを変更して、戦闘時のスタイルから外出用の服に変えてメニューを閉じる。
―――サブクラス、
それは『エルダーテイル』のサブクラスでは無論、ない。
ちょうどダウンロード終了直前までプレイしていた別のゲーム、『ファンタシースターオンライン2』のプレイヤーが所属していた組織の名だ。
アバター作成に入る直前、メインクラスのみを決定した状態だったので、混線してしまったのではというのが今のところの推測だ。
「まぁこれ以外に理由が思いつかんっちゅーのが本音やけど…」
独り言が漏れる。
…それはそれとして。
サブクラス、
まず、メインクラスのスキルは全て封印される。これはパッシブ・アクティブ問わずだ。
ついでに装備品も『数値のみ適応』となる。スペックは反映されるが、見た目や武器種は反映されない。
その代わり、
なお、アイテムは武器迷彩やコスチュームなどの見た目にしか反映されないものしか引き継がれていない。
「…武器防具も持ち込めたら…って言っても数値が違うからなぁ…」
また、ステータスにボーナスも入る。具体的には旧版のレベル100分(ただしクラス補正なし種族補正のみ!)とクラスボーナス補正分、そこにクラススキルによる補正分だ。
ただし、打撃力と射撃力は物理攻撃力に統合されて高い方が採用されているようだ。
まぁ、目に見えるHPだけでも1000くらい上がってるのは低レベルにはありがたい。大体今日までソロでやってこれたのはこれのせいもある。
PPについてはちょっとややこしい。
まず、MPの自然回復が停止する。
そして、PPの余剰分が100:1の基本レートでMPへと変換されるのである。
自然回復でも、攻撃などでの回復でも、どちらでもこの変換は適用される。
逆に、PPが足りない場合、代わりにMPを消費してPAなどを使う事もできる。
ただし、この場合消費PP分のMPをそのままの値で消費することになる。
つまり、ぶっちゃけ割に合わない、ということだ。
そして。
ゲームだった時にはなかった新たなステータスがある。
「フォトン感応度」というものだ。
これは%表記されたステータス項目で、その倍率がPP回復速度・攻撃などによるPP回復量・MP/PPの変換レート・100%を超えた場合のみPP最大値に乗算される。
こんなステータスなかったぞ?と首を傾げた僕は諸々検証した結果、ある程度の結論を得た。
このステータスは、『大気中のフォトンとの感応能力』を表す数値である、と。
つまり、露出度が高ければ高いほどこのステータスは上がる…ということである。
逆に、着込みに着込むとPP回復/MP回復に支障をきたしていく感じである。
…まぁ、限界まで重装にしてほぼ肌見えないレベルでも60%やそこらだったし、普段使いしてるコスチューム『ハートブレイカー夜』で105%だから別に構わないっちゃ構わないんだけどもさ。
一回N-ビハインドザダスク[Ba]だけとかやったら感応度250%とか出てびっくりしたなぁ…絶対実戦ではやらんけど。
と、回想をしているうちに街が近くなっていた。
とりあえず、お店に素材を売ってそれから…と思考を切り替え―――
だから、気づけなかった。
「『アストラル・ヒュプノ』!」
待ち伏せていた者たちの存在に。