記録の地平線~記された器~   作:Chirumori

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輝きの代償

「君は〈共感子(エンパシオム)〉への親和性が一際高い身体なんだね。君の戦闘行動や特殊能力には記録にない代物ばかり―――その理由も、これでわかった」

「ロエの姐さん?」

首を傾げると、ロエ2は好奇と真剣の半々の視線でこちらを見る。

「君は、君だけの理で動いている。そうだろう?」

「……まぁ、はい。そう言える部分は多いと思います」

丁寧語になったのは無意識だ。ロエ2の纏う空気が変わっていた。

今までのどこかお茶目な(残念な、とも言う)お姉さんぶりは鳴りを潜め、年長者―――それも、どこか超越的な視点を持つ気配がした。

「今はどうにか折り合いをつけながら―――共通する事項を擦り合わせて誤魔化しながら、この世界の理に辛うじて則って定義づけが為されている」

実に興味深い、とロエ2は続ける。

「〈共感子(エンパシオム)〉の制御、それに由来する理への干渉能力―――或いは修正への抵抗力と言うべきかな?それが君という特異点(シンギュラリティ)の存在をこの世界に許容させている。実に興味深い事例だ」

ロエ2の言葉を脳内で咀嚼する。

確かに、PSO2―――特に旧版の主人公は、タイムスリップのような特殊能力も持っていたが―――

「……全知存在(アカシックレコード)

そうだ。それがあった。PSO2の主人公は、()()()()()()()()()()()

その特性が、今の僕にある?所詮はMMO、誰もがなれる量産型の主人公に?

「へぇ、なるほど。面白い概念だけど、傲慢だね?」

言葉の意味を理解したのか、ロエ2が薄く笑う。

「それについては同感。まぁ……うん、色々腑に落ちることはあったわ」

改めて自分のステータスを見る。その中に燦然と輝く、サブ職業〈ARKS〉を見る。

多分、これがこのセルデシアと僕の―――もとい、PSO2主人公(守護輝士)の妥協点だったのだろう。キャラデータ形式は世界が、その内情は僕が、と。

「しかし困ったな。改めて自覚されたとなると、君はこのセルデシア亜世界の未来を左右しかねない」

「それは、どういう?」

「〈合致(エクリプス)〉―――君たちの間では〈大災害〉だったか?―――以降、この亜世界の未来は流動的で、予断を許せない状態だ。その内でも大きな分岐を、決定づけてしまう可能性が君には―――君の力には、ある」

言っている意味を噛み砕けば、要はこの力―――理をも歪める力は、この世界の命運を決定づけてしまう可能性さえある、ということだろう。

「さらに言えば、君の能力は〈採集者(ジーニアス)〉にとっては喉から手が出るほど欲しい力だろう。なにせその力があれば〈共感子(エンパシオム)〉が取り放題なのだからね」

「待って待って待って?その〈採集者(ジーニアス)〉とやらにバレたら僕は延々付け狙われるってこと?」

「そういうことになる」

「うっへぇ………」

げんなり。珍しく難しい顔をするロエ2に、そんな顔を向けてしまう。

ただでさえ頭が痛い事態が多いって言うのに。

「あぁ、あとそうだ」

「何?」

まだ何かあるのか、と身構える僕。

「〈オデュッセイア騎士団〉もこの街に滞在しているようだ。くれぐれも気をつけたまえ」

「…………もうやだ」

〈オデュッセイア騎士団〉が、あの禍々しい〈北風(ボアレス)の移動神殿〉の持ち主だというのは聞こえていた。

ぐったりとベッドに倒れ込む。もうお腹いっぱいだよ。

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