記録の地平線~記された器~   作:Chirumori

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PKからの逃走

「え?なんだよレベル16じゃん。ハズレだな」

「えぇ~、マジかよ」

落胆の声が聞こえる。

元々効果時間が短かったらしい睡眠魔法は、旧Huスキル『プリティグッド』とNGSRaスキル『バッドコンディションリデュース』のせいでその実力の1割も出せずに霧散した。

「こりゃロクなモン持ってなさそうだぜ。どうするよ」

「いや、持ってるじゃねぇか。ご立派なのを二つもよ」

下品な会話にうつ伏せのまま呆れ顔になる。男ってのは、どこに行ってもそういう生き物らしい。自分に言えた義理ではないが。

「ってか、そろそろ時間切れるぜ?捕まえといた方がいいんじゃねぇの」

「そうだな。よし、お前らは周囲を警戒しとけよ」

そう言いながら一人が近づいてくる。クラスは格闘家(モンク)、レベルは68。

…どうやら、ライトユーザーがうっかり巻き込まれた挙句PKにまで堕ちたらしい。

それでも、50以上レベル差がある以上、圧倒的に不利なのは変わりないが……

「…ん、起きたか?暴れんなよ、抵抗しないならそう乱暴には―――」

「お断りじゃボケナスがっ!」

伸ばされた手から転がって距離を取り、そのまま地を蹴ってフォトンダッシュに移行する。

「だから暴れんなって、初心者(ニュービー)がよっ!」

すぐ反応した格闘家(モンク)が飛び蹴りで追随してくる。

初速は向こうが上、蹴り足が迫って来る―――

「マルメロ!」

「うおっ!?なんだこいつ!」

発動したのは『ホットマルメロパリィ』。ノーモーションで使えるウェイカーの弾き防御(パリング)スキルだ。

紫のシールドエフェクトが、無敵の盾となり飛び蹴りを弾き返す。

その隙にダッシュジャンプで上空に離脱する。

「へっ、跳んだら魔法のいい的だ!撃ち落とせ、付与術士(エンチャンター)妖術師(ソーサラー)!」

号令と同時に二つの攻撃魔法が飛んでくる。

舌打ちする。最悪食いしばり(ウィル)があるとはいえ、状態異常の可能性もある以上被弾は避けたい。

まだ、凌ぐ手は―――ある。

「な、なんだ!?アイツ消えやがったぞ!?」

咄嗟にテクニックを詠唱して『ステルステックチャージ』。魔法弾がすり抜けていくのを感じながら、光の玉となって着地する。

見失って視線を彷徨わせるPKの眼から逃れるべく、詠唱を維持したまま草むらに飛び込んで廃墟の裏へと隠れる。

詠唱中だったテクニックをミラージュエスケープでキープし、しばし身を潜める。

「……チッ、逃げられちまった」

「まぁいいじゃねぇか、どうせロクな獲物じゃなかったんだし」

「ちくしょー、せっかく卒業できると思ったのによ」

「逃がした魚は大きいか?実際デカかったしな!」

ゲラゲラ笑うPKの声を背に、その場を後にする。

…別の道を使ってとっとと帰ろう。胸糞悪くなってきた。

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