ひろがるスカイ!プリキュア Imaginary Episodes   作:パイシー

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Ch.2-2「宇宙からの来訪者!ましろはどこ?」

 ブルーキャット蹴り開けた天窓から風が吹き込む中、あげははミラージュペンを握りしめて、即座にブルーキャットの後を追った。

「あげはさん!待ってください!」

 ツバサの制止も虚しく、あげはは出て行ってしまった。相手が堂々と名乗っているということは、自分たちを振り切る自信があるという事。今闇雲に追いかけても見失うだけだろう。だがブルーキャットが誰かに化ける前に捕まえなければ二度と見つけられないのも頭では理解していた。

 必死に思考を巡らせてブルーキャットの足取りを追う方法を考える。だがそれはリコに腕を引かれたことで思考が中断された。

「何ぼうっとしてるの!私たちも空から追うわよ!」

「待って、これ使った方が早いかも」

 リコも箒を構えて追おうとするが、ことはが偽のましろが投げ捨てて行ったバスタオルをリコに差し出した。

「このタオル、ましろに化けたブルーキャットが使ったものだけど、香水の匂いが付いてるはず。魔法で追いかけられるかも。ツバサ、グライダー借りても良い?」

「……そうか!分かりました!待っててください!」

 ツバサはすぐに部屋に戻って、棚に入れていたグライダーを取り出す。遠目で良く見えなかったが、ブルーキャットは闇夜に紛れるような服をまとっている。であれば、目立つような派手な色のグライダーが良い。

 取り出したのはことはと遊びで作った発泡スチロール製のグライダー。投げて飛ばすだけの玩具だが、ことはの魔法があれば、十分すぎる程の戦力になってくれるはずだ。

「ことはさん、お願いします!」

 急いでことは達のところに戻り、グライダーを手渡す。ことはは玄関を開けて、バスタオル越しにグライダーを構える。

「キュアップ・ラパパ!この匂いを追いかけて!」

 もう片方の手で持った杖を振りかざし、魔法を受けたグライダーが外へ飛んでいく。リコとことはは箒に、ツバサはキュアウィングへ姿を変えてその後を追った。

 

 

(大見得切ったはいいけど、体の不調が思った以上に響いてるわ……。これじゃ逃げ切れそうにないわね)

 ましろの家を脱出したユニは、あまり遠くへ逃げられず、周囲の森へ身を隠さざるを得なかった。いつも以上に体力の消耗が激しく、まだ1キロと少ししか距離を離せていない。

 あの家の住人が出払っているこの隙にソラに化けてうやむやにすることも考えたが、既に自分が化けられるということを知っている以上、必ず怪しまれる。

 頭の耳に付けていた光学迷彩発生装置を取り外し、手持ちの道具を再度確認する。知り合いの協力もあり、ブルーキャットとして活動していた頃より道具は充実している。変身後も残ってしまう頭の耳を隠す光学迷彩もその1つだ。

 周囲に追手の足音が聞こえないことを確認し、無線機を取り出して耳に装着する。

(無線の傍受なんてできるとは思えないけど、あの男の子は厄介ね。早く移動しないと居場所が割れそうだわ)

 ロケットにいるララに無線を繋ごうとするが、何故か応答がない。自分以上に消耗しているので、もう寝てしまったのか、と考えていると、少し離れた所で硬いものを蹴るような音がした。

 ユニが頭上を見上げると、アゲハ蝶のようなエネルギー体がユニを押し潰そうと迫ってきていた。

 周囲の木にワイヤーを引っ掛けて跳び、間一髪で回避すると、そのエネルギー体の向こう側に1人の人影が見える。

「避けないでよ。当たんないじゃん」

 最初にユニに追いついたのはキュアバタフライだった。その華やかな出で立ちとは裏腹に、殺気のこもった目線をこちらに向けている。

「早かったわね。やっぱりここらはあなたの庭なのかしら」

 周囲の音に耳を澄ませながら、バタフライから逃げる算段を考える。こちらの消耗を悟られてはいけない。相手に付け入る隙を見せずに、相手の隙を引き出すのだ。

「ましろんを返して。もしましろんに傷一つでもついてたらなら、私、何するか分かんないよ」

 案の定、バタフライはましろの居場所を言うように迫る。ユニの姿を捉えて離さないその目は、どれだけ早く動いても追ってくるだろう。

 煙幕や閃光弾といった目くらましもそれぞれ1発しかない。このまま3人が合流するのを待って、一気に逃げ出すことも考えたが、それで一気に距離を離すというのは難しいだろう。

「そんなに大事ならリードで繋いでおくことね。広いおうちで飼ってもらえれば、本人もさぞ喜ぶんじゃないかしら」

 ユニが選んだのは、バタフライを挑発してこちらに近づける事。冷静さを欠いた相手なら、攻撃も読みやすく、逃げ出す隙なんて簡単に作り出せる。

 だがその予想に反して、バタフライはその場から動かなかった。こちらの意図を読み取っているのか、ユニを睨んだままである。

「いいの?このまま私を逃せば、ましろの場所は分からなくなるわよ?」

「……頭に血が上るとさ、一周回って冷静になる事があるだね。自分でもビックリしてる。ハッキリ言うね。私じゃあなたは捕まえられない」

「そう。じゃあ逃げさせてもらうわね」

 あっさりと負けを認めたバタフライから目を離さず、近くの木々を伝って逃げようとワイヤーを伸ばす。いつもやっている通りに移動しようとしたが、自身の身体が引っ張られると同時に足が強い力で引っ張られ、そのはずみでワイヤーの射出機を手放してしまった。

「でもね、あなたと違って私は一人じゃないからさ、あなたを捕まえるのは簡単だよ」

 そのままユニは転倒し、それに合わせるように空からゆっくりとリコやウィングが降りてくる。

 ユニが足元に目をやると、何故か草が縄のように伸びて自分の足を捉えていた。偶然絡まったのかと思い振りほどこうとするも、そう簡単に草は外れてくれない。

「何よこれ……」

「後で教えてあげるわよ。ましろさんの居場所を聞いた後で」

 杖を構えたリコ達に取り囲まれ、ユニの退路を断つ。だがユニはそれでも諦めたわけず、余裕の態度を崩さない。

「この程度じゃ捕まらないわよ。宇宙を騒がせた怪盗を舐めないで頂戴」

 構造の理解に少し時間がかかったものの、ユニの足を捉えていた草は簡単に解かれ、ユニはすかさず別の人物へ姿を変えた。

「みらい!?」

「へえ、この子、みらいって言うの。いい名前ね」

 ユニはみらいの姿で不敵に笑うと、そのままリコの肩を踏み台にして飛び上がる。前にもやった手口だが、やはり顔見知りに化ければ素人は簡単に出し抜ける。

 懐から煙幕を取り出し、このまま行方を晦まそうとした時、横からものすごい力が加わり、ユニの体が宙に舞う。

「逃がしません!ましろさんの居場所を教えてもらいます!」

 横から飛んできたのはウィングだった。

「またあなたなの!?離しなさい!」

 ユニはウィングの拘束を振り切ろうと暴れ、ウィングも掴んで離さない。

 でたらめな軌道を描きながらウィングはひたすら上へ上へと昇っていく。どんどん地面が遠ざかり、ウィングを振りほどこうとするユニの力も徐々に弱くなる。そしてユニが抵抗を止めたところでウィングの上昇は止まった。

「この高さから落ちれば、流石に無事じゃすまないですよね?」

 ユニはまだ諦めていないようだったが、遠くの方からフェリーチェが飛んでくるのを見て、ユニは完全に抵抗を諦めた。

「……分かったわよ。私の負け。このまま私が指示する方向に飛んで」

 ウィングはフェリーチェが合流するのを待ち、そのままユニが指示する方角へと向かった。

 

 

 ウィング達が指示された場所は、ソラシド市の外れ。それもほぼ隣町と言って差し支えないエリアだった。

 誰も寄り付かないような空き地の片隅に、ボロボロのロケットが立っている。かわいらしい装飾こそされているが、機体のあちこちに穴が開いていて、火花が散っているのが見える。

 そのロケットの前にはいくつもの機械部品が転がっていて、ロケットの前に誰かが倒れているのが目に入った。

「ララ!」

 倒れている少女を見て、ユニが我先にと飛び出した。フェリーチェは状況が呑み込めず、足元に転がる機械部品を拾い上げる。

「ウィング、これは……?」

「何かの部品みたいですが……。それよりも、あの女の子を助けましょう!」

 ウィング達もユニを追って倒れていた少女に駆け寄ると、ララと呼ばれた少女の状態がよく分かった。着ている服は既にボロボロで、青緑色のペンを握りしめて気を失っている。

「早く病院に連れて行きましょう。見たところ、怪我をしています」

「無駄ね。この星の薬が安全な保障がないもの。あなた達は平気でも、この子にとっては猛毒になるかもしれない」

 ユニはララの体を背負い、ウィング達にロケットの中へ来るように促す。

「ましろはこの中にいるはずよ。無事だったらの話だけど」

 ウィング達はそのままユニについていき、ロケットの中へ足を踏み入れる。

 中は思っていた以上に広く、ユニはソファにララの体を寝かせると、何かを探してあちこちの箱を漁り始めた。

「よかった。薬は無事だわ。これでララは助かる……わ……」

 ユニがララを治療する為の道具を抱えて、ララの方を向き直ると、もう既にフェリーチェが治療を始めていて、ララの傷がみるみるうちに癒えていく。

「あっ、すいません。放っておけなかったので……」

「本当に何よソレ。なんでもありじゃない」

 ララが助かったことに安心し、ユニは薬を置いて近づこうとすると、フェリーチェ達がその間に立って阻む。

「人質、ってわけね。分かったわよ。ちょっと待ってなさい」

 あちこちのコンソールを操作し、このロケットで何が起こったのか情報を集めていく。

「AIのユニットは破損してるけど、メモリは生きてる。映像記録は……良かった残ってるわ。後はパスワードのロックを外せば……出たわ」

 ひび割れたモニターにロケット内を俯瞰した映像が映る。そこには、ララと、ララの服を着たましろが映っている。

「これが最後の記録よ。音声は出ないけど、これでどこに隠れてるか分かるはず」

 映像の質は悪く、時々ノイズが混じるが、ララがましろに何かを渡し、どこかへ逃げるように言っている。ましろはそれでも残ろうとしていたようだが、ララに強く説得され、一緒にロケットの外へ出て行った。

「記録はここまでね。どこに行ったかまでは分からないけど」

「観星町、ルン……」

 ララが意識を取り戻し、ゆっくりと起き上がった。話は途中から聞いていたようで、ましろの行き先を告げた。

「もう起き上がって大丈夫なの?まだ目が覚めてから何日かしか経ってないのに」

「なんだか体がすごく軽いルン。まるで魔法ルン」

 ソファから立ち上がり、軽く腕を動かしたりするが、ララは違和感なく動かせることに驚いていたようだった。

「事情があるみたいですね。あげはさん達にも話してもらえますか?」

「あげは!?この街にあげはも来てるルン!?」

 あげはの名前を聞いたララはウィングの肩を掴み、完全に意表を突かれたウィングの顔が少し引きつった。

「なんだ、知り合いだったの」

 一方のユニはあげはとララが知り合いとは知らなかったようで、煩わしそうに溜息を吐いた。

「とにかく、一緒に来てください。話はそれからです」

 フェリーチェの提案で、一同はましろの家へ戻ることにした。

 

 

 ましろの家に4人で戻ると、あげはとリコは何も言わずにララとユニを招き入れてくれた。

 ホールの中央にララとユニを座らせ、あげは達が囲うようにして座る。あげははララの姿を見て警戒を解いたようだが、リコはまだ2人を信用しきれず、警戒の眼差しを向けている。

「今から3か月前ぐらいだっと思うルン。この星であり得ない時空のゆがみが観測されたルン」

 出されたお茶を口に含み、重苦しい空気の中、ララが言葉を発した。

 3か月前。ましろがホープダイヤを手にし、世界を滅ぼすプリキュアになりかけたあの戦いがあった時期である。その時期を思い浮かべ、話を聞いていた一同の顔が思わず強張る。

「調べたら、ましろが変身した黒いプリキュアが時空のゆがみを引き起こしたと分かって、私たちを総括してる星空連合の評議会は……ましろの処分を決定したルン」

 ()()。ララなりに柔らかい表現をしたつもりかもしれないが、その意味するところが分からないあげは達ではない。

「待って、じゃああなた達はましろさんの命を狙ってきたの?」

 話に割り込んだリコに対し、ララは首を振った。

「逆よ。ララが色んな人に頭を下げて、なんとか評議会から1か月猶予を貰ったの。そしてこの星に来たのが2か月前。私が動けるようになったのが先月の半ば、やっとの思いでましろを見つけたのが先週の事よ」

 さらに説明を続けようとしたララを制し、ユニが補足する。ましろの記憶を戻そうとしている裏で、事態は確実に進んでいたのだ。

「評議会はましろのバイタルデータと証言記録の提出を条件に、ましろの処分を再検討してくれることになったわ。ましろが悪意を持った地球人ではないと証明できれば取り消し、できなければ来週に執行官がやってきてましろを処分することになってるの」

「来週、ってもうほとんど残ってないじゃないですか!」

 思わず声を荒げたツバサに対し、ユニはそうよ。とだけ返した。結果論とは言え、ツバサがユニの正体を暴かなければ、ましろとは一生の別れになっていたかもしれなかったのだ。

「ましろを見つけた時に動けたのは私だけ。だから、あなた達は協力してくれない前提で動くしかなかった。私とましろが入れ替わってあなた達の足止め、ロケットから動けないララがましろから情報を集める。全部が終わった後にもう一度入れ替われば元通り。そのつもりだったわ」

 自分たちを信じきれずに、裏で動かざるを得なかったユニ達。あげはが何かを言いたそうにしていたが、ユニの言葉に何も返せないもどかしさで、黙って拳を握りしめた。

 ユニの言う事は理にかなっている。ましろを心配している自分たちが、いきなり知らない人間にましろを貸してほしいと言われ、すぐに協力できるかと問われれば、良い答えはできない。

 失敗が許されない状況なら、最初からましろはさらわれていない事にして時間を稼いだ方が確実だ。

「本当だったら、明日には全部終わってるはずだったルン。でも、アイツらがやってきて、ましろを連れて行こうとしたルン」

 ユニはあの現場から持ち出していたのか、手のひらほどの機械部品を取り出してあげはに投げ渡す。あげはが受け取った歯車には、ツバサ達が見たものと同じ紋様が刻まれ、見たことも無い文字で何かが書かれている。

「相手は宇宙規模で活動してる教団。おおよそ、ましろの力を使って信者を集めたいんでしょう」

「宗教なのに機械……?」

 科学と宗教。一見すると相反するもの同士が1つになっているというギャップに、あげはが首を傾げていた。

「最強の身体を作るって目的の為の為に、あちこちの星を荒らしてるはた迷惑な奴らよ。ララを襲ったのはその下っ端の自動装置(オートマトン)。送り込んだ奴はまだこの星に潜んでいるわ」

 いきなり話が宇宙規模に広がった上に、全く想像がつかないような相手が出てきたせいで、あげは達は話の内容を納得しかねているようだった。

 あと一週間以内にましろを保護しなければならない事、悪人がましろを狙っている事は理解できた。ただし、それ以上のことはぼんやりとした輪郭でしか理解できていない。

「つまり、ましろさんを助けられるのはあと一週間以内。しかも悪い人達より先にましろさんと会えなければ、もうましろさんと二度と会えなくなるってことかしら」

 リコは慣れない単語の理解を一度諦め、分かる範囲で情報を整理した。魔法界に無い機械の事は分からないが、少なくとも危機的な状況に変わりはないことは確かだった。

「そうルン。ましろには私の替えの服を着せて、観星町に逃げるように言ったルン。AIが途中までナビしていたはずだから、今頃私たちの仲間の誰かが保護してるはずルン」 

 ずっと行方が分からなかったましろが今どこにいのかが分かり、あげはとリコの顔が少し緩む。

「よかった。ましろんは今のところ無事なんだね。そういう事なら私たちも協力するよ。じゃあ明日、朝一で出発するよ!私は走るルート決めておくから、皆はゆっくり休むこと!」

 あげはは力強く宣言すると、誰とも目線を合わさずに2階へと上がって行った。色々なことがあったが、もう間もなく日付が変わろうとしている時間である。

「話も終わったみたいだし、私も休ませてもらうわね。その辺の木の上とかで寝るから、何かあれば起こして頂戴」

 ユニも手を振ってその場を去っていく。来客用の支度はあるのだが、使うつもりは毛頭にも無いらしい。

 その後、リコが荷物を取りに一度ホテルへ帰り、ララとことはに来客用のベッドの場所を案内して全員が解散となった。

 

 

 ツバサが部屋に戻ると、中であげはが待っていた。観星町の場所を調べていたのか、暗い部屋でディスプレイの明かりだけが光っている。

「ごめんね、ちょっとだけお話しない?」

「いいですよ。今日一日、色々とありましたから」

 ツバサが壁のスイッチに手を伸ばすと、あげはがゆっくりと歩み寄ってツバサの手を止める。ツバサはその行動に戸惑ったが、あげははそのままツバサの身体を抱き寄せた。

「ねえツバサ君。私、このままプリキュアを続けていいのかな」

 口を開いたあげはから飛び出したのは、意外な言葉だった。

 最強の保育士を自称し、いつも前向きに頑張ってきた彼女がプリキュアを続けることを迷っているなんて、夢にも思わなかった。

「ましろんと一緒に戦ってきたけど、最後はそのましろんに襲われて、正気に戻ったと思ったら、私の事も忘れちゃった。このまま戦い続けたらさ、ましろんや皆も私の前からいなくなって、何のために戦ってたのかも分かんなくなっちゃうのかな」

 それは、初めて聞いたあげはの弱音だった。常に強くあろうとし続けていた彼女が、初めて見せた弱みである。

 今にも泣き崩れてしまいそうな自分を必死に押し殺したような声。ツバサは何も答えず、優しくあげはを抱き返す。

「ましろんはプリキュアじゃないと助けられないのは分かってる。でも、戦えば戦うほど私の大事なものが無くなっていくなら、私って、もう戦っちゃいけないんじゃないかな」

 プリキュアを辞める。ソラシド市を中心として、様々なプリキュアが集まり始めている今ならば、それも難しいことではない。様々なつながりを辿れば、あげはの代わりに戦ってくれる誰かは簡単に見つかるだろう。

 理屈だけで言えば、あげはが戦い続ける理由はない。

 あげはが苦しんでいる理由が分かってしまうが故に、どれだけ理屈を考えても、あげははプリキュアを辞めるべきという結論に至ってしまう。

 そんなことはない。たったそれだけの言葉をかければいいはずなのに、ツバサの口からは何も言葉が出ず、二人の間を沈黙だけが過ぎていく。

「ごめん。いきなりこんなこと言われても困るよね。でもちょっと話せてスッキリした。こういう話、リコさんとかことはちゃんには聞かせられないからさ」

 声にいつもの調子が戻るが、ツバサの体を抱きしめる腕の力は緩まない。

「ねえ、今日はこのまま一緒に寝ても良いかな。調べたら観星町ってここから遠くて、一人で長距離運転するの不安なんだよね」

 ツバサは何も言わずに頷き、それから支度を済ませて2人でベッドの中に入る。

 あげはは安心したのかすぐに寝息を立てて眠ってしまったようだが、ツバサはまどろむ意識の中で考える。

(この先は、正しいだけじゃダメなのかもしれないな……)

 もし自分がユニの正体は暴けなければ、ララは助けられなかったし、ましろの行方も分からないままだった。

 だがそのユニは、自分たちを騙し、焚き付け、ララの存在やましろの居場所を見事に隠し通した。

 ツバサは考える。もしユニのように、必要とあれば手を汚す覚悟があったらと。

 これからの自分はどうありたいのか、その答えは出ないまま、ツバサは眠りに落ちて行った。

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