「…ここの安全までは脅かせていないようだな」
「そら重畳」
転移酔いと呼ばれる一時的な失調とは無縁の僕ら―――そうでもなければあんな戦闘中に目まぐるしく転移まがいの高速移動なんてやってられない―――が話している間に、レイドメンバーがぽつぽつと口を開きだす。
「みんな、ごめん……」
その中の一つが、嫌に耳に響いて振り返る。
声の主はシロエだ。
その姿は、レイドメンバーの中にありながら、孤独に沈んでいるように見えた。
「シロエ」
名前を呼んだのはトバリだ。その真剣な声に、歩きかけていたヘンリエッタが止まる。
気にせんでもええのに、という視線を向けると、首を横に振られた。
「シロエ」
そんなやりとりを一瞥もせずに、トバリが俯くシロエを至近から見上げる。
「捕らわれるな。進め。〈冒険者〉とは、そういうものだと教えてくれたのは、貴方だ」
一体いつ。彼はそんなことを言っていただろうか、と首を傾げた。
しかしそれに、何か遠い記憶を呼び覚まされたのか、シロエがハッとする。
それに呼応するように、ミノリが。トウヤが。みんなが、次々に声をかける。
みんな言いたいことは同じだ。自分たちは大丈夫だと。
「もうええんか、トバリ」
ほとんど定位置になった隣斜め後ろに戻ってきた相棒に問う。
「言葉にするべきことはした。お前は?」
「………」
正直に言うと、帰るという話が話題に上がった時には、自分の間の悪さに苦笑いしたものだ。
よりにもよってそのタイミングで、帰る場所を捧げてしまったのだから。つくづく自分はついてない。
いや―――
「ヒバリ。私を言い訳にしてもいい」
トバリが心配そうに覗き込んでくるのを見返し、首を横に振る。
「トバリ、それはできひん。それだけは絶対にやったらあかんことやから」
言葉にしなかったところまで理解してくれた相棒が、そっと手を握ってくれる。
「…ありがとう」
「お互い様やろ」
こつこつと、会話に入ってくる靴音に、僕は視線を向ける。
「何?ギルマス。馬に蹴られにでも来たん?」
「それは勘弁してほしいところだけど。この先の作戦、二人にそれぞれ頼みたいことがあって」
「オーケー、何したらええ?」
彼の瞳には、強い光が宿っていた。初対面の時の顔、きっと彼の本気モードの光。
「ええとね―――」
それからの