洞窟に入ってしばらく、前のパーティーの戦闘跡を越えたT字路。
事前説明で『敵が強い』と言われていた左の方に、彼らは向かったらしい。
その足跡を見た男二人が悔し気な顔をする。挑戦心が高いのはいいけど、低レベル組の事を気遣いなよとも思う。
「今日のところはこっちだ。行こうぜ」
「ああ、いつまでも右に曲がるとは思わないでほしいがね」
ここからが本番、と気を引き締める雰囲気がする。ダンジョンは暗く、視界が効きづらい。背後の
視界左上のミニマップ兼レーダーを見る。前方にスケルトン4体。
一番前を歩いていたトウヤが気づく。刀を抜いて飛び出そうとする彼を、「トウヤッ!」と後方からの声が呼び止めた。
足を止めた少年が刀を振るい、それで飛んだ衝撃波がスケルトンにヒットする。
恐らく
斧持ちの3体がトウヤと激突する。
敵の攻撃に構わず、トウヤが刀を振るい撫で斬りにする。気合十分の攻撃に、敵が揃って転倒する。
だが、3体の攻撃を受けたトウヤのHPも20%くらい減った。…え、嘘マジで?そんな食らうの?
「………タンク系やんな?
「〈禊ぎの障壁〉っ」「〈ハートビート・ヒーリング〉っ!」
即座に
その横で、ルンデルハウスが詠唱を完了する。
「次はボクの番だっ!喰らえっ!!〈オーブ・オブ・ラーヴァ〉っ!!」
こちらも気合は十分、放たれた溶岩の玉が流石の火力でスケルトンを一掃していく。
「え?あれ?……おお~っ!!」
それに追随するように、虹色の光弾が杖から放たれ、追加ダメージを与えていくのを見て、ルンデルハウスが歓声を上げる。
「ん?あれあんたのとちゃうん?」
「あ、あれは私の!〈輪唱のキャロル〉っていう援護歌なの」
「すごいじゃないか!ミス・五十鈴っ。ボクの芸術的破壊力を持つ呪文が……」
感動のあまりか、気取ったセリフで興奮を露にするルンデルハウスの横で、僕はゆっくりと弓を引く。
矢を番える必要がないのは楽でいい。弦が引かれ、本来矢を番えるべき場所に光の矢が生まれる。
「………?ミス・チノモリちゃん、何を?」
「……いやもう、それでええわ。興奮しとるとこ悪いけど―――」
弦から手を離す。PAですらない通常攻撃が、光を引いて洞窟を飛び―――
「―――取りこぼし、やで」
ギリギリ生存していた、最後のスケルトン―――弓持ちの後衛で、最初のトウヤの攻撃が射程外だったらしい―――を撃ち抜いた。
どうやら気づいていたらしいミノリがほっと息を吐く。
バツが悪そうな顔をしたルンデルハウスに「次から気ぃつけや」と肩をすくめ、前衛の方へ視線を向ける。
「な、なんだよ」
「次の連中、すぐそこまで来とるわ。いけるか?」
そう言うと、全員が息をひそめて耳を澄ませる。
レーダーに映る数は5体。骨の鳴る音が耳に入り、全員が表情に決意を漲らせた。
「よっし、やってやるぜぇっ!」
「あっ、トウヤ!」
飛び出すトウヤを制止するミノリに、僕は近寄った。
「ミノリん、ちょっとええか?」
「え、はい?」
「トウヤんのシールド残っとるんなら、他の方にシールド構えといって。セララん、トウヤんは頼むで」
「わ、わかりました!」
このパーティーで
狙いが分散する危険がある以上、2枚ある回復の片方はそちらに回した方が余裕が持てるだろう。
そうこうしている内に、ルンデルハウスが放った魔法に反応してスケルトンが前線を抜けてきた。連戦で
向かってくるスケルトンとルンデルハウスの間に割って入り、弓を引いてチャージする。
「ミス・チノモリちゃん!?」
「黙って次の魔法詠唱!とっとと減らすに限るでこういうんは!」
狭い通路のど真ん中に陣取れば、邪魔と感じたスケルトンはこちらに手斧を振り上げる。
それをギリギリまで引き付けて―――
「そらっ!」
三連蹴りの直後に矢を5本放って纏めて怯ませ、回し蹴りで追撃。
更に射撃を繋いでスライディングキックで押し戻し、止めにまた射撃。
PA『
「チノモリちゃん!」
「そっちはそっちで集中しとけ!」
こっちを気にするトウヤの声を一蹴し、続けて『フレンジースクイプ』をノンチャージでぶっ放つ。
光矢の爆発で、こちらに向かっていたスケルトンが纏めて消し飛んだ。
「ミス・チノモリちゃん!一応頭を下げたまえ!」
咄嗟にしゃがむと、頭上を魔法の火球が飛んでいく。それはトウヤに取りついていた数体を吹き飛ばし、粉微塵にしてしまった。
「トウヤん、どない?」
「…やっぱすげぇや、全員吹っ飛んだぜ」
その言葉に、緊張で張り詰めていたパーティーがほっと緩む。
今度こそ戦闘が終わった洞窟内は、静寂に包まれた。
Q.元々物理最高火力のアサシンに更なる物理攻撃力とダメージ倍率を上乗せしたらどうなる?
A.相手は死ぬ
大丈夫か?ちゃんと作戦会議できる?