数日後。
「えーでは、五十鈴さんの移籍とルンデルハウスさんとチノモリさ…」
「チノモリ"ちゃん"な、ギルマス」
「…チノモリちゃんの加入を祝って」
『乾杯!』
慣れない様子で音頭を取るシロエにククッと笑う。
食事を始める前に、と主役たちに自己紹介が振られる。
とはいえ、みんな知った仲である。五十鈴もルンデルハウスも軽く済ませる。
問題は僕である。
「えー改めて。チノモリちゃんや、一応"ちゃん"まで含めて名前やからよろしゅうな。メイン
小柄な少女―――もとい、自分と同じ
「で…かなり重要な話とある意味重要な話と二つあるんやけどどないしよ」
「『かなり』と『ある意味』って…」
どういう分類?という顔でシロエがこちらを見てくる。
「じゃあ、とりあえず『かなり』の方から」
「はーい。まぁ、あのチョウシ防衛線で一緒に戦ったみんなはもう知っとると思うけど、僕かなーり他の冒険者とスキルが違うんよ」
ミノリとトウヤ―――最後の大暴れを間近で見た二人がうんうんと頷く。
「で、なんでかって言うとこれサブ
「別ゲー…?」
ルンデルハウスがなんのこっちゃと首を傾げる。当然の反応だ。
「ん-、まぁ今んとこは僕は他の冒険者とは根本が違う、ってことだけわかってくれたらええわルデ公」
「ふむ、複雑なのだな。承知した」
「で、『ある意味』の方もこっちと完全に無関係ってわけやのーてやな……」
頭を掻くと、直継がほう?という顔で顎に手を当てる。
「うん。まぁ、ぶっちゃけると僕、中身男なんよ」
しん、と一瞬ダイニングが静かになった。
「…………」
アカツキが無言で一歩距離を取った。まぁ当然の反応である。
「え?でも、〈外観再決定ポーション〉の廉価版が…」
「あーあれ。買うて使てみたけどなー、効果なかったんよ。メニューさえ出やがらんかった」
「…もしかして、ですけど」
考え顔のミノリが口を開く。
「チノモリちゃんのアバターが、その…別ゲームのもので、他の冒険者と異なるから効果が出なかった…とか、でしょうか?」
「ミノリんもそない思う?僕も大体同じ結論やったわ」
「でも、じゃあなんで?少なくとも合宿中は言ってなかったよね?」
五十鈴が首を傾げる。
「いやぁ、合宿中だけやったら僕が徹底的に避けてハイさいなら、で終わるはずやったし、実際そのつもりやったんよ。でもこれから長い事一緒に生活するってなったら言わんわけにもいかんやん?」
「『隅っこが落ち着くから』ってテント内で離れて寝てたり、着替えの時間をずらして一人だけ外に出ていたりしたのも、そういうことでしたか…」
「あ、前者は割と本音」
困惑に包まれた空気の中、一人の男が手を打つ。
「よぉし、言いたいことは解った。だがお前が男と分かった以上、聞かなければならないことがある」
さも最重要であるという重々しい声音。だが、内容が下らないのは後ろのシロエが額に手を当てたことから大体察せた。
「それ即ちおパッ!?」
声が中断されたのは、僕が
「お前も蹴るのかよ!?
「……トウヤーん、師匠は選んだほうがええで?僕、あんたがセクハラでお縄になるとことか見とうないんやけど」
「無視かよ!?」
「大丈夫だって、流石にそこまでは真似しねーから!」
トウヤに堂々と宣言されてがっくりと肩を落とす直継。
しかしすぐに真剣な顔に戻る。
「しかし…」
「ん?」
「白か…………」
「………あの一瞬で見たんか…………」
呆れ顔を向けると、直継は重々しく頷いた。
「冒険者の動体視力を舐めるなよー?顎を跳ね飛ばされた直後辺りにギャッ!」
今度は僕ではない。横合いから跳んできたアカツキの飛び膝蹴りである。
「なぁにするんだよちみっ子!折角男同士のおパンツ談議に…」
「主君、祝いの席で変な話をする変態を蹴ってもいいか?」
「だからやってから聞くなっ!」
「あー、なんや色々長なってすんませんな…」
「チノモリ…ちゃん殿もチノモリちゃん殿だ。この男にそんなスカートで蹴ったらああなることは自明だろう。わざとか?」
少し悩んでから、アカツキは僕をそう呼ぶことに決めたようだった。
「わざとではないんやけど…今後は気を付けます、パイセン」
「パ、パイセン!?」
「いや言い方ふっる!」
シロエが耐えかねたようにツッコむ。僕も古い言い方わかってて呼んでいる。
「やー、同じ
そういうと、アカツキはどこか嬉しそうな顔で「許す」とだけ言った。どうやらこの呼び方でいいらしい。
そんな話をしながら、何となく流れで宴会に突入して、その日は更けていった―――
チノモリ"ちゃん"なんていうネタ感満載のネーミングと偏った性癖を顕す身体からはちょっと想像つきづらいですが、主人公は割と紳士です(対他人)