記録の地平線~記された器~   作:Chirumori

20 / 63
舞い降りたのは

「おい、あれ―――」

増援のオキュペテーに〈水棲緑鬼(サファギン)〉の狙いが逸れ、戦線に余裕ができたところにトウヤからの念話が入った直継の声である。

チノモリちゃん―――いつぞや、いち早く襲撃を察知していたちびっ子が、一人で〈緑小鬼(ゴブリン)〉の相手をしているから援護を、という話で、直継たちはマリエールに事情を説明しながら押っ取り刀で駆けつけた。

その視界に飛び込んできたのは―――謎の機械を操り、〈緑小鬼(ゴブリン)〉どころか〈鉄軀緑鬼(ホブゴブリン)〉交じりの小隊を圧倒する少女の姿だった。

「直継っち、呆けている場合ではないですにゃ」

にゃん太に冷静に言われてハッとする。そうだ、自分たちは救援に来たのだ。

「おーいちびっ子、大丈夫かー!?」

そう叫ぶと少女はこちらに視線を向け、一瞬呆然とした後――――

ぐらりとその身を揺らした。

 

「おいっ!」

全身の力が抜けて倒れそうになった僕を直継が支える。

頭がガンガン殴られたような頭痛と、胃酸が込み上げてくるような吐き気がする。視界左下に辛うじて視線を向ければ、MPゲージが空っぽになっていた。

ああ、これがミノリたちが言っていたMP切れの副作用か―――とどこか冷静な部分で考えながら口を開く。

「なん、で」

「トウヤに呼ばれたんだよ、お前が一人で戦いに行ったって。大丈夫か?」

「あぁ……」

苦笑いが漏れる。トウヤも心配性だ、などと考えていると、

「相当な無茶をしたようですね。気を付けてくださいよ」

「若さですにゃあ。ですが、無謀は禁物ですにゃ」

…残り二人にも口々に諫められ、僕は首を竦めた。

「ハンセイシテマスゥ」

「ならいい。で、状況は?」

直継に問われ、目を閉じて感覚を研ぎすます。

「…気配はあっちに、小隊規模が一つ。それ以外、町に近寄ろうとしてるんはないですわ」

ついと指先を闇夜の先に向けると、施療神官(クレリック)の男性は怪訝そうな顔になった。

「了解ですにゃあ。そちらは我々に任せるといいですにゃ」

「おう、あとはお兄さんたちに任しとけ祭りだぜ!」

駆けていく頼もしい背中3つを見送って、僕は重い身体を引きずってミノリたちのいた場所に戻った。

 

「あ、チノモリちゃん!」

「…トウヤん、直はんらぁ呼んだんやな。悪いけど助かったわ……」

状態は、と問うと首を横に振られた。

変化なしか、と息を吐き、ふと空を見上げる。

凄まじい速度で迫って来る気配があったからだ。

レーダーに映ったのは、冒険者の点が2つ。

 

 

風にはためく白いローブ。

魔法の明かりを照り返す眼鏡。

見下ろしたのは、決意を映す瞳。

―――それが僕の、記録の地平線(ログ・ホライズン)のシロエとの初対面だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。