記録の地平線~記された器~   作:Chirumori

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新ログホラなんてもんがあると知ったので一通り読んでみたんですが
アレ、なろう掲載の本編とは別世界線と思ってよさそうですね。
この小説では基本、本編準拠でやろうと思います。
と意思表示をしたところで本編どうぞ。


母は辛いよ

結論から言えば。

マルメロの戦闘能力はそこまで高くはなかった。

「と、言っているが」

「それは貴方が主だから、彼女の能力が腐っているだけでは?」

トバリに振られたヘンリエッタがやれやれと首を横に振る。

マルメロのステータスはHPと防御力の高い、典型的なタンクタイプだった。レベルの高さもあって、素のステータスはレベル90の〈守護騎士(ガーディアン)〉に匹敵する。

スキル…もといPA(フォトンアーツ)はといえば。

まず、独立に伴って旧版でマロン/メロンのものだったPA(フォトンアーツ)―――庇う技である守れ(シールド)、《回し蹴りに変化した周囲攻撃の打ち払え(ブレイク)、継続ダメージの穿ち抉れ(カース)、追尾攻撃の薙ぎ払え(チェイサー)、そして主砲の打ち砕け(ストライク)――――を使えることはわかった。

守れ(シールド)は、ウェイカーの武器アクション派生スキルであるマルメロペイシェンスとは違い、術者―――つまり僕のダメージを完全にシャットアウトできるのは強かった。その分ダメージを半減させながらとはいえ、マルメロがほぼすべて受けることにはなるが、これは素の耐久の関係上凡そ問題ない。

穿ち抉れ(カース)薙ぎ払え(チェイサー)に関しては従者(ミニオン)ランクらしい火力だった。薙ぎ払え(チェイサー)の追尾性能は高いが、火力自体は妥当としか言いようがない。

打ち砕け(ストライク)は、マルメロギアの段階が増えてかつマルメロ自身の被弾でも溜まるようになった。5回被弾で4段階目、9回被弾で5段階目になる。

4段階目は少し威力が上がり、短時間ながら連射できるようになるメロンストライクのような性能になる。この時点では、旧版のような自爆技ではないようだった。

5段階目では威力が4段階目より10倍ほどになり、爆風範囲も大幅に増大。更に旧版のような自爆技になり、マルメロは60秒くらい戦闘不能状態に陥った。

これ使ったときのみんなの責めるような視線は超痛かった。僕だって積極的には使わないと心に決めた。

っていうか、別にマルメロに無理させなくてもいいしね。瞬間火力は高いが、継続火力という視点で見れば大したものでもない。残念ながら。

そして何より。

「防御性能は僕単体で割と完結しとるからなぁ」

「そこだな」

MMOにあるまじきオールラウンダーな状態の僕だけど、何が一番強いって敵の攻撃に対する無効化能力の高さだ。

「マルメロは盾役(タンク)やけど、敵愾心(ヘイト)稼ぐのは不得意な庇い(カバーリング)特化やから」

そして守るべき主である僕が、よりにもよってその守りを必要としていない。

寧ろ自力で対処してからの反撃が強力なこと、そして最近とみに感知能力が上がっていることで、ノーモーションで使える『マルメロホットパリィ』ですら使わなくなってんだからお察しである。

「………マルメロ、役立たずですか?」

「いや、そういうわけや………ない、って言ってもなぁ…」

また耳をべしょっとして、しょぼくれるマルメロの頭を撫でる。

代替反撃型使役獣(ファミリア)であるマルメロと、自律反撃型である僕は完全に競合している。

っていうか、そもそもマルメロに指示を出す余裕は――――

「……あ」

指を弾く。そういや、そもそも今のマルメロは自分で考えながら動けるじゃないか。

「なぁ、マルメロ。お前、守れ(シールド)を僕以外にできるか?」

「む…やってみるです」

むむ、と眉間にしわを寄せた顔がかき消える。

頭を振れば、アカツキの目の前で両手を広げ、庇う体勢のマルメロ。

「失礼」

適当に小石を拾って投げれば、アカツキに当たる直前で紫の障壁に弾き返された。

「む、なるほど」

「これなら『打ち砕け(ストライク)』のギア稼ぎにも困らんな」

僕以外のカバーができるというだけで、マルメロの仕事はだいぶ広がる。

ついでにさっきの挙動からして、眼前に転移するみたいだし…

「あれ?確か守れ(シールド)の挙動って高速移動だったような…」

「ママ、それは違うです」

曰く。

マルメロ守れ(シールド)は、厳密に言えばNGS版武器アクションが基なため、アレは転移ではなく対象の眼前への再召喚なのだそうだ。

「だが、問題もあるぞ」

アカツキが指摘したのは、純粋な問題だった。

視界の邪魔。確かに、ゲーム画面の三人称視点なら問題にならないマルメロの存在も、強制的に一人称視点となるこの世界では―――人間体になったことで多少は大きくなったのも要因だが―――かなり視界を遮ってしまう。

特に攻撃を受けやすい前衛職にとっては大きな問題だ。風の噂では、どこぞの妖怪眼鏡の口伝はそれを解決できたらしいが、彼は今遥かな海の向こう側だ。

「まぁでも、そこはある意味問題ない」

僕が自信ありげに口角を上げると、みんなが首を傾げた。

「マルメロ、お前をシア譲の護衛に任ずる」

「シア様のですか?」

「応。お前が一番適任や」

「確かに間違ってはいませんが」

レイネシアのレベルは一桁で、更に言えばそもそも戦闘用のジョブについていない。

その耐久は大地人の中でも下から数えた方が早いほどで、筆頭メイドのエリッサの方が上―――と言っても〈冒険者〉からすれば誤差レベルだが―――というぐらいである。

これでは、如何に高レベルな戦士職が護衛についても万が一ということがある。

だが、敵愾心(ヘイト)操作よりも庇い(カバーリング)を主とするマルメロなら。

「しかし、マルメロちゃんは召喚獣(ファミリア)なのでしょう?召喚者とゾーンを隔てて大丈夫なのですか?」

「大丈夫です!マルメロ、時々ママのお部屋でお留守番とかしてたです!」

ドヤ、と胸を張るマルメロ。何してんの?という視線が刺さる僕。

どうやら、母親というのは中々難しいらしい、と僕はため息を吐いた。

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