倒れ伏した僕を見て薄く笑い、殺人鬼が消えうせる。
その気配が消えたのを改めて確かめて、僕は身を起こした。
死亡を改めて確認されなくてよかった。真面目に自分でも死んだと思ったからだ。
死ななかったのは、
まぁ、仮に25%をすり抜けたとしても、最低3回は食いしばりがある。どう考えてもおかしいと自分でも思うが、そうなんだから仕方ない。
尤も、それを込みにしたとして奴から逃げきれたかは怪しい。
奴の油断に、不本意ながら感謝である。
それ以上に、得られた情報は多い。
まず奴は、転移に類する能力を持っていること。
しかも恐らく、戦闘中に細かに発動して姿勢を立て直したりする器用さもあるときた。
細かく思い返せば、思い当たる場面は最後の一撃以外にもちらほらあった。
そしてそれに比して、索敵系の能力はないと見ていいだろう。
僕を見逃したこともそうだし、それ以前に被害が噂程度で済んでいる時点でお察しだ。
あの転移能力に僕並みの索敵能力があれば、今頃この街は阿鼻叫喚の地獄絵図になっていただろう。
―――と、考察は一旦後回しにしよう。
「問題は……これどないするかやな………」
服はほとんど原型を残さないレベルでずたずたにされていた。修復もこれでは厳しいだろう。
大事なところも隠せていないので、この状態で誰かに行き会ったら最悪である。幸い、周囲に気配は―――
「あ」「あ」
あった。何度か訓練でもお世話になったことのある、《西風の旅団》のギルドマスター、ソウジロウその人とばっちり目が合った。
気まずく見合うことしばし。僕の
「ソウ様、どうしま…きゃっ!?」
「うわ、ひっどーい」
「もしかして、その子も被害者ですかぁ~?」
追いついた親衛隊の声が響く間に、脳裏でメニューを操作してとっととコスチュームに着替える。
全身が一瞬発光し、ロレットベルディア影に着替えた僕は、巡回の小隊とほっと息を吐く。
「…さっきの様子からして、襲われたとみていいですかね?」
「うん。多分間違いないと思う」
幻痛の残る左胸を抑えながら僕は頷いた。
そのまま《西風の旅団》に連行…もとい保護されて、指揮を執っていたらしい女性の前で僕は正座している。
正座しているのは何となく…というか眼前の
訓練で顔を合わせたこともある、確かシロエと同じ
「…事情はわかったけどね。よくもまぁ生き残ったもんだよ」
「ま、そこは僕がちょっと特殊やったからかな。次も逃げ切れる自信はないわ」
アカツキのことは伏せて、概ねの経緯は話した。流石に夜の外出の責任を先輩に被せるのは忍びない。
「しかし、転移能力ですか……」
「ギミックとしてならゲームだったころからあるけど…戦闘にまで応用ってのはちょっと聞かないね」
とはいっても、実際一瞬で背後に現れたり消えたりしたのだからまず間違いない。
「特にソウはんは気ぃ付けた方がええと思うわ。体勢崩しても仕切りなおされるわけやし」
「忠告ありがとう、気を付けておきます」
爽やかなスマイルに、背後に控える親衛隊から黄色い声が上がる。僕としては苦笑いするしかない。
その後も、奴の持つ能力について話したり、討伐に向けて意見を交わしたりした。
冷気属性の
その話は朝まで続き、にゃん太さんに夜の外出がバレた僕は当然のようにこってり絞られたのだった。