ガールズ&パンツァー 女神達のメッセージ(再投稿) 作:熊さん
武部沙織からの電話は、何か緊急を要するもののようだった。
秋山優花里は、とりあえず深呼吸をして武部沙織に落ち着くように言った。
「おっ、落ち着いてください! 武部殿、一体どうされたんですか?」
「あのね、あのね。麻子のお婆ちゃんが、昨日倒れて病院へ行ったんだって……。そうしたらね、今回はちょっとやばいかもって、手術しないといけないんだって」
武部沙織の連絡に、秋山優花里は驚いて聞き返した。
「えっ……? それ、本当なんですか……。それで、冷泉殿は今どうされてるんですか?」
「今ね、おばあちゃんを説得してる。お婆ちゃん『手術は受けない』って聞かないんだって」
秋山優花里は持っている携帯電話を右手から、左手に持ち替えた。
「……分かりました。私たちに何ができるかわかりませんが、とにかくそちらへ行きます。病院はどこなんですか?」
「市内の○○病院。病院の前で待っているからね」
そう言って、武部沙織は電話を切った。
電話を切った秋山優花里は、少しうつむいて、携帯電話をポケットに直した。
五十鈴華と遠藤祐子は、傍で秋山優花里の様子を心配そうに見ていた。
2人は会話の中にでてきた『病院』という言葉に不安そうな表情で、秋山優花里の顔を見た。
秋山優花里は心配そうに自分を見ている2人を見ると、電話の内容を説明した。
「武部殿からの電話です。冷泉殿のお婆さんが入院されたそうです」
「えっ……」
冷泉麻子のお婆さんを知っている五十鈴華は驚いて、口に手を当てた。
「……それで、お婆さんの具合の方はいかがなんですか?」
遠藤祐子は、ちょっと張り詰めたような空気になった2人の雰囲気に、少し緊張していた。
秋山優花里は五十鈴華の質問に、少し言いにくそうに答えた。
「それが……、今回はちょっとひどいようでして、手術が必要だそうです」
「まあ! それは本当なんですか?」
「はいっ。どうもそのようなんです。五十鈴殿、すみませんが、今から私たち、○○病院へ行ってきます。武部殿と澤殿がそこで待っているそうなので……」
それを聞いた五十鈴華は、凛とした口調で、秋山優花里に言った。
「いえっ、私も一緒に行きます! 『新三郎』、『新三郎』!」
「はいっ!若先生」
「すぐに車の用意をなさい。今から○○病院へ向かいます。優花里さんと遠藤さんは正門前で待っていてください。私はお母様に報告したあと、すぐに支度をしてきます」
そう言うと、五十鈴華は、急いで本宅に戻っていった。
秋山優花里と遠藤祐子は、正門のところに急いだ。
正門の前で2人が待っていると、新三郎が運転する五十鈴家の自家用車がやってきた。
車が2人の前に止まると同じくらいの時間で、五十鈴華が和服から洋装の格好に着替えてやってきた。
白のブラウスにピンクのカーディガン、スカイブルーのロングスカートの女性らしい服である。
そして3人は車に乗り込み、五十鈴家の自家用車で○○病院へと向かった。
五十鈴華の家から目的の○○病院までは、そんなに時間はかからない。
○○病院玄関前では、武部沙織と澤梓が待っていた。
待っている2人の前で、五十鈴家の自家用車から3人は降りた。
まさか車で現れるとは思わなかった武部沙織と澤梓は、降りてきた3人を見て驚いた。
「あっ、ユカリン、祐子ちゃん。……あっ、華も一緒なの?」
「沙織さん、梓さん。お久しぶりです」
五十鈴華は、にこやかに挨拶をした。
澤梓は「先輩、お久しぶりです」と挨拶をした。
武部沙織は嬉しそうな表情になり、五十鈴華の手を握った。
「華! ほんと、久しぶり! 元気だった?」
「はい、元気でしたよ」
2人は、お互いにっこり笑いあった。
秋山優花里はタイミングを図って、武部沙織に質問した。
「武部殿……。冷泉殿のお婆さんの具合はどうなんです」
「うん、それがね……」
武部沙織は秋山優花里たちと別れてからのことを、思い出すように話しだした。
・・・・回想・・・・
冷泉麻子の実家近くの停留所でバスから降りた、武部沙織と澤梓の二人。
武部沙織は澤梓を促して、バス停からやって来た道を戻るように歩き始めた。
「いやあ、麻子の家にいくのもひさしぶりだわぁ!」
「武部先輩……。冷泉先輩は相変わらずなんでしょうか?」
「相変わらずっていうと、ひょっとして梓ちゃんには、麻子は苦手なタイプなのかな?」
武部沙織は少し意地悪そうな声で、澤梓の顔を覗き込むように聞いた。
「……いえっ、に……苦手というわけじゃなくて……」
慌てて、澤梓はそれを否定した。
それを見た武部沙織は「わかっているわよ」と言った風に言った。
「アハハハ。確かに麻子は、ちょっととっつき難い感じするもんね。でもね、麻子はあんまり自分のことを表現しないのよ……。いつも一歩下がったところから、冷静に廻りを見ているの。……だから、人によっては『冷たそうな奴』みたいに思われて、麻子は誤解されやすいんだよね」
武部沙織は「でも本当は違うのよ」と話を続けた。
「麻子は天才の上に努力家なの! ちゃんと大学も一般入試で入ったしね」
それを聞いた澤梓は大きく頷きながら、武部沙織の話に同意した。
「あっ、それは知っています。冷泉先輩の戦車の操縦術に惚れ込んだ戦車道の有名大学から、いくつも推薦があったそうですよね」
「うん、もう数え切れないくらい! でも、麻子は、おばあさんのそばに居たかったのと『弁護士になる』って決めていたから全部推薦を断ったのよ」
あらためて武部沙織の話に感心したように、澤梓は答えた。
「冷泉先輩って、……本当にすごい人なんですね」
しかし武部沙織は、少し笑いながら話を続けた。
「でもね、麻子にも可愛いところあるんだよ。……麻子が苦手ものが、この世に4つあってね」
「えっ……、冷泉先輩に苦手なものなんてあるんですか?」
澤梓は、ちょっと驚いた風に聞き返した。
「うん。『朝』と『おばけ』と『たかいところ』と……『お婆ちゃん』」
「冷泉先輩の『お婆さん』ですか?」
「うん、とにかくすごいよ。会ってみればわかるから」
「私……ちょっと緊張してきました」
2人がそんな話をしながら歩いていると、交差点が現れた。
交差点を右に曲がり、またしばらく歩いていくと、今度は三叉路が出てきた。
そこで右の方へ進んでいき、2本目の小さな路地を左に入った右手にある二軒目が、目指す冷泉麻子の実家である。
目的の冷泉麻子の家のにつくと、武部沙織は玄関のチャイムを押した。
『ピンポン』
「ごめんくださーい!」
しかし、誰もいないようである。もう一度チャイムを押した。
『ピンポン』
「ごめんくださーい!……あれ、麻子いないのかな? 昨日電話で連絡したんだけど……」
後ろに立っていた澤梓は、武部沙織に声をかけた。
「冷泉先輩、どこかに行かれているんでしょうか?」
「麻子が出かけていても、お婆ちゃんがいるはずなんだけど……」
冷泉麻子の家の前で2人が話していると「キキーッ」というブレーキ音がした
振り返って道路の方を見てみると、家の前に1台のタクシーが止まっていた。
タクシーから降りてきたのは、冷泉麻子だった。
「あれ、麻子じゃん! どうしたの?」
「……沙織か。それに梓も一緒なのか」
武部沙織に声をかけられ、少しぶっきらぼうに喋る背の小さなこの女性。
『冷泉麻子』
20歳。元大洗女子学園戦車道チーム『初代あんこうチーム』で、戦車を操る『操縦手』だった女性である。
長い黒髪を白のカチューシャで止めている。
高校時代から、ずっとそのヘアースタイルである。
何も予備知識もなく操縦マニュアルを見ただけで、戦車を動かしてみせた天才である。
彼女が編み出した通称『戦車ドリフト』は『大洗女子学園戦車道チーム』の中で伝説の大技である。
そして、まだ彼女以外誰もそれをマスターしていない。
彼女は今、家庭教師のアルバイトをしながら弁護士資格を取るために日夜猛勉強をしていた。
タクシーから下りてきた冷泉麻子は目を充血させていた。
そして2人にむかって、申し訳なさそうに話した。
「沙織、梓。今日はすまないが帰ってくれないか……」
「一体どうしたのよ、麻子? ひどく疲れているようだけど……」
「いや、心配いらない。私は大丈夫だ……」
冷泉麻子はうつむきながら、さらに話を続けた。
「沙織達とゆっくり話ができるのを楽しみにしていたんだがな。……急用ができた」
武部沙織は、流石にこの幼馴染の異変に黙ってはいない。
「ほんと、どうしたのよ?……それにお婆ちゃんは? お婆ちゃんはどこにいるのよ?」
この問いに冷泉麻子は、少し躊躇したようになったが、顔を上げて武部沙織と澤梓に告げた。
「……『お婆』が、昨日夜中にまた倒れた……」
「えっ! お婆ちゃん、また倒れたの。……それで病院に?」
驚いた武部沙織は、少し早口で、冷泉麻子に聞き返した。
冷泉麻子は幼馴染に話をしたら、少し落ち着いてきたようだ。
いつもの冷静なものの言い方に戻ってきた。
「あぁ。今、病院で眠っているから、着替えを取りに帰ってきた」
「ちょっと麻子! 私も手伝うから!」
「……いや大丈夫だ。自分でできる」
「何言っているのよ! 麻子、目が真っ赤よ! 麻子、あなた寝てないんでしょう? 少し休みなさいよ。ちゃんとご飯は食べたの?」
立て続けに冷泉麻子を責め立てる、武部沙織。
そうして武部沙織は断る冷泉麻子を強引に説得し、澤梓とともに家に上がりこんだのである。
幼い頃からよく遊び来ていたので、何がどこにあるぐらい覚えている
お風呂を沸かし、冷蔵庫の中にあった食材で、あっという間に食事を準備した。
澤梓は冷泉麻子を手伝って『お婆さん』の入院の準備をした。
入院の準備を終えた冷泉麻子は、沸かしてもらったお風呂に入り、遅い朝食をとり始めた。
食卓を挟んで武部沙織の前に冷泉麻子が座り、澤梓は武部沙織の横に座った。
一口おかずを口にいれご飯を食べると、懐かしそうに冷泉麻子は言った。
「沙織の手料理はひさしぶりだ……。あいかわらず料理が上手だ」
武部沙織は食卓の上に両手で頬杖をついて、冷泉麻子に話しかけた。
「そりゃあ、よかったわ。それで、麻子……お婆ちゃんの具合はどうなの?」
食べる箸を止めた冷泉麻子は少しうつむいて、その問いに答えた。
「……よくない。手術をしなければいけないそうだ」
「ちょっと麻子、それ、本当なの?」
「あぁ、本当なんだ。でも、お婆は『手術は受けない』って言い張っている」
「でも、手術をしないといけないんでしょ?」
冷泉麻子は黙っている。
澤梓は少し緊張した様子で、2人のやり取りを見守っている。
「ねぇ、麻子! お婆ちゃんを説得しよう!」
「沙織はうちのお婆を知っているだろう。一度言いだしたらテコでも動かないのを」
「何を言っているのよ! 絶対、説得させる方法があるって! とにかく、一緒に病院に行くから……。麻子、いいよね!」
やはり、友達はいい。
1人で不安になっていた冷泉麻子は、強引だが親身になって助けてくれる武部沙織と澤梓に対して感謝した。
しかし、口に出てくるのは、いつもの冷めた言い方なのだ。
いつも冷泉麻子は思ってしまうのだ。
どうして沙織みたいに感情豊かに表現できないのだろうか。
「……やれやれ、沙織は変わらないな」
しかし武部沙織は、それが冷泉麻子なのだと思っているのだ。
「いいわよ。麻子は気にしないで! 私達、親友でしょ!」
澤梓は二人の様子を見ながら、二人が固い絆で結ばれていることに気づいた。
相手のことをよっぽど知っていないと、ただの親切の押し付けになってしまう。
2人は幼馴染とは聞いていたが、こんなにも信頼し合っているとは思わなかった。
食事を終えた冷泉麻子はタクシーを呼び、三人そろって○○病院へ向かった。
病院に着いた三人は、冷泉麻子が病室のお婆の様子と手術が必要なことを再び説明しに行き、武部沙織と澤梓は、電話で秋山優花里に連絡をとり、到着を待っていたのである。
話を聞いた秋山優花里、五十鈴華、遠藤祐子は揃って、顔を見合わせた。
「武部殿、そんなことになっていたんですか」
「麻子さん、ずいぶん心配でしょう……」
秋山優花里と五十鈴華は、それぞれ思ったことを口に出した。
「麻子が今説得しているけど……。お婆ちゃん、納得してくれたらいいんだけどね」
武部沙織は、少ししんみりとした話し方で、みんなに話した。
病院の待合室に移動した彼女達は、ロビーにあるクッション性の椅子に腰掛け、それぞれ心配そうに、冷泉麻子が戻ってくるのを待っていた。
こんな時の待っている時間は、とてつもなく長く感じる。
そして、病室から冷泉麻子が戻ってきた。
真っ先に立ち上がったのは、武部沙織である。
「……麻子! どうだった?」
しかし、冷泉麻子はうつむいたまま、頭を左右に振った。
「……ダメだった。……『お婆』は『どうしても手術は嫌だ』と言って聞かない」
冷泉麻子は、それきり、しばらく何も言わなかった。
そして、次に泣き声とも聴きとれる言葉でしゃべりだした。
「どうしよう。『お婆』がいなくなったら、私…… 」
そう言うと、突然、冷泉麻子は手で顔を覆って泣き出してしまったのである。
その場にいる全員が初めて見る、冷泉麻子の涙である。
武部沙織は泣きじゃくる冷泉麻子の肩に、そっと手を置いた
「麻子。泣かないで! 私達で何とかするから!」
「冷泉殿、武部殿の言う通りですよ。みんなで説得する方法を考えましょう!」
「麻子さん。『三人よれば文殊の知恵』です。絶対に方法があるはずですから」
武部沙織、秋山優花里、五十鈴華の暖かい言葉に、冷泉麻子は泣くのをやめた。
そして、心配してくれる後輩2人も含めて、みんなの気持ちに感謝した。
「みんな……本当にありがとう」
冷泉麻子は、みんなの優しさがとてもうれしかった。
6人は、ロビーにある対面式のソファーに移動して話し合いを始めた。
最初にアイデアを出したのは、武部沙織である。
「みんなで『お婆ちゃんを説得する』っていうのはどうかな?」
「いや、自分が思うに、その方法で行くと、逆に意固地になって、それこそ手がつけられなくなる可能性があります」
「そうかもしれない……じゃあ、どうすればいいかなぁ?」
しばらくの間、みんなはそれぞれ考え込んでいたが、次にアイデアを出したのは秋山優花里だった。
「皆さん、こんなのはどうでしょう……。みんなでお婆さんを説得はするんですが、順番に説得するんです。そして、ここが大切なのですが『なぜ手術を嫌がるのか』を聞き出すんです」
五十鈴華が、秋山優花里のアイデアに質問をした。
「それは、どうしてですの……?」
秋山優花里は、胸を張りながら自信満々に答えた。
「お婆さんが手術を嫌がる理由を聞いていき、それを皆で1つずつ論破していくんですよ。……つまりこれは、お婆ちゃんの逃げ道をふさいでいく『包囲作戦』です。……まず、自分と武部殿で、お婆ちゃんから『理由』を聞き出して、それを論破します。そうしたらお婆ちゃんは、論破されていくことでだんだんイラついてくると思います。そこで、五十鈴殿がいつもの口調で優しく諭すんです。お婆ちゃんを、一度イラつかせることで、逆に諭された時に冷静になりやすくなり、説得しやすくなると思います」
秋山優花里は、みんなの顔を見渡しながら、ここまで少し早口で説明した。
そして、最後に冷泉麻子の方を見て、力強く言った。
「最後は、やはり肉親の言葉です。最後に冷泉殿が、お婆さんへのありったけの思いを伝えてください。……この作戦。みなさんどうでしょうか?」
秋山優花里は、皆の顔を再度見渡して、確認を取った。
「うん! いい作戦だと思う!」
「確かに、私もお弟子さんを指導するとき、悪いところを注意するより、気がつかせるように心がけています」
「冷泉殿は、どう思われますか?」
「……うん、それしかないと思う」
皆の同意が得られたので、秋山優花里は立ち上がると声を上げた。
「よし、では、これで作戦会議終了ですね」
そして、武部沙織、五十鈴華、冷泉麻子も同じく立ち上がった。
「みんなぁ、気を引き締めていくよ!」
武部沙織がそう言うと、武部沙織、秋山優花里、五十鈴華、冷泉麻子の4人は、お婆さんがいる病室へ向かっていった。
澤梓と遠藤祐子は座ったまま、自分達は何もできない悔しさでいっぱいだった。
4人が戻ってくるまでの間、待合室のシートに腰掛け、2人は何も喋らなかった。
しばらくして、4人が戻ってきた。
歩いてくる4人に気づいた澤梓と遠藤祐子は、それぞれ立ち上がった。
冷泉麻子の表情が、明らかに明るくなっている。
作戦が成功したのだ。
武部沙織は2人を見つけると、大きく手を振って呼びかけた。
「梓ちゃん、祐子ちゃん。お待たせぇ!」
「……先輩方、どうだったんですか?」
「はい、お婆ちゃん。手術を受けてくれるそうです!」
「本当に、よかったですわ!」
秋山優花里と五十鈴華が、お互いの顔を見合いながら、笑いあった。
冷泉麻子は、親身になって心配してくれた5人の友達と後輩の前に立つと、ペコリと頭を下げた。
「……みんな、本当に世話になった。ありがとう」
それに対して、五十鈴華と秋山優花里は照れながら答えた。
「麻子さん、いいんですよ」
「そうですよ。気にしないでください」
そして武部沙織は、遠藤祐子の方を向いた。
「……あっ、それから、祐子ちゃん!」
「はいっ、武部先輩」
「麻子もね、訓練の手伝いしてくれるって!」
「えっ……、本当ですか。冷泉先輩」
遠藤祐子は、嬉しさで少し声が上ずって、冷泉麻子に聞いた。
冷泉麻子は、ニッコリと笑うと、その問いに答えた。
「……うん、しばらくは『お婆』は病院にいるから安心できる。それに……みんなに借りができたからな」
そんな冷泉麻子の言葉に『初代あんこうチーム』のメンバーはそれぞれに「『借り』だなんて。冷泉殿は本当に変わらないですね」「麻子の照れ隠し、なんだよね!」「麻子さんたら……ウフフ」と嬉しそうに声をかけたのだった。
しかし、冷泉麻子の弁護士になるための勉強は大丈夫なのだろうか?
ちょっと心配になった武部沙織は、冷泉麻子に聞いた。
「でも、麻子? 受験勉強の方は本当に大丈夫なの?」
冷泉麻子は、笑いながら武部沙織の質問に答えた。
「……うん、大丈夫だ。ちゃんと勉強も続ける」
「それでこそ、冷泉麻子よね」
笑顔でおしゃべりをしている『初代あんこうチーム』のメンバーを見ながら、澤梓は感慨深げに、遠藤祐子に話しかけた。
「祐子ちゃん、本当によかったね」
「女神の『お告げ』と『参謀』、『砲弾』と『翼』が揃って来てくれるよ」
「はい……。まるで『女神の四天王』ですね」
「本当ね。……本当にすごいわ。また、先輩たちの戦車道がみられるなんて」
しばらく談笑していた4人の先輩達だったが、武部沙織が声を上げた。
「さあ、これでミポリンを迎える準備が出来た!」
「私も、西住殿に早く会いたいです!」
「……私も隊長に、早く会いたい」
「みほさん、お元気かしら? ……早くお会いしたいです」
車長であった「西住みほ」に対する、素直な気持ちをお互いに声に出した。
武部沙織は、一歩離れたところで4人を見ていた澤梓と遠藤祐子にむかって、手を振って2人を呼んだ。
「梓ちゃん! 祐子ちゃん! 次の作戦会議をするよ。一緒に来て!」
「……次の作戦?」
五十鈴華は、武部沙織の方をみて、小首をかしげながら聞いた
「そっ! 名付けて『ミポリン奪還作戦』!」
武部沙織はそう言って右手の人差し指を、空にむかってかざした。
秋山優花里はニッコリと笑い、五十鈴華と冷泉麻子はキョトンとしている。
澤梓と遠藤祐子は、4人の方へ走って行った。
いよいよ、最後の作戦が始まる……。