切札は常に俺の所に…… 作:スカル
日が昇り太陽の光が薄暗い地下回廊に差し込んでいた。そしてその朝日は一人の少女を照らす。
聖園ミカは体がボロボロになろうとも敵を前に銃を構え、日が昇るまでの時間、一体のユスティナ信徒さえ通さなっかった。
身体はすでに満身創痍で呼吸は乱れ、所々から鮮血を流し、その真っ白な純白の制服を鮮血の赤に染め上げていた。
彼女の目の前には、無数のユスティナ聖徒会の信徒たちとバルバラと呼ばれる最も偉大と謳われた聖女を元に作られた個体が立ちはばかっていた。
これがただのキヴォトスに存在する一般生徒なら、彼女は持ち前のゴリラ並みかそれ以上のフィジカルとこれまで培った戦闘能力から、ここまで酷くやられることはなかっただろう。
だがそれはただの一般生徒たちだった場合だ。
彼女らユスティナの信徒たちは、とある組織の手によって作られたミメシスだ。しかもバルバラに関してはとあるメモリによって強化もされている。
そんな無数の敵に対して聖園ミカは自分の命を掛けてまで、粘り強く耐え忍んだ。だがそれも既に終わりの時期に近い。
彼女に向けて一斉に銃口が向けられる。聖園ミカ、彼女の息の根を止めるために………
だが彼女もそのままやられるほどやわではない。自分の愛銃を何があっても放さないように強く握りしめ、目の前にいる討つべき敵に向けて発砲をする。自分がこの状況を覆すことが無理な話なのは彼女は理解している。だからと言って彼女がそれを諦める理由にはならなかった。
聖園ミカの発砲を合図に。彼女に向けて一点集中砲火の弾丸の雨が降り注ぐ。
彼女はそれを回避するために物陰に隠れるがそれも時間の問題だ。
既に周りに遮蔽物として使えるものはなく、なにかに使えそうな物も何もない。
「────ゲホッ……ゲホッ」
彼女の身体は既に限界を迎えていた。長時間における銃撃戦によって域度となく傷ついたその身体は悲鳴を上げ、もはや彼女には体力なんてものは残っていなかった。
このままだと彼女はハチの巣まっしぐらになってしまうだろう。
そんな状況の中で彼女は安堵を抱えていた。自分ができる精一杯の抵抗をし、明け方まで耐え切って見せたのだ。
「きっと、アツコは助けられたんだよね?」
彼女はそんな思考を張り巡らせながら、ふと、ある男子生徒の顔が思い浮かぶ。
彼と超法的機関である[シャーレ]に所属している先生が居るなら、きっとではなく、絶対にアツコや他のアリウススクワッドの面々も無事にハッピーエンドを迎えられているのだろう。
「うん………それなら、いいや………」
ポツリと彼女から本音が漏れだす。最後の最後に、誰かを救うことができたなら、苦痛だらけの自分の人生も、それだけで報われる。そんなことを彼女は思ったのだ。
「札切君、先生……ごめんね、私はここまでかな……」
いっつも弱っちい癖に何かと私に突っかかってくるし、いっつもカッコつけようとしてダサい事をやっている馬鹿な男子。
それでも自分の言葉を曲げずに、本当に正しいと思った事を突き通す強い心を持っていて、常に明るく前を向いていた。私にはそれが酷く羨ましく感じで、気付いたら馬鹿みたいな言い争いをしてたり、喧嘩をしてたりしていた。
初めて出会った時はこんな事になるなんて想像も出来なかったけど、気づいたら私は彼の事を悪い意味からだけど意識し始めていた。
……もっと彼に早く出会って居たなら私はこんな事にならなかったんじゃないか
そんな考えが、余りにも自覚するのが遅すぎた考えが私の頭に過ぎる。胸の中が後悔という気持ちで一杯になる。
ユスティナ信徒の足音が一歩一歩こちらに近づいてきているのが分かる。確実に目の前で息の根を止め、死んだのを確認するためだろう。
「ハハ………今更……なんでだろ……」
胸の奥辺りがズキズキとする。私は魔女だからそんなことをする資格なんて無いというのに。
「みんなと一緒に、帰りたかったのに………」
結局魔女の私にはこの結末がお似合いだったのだろう。
それでも、窮地に陥ったお姫様を運命の人が救う――そんなおとぎ話。子供っぽくて、夢にあふれて……素敵で、胸がときめくような……。
「私もそんな物語の主役になりたかったな………」
バルバラに銃口を向けられる。もう逃げる体力も戦う力もない。このまま私のヘイローが壊れるまで銃弾を撃ち込まれたりするのだろうか。
きっとそれはとても痛いのだろう。
初めて自分が直面する死を感じながら目の前に向けられている銃口を見つめる。バルバラの指に力が籠められ、そのトリガーが引かれようとする。
私は覚悟を決め、目をギュッと瞑る。
「…………ッ!」
───────
───────
───────?
「………あ、れ…?」
いつまでも待っても痛みを感じられない事を私は不思議に思い、目を開けるのが怖いと思いながらも、ゆっくりとその瞳を開いていく。光がゆっくりと私の瞳に入り込んでいき、段々と視界を鳴らしていく。視界がクリアになり、目の前を見ると誰かが私の前に立っていた。
「大丈夫か、お姫さん」
目の前に立っている人から声を掛けられる。
その声は聴けることはもう一度もないと思っていた声、もう一生私に向けられることのないと思っていた声。
これは私が見ている幻覚なんじゃないのかなと思い、目を擦るが目の前に立つ人物の姿は変わることなくそこに立ち続けていた。
「ふ、札切君……なんでここに……?」
よく見ると彼の片手にはキヴォトスでは見たことのない、赤い銃が握られていた。状況から見るにそれで私に銃口を向けていたバルバラの事を怯ませたのだろう。
でも、どうして………どうして私を……?
「なんでってそりゃあ、お前を助ける為だよミカ」
当たり前と言わんばかりの堂々とした顔をしながら彼は私に言う。私みたいな『魔女』にはそんな資格なんてありもしないというのに。
それなのにどうして?
「……どうして私を助けてくれるの?私は『魔女』なんだよ?」
先生や札切君を何回も裏切ってきたし、沢山の人たちを傷つけて来た。私はそんな悪い子で『魔女』だから助けられる価値なんて物はない筈なのに。
どうしてそんなに優しい目で見つめて来るの?
なんでそんな私の事を助けてくれるの?
頭の中で様々の疑問や考えを思い浮かんでは混合していき、結局はバラバラな考えになっていってしまい、そんなことで頭の中がパンクしそうになる。
「────罪を憎んでも人は憎まない」
「え?」
頭の中が混乱してショートしそうになった時、彼からそんな言葉が返される。それは酷く混乱した私の頭を一瞬にして冷却し、落ち着かさせる。
「ミカ、お前は確かに許さない罪を犯したかもしれない。そしてそれでお前が『魔女』なんて言われるのも仕方がないのかもしれない」
「────っ!」
一瞬、心臓が止まったような感覚が私を襲う。もしかしたら、彼ならこんな私でも優しく許してくれるような、そんな淡い幻想が打ち砕かれる。
分かってはいた。やっぱり私は魔女なん────
「でも!お前はまだやり直せる。自分の罪を数えて、しっかりと反省して罰を受けたなら、前のようには行かないかもしれないが、お前はきっとまたやり直せる筈だ」
私の思考を遮るように彼が言葉を続けていく。下を向いて俯いていた私の顔が上を向き、彼の瞳と目が合う。
「で、でも、他の人たちはそれで私の事なんかを、『魔女』である私の事なんか許してくれないよ………」
「そう思ってんのはお前だけだ!少しは周りを見ろ……心配している奴らがいるだろ?」
ナギサちゃんやセイアちゃん、先生。そして札切君。私の大切な人たちの顔が思い浮かんできて、私は瞳に涙を貯める。
「────!!」
そんな先程までの雰囲気は一つの銃弾によって崩される。そんな事は所詮戯言だと言わんばかりに。
そうここは戦場だ。本来先程までの事をやっている時間があった事が奇跡なのだろう。
「札切君逃げて!!わ、私も結構強い方だけど……アレは反則みたいなものだよ?!」
このままでは確実に二人纏めてやられてしまう。しかもヘイローのない札切君に至っては銃弾一発でも重症だ。
私がまた時間を稼ぎながら、札切君を逃す?ダメだ。足がもう動かない。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
このままだと、札切君が死んでしまう────
「安心しろミカ」
チェックメイト、所謂、詰みという状況になり掛けた時、札切君が私の前に立ち、その大きな背中で語りかけてくる。
腰に初めて見る、見慣れない物を装着しながら………
「どうやら"切札"は、常に俺の所に来るようだぜ……!」
『ジョーカー!』
彼は懐からUSBを取り出したかと思うと、それを腰のベルトに装着し、右腕を大きく回して握り拳を構える。しかも彼の顔には模様の様な黒い線が浮かび上がっていた。
「変身……!」
『ジョーカー!』
彼が腰側に移動した左腕でベルトのUSBが装着された所を倒すと、風と共に黒い粒子が彼の身体を覆っていき、彼の身体を変化させていく。
「あ、貴方は………?」
「仮面ライダー…ジョーカー…!!」
彼の言葉と共に戦闘の火蓋が切って落とされた。
▼▼
「────凄い」
正に圧巻、こう私が例えるのは決して間違っては居ないだろう。
圧倒的なスピードやパワーを持っているという訳ではないが、先を見越したような鮮やかなステップで敵の弾丸をかわしていき、着実に攻撃を拳や蹴りで与えていく。
しかも彼が今までに培った格闘技術なのか、それは彼以上のスピードやパワーを持っているかもしれないバルバラさえも圧倒していた。
しかも彼の気持ちが昂るのに答えるかのように、彼のスピードやパワーはだんだんと上がっていっている。
「………ッ?!」
「札切君!!」
だが敵もこのままやられる程やわではない。バルバラが札切の死角を掻い潜り、近距離でリボルバーカノンとM61バルカンによる強力な攻撃を与えられる。
「最高か亡霊ガール……!」
それでも彼はすぐに体制を立て直し、バルバラへと右フック、左アッパー、回し蹴りと、怒涛の攻撃をし反撃をしていく。
『ボム…!マキシマムドライブ…!!』
彼は腰に装着されてあった赤い銃を取り出すと、それに赤いUSBを挿入し、ユスティナ信徒たちに向けてトリガーを引く。
彼の銃口から四つの光の弾が発射され、ユスティナ信徒はそれを狙い撃って、撃ち落とそうとするが、それは全て光の弾によって避けられてしまい、着弾と同時に大爆発を起こす。
「さあ、後はお前だけだ」
バルバラと札切君が向き合う形になり、お互い攻撃のチャンスを見極めるような長い沈黙が流れる。
「………?!」
初手の攻撃はバルバラによるもので、自身の武器であるリボルバーカノンを札切君に投げ付ける事で、彼の隙を作り、そこをM61バルカンによる無数の弾丸で襲いかかる。
「ハアッ!!」
だが彼は逆にその隙を利用する事で近付いてきたバルバラを、後ろにバク転する形で顎に強力な蹴りを打ち込み、バルバラをふらつかせる。
「これで決まりだ……!!」
『ジョーカー…!マキシマムドライブ……!!』
彼はベルトのUSBを引き抜いたかと思うと、今度は右腰に装着されたスロットのような所にそのUSBを装着する。
彼の右足に紫のエネルギーが集まっていき、稲妻のような物が発生する。
「ライダーキック……!!」
彼はバルバラへと駆け出し、飛び上がり、その渾身のキックを決めようとする。
「ハァァァァッーーー!!!!」
バルバラに彼のキックが直撃し、数メートルとものすごい勢いで吹き飛ばし、バルバラの身体にエネルギーによる稲妻がほど走り、爆発が起こる。
正に圧倒的。彼の完膚なきまでの勝利の瞬間だった。
「終わったの……?」
「ああ、先生たちの所に戻ろう」
彼はベルトの倒した所を元に戻すと、風と共に身体を覆う黒い粒子が剥がれていき、元の姿へと戻る。
普段は札切君の事なんてそんな風に余り思った事ないのに、なんだか今は彼がとってもカッコよく見える。
「歩けるか?」
「………あはは、足がガクガクでちょっと無理かな」
私は立ち上がろとすると思ったように足に力が入らず、地面に腰をついてしまう。
「はぁ、しょうがねぇな…………よっと」
「え?!ぇあ、え!」
突然、歩けない私を所謂、お姫様抱っこという形で彼は抱きかかえる。
私は彼のそんな突然の行動に心臓の鼓動は速まり、体温が上がっていくのが分かる。
「も、もっと他の方法とかなかったの……?」
「ミカはお姫様なんだろ?」
彼はニヤっと意地悪な笑みを浮かべ、此方を見てくる。今の私の顔はきっと人に見せられた物ではないのだろう。
「別に嫌だったら背負ったりなんだりで変えるけど、どうする?」
「……………このままがいい」
「へいへい、分かったよ。お姫様」
主人公の事を軽く紹介のコーナー
名前 札切光 (ふだきりこう)
年齢 18歳
出身地 風都
札切は左翔太郎の追っかけみたいなのをやっていた。
札切の使っているベルトや銃、ボムメモリはシュラウドから譲り受けた物。
なんで左翔太郎ではなく、札切光がジョーカーメモリ(T2)を持っているのかについては、AtoZ後、左翔太郎の手元には既にジョーカーメモリ(T1)があり、運命の元、翔太郎の次に適合率の高い札切の元に流れ着いた。(エターナル撃破直後)
映画の描写だと、エターナルメモリしかメモリブレイクされている描写しかなかったので、ここは完全に自己解釈。
因みにAtoZの時、札切にもしっかりと運命のメモリが惹かれあっていたが、結局それは使用しなかった。
そのメモリは殆ど答えだけど、"S”って言うイニシャルを持ってるよ!
一体なんだろなー(すっとぼけ)
反響良かったら続き書くよ!!