レイドエリア〈呼び声の砦〉。
プレイヤータウン、シブヤに顕れた新たなレイドエリアであり、あの〈常蛾〉の巣であるとソウジロウが発見してきた場所でもある。
その攻略パーティに召集された僕は、あわただしく準備をするみんなを眺めていた。
なんせ準備するものが圧倒的に少ない身なので。
「ヒバリさん、空きがあるならこちらも運んでください」
「ほいほい」
リーゼの要請で箱に入った消耗品類をアイテムバッグにシュートする。
「リーゼちゃんが来るんやったら百人力やわ」
「ふふ、お世辞を言っても何も出ませんよ」
クスリ、と笑う彼女を見送って、僕は息を吐く。
蛾、やだなぁ。
とりあえず、蛾100%とかいう苛めのようなダンジョンでなかった、というのは幸運だった。
ついでに言えばトバリの対策―――即ち、MP0/0状態―――は功を奏しているようで、僕が劇的に狙われるような事態にはなっていない。
それはいいのだが………
「なんか……精彩を欠いてない?ギルマス」
「お前がそれを言うか?」
呟きに呆れ声が刺さる。確かに感知能力が支障をきたしている僕に言えた話じゃない。
「けど、せやろ?」
「シロエはヘタレだから」
ナズナの答えにああ、と納得の声が漏れる。確かにシロエはスイッチが入らないとダメなタイプだ。
「ほな、しばらくは雌伏の時かな」
「おや、殊勝だね?」
「ナズナはん、僕ら真っ当な―――って言っていいんかは微妙やけど―――レイドダンジョンはこれがお初の
言いながら『シフタ・デバンド』を始めとするバフをもうひと回しかけていく。
火力役としては
あともう一つ問題があるとすれば………
「地形、最悪すぎん?」
「そもそもダンジョンとして設計されていない場所を、〈
淡々と言いながらテクニックの遠距離火力を前線に送り込むトバリ。
「とはいえ、泣き言を言っている場合でもない」
「せやけどさぁ」
ぼやきながら、レイドは中庭で休息をとる。
やれやれと息を吐き、眼を閉じて壁に背を預けた。
事態の急変を告げたのは、上空から降り注いだ魔物の着地音だった。
同時に壁からも大型の―――
「……奇襲とは、小賢しい真似をする」
「トバリ、どゆこと!?」
即座に飛び出していく直継とソウジロウに
「この襲撃はプリセットされたパターンによるものじゃなく、〈
「割と最悪の展開やんそれっ!?」
言いながら咄嗟に跳躍して天へ昇る。状況を見ようとしたその判断が、僕を生かした。
地を割って新手が出現したのだ。〈
「ダメだな、これは」
隣でトバリが舌打ちする。行儀悪い、とは言えなかった。全くの同感だったからだ。
「―――撤退しますっ。〈フリップ・ゲート〉!」
どうやら生きていたらしいシロエが撤退呪文を行使するのが聞こえる。
それを合図に、視界が暗転した。