「……EXPポット、かぁ……なるほど、それで初心者集めとんのかあのギルド」
あの激戦からしばらく。ハーメルンについて少し探るついでに情報収集したところ、『大手戦闘ギルドがEXPポットを所持/使用しているところを見た』という噂を聞いた。
はっきり言って―――胸糞悪さが強くなった感じだ。
「いっそ大地人の村で用心棒人生とかも悪ぅないかもなぁ………ん?」
―――広場が騒がしい。何かあったのだろうかと、僕は歩みを進めた。
〈軽食販売クレセントムーン〉。
所謂ファストフード屋台の形態であるそのお店は、人々の渦の中心にあった。
「あ、いらっしゃいませ。ご注文お伺いしましょうか?」
小ささを活かして野次馬をすり抜けた(実際にはミラージュエスケープの
「あー、えーと…」
少し視線を巡らせ、値段表を発見する。
…よくあるバーガー+サイド+ドリンクのセットで言えば、最安ので金貨40枚弱、一番豪華なので100枚弱か。
「じゃあ、スーパークレセントバーガーとかりかりチキン3本セット、後はブラックローズティーを水筒で」
「はい、かしこまりました!」
どうせなら、と最大金額での注文を受けた丸っこい少女が、ぺこりと頭を下げてお店の方へ戻っていく。
ざっと見回して確認すると、どうやらこのお店は『三日月同盟』というギルドのものらしい。
メンバーの平均レベルはお世辞にも高いとは言えない。積極的に呼び込んでいる
周囲を見回せば、購入した全員がその味に―――否、『味がある事』に感動している。涙している者さえいる。
「…妙やな」
言い方は悪いが…なぜ、こんな中小ギルドがそんな革新的な―――まぁ、元の世界基準で言えば『当然のこと』なのだが―――調理法を?
「お待たせしました!スーパークレセントバーガーにかりかりチキンが3本、水筒入りのブラックローズティーです!」
少し考えこみ始めた僕にさっきの少女が袋に入ったそれらを持ってくる。
「おう、ありがとな。これお代」
アイテムバッグから後ろ手に金貨を取り出し、じゃらっと少女の手に乗せる。
「はい、確認させていただきますね。一枚、二枚…」
100枚近い金貨を律儀に数え始めた少女のステータスを見る。
名は《セララ》、クラスは
「…よかったな」
「へ?何でしょう?」
「いや、ええギルドに入れてよかったなっちゅー話。雰囲気ええやん、この店」
そう言うと、少女は目をぱちくりさせた後、我が事のように照れて頭を掻いた。
「ええと…はい、95枚、確かに確認しました」
「おおきに。ほなお店の方、気張ってな」
「はい、お買い上げありがとうございました!」
『ありがとうございましたー!』
大きな声に見送られ、僕は広場を後にした。
「―――さてとや」
ねぐらにしている廃ビルの中層階で、僕はバーガーを頬張りながらメニューを弄っていた。
チキンは3本とも全て食べてしまった。骨付き肉は食べづらいから昔から苦手だったのだが、この際お構いなしだった。
最後にと我慢して取っておいたバーガーも美味い。美食とは言えないが、この世界なら間違いなく最高峰の味だろう。
―――そう、料理に味がある。他の冒険者からすれば驚天動地なのだろうが、僕は『味がある料理』をもう一つ知っている。
メニューの―――と言っても、いつも使っているPSO2のそれではなく、『エルダーテイル』としてのそれ―――その調理メニューの一番上にしれっと鎮座している『クイックフード作成』だ。
ぶっちゃけこれで作成されるのは一本●足バーより小さなレーションだ。味も『するけど何の味かと形容しがたいぼんやりした何か』としか言いようのないものだ。
それでも味も何もない濡れせんべいよりははるかにマシのため、僕は今日までこれを主食に生きてきた。
そして、素材アイテム段階であれば味がある、というもう一つの常識。これを打ち壊す手順を僕は知っている。
『アイテムバッグに食材系アイテムを入れて取り出す』。この手順を踏むと、素材アイテムとしての情報はそのままでも、その味はレーションと同じぼんやりした何かになってしまう。
これらの情報を統合すれば、自ずと共通項が見えてくる。
「…『メニューを介する』、もっと言えば…『アイテムをデータとして処理する』んがアカンのやろな」
エルダーテイルは古いゲームだ。当然、食材アイテムに味のデータなどあろうはずもない。フレーバーテキストとしては書かれていたかもしれないが。
一方、PSO2NGSのクイックフードには、『味による効果付与』が要素としてあった。尤も、味と言ってもシャッキリだのガッツリだのそれは味なのか?とツッコみたくなるような代物だったが。
つまり、メニューを使わずに調理すればいけるのでは?
それはそれで、何故今まで気づかれなかったのかという疑問は浮上したが、物は試しである。
適当に買ってきた素材肉を、
…ちょっと焦げてしまった。次回からはちゃんと火を熾してやろう、と思いつつ一齧り。
「………硬いし不味いしびっみょ………まぁ適当やったらこんなもんか………」
だが、これで
「料理しようとするとアイテムバッグ使えんのは不便やな………」
ちゃんとアイテムを入れられるバッグ類も買おう。そう決意して、広場の方へ視線をやる。
ここにいても、広場の熱狂と感動がなんとなく伝わってくる。その中心にあるのは、きっとあの〈クレセントムーン〉なんだろう。
―――何かが、変わろうとしている。少なくとも、今よりはきっといい方向に。
その予感を感じて、僕は口元に笑みを浮かべた。
※サブ職業:ARKSはクイックフード作成なんてのがあるので料理技能持ち判定です
そしてLv100なので制限はないです。初心者が持っていいサブ職業ではない。
多分ギャザリング関連で採掘採集釣り狩り系も持ってるし、武器防具も作成は無理でも改造ならできそう。あのさぁ…
チートだって?そうだよ(開き直り)