ガールズ&パンツァー 女神達のメッセージ(再投稿)   作:熊さん

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私達からの伝言です

 

 西住みほの驚くべき言葉に澤梓は、思わず聞き返してしまった。

 

「西住隊長! 『世界で誰もやったことがない』って、それはどういうことなんですか?」

 

 その質問は予期していたのであろう、西住みほはニッコリと微笑んでいる。

 同じように『初代あんこうチーム』のメンバーは、全員笑っている。

 西住みほは澤梓にむかって、すまなそうに話を始めた。

 

「この『技』は、本当は梓ちゃんたちにも教えておかなきゃいけなかったの。……でも、結局いろいろあって教えてあげられなかった……そして、この『技』は、私達5人が揃わないとできないのよ」

 

 西住みほはそこまで話すと、今度は『現戦車道チーム』全員の顔を見渡して言った。

 

「だから皆さん達に、私達は『先輩』としてちゃんと伝えておかなければならないんです!」

 

 西住みほのその強い口調に、その場にいる全員が身を引き締めた。

 澤梓は皆の気持ちを代表するように、西住みほに対して凛とした言葉で質問をした。

 

「西住隊長。その『技』というのは、いったい何なのでしょうか?」

「梓ちゃんは覚えているよね。私達が初優勝した時黒森峰のフラッグ車を撃破した瞬間のこと」

「はい! 覚えています。先輩達が『Ⅳ号』の履帯を飛び散らせながら、フラッグ車の懐に飛び込み、エンジンルームを打ち抜いた『アレ』ですか?」

「そう」

 

 西住みほは、澤梓の答えに満足したように頷くと、次の瞬間、その場にいる後輩達全員が驚愕することを言った。

 

 

「実はね……、私達5人は、その時にやった『技』を改良したものを完成させているのよ!」

 

 

「えっ……えっ、西住隊長、それって本当なんですか?」

 

 澤梓は、驚きのあまり声が大きくなった。

 

 初優勝した時の決勝戦の相手『黒森峰女学園高校』のフラッグ車、前年MVPの西住まほの乗る『ティガーⅠ』。

 学園の存続の為に勝利が必須だった西住みほがその時に選んだ、決死の『技』である。

 しかし、あの『技』は実は『玉砕特攻の技』なのである。

 こちらは、履帯を破壊するので動けなくなるし、良くても相撃ちになる『技』である。

 

(あの『技』の『改良バージョン』……、一体どんな『技』なんだろう?)

 

 澤梓はあの時のことを思い出しながら西住みほに話を続けた。

 

「隊長。……私、全然知りませんでした」

 

 すると、西住みほの後ろに並んでいた『初代あんこうチーム』のメンバーから質問への答えが話されたのである。

 まず五十鈴華が、最初に口火を切った。

 

「はい、梓さん達は知らないはずです。私達はこっそり訓練していましたからね。……『技』が完成したのは、翌年の戦車道全国大会の直前でした」

 

 次に冷泉麻子が話をつなげた。

 

「……下手に後輩達に見せても無駄だからな。……ちゃんと『技』ができなきゃ全ての意味がない」

 

 そして、最後に西住みほが2人のあとを受けて、笑いながら話を続けて言った。

 

「それで完成はしたんだけど、結局試合では使うことがなかったの。……っていうより『使わずに済んだ』って、言ったほうがいいのかな」

 

 西住みほは、話を続ける。

 

「この『技』を使う時は『2つの条件』がいるの。……1つ目は『目標の敵戦車以外に、他の戦車の邪魔が入らないこと』! それと、もう1つ、実はこっちが重要なんだけど……『敵戦車が停車していること』! この2つの条件がそろえば、この『技』を出すことができるんです」

 

 遠藤祐子は、さっきの卒業試合の中で見た西住みほの表情を思い出した。

 

(そうだった……、私達は、先輩達の正面で停車していたんだった。西住先輩の笑顔は、条件が揃ったからなんだ)

 

 遠藤祐子達『現戦車道チーム』全員はドキドキしている。

 澤梓も知らない『女神達の技』。

 絶対の自信に裏付けされた『初代あんこうチーム』のメンバー全員の笑顔なのである。

 

「じゃあ、今から始めるね」

 

 西住みほはそう言うと『現戦車道チーム』に対して指示を出していった。

 

「私達の相手戦車は『ティガーⅡ』にします。一年生チームを1チーム借りるね。できれば、その中に一番射撃が上手な子がいればいいな。……『ティガーⅡ』は、停車して待っててね。あと本気で撃ってきていいからね」

 

 そうして一年生チームの中から、射撃が上手なチームが選ばれた。

 相手チームが決まると西住みほは、再び『現戦車道チーム』全員を見渡し話を始めた。

 

「この『技』は、戦車の中の5人の気持ちがひとつにならないとできません! ほんの数秒の間に流れる感じで5人がそれぞれ持っている力をつないでいくからなんです。皆さん、よく見ててね。本当に久しぶりだから、多分1回しかできないと思うの」

 

 そこまで言うと、澤梓の方をむいて西住みほは、お願いを伝えた。

 

「それじゃ、梓ちゃん! 記録の方をよろしく頼むね」

「はい。了解しました!」

「それと、戦車の中の様子がわかるように、無線は開放状態にしておくから、声の方も録っておいてね」

 「はい」

 

 『初代あんこうチーム』は『Ⅳ号中戦車』に、一年生チームは『ティガーⅡ』に乗り込むと訓練場の中央にむかって移動を始めた。

 2輌の戦車は、車間を400mほどあけて相対峙した。

 しばらくして無線傍受機から、武部沙織の声が聞こえてきた。

 

「……ヤッホー、みんな、聞こえてる?」

「はい。聞こえています」

 

 遠藤祐子が返事をすると、武部沙織はちょっと申し訳なさそうに連絡してきた。

 

「『ティガーⅡ』の一年生ちゃんチームには申し訳ないね。……でも、間近で見れるからいいか」

 

 武部沙織の連絡のあと、今度は西住みほからの通信が入った。

 

「梓ちゃん、ビデオと録音を再度お願いするね」

「了解です!」

 

 澤梓は、通信に返事をしたのである。

 

 

 いよいよ『初代あんこうチーム』があみ出した『技』が披露される。

 澤梓はビデオのモニター越しに『現戦車道チーム』全員は、双眼鏡を食い入るように覗き込んでいる。

 

―――戦車無線―――

 

みほ 「じゃあ、みんな準備いい?」

沙織 「いいよ」

華  「はい」

優花里「準備完了です」

麻子 「……いつでもいいぞ」

みほ 「よし、……じゃあ始めようか」

 

 澤梓や『現戦車道チーム』一同、ゴクリとつばを飲んだ。

 そして無線から聞こえてくる、西住みほの声が緊張した命令口調の声になった。

 

―――戦車無線―――

 

みほ 「準備報告!」

沙織 「周囲確認、目標車両以外、敵車両発見されません!」

優花里「初弾装填完了! 発射準備良し!」

華  「砲塔、砲身異常なし、照準合わせ良し!」

麻子 「駆動系等異常なし。発進準備完了!」

 

 西住みほは、キューポラから身を出してメンバーに号令をかけた。

 

―――戦車無線―――

 

みほ 「いくよ! パンツァー……」

みほ 「フォー!」

沙織 「フォー!」

優花里「フォー!」

華  「フォー!」

麻子 「フォー!」

 

 5人が同時に掛け声をかけた瞬間『Ⅳ号中戦車』は、猛然と『ティガーⅡ』にむかって突進を始めた。

 『ティガーⅡ』の照準が合うたびに『Ⅳ号中戦車』は左右にステップを踏みながら、照準を外していく。

 

 遠藤祐子は双眼鏡を覗きながら思い出していた。

 

(さっきと同じだ……、左右にフェイントをかけながら『Ⅳ号戦車』は近づいていく)

 

―――戦車無線―――

 

みほ 「撃て!」

華  「発射!」

 

《ドッガーン》

 

 『Ⅳ号中戦車』から75mm徹甲弾が『ティガーⅡ』にむけて発射された。

 

《クワッキーン》……《ドッガーン》

 

 『ティガーⅡ』の装甲で弾かれ、そのあと『ティガーⅡ』からお返しの徹甲弾が打ち返された。

 

―――戦車無線―――

 

みほ 「……右!」

 

 西住みほが、短く『Ⅳ号中戦車』の進路を指示した。

 言ったと同時に『Ⅳ号中戦車』は、右側にステップを踏んで砲弾をかわした。

 

 遠藤祐子は『Ⅳ号中戦車』のこの一連の動きを冷静に見ていた。

 

(ここも一緒。前面装甲で砲弾を弾き返したから、もう大丈夫と思って、私は『撃て!』の命令を出した……それを右に回避されたから、すぐに砲塔回転の指示を出した……)

 

 『ティガーⅡ』の砲塔が『Ⅳ号中戦車』のあとを追って、右に旋回し出したその瞬間……

 

―――戦車無線―――

 

みほ 「……左!」

 

 今度は『Ⅳ号中戦車』が一気に左に向いた。

 『Ⅳ号中戦車』は車体が大きく傾き、今度は『ティガーⅡ』の左側部に向かいだした。

 『ティガーⅡ』の砲塔が、慌てて『Ⅳ号中戦車』を追いかけ反対方向に動き出したが追いつけない。

 

(そう……。いきなり今度は左側に『Ⅳ号』が向かいだしたから、かなえちゃんに、逆方向の指示を出した……だからかなえちゃんは「『Ⅳ号』が消えた!」って叫んだんだ)

 

 遠藤祐子は双眼鏡の中の『Ⅳ号中戦車』と『ティガーⅡ』の動きを見ながら思い出していた。

 

―――戦車無線―――

 

みほ 「戦車ドリフト!」

麻子 「了解!」 

 

 

『ああっ!』

 

 澤梓をはじめ、双眼鏡越しに『Ⅳ号中戦車』の動きを見ていた遠藤祐子達は、その場で一斉に声を上げた!

 

 『Ⅳ号中戦車』は、砲塔を『ティガーⅡ』に向けたまま「戦車ドリフト」で、一気に『ティガーⅡ』の左側部に近づいていく。

 『ティガーⅡ』の砲身は、その近づいてくる『Ⅳ号中戦車』のスピードに全く追いつけない!

 

―――戦車無線―――

 

優花里「次弾装填完了!」

みほ 「照準! エンジンルーム!」

華  「了解!」

 

 『Ⅳ号中戦車』は砲身を動かしながら『ティガーⅡ』の後方部に回り込み、土煙を上げて滑り込んでゆく。

 それと同時に砲身の動きが止まり『ティガーⅡ』のエンジンルームに照準があった。

 

―――戦車無線―――

 

みほ 「……撃て!」

 

《ドッガーン》

 

 豪音と共に『ティガーⅡ』のエンジンルームに向けて、徹甲弾が発射された。

 黒い煙が『ティガーⅡ』のエンジンルーム回りに立ちのぼる!

 

―――戦車無線―――

 

みほ 「防御!」

華  「了解!」 

 

《ウィーン! ガチャ!》

 

 『Ⅳ号中戦車』の砲身が発射直後に動きだし、向かってくる『ティガーⅡ』の砲身が、それ以上『Ⅳ号中戦車』に合わないように、ブロックする形で止まった!

 「バシュ!」という音とともに『ティガーⅡ』の砲塔から白旗が上がった。

 

―――戦車無線―――

 

みほ 「各部点検!」

沙織 「無線異常なし!」

華  「砲身、砲塔異常なし!」

優花里「装填部異常なし!」

麻子 「駆動系異常なし!」

 

 

 澤梓はビデオのモニター越しに……。

 遠藤祐子ほか、現戦車道チームは双眼鏡越しに……。

 この「奇跡」とも呼べる『初代あんこうチーム』の『技』に呆然とした。

 『ティガーⅡ』に載っていた一年生も各窓から一斉に顔を出し、唖然としている。

 無線から聞こえる声が、急に緊張が溶けたような、いつもの西住みほ達の声に戻った。

 

―――戦車無線―――

 

みほ 「ふうっ……。久しぶりだったけど、なんとか上手く見せられたね」

麻子 「……あいかわらず、これをやるときは緊張するな」

華  「私もドキドキしました!」

優花里「よかったです!」

沙織 「チームのみんなぁ! 見てくれたぁ?」

 

 武部沙織の呼びかけに、我を忘れていた一同は、ハッとして、澤梓が無線に答えた。

 

「……見ました。ビデオもばっちり撮りました……」

「よかったぁ! 今からそっちにもどるね!」

 

 『ティガーⅡ』に乗っていた一年生を車体にのせて『Ⅳ号中戦車』が広場に向かってくる。

 

 ブリーフィング広場に戻ってきた『初代あんこうチーム』は再び整列をして皆の前に立った。

 そして西住みほは「現戦車道チーム」全員の顔を見渡して、微笑みながら話し始めた。

 

「初めて、この『技』を見て、皆さんびっくりしたかと思いますが驚くことはありません。私達はこの『技』ができる為の基礎的な事は、皆さんに全て訓練指導の中で伝えています。……今、皆さんに見せたこの『技』を、私達からの伝言(メッセージ)にします」

 

 そう言った西住みほは、今度は凛とした口調で全員に思いを伝えた。

 

「この『技』は、無線でわかったように、5人の気持ちがひとつにならないと絶対に成功することができません! 皆さんも同じ戦車に乗っている仲間と心を一つにしていってください」

『ハイっ!』

 

 遠藤祐子以下『現大洗女子学園戦車道チーム』は声を揃えて、大声で返事をした。

 澤梓も『3代目あんこうチーム』も『現戦車道チーム』の全員が思った。

 ものすごい贈りものである。

 この『技』を習得できれば、1対1の格闘戦の秘密兵器になる。

 発動する条件は今のところ厳しいが、それだって改良していくことができるのだ。

 『3代目大洗女子学園戦車道チーム』全員に、また新たな大きな目標ができたのである!

 

 西住みほ、武部沙織、五十鈴華、秋山優花里、冷泉麻子の5人は、今すべてを伝え切った満足感でいっぱいだった。

 ずっと、心の中で引っ掛かっていたものが、すっととれた気がした。

 西住みほが、一通り話し終えたことを感じた武部沙織は、みんなの前にすっと移動すると話し始めた。

 

「それでね、みんなにもう1つ、プレゼントがあるんだよ!」

 

 武部沙織のこの言葉に、また『現戦車道チーム』全員がざわつき始めた。

 

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