旅立ちから数日。
宿を取った町で五十鈴がライブを開くのをルンデルハウスと一緒に(彼はどうやら音楽センスがないらしい…)眺めたり、割と平穏な旅路が続いた。
僕はライブに参加しなかった。理由?いやぁ、今の身体で歌う美声に自分でびっくりするんだこれが。声優の声帯様様である。遥か彼方の地球に拝んでおく。
だが、平和とはえてして次の争乱のためのインターバルという意味を抱く。
河沿いの森を迂回しているとき、悲鳴が聞こえた気がして僕は顔を上げた。
『気がした』とはこの場合、気のせいという意味ではない。フォトン感応能力から派生した気配察知能力が、『悲鳴に近い感情』を感知した、という意味だ。
「ミノリ。先行する!なんかいる!」
「僕も出る!後詰よろしく!」
ほとんど同時に察知したトウヤが御者席から飛び降りるのを尻目に、森からまろび出てきた大地人たちの頭上を飛翔する。
眼前に見えるのは〈
「トウヤん、そいつら頼んだ!」
「わかった、けどチノモリちゃんは!?」
「奥に追加がおる!」
それだけ言って勢いを止めないまま、森の木々を縫って一直線に目標へ向かう。
目標は
〈
数は15。自然発生の魔物では絶対ない。あってたまるか。エルダー・テイルは昔のゲーム、不親切だったり厳しかったりはするが、こんな理不尽はあり得ない。
冷静な部分でそんな理屈をこねくり回すのを止められないまま、僕は戦闘を開始する。
流れるように『ホーミングダート』。レベル差と
師範システムを使っていないのが幸いした。これでレベル帯も似たり寄ったりだったらどうしようかと。
ダンジョン攻略ならいい、だが今回は大地人を背にした防衛戦だ。出し惜しみしている場合じゃない。
しかし精霊たちは、密集陣形で強行突破しようとする。まるで勝ち目がない僕を無視して、少しでも殺戮を続けようとするかのように。
「嫌な知恵やなぁ!」
前に立って『
範囲攻撃で幾らか数が減ったところに、横合いから術が飛んでくる。
「〈従者召喚:プリンセスレイス〉!」
詠唱が聞こえ、乱入者の
彼女―――従者込みで彼女たち―――の援護もあって、精霊たちは大地人たちに触れることすら叶わず霧散する。
倍以上のレベル差があればこの通り、である。ひとまず息を吐いた。
「チノモリちゃん!」「大丈夫ですか?」
「おう、向こうの人のおかげで、な………」
恐らく
多分責められる謂れはない、と思う。
だって。
「自己紹介しよう。
―――その姿は、あまりにも、知っている顔と似ていて。
―――その自己紹介が、真実でありながら