記録の地平線~記された器~   作:Chirumori

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初めてのパーティー

ラグランダの社。

それが、僕らの挑むダンジョンの名前らしい。

「12人っちゅー事は…2パーティーに分かれて攻略ですか?」

「そうなりますにゃー」

引率の一人である猫の紳士にして料理人、にゃん太というひねりのない名の盗剣士(スワッシュバックラー)はそう頷いた。

見回せば、セララや昨日会ったミノリをはじめ、いつぞやの侍の少年など見知った顔がちらほらいる。

同じパーティーやとええなぁ、と僕はちょっと祈った。

 

 

祈りが通じたのかはさだかではないが、僕は侍の少年ことトウヤ含めた知り合い全員と同じチームになった。ありがたい。

ただ、前衛は彼一人しかいないのがネックか。これなら両剣(ダブルセイバー)でも担いでくればよかったかもしれない。

他のメンバーは森呪遣い(ドルイド)のセララ、レベル25。神祇官(カンナギ)のミノリ、レベル21。初対面の吟遊詩人(バード)の五十鈴、レベル24。あとは妖術師(ソーサラー)の少年、ルンデルハウス・コード。レベルは23。

レベル28の僕と29のトウヤはちょっと頭一つ抜けている様相だ。

「んじゃ、今から15分間で作戦会議をするにゃ」

にゃん太の号令で、僕たちは集まって面を突き合わせる事となった。

 

 

……見上げる体勢になるのは仕方ない。僕のアバターは140cmしか身長がないのである。

「えーっとなにを会議すりゃいいんだ?」

開口一番、そう言ったのは一番レベルの高いはずのトウヤだった。

「突然いわれても…」

そう言って困り顔になる五十鈴。あれ、もしかして誰も詳しくない?

「ふぅーん。つまりあれだ。諸君。気合を入れればいいんじゃないのかーい?」

「いやなんでやねん!」

思わず思いっきりツッコミの『裏拳閃(バックハンドスマッシュ)』。「おごぉっ!?」というおよそお坊ちゃまらしい見た目とはかけ離れたうめき声と共に、ルンデルハウスは蹲った。

「ちょ、大丈夫ですか!?」

「安心せぇ、ダメージは入っとらん。それより」

ジロッと視線を向けると、完全に同意しようとしていたトウヤの顔に冷や汗が浮かんだ。

「こいつはまだええわ、どうせ僕と同じでずっと独り(ソロ)やったんやろうしな。でもあんたがその調子やったらあかんやろ!」

えっ、と狼狽えた顔になるトウヤ。

「あの、チノモリさん、その辺で…」

「チノモリ"ちゃん"な、そこまで含めて名前やさかい。…ってそれはええねん」

止めに入ったミノリをやんわり押し返す。双子の姉らしい彼女を押しのけてでも、言わなければならないことがある。

「このパーティーの盾はあんた一人やねんぞトウヤん、つまりあんたが引き付け損ねたらイコール前線がなりたたんちゅーことや!」

「わかってるよ、だから―――」

「いーやわかっとらん、あんたがいくら頑張ってもな、攻撃役(アタッカー)が好き放題ばかすか撃ったら、そっちに敵対心(ヘイト)吸われるやろが!それで苦労してきたん忘れたか!」

そこまで一息で言うと、『なんでそれを?』という視線が帰ってきた。あの時のが僕なのはどうやらバレていなかったらしい。

ぎゅっと左袖が掴まれる。見ると、ミノリが今や泣きそうな顔で首を横に振っていた。

………怒鳴ったのは悪かったかもしれない、と頭を掻く。

「つまりやな。敵対心(ヘイト)取られそうって思ったらすぐ言う。それ聞いたら僕らは攻撃控える。そのくらいの打ち合わせはしといた方がええんちゃうっちゅーことや」

多分、本当はもっと色々あるんだろう。そこは詳しくない僕にはわからないことだ。

「ふふ……良い一撃だったよ、ミス・チノモリ…」

「………チノモリ"ちゃん"な」

背後でようやく立ち上がったルンデルハウスにそう言葉を投げる。もう一つのチームは、既に突入したようだ。

不安は残るが、仕方ない。

「ほな、行こか。遅れを取るわけにもいかんしな」

若干微妙な空気のまま、僕らのダンジョン探索は始まった。




ここまで主人公の名前出てきてなかったってマジ?マジですはい。
というわけで主人公の名前は『チノモリちゃん』。『ちゃん』まで含めて名前です。以後よろしく。
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