記録の地平線~記された器~   作:Chirumori

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夜空に戦う

「好事魔多しとは言うけどぉ!!」

物理法則を凡そ無視した急ターンで〈常蛾〉の群れから離脱しながら、僕はヤケクソで怒鳴った。

「ちょーっと多すぎひん!?」

進行方向の蛾に勢いのまま銃剣(ガンスラッシュ)を突き立て、切り払う。

モンスターの数は、百や二百じゃきかない―――どころか、千や二千も下らないだろう。

『ヒバリさん、大丈夫ですか!?』

「ごめん、正直、あんまり大丈夫じゃ、ない、かも!」

数に圧殺されそうだ。掴みかかってきた一体から逃れて光瞬移動(バニッシュムーブ)。出た場所の周りも敵だらけなので、N-ギ・フォイエの無詠唱で追い払う。

そろそろ夜空も見えなくなってきた。

「敵の行動は噛みついてくる通常攻撃と、鱗粉による特殊攻撃!後者は僕には効果なかったから詳細は不明!」

『わかりました、無理はせず!下で迎撃準備が整っていますわ!』

「感謝ぁ!」

連続転移(バニッシュ)しながら下方を視認、そのまま落下せんばかりの勢いで合流する。

つくづくあの第六感に頼っていたんだな、と再認識する。いちいち視認するのが面倒だったらありゃしない。

「お、とりあえず死んでねぇなチビ」

「ご心配どぉもぉ」

何度か跳ねながら勢いを殺して着地した先にいたアイザックが笑う。

前方では既に戦士職がヘイトスキルで蛾たちの注意を引いていた―――が。

「…………なぁ」

「言ってる場合じゃねぇだろ!」

顔を引きつらせた僕の目の前で大剣が振るわれる。

僕に群がろうとしていた蛾がそれに巻き込まれて吹き飛んだ。

―――そう。

どういうわけか、蛾の大半がヘイトスキルを無視してこちらに殺到したのである。

「なんでぇ!?」

「テメェ、ヘイト買いすぎたんじゃないかぁ!?」

「かもしれへんけどぉ!?」

咄嗟に大剣(ソード)のツイストザッパーをチャージし、弾き防御(パリング)に任せる。

考える。

何故、僕がこんなに敵愾心(ヘイト)を買っているのか。

確かに相当なダメージは出した。だが、直継と組んだ時は似たり寄ったりな暴れ方でも大丈夫だったはずだ。『オブスキュアフォーム』もある。

直継よりタンクのヘイトスキルが弱い?だが、トップギルド所属の前衛となればそこまで大差はないはず。

「攻撃の追加効果判明!MP低下だ!」

その答えは唐突に齎された。

MP。〈共感子(エンパシオム)〉。

「コイツらそれでかぁ!!!!」

魂から叫びながら『疾風迅雷(N-ザンディオン)』をぶっ放つ。

「なんかわかったのかぁ!?」

「一言で言うなら特殊ヘイト!こいつら、MP狙っとる!」

「あぁん!?」

「で、僕のMPは諸事情で現在絶賛無尽蔵!」

「チートかよ!」

「やむにやまれぬ事情があるんですぅ!!」

チートとは心外な。僕だって好き好んでこの身体でいるわけじゃない。

いや嫌いかって言われたら否だけど。全然好きだけど。

今なら9割おんなじ相棒もついてくる!お得!

なんてふざけた思考をしている間に、アイザックが怒鳴った。

「テメェら、ヘイトは考えなくていい!火力だけ考えろ!!」

「…つまり僕はこのまま群がられてろと?」

「そういうこった!」

ひょい、と担ぎ上げられた。このまま文字通り誘蛾灯にする気満々だ。

僕は諦観の溜息と共に夜空を仰ぐ。

見えねぇ。

「……厄日や」

「言ってねぇでお前も火力出せ!」

「この体勢からぁ!?」

無茶―――って言ってもそこまでじゃないんだよな。

メイン職業(クラス)が〈守護輝士(ガーディアン)〉になったおかげで、攻撃力や防御力に物理と魔法の区別がなくなったのだ。

つまり今の僕は、〈暗殺者(アサシン)〉水準の法撃(魔法攻撃)力水準からテクニックを使えるということになる。

馬鹿みたいな強化だ。その上、潤沢極まるMPから複合属性テクニックもバカスカ撃てる。

「なるようになれぇーーーー!」

大男の肩の上で叫びながら、僕は全力でテクニックを解き放った。




ついに物魔両刀になりました。なってました、が正しい。
割とこういう勇者系の万能ステキャラが好きだったりします。ド〇クエの勇者?アレは物理ゴリラかベ〇マズンマシーンだよ。
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