ガールズ&パンツァー 女神達のメッセージ(再投稿)   作:熊さん

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好きになってくれてありがとう

 

決勝戦を明日に控えた最後の訓練を終えた戦車道チームは、大洗女子学園の大食堂に集まった。

 そして、決勝戦に向けての最後の作戦会議をチーム全体で行った。

 決勝戦での作戦の優先順位は『敵フラッグ車の捜索』『敵車両を分散させることによる戦力の低下』そして最後に『地形を最大限に利用した各車両の能力を出す事』が話し合われた。

 

 それが済むと生徒会主催で『3代目大洗女子学園戦車道チーム』の激励会が開かれたのである。

 

 戦車道が復活した年、初めて決勝戦に進出した大洗女子学園のメンバーはその前日の夕食に、なぜか全員が『とんかつ』に関した食事を全員が摂っていたのであった。

 優勝したあとになって、メンバー同士のちょっとした会話の中でそれが分かり、それ以来、この『とんかつ』を中心にした夕食を決勝戦前日に全員が食べる事が伝統になりつつあった。

 

「それでは、今から決勝戦に向けての激励会を行います」

 

 生徒会長を中心にした生徒会役員が段取りを組んで激励会が始まった。

 

「まず、理事長から皆さん方に激励のお話があります」

「えっ……、理事長って」

 

 戦車道履修者全員がざわめいた。

 

 実は、理事長と呼ばれる人物を誰も見たことはないのである。

 理事長は入学式や卒業式など学校の重要行事には、重い病気という理由で欠席していた。

 これらの学校行事はすべて生徒会によって取り仕切られていたので、この生徒会長の発言は驚き以外の何ものでもなかった。

 皆、起立して直立不動になり、大食堂入口を凝視している……。

 そして、3人の人物がドアを開けて入ってきた。

 

「はーい! どうもどうも戦車道のみんな! よく頑張って決勝戦までたどり着いたね! おめでとさん!」

「会長……じゃなかった『理事長』! もう少し威厳を持ってください!」

「そうです! 『理事長』としての初お披露目なんですから……」

「小山、河嶋、堅いこと言うなよ、私達『戦車道のOG』なんだ。もっとざっくばらんにいいじゃん」

 

 戦車道チーム全員がポカンとなった。

 現れたのは、なんと「初代カメさんチーム」の角谷杏、小山柚子、河嶋桃であった。

 そして、角谷杏が中心に、右に小山柚子、左に河嶋桃が戦車道チームに対峙するように正面に立った。

 

「えっと、まず自己紹介からね……。今年6月から理事長の大任を任されました角谷杏です。そして、皆からむかって右に立っているのが副理事長の小山柚子、左が渉外・広報の河嶋桃」

 

 角谷杏から紹介された2人は、ペコリと頭を下げた。

 

「病気が重くなってた前理事長からどうしても……って言われてさ。私達、3人で話し合って通っていた大学を辞めて引き受けたんだ。まあ、理事長っていてもいなくても、学園の運営にはあんまり関係ないからさ。引き受けたってわけ!」

 

 角谷杏は豪快に笑いながら話した。

 

「今日は理事長としてではなく、戦車道OGとして皆を激励に来たわけよ!」

 

 遠藤祐子達『3代目戦車道チーム』全員は黙って角谷杏の話を聞いている。

 

「理事長になってまもなくの頃かな……前の理事長と話をしていてね、その中で生徒会長から『戦車道チームの為に、西住ちゃん達が集まるから『Ⅳ号中戦車』を使わせて欲しい』って電話があったって聞いたんだよ。私、本当に嬉しかった……。皆、本当に大洗女子学園の戦車道を好きなんだって思うと、涙が出てきたんだよね」

 

 角谷杏の傍で立っている小山柚と河嶋桃も頷いている。

 

「西住ちゃん達には本当に辛い思いをさせたからね。『絶対負けられない』っていうのは想像することができないくらいのプレッシャーだったはずからね。でも、今ここにいる皆はそれも含めて西住ちゃん達からいろんな事を教えてもらったはずだから、明日の決勝戦を迎える事が出来たんだと思う。だから明日はその教えられた事を忘れないで、全力で戦って欲しいんだ。後悔しないようにね」

 

 そして、そこまで話した角谷杏は川嶋桃の方をチラリと見て、また話し始めた。

 

「それでさ、その西住ちゃんから皆宛に手紙が届いているから、河嶋に読んでもらうね」

 

 河嶋桃は懐ろから一通の手紙を取り出すと、一歩前に出てきて手紙を読み始めた。

 遠藤祐子達は、ビシッとした直立不動となった。

 

 

「拝啓、大洗女子学園戦車道チームの皆さん。

 高校戦車道全国大会決勝戦進出、本当におめでとうございます。長かった今年度の全国大会もいよいよ決着が着くことになりました。皆さん達にお会いしてから、随分と日々が過ぎました。厳しい訓練だったと思いますが、皆さん本当に頑張ってくれました。私も皆さん達の勝利の報を聞くたびに、あの指導訓練を思い出します。しかし、思い出すのは皆さん達のとても素敵な笑顔ばかりなんです。

 『大洗女子学園の戦車道を好きになってくれて、本当にありがとう』

 私は、どうしてもこの言葉を伝えたかったので筆を取りました。決勝戦の相手は『黒森峰女学園高校』です。相手に不足はありません。全力でぶつかってください。そして最後の最後まで『大洗女子学園戦車道』を貫いてください。皆さんの健闘を熊本から祈っています。敬具、西住みほ」

 

 毛筆で書かれたとても綺麗な文字である。

 読み終えた河嶋桃は、遠藤祐子の前に歩いていくと、その手紙を渡した。

 遠藤祐子は、手紙を受け取ると45度の最敬礼のお辞儀をした。

 

 河嶋桃は再び角谷杏の傍に戻ると、それを見た小山柚子が話し出した。

 

「明日の決勝戦開始までの段取りと終わってからの事は全て生徒会に委任していますので、生徒会長よろしくお願いしますね」

「はい! わかりました」

「じゃあ、私達からのお話はこれでおしまい! 生徒会長あとは宜しくね!」

「はい。それでは食事会を始めます。皆さんお座りください」

 

 戦車道チーム全員が椅子に腰掛けるのを見届けると、待機していた有志の同級生達が『トンカツ定食』をそれぞれのテーブルに運び始めた。

 全員に配られたのを確認した生徒会長が、再び話を始めた。

 

「それでは、大洗女子学園戦車道チームの明日の健闘を祈って食事会を始めます。合唱!」

『いただきます!』

 

 全員が手を合わせて発声すると、楽しい食事会が始まった。

 皆が「おいしいね」「トンカツ大好きなの」と話しながら楽しく食事をしている。

 

 遠藤祐子は、受け取った西住みほからの手紙を順に「3代目あんこうチーム」メンバー全員に回している。

 読み終わった『3代目あんこうチーム』のメンバー全員の顔が引き締まった表情になっている。

 

「西住先輩、ずっと気にかけてくれているんだね」

「多分、西住先輩だけじゃないと思うよ。戦車道OGの先輩達全員だと思うよ……」

 

 浦田かなえの発言に、北川亜希子が答えた。

 

「そうだね、理事長はOGの先輩達全員の気持ちを伝えに来たんだ……」

 

 遠藤祐子はそう言ってメンバーが読み終わるのを確認すると、今度は戦車道チームの全員が読むように指示を出して手紙を回した。

 西住みほからの激励の手紙を読んだチーム全員は、一様に気を引き締めた顔つきになった。

 

 食事会が終わり、生徒会長は再びマイクをとって話を始めた。

 

「それでは、最後に遠藤隊長から皆さんへ一言お願いします」

 

 それを聞いた遠藤祐子は、全員の前に対峙して立った。

 戦車道メンバー全員起立して直立不動になった。

 

「いよいよ明日は決勝戦です。皆さんの力で決勝戦の場に立つことができることを嬉しく思っています」

 

 そこまで礼儀正しく話した遠藤祐子だったが、一つ呼吸を整えると元気よく皆に激を飛ばした。

 

「みんな! 明日は絶対に負けないよ! 『大洗女子学園の戦車道』は最高なんだからね!」

『オオーっ!』

 

 『3代目大洗女子学園戦車道チーム』全員が、拳を空に突き上げジャンプしたのである。

 結束は固まった……。

 それぞれに決意を秘めて明日の決勝戦を迎える……。

 

 

 夜遅く一時的に雨が降ったが、翌日は快晴になり決勝戦にふさわしい天気になった。

 ここは、戦車道の聖地と呼ばれる『富士総合演習場』の出場戦車整備倉庫。

 『大洗女子学園チーム』の戦車群は、念入りに各チームによって最終点検がなされている。

 大洗女子学園の出場戦車は、合計12輌。

 主力戦車は、フラッグ車であり隊長車の『ティガーⅠ(あんこうチーム)』1輌。そして『ティガーⅡ(ぞうチーム、キリンチーム)』2輌に『M4戦車A1型(犬チーム、猫チーム、うまチーム)』3輌の計6輌である。

 サポート戦車として『Ⅲ号突撃砲F型(カバチーム)』『三式中戦車(ありくいチーム)』『ポルシェ・ティガー(レオポンチーム)』の各1輌ずつの計3輌。

 索敵メインの『八九式中戦車甲型(あひるチーム)』『38t軽戦車ヘッツァー改造型(カメチーム)』『M3中戦車リー(うさぎチーム)』の各1輌ずつの計3輌。

 

 大洗女子学園の保有するほぼ全ての戦車で決戦に挑むのである。

 対する『黒森峰女学園高校』は最大出場枠一杯の20輌である。

 両校の戦力を比較して、素人目に見ても話にならないのだが、毎年大洗女子学園はこの戦力差を覆し、好勝負に持ち込むだけの技量を持っているのである。

 

 

「みんなぁ! 準備はできたぁ?」

『はーい、準備完了しました!』

 

 遠藤祐子の言葉に、各チームが元気よく返事をした。

 そして、遠藤祐子の前に集まり、各チームごとに整列した。

 

「あと1時間後に試合が始まります。昨日皆で立てた作戦通りに、冷静に落ち着いて試合に望みましょう」

『ハイっ!』

 

 メンバー全員の元気な返事を聞いた遠藤祐子は、あらためて隊長としての責任を感じた。

 そして遠藤祐子のまわりに、各チームの車長達が集まってきた。

 最終の作戦打ち合わせである。

 

 遠藤祐子を含め12名の車長は、試合エリアの地図を片手に丸く円になり座った。

 

「今回のスタート地点は、市街地からになります。黒森峰は市街地の東側、私達は西側です。昨日打ち合わせた通り、索敵隊の『カメさん』『うさぎさん』はそれぞれ市街地北側のバイパスへ、『あひるさん』は石橋に別れて索敵をお願いします」

『ハイっ!』

 

 遠藤祐子が立てた作戦は3段階に分かれている。

 まず大前提が『フラッグ車がどこにいるのか』から考え出されている。

 黒森峰女学園は『西住流戦車道』を色濃く反映している学校である。

 その為フラッグ車が先頭を切って攻め込んでくる場合は、短期決戦へ持ち込むつもりである。

 しかし、遠藤祐子は黒森峰女学園の決勝までの試合データを検討していく中でひとつの懸念を持っていた。

 黒森峰女学園のフラッグ車自身による敵戦車撃破データが全くないのである。

 確かに隊列を組んでの戦闘の中にフラッグ車はいるが、なぜ撃破データがないのか。

 つまり、フラッグ車は攻撃には参加せず、敵戦車の動きからの連絡指示に特化している。

 他の戦車は、それに忠実に従い試合を進めてきているのではないか。

 遠藤祐子は、そう考えたのである。

 その上で考えたことは、黒森峰女学園の決勝戦での戦い方のもう1つの可能性。

 それは、フラッグ車が完全に『雲隠れ』してしまうかもしれないということである。

 決勝戦は、両校とも最大20両の参加が認められている。

 準決勝までは、大洗女子学園も車両数だけで言えばなんとかなった。

 しかし、決勝戦においては約倍の差がついてしまった。

 もし、遠藤祐子の懸念が当たっていれば、相手に余裕を常にもたれながら試合を進められてしまう。

 それを防ぐために、市街地からの脱出道路である2箇所。

 市街地から北側にあるバイパス道路と黒森峰女学園のスタート地点に近い場所にある石橋への索敵を決めたのである。

 この索敵作戦は、昨日の作戦会議の中で実施目的と理由が示されて、皆の了解が取れている。

 

「……特に『石橋』へむかう『あひるさんチーム』は、黒森峰のスタート地点に近いので十分注意してください」

「了解です! 隊長任せてください。『八九式』はスピードだけは絶対負けません。追撃されても逃げ切ってみせます」

 

 『あひるチーム』の車長は胸を張って、遠藤祐子に返事をした。

 

 全国大会出場戦車の中で、最も弱い戦車の『八九式中戦車甲型』

 しかし、駆動系を極限まで改造されているこの戦車はスピードと操縦手の技量で異次元の動きを見せるのである。

 

「お願いします! あと『バイパス』へむかう『カメさん』『うさぎさん』は『バイパス』の途中から上り坂になっていますので、その上からなら市街地の様子がよくわかるはずです。フラッグ車搜索と黒森峰の作戦行動の様子を常に連絡してください」

『了解です!』

「次にフラッグ車がもし発見できたなら、我々は短期決戦に持ち込みます」

『ハイっ!』

 

 市街地の形状は簡単に言うと、漢字の『由』の形をしている。

 南側は『海』の為にそれ以上進むことができない。

 市街地の中心を東西南北の位置でメイン道路がその周囲をグルリと回っており、それを十文字型に、これもまたメイン道路がつないでいる。

 十文字で分けられた北側メイン道路と西側メイン道路に面する地図上で左上になる『大きな区画』を1番ブロックとして右回りに2番、3番、4番ブロックとした。

 その北側メイン道路の中央に、北に抜ける為の大きな道路『北部バイパス』がつながっているのである。

 そして、各ブロックの中を袋小路もある小さな路地が、そのメイン道路へと血管のようにつながっている。

 

 遠藤祐子が立てた2ツ目の作戦。

 

 短期決戦になった場合、南側が『海』の為、それ以上逃げられない。

 黒森峰側からにすれば、北側メイン道路を先に抑えてそこから、南進してくるであろうと考えた。

 そこで、各チームには路地の詳細な地図を渡してある。

 路地と路地の接続や、袋小路の位置。建物の高さや形状まで記されている配置地図である。

 各チームの通信手は完璧にこの地図を暗記している。

 武部沙織の指導訓練の中で行われた『鬼を包囲せよ』訓練の賜物である。

 

「各チームとも、お互いの位置の把握と連絡を密にしながら『鬼を包囲せよ作戦』を実施します」

『了解!』

「最後にもしもフラッグ車が見当たらない場合、この市街地から離脱して北に脱出します。北側にある東西に流れる川を306地点から直接渡ります」

 

 各チームの車長は、試合範囲の全体地図の中の『306地点』に赤で丸を付けた。

 

「そして移動目標は、そこから北側に3km進んだ801から806地点に広がる『森』を目指します」

『了解です!』

 

 再び各チームの車長は、地図にある『801地点』から『806地点』を枠で囲んだ。

 

「森の中で黒森峰を待ち構えます。今回のスタート地点が試合範囲の一番南側だったので、もしフラッグ車が見当たらなかったら、必ず北に向かって逃げて隠れているはずです」

 

 遠藤祐子の自信を持った推測に、各チームの車長は頼もしく思った。

 

「もちろん臨機応変に対処していきますので、皆さん落ち着いて頑張りましょう!」

『ハイっ!』

 

 時間は試合開始まであと45分になった。

 チラッと時間を腕時計で確認した遠藤祐子は、各チームを集合させた。

 

「今からスタート地点へ移動します! 全チーム乗車してください! 乗車完了後は任意で移動を開始してください!」

『ハイっ』

 

 各チームが戦車に乗り込み、順にスタート地点へ移動を開始した。

 『3代目あんこうチーム』の乗る『ティガーⅠ』は全車両が出発したのを確認して、最後に移動を始めた。

 

 遠藤祐子は試合開始までの、この移動時間が一番嫌いである。 

 いつも、これでよかったんだろうか、という不安な気持ちが襲ってくるのである。

 しかも、戦力差が圧倒的な黒森峰学園との決勝戦なのである。

 じっとうつむきながら目を閉じている遠藤祐子にむかって、浦田かなえが言った。

 

「祐子……。大丈夫だよ! きっとうまくいくから……」

「そうだよ。祐子ちゃん! 心配しなくても大丈夫よ」

 

 浦田恵も励ましてくれている。

 大森翔子は操縦桿を動かしながら言った。

 

「祐子! 私達は祐子が立ててくれた作戦で、この決勝戦まで来たんだぜ!」

「そうよ! 翔子ちゃんの言う通りよ。『3代目隊長』は私達の誇りよ!」

 

 北川亜希子も笑顔で言ったのである。

 

「みんな……。ありがとう……。そうよね、準備は万端のはずよね」

「ああっ……バッチリだぜ!」

「うん、私もそう思うよ」

「全然心配してないもん! いつも通り、訓練の通りにやるだけだからね! ねえ、かなえちゃん」

 確かに、恵の言う通り! 普段通りにやるだけだからね」

 

 遠藤祐子の不安な気持ちを取り除いてやろうと、皆が励ましてくれる。

 遠藤祐子は本当に嬉しかった。

 

 スタート地点へ付いた『大洗女子学園戦車道チーム』は、横一列に戦車を待機させて、その戦車の前に各チームが降車して並んだ。

 『あんこうチーム』の5人は、チームを代表して移動用トラックに乗り込み、試合開始前の試合開始宣言場に向かい『黒森峰女学園チーム』の隊長チームと対峙した。

 

 

 審判長が高らかに試合開始を宣言した。

 

「これより、今年度の高校戦車道全国大会決勝戦を開始します!」

 

 ファンファーレが鳴り響き、観客席から歓声が起こった。

 

「黒森峰女学園高校、大洗女子学園高校、両校とも戦車道の精神にのっとり、正々堂々試合に望むように!」

『ハイっ!』

「それでは選手一同! お互いに礼!」

『宜しくお願いします!』

 

 『あんこうチーム』は対峙しながら、他の各チームはスタート地点から一礼をした。

 

「それでは定刻通り、試合は午前10時に開始します! 両校の隊長は握手!」

 

 審判長の命令に、遠藤祐子は一歩前に出て、黒森峰の隊長の前に手を差し出した。

 黒森峰の隊長がその手を握ったのだが、遠藤祐子の顔を見て、ニヤリと笑った。

 そして、くるりと踵を返すとサッサと自分のチームへ戻っていった。

 多分、練習試合で1度勝っていることが原因なのだろう。

 しかし、黒森峰の隊長のその態度がそれを見ていた『あんこうチーム』のメンバーに火を付けてしまった。

 

「あの隊長! 祐子のこと見ながら笑ったよね」

「ああっ! しかもあの笑いは馬鹿にした笑い方だ……」

「祐子ちゃんのこと馬鹿にするなんて……。許せない!」

「見てなさい! 泣きっ面にしてあげるから……」

 

 戻ってくる遠藤祐子をみながら、浦田かなえ、大森翔子、北川亜希子、浦田恵はそれぞれ呟いたのである。

 

「みんな、どうしたの? 怖い顔してるよ」

 

 戻ってきた遠藤祐子は不思議に思ってみんなに聞いた。

 

「ううん、どうもしないよ。さあ、みんなのところに早く戻ろ!」

 

 北川亜希子が笑いながら言ったのだが、4人の秘めた決意を遠藤祐子はわからなかった。

 スタート地点に戻り、隊長車の前で大きな円陣を組んだ『大洗女子学園戦車道チーム』。

 

「みんなぁ! 元気に行くよ!」

『オオーっ!』

 

 チーム全員の大きな掛け声が響き渡った。

 

 さあ、泣いても笑っても最後である。

 まもなく試合開始の時間になる……。

 

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