〈ダザネッグの
それは、レベル45から装備可能となるエルダー・テイルではメジャーな魔法のコンテナ・アイテムだ。
200kgという普段使いには必要十分な容量と適度な入手難易度、そして高レベルになってからも性能強化クエストの存在などから、多くの〈冒険者〉が長くお世話になるアイテムである。
そして、その素材収集が今回の旅の目的でもある。
目的地は日本で言えば中部に当たる〈レッドストーン山地〉……要は赤石山脈だか赤石山地だかのことだろう。
意外と学校の授業も覚えてるもんだな、と勝手に脳裏で考えながら、僕は馬車に仲間の荷物を持ち上げる。
一人素でアイテムバッグ持ち(しかも容量は重量ではなく種類と数量によって決定される)、かつレベル87とステータスが大幅に違うので、仲間の荷物運びを肩代わりしているのだ。
「ありがとうございます、チノモリちゃん」
「ええよええよ、力仕事は本職に任しとけ」
隣で自分とセララの分を積み込むトウヤを見ながら言う。その向こうでは、五十鈴と一緒にルンデルハウスが自分の荷物を押し上げていた。
男の意地って奴だろうなーと微笑ましく見ながら、最後にテントを担ぎ上げて馬車に運び込む。
この馬車も、今回の旅のために購入した年少組の持ち物だ。いい加減僕をその括りに入れるのも限界だろう、帰ったら年長組に相談するか…と、そんなことを考えながら畳んだテントを隅に押し込んで整える。
「あ!」
「どした…あぁ」
五十鈴の声に振り向いて、感じた気配に声の理由を理解する。
リーゼとアカツキを伴ったレイネシアが見送りに来たのだ。
「シア譲、リーゼはんも。わざわざええんか?」
「ええ、友達の見送りくらいなら」
ニコリと花が咲くような微笑みを浮かべる彼女に、改めて美少女だなぁという感想が浮かぶ。それだって良し悪しだろうが(彼女の経験を鑑みれば)。
「ま、土産話を楽しみにしといてぇな」
「はい。皆様も、お気をつけて」
笑顔を振りまかれた皆がそれぞれに頭を下げる。
御者席に座ったトウヤによって、馬車が動き出した。
後ろから顔を出して手を振れば、3人も振り返してくれた。
そしてそれは、視界から消えるまで続いたのだった。
「わざわざお見送りにきてくださるとは思ってませんでした」
「僕もそれは同感…あぁ、いや、そうでもないかも?」
特に多忙なリーゼもいたということは、多分息抜きのための口実という面もあるのではなかろうか。
とはいえ、そんな裏事情を興奮しながら話している五十鈴とセララにわざわざ言ってやることもなかろう。
そう一人頷いていると、察してかミノリは目を伏せた。
「…シロエさんも、大変な時期でしょうね」
「せやなぁ…」
とはいえ、僕らにできることがあるわけでもない。
暗雲立ち込める街を後に、僕らの旅路は始まった。