ガールズ&パンツァー 女神達のメッセージ(再投稿)   作:熊さん

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女子会です その2

 

 だいぶ、みんなのお腹も膨れてきた。

 食べるペースも遅くなり、みんな思い思いに椅子に腰掛け小グループで話をしている。

 

 西住みほがジュースのおかわりをしようとテーブルに近づいたその時に、遠藤祐子が寄ってきた。

 

「西住先輩、私から先輩に聞きたいこいとがあるんですが」

「なに? 祐子ちゃん」

「ずっと疑問だったんですけど……。なぜ、大洗女子学園戦車道チームのチーム名は動物になっているんですか? さっき、澤隊長が『最初はAチームだった』って言われました。それが、なぜ動物のチーム名になったんですか?」

 

 遠藤祐子の質問に、それまでほかの話をしていた大森翔子達も一様に西住みほの傍へ近づいてきた。

 秋山優花里と冷泉麻子、五十鈴華らは笑っている。

 西住みほが話し始める前に、武部沙織がずいっと前に出てきた。

 

「それについても、私から説明しましょう」

 

 武部沙織の行動に、冷泉麻子が呆れたように言った。

 

「……まるで、沙織の独演会だな」

「麻子さん、いいんです。沙織さん、私にかわってお願いします」

「オッケー!」

 

 西住みほからバトンを受けた武部沙織は、澤梓に質問をしたのである。

 

「梓ちゃんは、なぜだか知ってる?」

「はい、角谷会長から『今度から隊長車は大洗で有名な「あんこう」をチーム名にしたから、他のチームも動物の名前をつけよう』って言われましたけど」

 

 その澤梓の返事を聞いて『初代あんこうチーム』メンバー全員が、いきなり笑い出したのである。

 

「あはは……やっぱり。角谷会長は、そう言ったんだね」

「うふふ……ずいぶんかっこいい言い訳ですわね」

「確かに、そう説明したのなら全然不自然じゃないですね」

「……うん、ずいぶん事実と違う」

 

 この先輩達の発言は澤梓にとって意外だったようで、とても驚いて西住みほに聞き返した

 

「えっ……えっ、西住隊長、違うんですか?」

「うん、全然ちがう」

 

 西住みほが笑って、キッパリと言ったのである。

 

 『3代目あんこうチーム』の5人は興味深々である。

 大洗女子学園戦車道チームの隊長チームの別名『あんこうチーム』。

 普通隊長チームはそのまま「隊長チーム」とか「一号車」とか「Aチーム」とか呼ぶのが普通である。

 まったく関係のない『あんこう』が、どうして隊長チームの別名になったのか。

 

 武部沙織は、再度澤梓に質問した。

 

「梓ちゃん、初試合の『聖グロリアーナ女学院戦』覚えてる?」

「はい、絶対に忘れられない試合です」

「その時のチーム名はなんだったでしょう?」

「あっ……アルファベットでした」

「そうだよね。そして、その試合で角谷会長から出された、試合に負けた時の罰ゲームの事は覚えてる?」

「はい、……西住隊長が『あんこう踊り』を大洗の街で踊ることでした」

 

 『初代あんこうチーム』全員が笑って頷いている。

 

「えっ、西住先輩が『あんこう踊り』を踊る……」

 

 遠藤祐子達『3代目あんこうチーム』全員は、お互いの顔を見合わせた。

 『あんこう踊り』を知っているものにとっては、めちゃめちゃな罰ゲームである。

 北川亜希子もさっきの訓練指導の罰ゲームで踊らされたことを思い出して、顔が真っ赤になった。

 浦田恵は、まるで自分が負けてしまったかのように恐る恐る武部沙織に尋ねてみた。

 

「でも、負けちゃったんですよね」

「そっ、負けちゃったの」

「それじゃ、踊ったんですか? 西住先輩?」

「うん。「あんこうチーム」の5人で……いえ、違ったね。会長さん達も一緒だったね。全部で8人で踊ったんだったね」

 

 西住みほが、浦田かなえの質問に答えた。

 そして、武部沙織の口から『あんこうチーム』の名前の『本当の由来』が語られた。

 

「そのあとね、5人みんなで決めたんだよ。『もう二度と「あんこう踊り」を踊らないようにしよう』ってね。そして、角谷会長に言ったの。『私達5人は戒めをこめて、Aチームを今から「あんこうチーム」って呼ぶことにします』ってね」

「……そうだったな」

 

 冷泉麻子が懐かしそうに呟いた。

 そして、今度は西住みほが話を続けた。

 

「そしたら、角谷会長はなぜか喜んでね。『そうしたら私達は、亀にしよっか』って言っていたの。そうして気付いたら、いつの間にか全チームに『動物の名前』がついていたって訳なの」

 

 遠藤祐子はなぜか特別な、そして不思議な気持ちになった。

 

「それじゃあ、あの『あんこうチーム』って名前は、西住先輩達にとっては辛い思い出なんですね」

「うん、結構きつい思い出だね。でも、おかげで『絶対負けられない』って名前でもあるけどね」

「……確かにそうだな」

 

 西住みほの返事と、それに同意する冷泉麻子であった。

 五十鈴華と秋山優花里がお互いの顔を見て、懐かしそうに話した。

 

「でも、なんだかそれも今となったら懐かしいですね。ねぇ、優花里さん?」

「はい! そうですね、五十鈴殿。でも、そのまま『あんこうチーム』だけが引き継がれていくなんて思わなかったですね」

「私は、てっきり大洗の街のシンボルだから、隊長車は『あんこう』じゃなきゃいけないものと思ってました」

 

 2代目の隊長である澤梓にしたら、全くもって当然の配慮である。

 それに対して『初代あんこうチーム』全員からは異論は出ず、逆に喜んでいたのである。

 

「梓ちゃん、もちろんそれでいいと思うよ」

「うん、そっちの方が、かっこいいもんね」

「はい! 自分もそれでいいと思いますよ」

 

 西住みほと武部沙織、秋山優花里の声であるが、最後に冷泉麻子がピシリと締めた。

 

「……でも、遠藤隊長! この『チームの名前』の本当の意味を知ったからには、もう負けられないな」

「はいっ!」

 

 遠藤祐子は、直立不動になって返事をしたのである。

 

 どうしても、先輩たちに聞きたかった疑問が消えた。

 しかも、それはとても深い意味を持っていたなんて……。

 冷泉麻子の最後の「もう負けられないな」の言葉に「確かにそうだ」と遠藤祐子は思った。

 

(あんこうチームは決して負けないチームにならなくちゃいけないんだ)

 

 その決意は、他の「3代目あんこうチーム」のメンバーも同じだったのである。

 

 

 秋山優花里と五十鈴華、武部沙織の3人は『料理の話』で盛り上がっていた。

 3人は、武部沙織の解説で「この料理の下ごしらえは・・・」とか「味付けは・・・」とか食べながら話していた。

 そこに、浦田かなえ、恵の姉妹に、北川亜希子が寄ってきた。

 

「先輩達。何を話しているんですか?」

「いやぁ、私の解説でちょっと料理の説明してたの!」

 

 武部沙織がちょっと自慢げに、後輩3人に言った。

 それに対して浦田恵が、武部沙織に質問したのである。

 

 

「やはり、料理は勉強しておいたほうがいいんでしょうか?」

「うん、絶対、将来に彼氏が出来た時、食べさせてあげたくなると思うよ」

「……でも、沙織さんはいつになることやら……」

 

 五十鈴華が武部沙織の顔を見てしみじみと呟いた。

 それを聞いた武部沙織は、口を尖らせた。

 

「料理のできない華にだけは、言われたくないよ!」

「自分は思うんですけど、もし2人がレストランを開いたとして、料理は武部殿、盛りつけは五十鈴殿が担当してやるなら、絶対に流行ると思うんですけどね」

 

 秋山優花里の想像プランが提案された。

 それに武部沙織が食いついた。

 

「あっ、ユカリン! それ、いいね。華、一緒にレストランやんない?」

「ウフフ。面白そうですけど、本業をおろそかにはできません」

 

 やんわりと五十鈴華は拒否したのである。

 そして、北川亜希子が五十鈴華に聞いた。

 

「五十鈴先輩は『五十鈴流』のお華の先生なんですよね?」

「……はい、皆さん達、華道に興味はありますか?」

 

 五十鈴華は優しく後輩達に質問した。

 それに対して、浦田恵が逆にお願いを五十鈴華にしたのである。

 

「五十鈴先輩、逆にかなえちゃんを、少しでも女の子らしくするために、砲手の訓練だけでなく、華道も教えてやってください!」

 

 その発言に浦田かなえは、恵に対して猛然と抗議をした。

 

「ひどいよ、恵! 私よりも翔子のほうが絶対先だと思うよ」

 

 当の大森翔子は、ちょうど冷泉麻子にジュースを運んでいた途中だった。

 浦田かなえにいきなり名前を振られて、びっくりして立ち止まって振り向いた。

 

「なんだ、かなえ? なんか用か?」

 

 その言葉遣いを聞いた北川亜希子は、大きくため息をついた。

 

「……確かに、翔子ちゃんの方が先か。」

「でも、案外、彼氏ができると女の子っぽくなるかもしれませんよ」

 

 秋山優花里が助け舟を出したのだが、武部沙織が考え込んだ。

 

「でも、結局、女の子っぽくってどういう事なんだろうね?」

「……教養とか、立ち振る舞いとかですか?」

 

 五十鈴華も分からないようだ。

 

 

 ……結局、誰にもわからない。

 

 

 浦田恵が言った。

 

「うーん。難しいですよね」

「彼氏がいる人に、聞いてみればいいんでしょうか?」

 

 北川亜希子が、至極もっともなまとめた意見を出した。

 その意見に対して秋山優花里が笑って言った。

 

「じゃあ、今のところ、こればっかりは私達にも後輩の皆さんには教えてあげられないってことですね」

「そうですね。『先輩失格』ですわね」

「もう少し待っててね、きっと私が教えてあげるね」

 

 秋山優花里が結論をつけると、五十鈴華と武部沙織が同意して、笑って言った。

 そこへ、全く興味がなさそうな顔でスイーツを食べていた冷泉麻子が、いきなり、この武部沙織の言葉に、ツッコミをいれたのである。

 

「……沙織には、それはできないと思う」

「なによ麻子! それ、どう言う意味よ?」

 

 大いに抗議する武部沙織に、冷泉麻子は追い討ちをかけた。

 

「……反対に、教えてもらう立場になると思う」

 

 この冷泉麻子のキッパリとした言い方に、みんな大笑いになった。

 西住みほも、涙目で笑っている。

 一人、武部沙織は頬をふくらませている。

 遠藤祐子、大森翔子、浦田かなえ、浦田恵、北川亜希子の5人は、この『女子会』に参加して本当に良かったと思っていた。

 

(伝説の「初代あんこうチーム」のメンバーも、高校生の時は私達と同じなんだ。いろんなことをみんなで経験してきたんだ)

 

 今日、先輩達のいろんな面がわかっただけでも最高の『女子会』である。

 『3代目あんこうチーム』の5人は、心からそう思っていた。

 

 

 楽しい時間は、なぜ、あっという間に過ぎるのだろうか。

 時間はもう8時を回っていた。

 ごく自然に解散の流れになり、みんなで協力して使用した食器類の後片付けをした。

 マスターは「しなくていい」と言ったのだが、そういうわけにもいかないのでみんなで手分けして、店の掃除まで行なった。

 最後に、マスターにもう一度お礼を言ってお店を出た時はもう9時近くになっていた。

 

 店の外に出た西住みほは、こんなに楽しいひとときを過ごしたのは久しぶりだったので、心から武部沙織に感謝していた。

 

「沙織さん、今日はありがとう! 私、本当に楽しかった!」

「いやいや、まだまだ、本番はこれからよ、ミポリン!」

 

 武部沙織がそう言うと、秋山優花里と五十鈴華、冷泉麻子も続けて言った。

 

「そうですとも。西住殿、まだ、ピロートークが待っています。」

「……ほんと、楽しみです」

「……夜は、私の時間だしな」

 

 ニコニコ顔の5人にむかって、澤梓と『3代目あんこうチーム』全員が一列に並んで挨拶をしに来た。

 

「先輩達、今日はごちそうさまでした!」

「楽しかったです」

「ありがとうございました」

「ごちそうさまでした」

「先輩、ありがとうございました」

 

 武部沙織はニッコリ笑って、後輩の顔を見渡して言った。

 

「よかった。楽しんでもらえて……。みんな、気をつけて帰ってね!」

「はい。それでは失礼します。おやすみなさい!」

 

 そこで、西住みほが思い出したように、澤梓に声をかけた。

 

「あっ、梓ちゃん!」

「はい、隊長」

「再来週の日曜日、私が来る日にビデオを準備しといて」

「わかりました」

「じゃ、おやすみなさい」

 

 空は、満天の星空である。

 『初代あんこうチーム』と別れて、澤梓、遠藤祐子、大森翔子、浦田かなえ、浦田恵、北川亜希子は、帰り道でさっきの『女子会』について話していた。

 

 澤梓が、夜空を見上げながらとても楽しそうに言った。

 

「みんな、楽しかったね!」

「はい。とっても楽しかったです!」

「先輩達のチームワークっていうのが、よくわかりました」

 

 遠藤祐子と浦田かなえが、はしゃいだ声で返事をした。

 そして北川亜希子と浦田恵が顔を見合わせて言った。

 

「そうだね。みんな、息がぴったりっていうか、なんて言ったらいいのかな?」

「うん、みんな、お互いの事よく知ってるっていうのかな?」

「私達も、あんなふうになれたらいいな」

 

 大森翔子が歩きながらポツリと言うと、澤梓が自信を持って言ったのである。

 

「なれると思うよ。貴方たちなら……」

 

 その励ましの言葉に「3代目あんこうチーム」全員が力強く答えた。

 

「はい、きっとなってみせます」

「そうだな。なってみせる」

「うん、その為には今の自分をもっと鍛えなきゃ……」

「そうだね。今度先輩全員が揃うとき、絶対びっくりさせてやるんだから……」

「3代目あんこうチームの底力見せてやろうね」

「うん、絶対にね!」

 

 澤梓は、この後輩達の決意を誇らしく思った。

 この団結する心が、チームを強くしていくのである。

 西住みほが、指導に来る再来週の日曜日。

 「初代あんこうチーム」5人の本当に見納めとなる。

 一日一日がカウントダウンになるのである。

 

(みんな、頑張るのよ)

 

 澤梓は心の中で、彼女たちに応援のエールを送った。

 

 

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