ガールズ&パンツァー 女神達のメッセージ(再投稿)   作:熊さん

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追撃戦です

 

 砲身で威嚇しながら、まっすぐに森の小道へ走っていく『ティガーⅠ』。

 大きく右旋回をしながらそれを見ていた『Ⅳ号中戦車』は、体勢を立て直し『ティガーⅠ』を追いかけ始めた。

 

 『Ⅳ号中戦車』の車内では『初代あんこうチーム』全員が、見事な回避運動を見せた『ティガーⅠ』に対して驚きの声が上がった。

 武部沙織は呆然としながら、操縦手席に座る冷泉麻子に聞いた。

 

「……麻子。今の見た?」

「……ああっ。……あれは動きは小さいが、確かに『戦車ドリフト』だ」

「……すごいです。自分達以外の『戦車ドリフト』を初めて見ました」

 

 秋山優花里は徹甲弾を持ったまま呟いた。

 そして、照準器から顔を離して五十鈴華が言った。

 

「……まさか照準が合う直前で、戦車ごと滑らせて照準器から逃げるなんて……」

 

 西住みほも、メンバー全員と同じ気持ちだった。

 

「……みんな、本当に強くなった……」

 

 『初代あんこうチーム』の5人はそれぞれ感慨深げであった。

 今まで、彼女達は小さく震えていた小鳥と思っていた。

 それが立派な鳥になって、自分達の手の中から彼女達は飛び立とうとしているのである。

 

 森の小道にむかって全速力で走っていく『ティガーⅠ』を見て西住みほは、笑顔で呟いた。

 

「祐子ちゃん! それ『いい作戦』よ!」

「確かに、それしかこちらと互角に勝負する方法はないですね」

 

 秋山優花里が、西住みほの方に振り向いて笑って言った。

 

「……祐子ちゃん達は、吊り橋に向かう気ね」

「……まずは、私を封じるつもりのようだな」

 

 武部沙織と冷泉麻子が続けて言った。最後に五十鈴華が呟いた。

 

「……そのあと持久戦に持ち込む気なんですね」

 

 さすがは『初代あんこうチーム』である。

 『ティガーⅠ』の一連の行動をみて、あっという間に遠藤祐子の作戦を見抜いたのである。

 

 今のところ『初代あんこうチーム』と『3代目あんこうチーム』の戦力を考えたところ『3代目あんこうチーム』が優位なのは、戦車の性能だけである。

 つまり、5人+1台で6の数字で対比させた場合、初代あんこうチーム:3代目あんこうチーム=5:1で、圧倒的に『初代あんこうチーム』の方が有利なのである。

 それを、冷泉麻子を封じることで、4:2にし、そして、持久戦に持ち込み、3:3に数字を互角まで持ち込もうとしているのだ。

 

 西住みほは車長席から皆を見下ろしながら、激を飛ばした!

 

「みんな、絶対、彼女達に吊り橋を渡らせてはダメ!」

「はいっ! 吊り橋までの道筋で撃破しないと、こっちの優位性がなくなってしまいます!」

「麻子! 頑張って!」

 

 秋山優花里の声と武部沙織の声である。

 冷泉麻子が再び操縦桿を握り締め直した。

 

「……わかった! 少しでも距離を詰めるから撃破の方は任せる!」

「任されましたわ!」

「了解です!」

 

 冷泉麻子の激に、五十鈴華は照準器の中をにらみ直し、秋山優花里は徹甲弾を薬室に装填しながら答えた。

 流石、今まで何度も激戦の中をくぐり抜けてきた頼れる仲間達である。

 何も言わなくても西住みほの作戦を瞬時に理解してくれるのである。

 西住みほは、キューポラから身を乗り出しながら「作戦開始」を宣言した。

 

「それでは『追撃戦』を開始します!」

『了解!』

 

 西住みほの号令とともに『Ⅳ号中戦車』のエンジンが力強くうなりだした。

 それと共に、グンとスピードを上げた『Ⅳ号中戦車』。

 先に、吊り橋に通じる森の小道に入った『ティガーⅠ』を追って追撃を開始した。

 

 森の小道に入った『ティガーⅠ』のキューポラから、追ってくる『Ⅳ号中戦車』を双眼鏡で確認していた遠藤祐子は、呟くように皆に状況を報告した。

 

「……『Ⅳ号』接近中! ……スピードを上げた……作戦見抜かれた?」

「作戦見抜かれても、これしか私達には方法がないよ! 祐子ちゃん!」

 

 北川亜希子が振り向きながら、遠藤祐子を励ました。

 それに対して、気を取り直して遠藤祐子は矢継ぎ早にメンバーに指示を出した。

 

「そうね、そうだよね! かなえちゃん、恵ちゃん! 威嚇射撃で私達が吊り橋を渡るまでの時間を稼いで!」

『了解!』

「翔子ちゃん! 吊り橋を突破するまで、頑張って最短ルートの道で逃げて!」

「了解!」

 

 遠藤祐子の指示が終わったあと、北川亜希子が皆にむかってさらに言った。

 

「カーブが近づいてきたら私が報告するからね! みんな、バランスをとって!」

『了解!』

 

 砲塔を『Ⅳ号中戦車』にむけて、全力で逃げる『ティガーⅠ』

 キューポラから身を乗り出して、迫り来る『Ⅳ号中戦車』のエンジン音を聞き漏らさないように神経を尖らせる遠藤祐子。

 そこへ、車内のメンバーから次々と報告が入ってくる。

 

「装填完了! 発射準備良し!」

 

 浦田恵が報告するのと同時に、浦田かなえが報告する。

 

「照準合わせ中……」

 

 そこへ、北川亜希子が叫ぶように連絡する。

 

「もうすぐ、左カーブに入るよ!」

「了解! 照準修正……砲塔右旋回!」

 

 浦田かなえは、集中している。

 北川亜希子の報告をうけて、先に砲塔を動かし、あくまでも照準器の中に『Ⅳ号中戦車』を閉じ込めるつもりなのだ。

 

《ドッガーン!》

 

 迫り来る『Ⅳ号中戦車』から、豪音と共に徹甲弾が発射された。

 逃げる『ティガーⅠ』は、その着弾寸前に左カーブに入った。

 

《クワッキーン!》

 

 カーブに入った『ティガーⅠ』の左履帯カバーを、徹甲弾がかすって甲高い音を立てた。

 

 車内で次に装填する徹甲弾を持ったまま、浦田恵がそのかすった甲高い音に驚いて呟いた。

 

「……うわっ、あぶなかった……」

 

 すると、浦田かなえは、照準器の中のシュトリヒを見つめながら考えていた。

 

(見ていなさい! 今度はこっちの番よ。『Ⅳ号』がカーブから出てきたところ狙って……!)

 

「照準合わせ中……照準固定良し!」

 

 浦田かなえは、遠藤祐子にむかって叫ぶと、遠藤祐子が即座に指示を出した。

 

「かなえちゃん、任意発砲許可します。頼みます」

「了解! ……集中……集中」

 

 浦田かなえは、深呼吸をして、深く息を吐き始めた。

 『Ⅳ号中戦車』のエンジン音から、まもなくカーブを抜けてくることが分かった 遠藤祐子は、浦田かなえに向けて報告を叫んだ!

 

「かなえちゃん! 『Ⅳ号』もうすぐカーブから出てくるよ!」

「了解! ……発射!」

 

《ドゥガーン!》

 

 轟音とともに『ティガーⅠ』から、徹甲弾が発射された。

 

 ところが、発射した徹甲弾は『Ⅳ号中戦車』の、こちらからむかって右側部を抜けて外してしまった。

 『Ⅳ号中戦車』が「戦車ドリフト」でカーブを抜けてきたからだ。

 

 照準器の中で猛スピードでカーブを抜けてきた『Ⅳ号中戦車』を見た浦田かなえは、唖然としながら呟いた。

 

「……信じらんない。『戦車ドリフト』でカーブを抜けてくるなんて……」

「かなえちゃん! 次、いくよ。次!」

 

 浦田かなえは浦田恵の声に我に返った。

 

(くっそー! 今度こそ当ててみせる!)

 

 浦田恵は決意を固めて、再び『Ⅳ号中戦車』に照準を合わせた。

 しばらくは細かいカーブが続き、お互い砲撃できなかった『ティガーⅠ』と『Ⅳ号中戦車』。

 そこへ、前方を睨んでいた北川亜希子から報告が入った。

 

「みんな! もうすぐ吊り橋前の開けた広場にでるよ! 吊り橋への道は1本だから私達の進路が先輩達にわかるはず! 吊り橋への道に入るところを絶対狙われるよ!」

 

 後ろ向きだった遠藤祐子は、その連絡から浦田かなえ、恵のコンビへ指示を出した。

 

「恵ちゃん、かなえちゃん! 連射で『Ⅳ号』の足止めをして!」

『了解!』

 

 返事を聞いた遠藤祐子は、続けざまに大森翔子へ指示を出す。

 

「翔子ちゃん! 先輩達は絶対吊り橋への道に入る直前を狙ってくるから、いつでも停車できるようにしてて!」

「了解! 合図を頼むぞ!」

 

 クルッペから広場への道を睨んで大森翔子は、遠藤祐子へ指示を依頼した。

 

「了解!」

 

 遠藤祐子達『3代目あんこうチーム』の最初の難関である。

 吊り橋へ向かう為の森の小道は、進んできた道から少し右カーブになる。

 その間には、遮蔽する木のない開けた広場なのである。

 『初代あんこうチーム』は、確実にここでの勝負を狙ってくるに違いない。

 

「広場に出るよ!」

 

 北川亜希子の報告に、双眼鏡を覗きながら『Ⅳ号中戦車』の姿を確認した遠藤祐子は、その推定距離を車内のメンバーへ報告した。

 

「『Ⅳ号』接近中、距離約500m!」

「恵! 最短で次弾装填お願い!」

「了解!」

 

 浦田かなえは妹の恵へ指示を出し、すかさず恵は次弾の装填準備に入る!

 

「照準合わせ……照準良し!」

「撃て!」

《ドゥガーン!》

 

 今度も、左にステップを踏まれ『Ⅳ号中戦車』にうまく避けられてしまった。

 しかし、今度は『Ⅳ号』は応戦してこない。

 逆に、スピードを上げたのである。

 

 遠藤祐子は叫ぶ!

 

「……スピードが上がった。みんな! 確実に狙ってくるよ!」

「次弾装填完了、発射準備良し!」

「照準良し!」

 

 浦田恵とかなえが順に叫ぶ!

 

「撃て!」

《ドゥガーン!》

 

 今度は『Ⅳ号中戦車』は急停車をした。

 浦田恵は、ちょうど、戦車の進行方向の前の地面をめがけ徹甲弾を発射したので、停車するより避ける方法がなかった。

 

「もうすぐ森の小道に入るよ。距離約100m!」

 

 北川亜希子が、メンバー全員にむかって叫ぶ!

 遠藤祐子は、じっと『Ⅳ号中戦車』の砲塔と砲身の動きを観察していた。

 さっき、急停車した場所から『Ⅳ号中戦車』は動かないのである。

 そして、ゆっくりと砲塔の動きが止まり、砲身が動いている。

 

(『サジタリウス』が飛んでくる!)

 

 『Ⅳ号』の砲身の動きが止まった!

 

「停車ぁぁぁ!」

《ドッガーン!》

 

 『Ⅳ号中戦車』の主砲が火を噴く直前に、遠藤祐子はありったけの大声で、大森翔子に命令を伝えた。

 大森翔子は、「とりゃ!」の掛け声とともに 操縦桿を手前に引いた。

 『ティガーⅠ』は、つんのめるような体勢で急停車した。

 すると『ティガーⅠ』の目前に「ドーン」という爆発音とともに、大きな穴が開いた。

 

「翔子ちゃん! 急いで全速前進!」

「了解!」

 

 遠藤祐子が叫び、大森翔子が返答する!

 

 『ティガーⅠ』は大穴を避けて、待望の「吊り橋への森の小道」に入った。

 ここからは狭い上に、道が小刻みに曲がりアップダウンするので、威嚇射撃ができない。

 『ティガーⅠ』はもう、ひたすら逃げるのみである。

 砲塔も定位置に戻し、ひたすら小道を爆走していく『ティガーⅠ』。

 しかし、あの『Ⅳ号中戦車』のエンジン音が、少しずつ近づいてくる。

 細かいカーブを曲がるたびに、エンジン音が大きくなってくるのが、はっきりわかるのだ。

 遠藤祐子は車長席に座って、ひたすら早く吊り橋が現れるのを待っていた。

 

(早く……早く、吊り橋に行かなきゃ)

「『Ⅳ号』との距離は、どれくらいあるのかな?」

 

 浦田恵の疑問に、北川亜希子が答えた。

 

「エンジン音からすると、そんなに離れてない気がする」

「どうする? 祐子ちゃん。森の中に逃げ込んで、チャンスを待つ?」

「……」

 

 浦田恵の質問に、遠藤祐子は答えられずにいた。

 遠藤祐子が下を向いて思案しているところに、また「ドカーン」という音と一緒に『Ⅳ号中戦車』からの徹甲弾が『ティガーⅠ』のエンジンルームギリギリをかすめて、地面に着弾した。

 

「もう少しなのに……、目の前に来ているのに……」

 

 遠藤祐子が悔しそうに呟いた。

 しかし、大森翔子が遠藤祐子に激を飛ばした!

 

「おい! 祐子、弱気になるな! 絶対吊り橋の向こう側へ渡ってみせるから、私を信じろ!」

 

 遠藤祐子以下、他のメンバーは、この大森翔子の激にハッとして彼女を見た。

 遠藤祐子は「全てを任せる」といった感じに彼女に言った。

 

「……翔子ちゃん。……わかったよ。お願いね!」

 

 クルッペから外を見ながら、大森翔子はちょっと意地悪くニヤリと笑って言った。

 

「……相当みんなには怖い思いさせるぞ!」

「ううん。大丈夫。怖くなったら目を閉じる!」

「翔子ちゃんに、全て任せる!」

 

 浦田かなえ、恵が続けて、大森翔子にむかって答えた。

 そうしていると、北川亜希子から報告が入った。

 

「前方に吊り橋を目視確認!」

 

 『ティガーⅠ』の目の前に、ついに吊り橋が現れた。

 遠藤祐子たちの最後の難関である。

 吊り橋は、普段通る時は長くは感じないのだが、今日はとてつもなく長く感じる。

 『ティガーⅠ』はジグザグに移動しながら、一目散に吊り橋を目指す。

 その間にも、『Ⅳ号中戦車』からの砲撃は何度か続いている。

 

 大森翔子は一人、クルッペから見える吊り橋の小さな入口を見据えながら独り言を言い始めた。

 

「落ち着け! 落ち着け! 落ち着け! ……必ず通れるんだ! 訓練の通りに……訓練の通りに……」

 

 そして、意を決したかの如く、大森翔子はメンバー全員にむかって叫んだ!

 

「みんな! 吊り橋に突っ込むぞ!」

 

『いっっけぇぇぇー!』 

 

 大森翔子の掛け声とともに『ティガーⅠ』は、吊り橋の入口にむかって、全速力で直進しだした。

 追ってきた『Ⅳ号中戦車』は、砲撃をやめて事の成り行きを見守っている。

 

 『ゴワーン』、『ガキーン』『キュラキュラ』

 様々な音が、ぶつかり合う。

 今『ティガーⅠ』が猛スピードで、吊り橋を渡っていく。

 吊り橋は、大きく動き、たわむ。

 しかし『ティガーⅠ』はそんなことはお構いなしに、ただ走っていく。

 大森翔子は、ただひたすらクルッペの外に見える吊り橋のゴールを目指す。

 全身から、汗が吹き出す。

 他の4人は目をつぶって、ひたすら『ティガーⅠ』が、吊り橋を渡りきるのを待っている。

 『ゴワン』と、大きく吊り橋が揺れた。

 しかし、ついに『ティガーⅠ』の履帯が吊り橋の出口の地面を捉えた。

 爆音とともに『ティガーⅠ』は、吊り橋を渡りきった。

 

「よっっっっっっしゃぁぁぁぁぁ! みんなぁ!渡ったぞぉぉぉ!」

 

 大森翔子の歓喜の叫びに、遠藤祐子と北川亜希子が、彼女に対して感謝の言葉をかげる。

 

「翔子ちゃん! ありがとう!」

「翔子ちゃん! すごすぎる」

 

 同じように、浦田かなえと恵も「ありがとう」と大森翔子に対して言った。

 そして、浦田恵はホッとするように呟いた。

 

「先輩達も、さすがに攻撃してこなかったね」

「恵ちゃん! 安心するのはまだ早いよ。早くカーブへ逃げ込まなきゃ!」

 

 冷静に北川亜希子が言うと、遠藤祐子も「その通り」といった風に頷いた。

 

「そうだね。翔子ちゃん、お願い!」

「任せろ!」

 

 『ティガーⅠ』は、ジグザグに移動しながら、カーブを曲がっていったのである。

 

 『Ⅳ号中戦車』から、この無謀とも思える『ティガーⅠ』の行動を見ていた『初代あんこうチーム』のメンバーは、それぞれ感じたことを言った。

 

「怖っ! 祐子ちゃん達、よくあのスピードで渡ったわね」

「……大森のやつ。なんて無茶を」

 

 武部沙織と冷泉麻子は驚きながら言った。

 しかし、西住みほは違った感想だった。

 

「でも、逆に言うと、それだけ決心が固かったんだね」

「はい。西住殿の言う通りだと思います。もし、渡らなければ負けるのは必至でしたから……」

 

 秋山優花里が西住みほの方に振り向いて言うと、同じく五十鈴華も言った。

 

「彼女達の勇気に感服しますわ!」

「華さん、優花里さん。此処からは、彼女達と砲撃の根比べ合戦になります」

 

 西住みほは、このまま吊り橋を渡ると危険だと判断して砲撃戦を選んだ。

 秋山優花里と五十鈴華は、即座に車長の判断に従った。

 

「……どちらが、先に集中力を無くすかですね」

「任せてください。そう簡単には、根はあげませんよ……」

 

 

 それから、2輌の隊長車同士の砲撃合戦が始まった。

 『Ⅳ号中戦車』の方は砲撃終了のたびに冷泉麻子が細かく戦車の位置をかえて『ティガーⅠ』の照準から戦車を逃がしていく。

 『ティガーⅠ』の方は、カーブと盾になる森の木々を利用し、身を隠しつつ砲撃してくる。

 一体どれくらいの時間が経ったのだろう。

 30分? 40分? ……どちらもまだ根を上げない。

 

 砲撃の合図を出しながら、西住みほは心から感心したように呟いた。

 

「……さすが、華さんと優花里さんが教えただけのことはありますね」

 

 五十鈴華も秋山優花里も同じ気持ちだった。

 

「ここまで長引くとは思いませんでしたわ」

「もう連射は無理だろうと思っていると、連射してきますからね。気が抜けません!」

 

 西住みほは少し考えてから、メンバー全員に指示を出した。

 

「……こうなれば、私たちも向こう側へ移動します! 華さん!『ティガーⅠ』の前に、木を倒して、道をふさぐことはできますか?」

「……やってみます」

「麻子さん! 『ティガーⅠ』が、倒れた木を乗り越える間に吊り橋を渡れますか?」

「……大丈夫だ。大森より早く渡ってみせる!」

 

 その返答を聞いた西住みほは、凛とした口調で命令を下した。

 

「向こう側へ渡ったあと『ティガーⅠ』が出てきて、停車したら『アレ』を仕掛けます! もうほとんど時間がないはずです。一発勝負です!」

『了解!』

 

 『Ⅳ号中戦車』は、残りわずかな試合時間に勝負をかけるつもりである……。

 

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