〈軽食販売クレセントムーン〉の衝撃から、世界は―――もといアキバの街は変化の渦中にあった。
円卓会議の設立。『味のある料理』の秘密の公開。統治のための法や税の制定などなど。
街は活気に満ち溢れ、新発明(というか既存技術の再現だが)が乱造され、と枚挙に暇がない日々が続いている。
そんな、季節が夏に差し掛かったころのことだった。
「40レベル以下の新人プレイヤーに対する支援策の一環として夏季合宿を行う」
広場に張り出された告知を見て、僕は顎に手を当てた。
現状、僕のメインクラスレベルは28。EXPポットをもったいない精神で使っていない身としては、こういう合宿はありがたい。
問題は一つ。
「……僕の特殊な状態をどう隠すかやな………」
ARKSでの使用可能武器は18種。
うち4種は世界観的に論外。ついでに物理職なのでいかにも魔法系な3種も除外。
二刀流はこの世界だと
ついでに格闘系も
現状残ったのは
この中で一番怪しまれなさそうなのは…
「
よりにもよってあんまり使った事ない武器になって僕はぐったりした。
とはいえ、言っている場合ではない。
「合宿申し込んだら、特訓やなしばらく」
合宿当日。
引率らしい女性を見上げて、僕は目を瞬かせた。
見覚えがある。めっちゃある。誰かと思えば〈軽食販売クレセントムーン〉の店長もとい、円卓が一席『三日月同盟』のギルドマスターじゃないか。
そりゃ円卓のイベントだし出てくるよなぁ、でもそこまで重要度高いイベントなのか…?と首をひねっていると…
「…あ、あん時の店員さん」
「へ?あ、お久しぶりです!」
ちょうどあの時接客してくれた店員さんと目が合って会釈する。
「あんたは運営側やのうて参加者側かぁ。そらそうやんな、いくら三日月んとこのメンバーでも、まだ初心者やもんなぁ」
「あ、はい。そうなんです」
こくこく頷く少女に「お互い気張ろなぁ」と手を振って、僕は息を吐いた。
とりあえず、知り合いがいた事には感謝しよう。独りぼっちは寂しいもんな。
―――新人プレイヤーの支援合宿が重要度高いイベントだから円卓ギルドのギルマスが出張って来てるとか、そんな風に考えていた時期が私にもありました。
何故か海水浴する女子組に勢いで巻き込まれて、僕は呆れ顔になった。
なんでも、セララ曰く『実はこっちが発端というか主目的』らしい。真面目に考えてたのがあほらしい。
「ええんかなぁ、男衆まだ仕事しとるのに」
「で、ですよね…」
こくりと、同じく勢いに巻き上げられたミノリという名の少女が不安そうに言う、が…
「なーに二人で暗い顔してんの!夏やで?海やで?もっと楽しまな!」
そう言って元凶の三日月同盟のギルマス―――マリエールという名らしい―――が水をぶっかけてくる。
―――まあ、合宿はまだはじまったばかりだ。一日目くらい羽目を外してもいいだろう。
流されている自覚から目を逸らしながら、僕はため息を吐いた。