「チノモリちゃんも、お料理できたんですね」
「野外料理は昔取った何とやら、って奴やけどな」
鼻歌混じりにシチューを混ぜながら、隣で野菜を切るセララに応える。
「まぁ、ギルドでは時々猫の先生の手伝いしてたから」
「それで…」
声に若干の羨望が混じった隣の少女へ視線を向ける。
「嫉妬かぁ~?かわええやっちゃなぁ」
「そ、そんなのでは!?」
「包丁持って目ぇ離したら危ないで」
元凶が何を、と責める視線を華麗にスルーしつつ、火加減を調節する。
ついでに汁をいくらか捨てておく。
「捨てちゃうんですか?」
「あんまり多すぎてもしゃばしゃばになるからな」
言いつつセララを促し、野菜を投入させる。
あ、焼もち焼き(うちでは端が切れていない食材をそう呼んでいた)だ。…まぁいいか。
適度におたまでほぐしつつ、星空を仰いだ。
「…しっかし、初日から中々ハードな旅やなぁ」
「あはは…」
馬には逃げられ(召喚の時間切れである。誰も管理していなかったのが原因だ)、人里は近くになく、こうして野営を余儀なくされている。
まぁ、それも一つの味、というやつだろう。
「おーい!テントできたぜー!」
「ほーい、お疲れ………」
振り向いて笑ってしまったのは悪くないと思う。なんならトウヤ自身含め、全員笑っていた。
テントは目で見てわかる程度には傾いでいて、不格好だった。それでいて、トウヤ以下各員の努力が垣間見える出来だったのだ。
「とりあえずおつかれさん。こっちももうちょいやから用意して待ってなー」
「了解!」
びしっと親指を立てたトウヤから視線を外し、鍋の中に戻す。
…ちょっと焦げ付いたかもしれん。
「おお、これは美味だ。流石だな、ミス・セララ。ミス・チノモリちゃんも」
「どーもぉ」
ルンデルハウスはそう言っているが、普段食べているにゃん太の料理とは雲泥の差だ。
比較対象が悪い、と自分を納得させながらシチューを口に運ぶ。
「いやマジで美味いって痛ぇっ!?」
身を乗り出して主張したトウヤが、何か踏んづけたのか悲鳴を上げた。シチューが零れたのを全員がサッと躱す。
「もう、トウヤ!」
「ごめんごめん」
叱るミノリを、全員が宥める。
「で、ちょっとモノは相談なんやけど」
「む?」
真面目な声音で問いかけた僕に全員の視線が向く。
「馬車に女子、テントに男子、やろ?」
「…あぁ」
大体全員が察した声を上げる。僕の処遇である。
「トウヤとルディがよければ男子側、でいいと思うだけど…」
「むぅ…しかしだな…」
難色を示したのはルンデルハウスだ。紳士として姿形が女性な人物と寝所を同じくするのは…ということだろう。
「チノモリちゃんは異論ないのか?」
「別に気にせぇへんからな、僕はその辺」
「むぅ。ミス・チノモリちゃんが気にしないなら…」
しぶしぶ、と声音が言いながらルンデルハウスが首肯する。
とりあえず、野営の難題は一つクリアされたのだった。
――――で。
そんな渋々だった男子2人に僕はジト目で見られている。
何故なら。
「「ズルい」」
「そんなこと言われても」
寝袋に入りながら、ごつごつした地面を嫌って浮かんだらこの言いようである。
でも嫌なもんは嫌なのである。醍醐味とかそういうのはあるんだろうけど。
「ほら、僕のトコ敷く予定やったのは使ってええから」
「しかし、眠ってる間は大丈夫なのか?」
「今までも何回かやったけど、落ちたことはないよ」
「やったことあるのか…」
トウヤに呆れられた気がする。
「
ついでに浮いたまま寝ているところを押したりもされたと聞いた。何やってんだと言いたいが、言ったら言い返されるから言わない。
「まぁ、とりあえず僕のことは心配いらんから、そっちはそっちで頑張って」
「はーい」
トウヤがクッションを引っ張って敷き始める。
ルンデルハウスも手伝い始めたのを見届けて、僕は寝袋に頭まで包まるのだった。