ひろがるスカイ!プリキュア Imaginary Episodes 作:パイシー
「すっかり遅くなっちゃったね」
「みらいが二度寝しなかったらもっと早く着いてたモフ」
「あはは……。うん、本当にごめん……」
モフルンに冷ややかな目を向けられながら、みらいはソラシド市へ向けて空を飛んでいた。本来ならもうリコと会えているはずだったのだが、1度モフルンに起こされた後、そのまま寝ぼけて眠ってしまったのだ。
その後今日がましろの家に行く日だと思い出し、慌てて跳び起きて家を飛び出してきただけに、少し髪も乱れているし、持ってこようと思っていたお菓子も置いてきてしまった。
「あれ、あげはちゃんの車が無い。お出かけかな?」
もう少しでましろの家にたどり着く頃、いつもなら家の前に停まっているはずのあげはの車が見えなかった。あげはの車は非常に大きい上に、遠くからでも目立つ黄色をしているため、いつも目印のひとつにしている。
そのまま地上に降りて家の周りを確認するが、やはりあげはの車は影も形も無く、どこかに出かけているようだ。
「いらっしゃいみらい。待ってたわ」
あげはの車を探していると、背後からリコに話しかけられた。
その表情は普段と比べて真剣なもので、みらいは怒らせてしまったのかと反射的に苦笑いをして誤魔化す。
「ごめんリコ!寝坊しちゃって……。みんなは?」
「ましろさんを迎えに遠くへ出かけたわ」
だがリコはみらいが遅れたことを気にしておらず、みらいにこちらへ来るように手招きをする。
リコの傍までやってくると、足元に水がいっぱい入ったバケツが置かれていた。辺りに水滴が飛び散っていて、魔法の練習をしていたのが見て取れる。
「どうしたの、ましろちゃんの為に魔法の研究?」
「ましろさんの魔法、私にもできないかってずっと試してたの」
リコは魔法界から様々な道具や薬品を持ち込んでいる為特別な水でも使っているのかと思い、みらいがバケツを覗き込む。中の水にも軽く触れてみるが、なんてことないただの水道水である。
「あのじゃんけんができる魔法だっけ。私もお風呂で試してみたけど、手を作るので精いっぱいだったよ」
「魔法で人間の手を作って動かすなんて、卒業試験でもまず出ないわよ。ましてやそれでじゃんけんするなんて、校長先生レベルじゃないとあんな難なくできないわ」
みらいも杖を取り出して、もう一度ましろが見せてくれた魔法を再現しようとするが、手を細かく動かそうとするとすぐに水に戻ってしまう。
「でもましろちゃんは簡単にやってたよね?才能があったとか?」
「まだ確証はないけど、多分違う。みらい、最初ましろさんの魔法を見た時、私が杖の光でましろさんの魔法を弱めたのを覚えてるかしら?」
「あの人を襲ってた時だっけ。あの時はただの女の子が魔法を使ってビックリしたよ」
影から無数の腕を伸ばし、無差別に人を襲っていたましろの姿を思い返す。
「多分だけど、ホープダイヤと融合してましろさんが使えるようになった魔法は2つ。影の中から物を出し入れする魔法と、影の中で物を作る魔法。一見すると1つの魔法にしか見えないけど、実際は2つの魔法を同時に使ってたのよ」
「でも一人で2つの魔法を同時に使うなんて無理だよね?頭も口も1つしかないんだし」
「えぇ。その通りよ」
みらいの問いに対して、リコは黙って頷いた。
「だから、
ましろが2人いる。にわかに信じられない話だが、そうすればましろがあんな複雑な魔法を使えていた理由も説明がつく。
ましろがじゃんけんをしていたのは魔法で作った手ではなく、もう一人のましろの手。全身が出てこない理由は分からないが、もし仮に記憶が戻りきってない状態で黒いキュアプリズムが出てくるようなことがあれば、前回のような裏技を使って助けることは難しい。
みらいがリコの話を聞いていた時、バッグに入れていたスマホの着信音が鳴った。着信を確認すると、ディスプレイには『聖あげは』と表示されている。
「あげはちゃんからだ。ましろちゃんと合流できたのかな」
みらいは着信をタップして、耳元に当てる。全員でましろを迎えに行ったという今の状況が、リコから話を聞いた後では既に非常事態であると物語っていた。
「もしもし?」
『もしもし、みらい……?』
電話口から聞こえてきたのは、ことはの声だった。普段の明るさが鳴りを潜めているのが声だけでも伝わってきて、何かを察したみらいはすぐにスピーカーホンに切り替える。
「はーちゃん?あげはちゃんは一緒じゃないの?」
『あげはから借りてるの。リコも近くにいる?』
「うん、いるよ。スピーカーホンに切り替えたから、リコにも聞こえてる」
みらいの声を聴いて少し安心したのか、若干震えていたことはの声が落ち着きを取り戻す。
『あのね、ましろとは会えたんだけど、ましろが皆を襲って、一緒にいられないってどっか行っちゃったの……』
ことははそのまま、何があったのかを話し始めた。
観星町にたどり着いたあげは達は、一度公園の駐車場に車を停めてましろを探すことにした。
ララはインク壺のようなペンダントを取り出し、あちこちの様子を探っている。
「後でこのペンダントを探せるようにって、ましろには特別なペンを持たせたルン。こっちルン!」
ペンダントが反応し、ララに先導されて一行はましろの行方を追う。道中、自分のせいで一行の足を止めてしまったことに責任を感じているのか、その足取りにもどこか焦りが見える。
公園から歩くこと数分、ソラシド市とは違った石造りの街並みが目に入ってきた。
飲食店だけではなく、ギフトショップや服屋などが軒を連ねているが、違和感に気付いたあげはが足を止めた。
「ねえララルン。妙に静かじゃない?この町っていつもこうなの?」
都心から少し離れた場所にあるとはいえ、人が全く見当たらない。誰ともすれ違わないばかりか、働いてるはずの店員の姿さえ見当たらない。
「いつもこの時間なら、お昼を食べに人がいるはずルン……」
レストランのテラス席をみると、食べかけの料理が並んでいるテーブルがいくつかあった。
あちこちに誰かが落としたと思しきチラシや空き缶も転がっていて、今の状態が異常であると暗に伝えてくる。
「ちょっと私飛んで見てくる!もしかしたらましろに何かあったのかも!」
ことはが箒に乗って周囲を確認する。
異変の中心はすぐに見つかったようで、慌てた様子で降りてきた。
「誰か戦ってる!多分この町のプリキュアだよ!あっち!」
ことはが指し示したのは、偶然にもララのペンダントが指し示している方向と同じだった。
ましろを先に保護しなければならない状況の中、敵に先を越されてしまったのかと思い、あげは達の足取りは一層早まった。
ペンダントの反応がますます強くなり、もう少しでペンの下にたどり着けるとなった時、誰かの話声が聞こえた。
「あなた、本当にましろちゃん?」
路地裏を進んでいると、誰かの声が聞こえた。あげは達には声の主が誰だか分からないが、ましろといるのは確実なようだ。
「ひかるの声ルン!」
ララが声のした方に行こうとするが、元々本調子ではない上に、ここまでで走り続けてきた疲労が祟ったのか、せき込んでその場に座り込んでしまう。
「大丈夫ララルン?ごめん少年、先行っててくれる?ララルンが落ち着いたら私も行くから」
「分かりました!」
万全の体調ではないララをあげはに任せ、ツバサ達は声のした方へ向かう。
建物の隙間を抜けて、声のした方へ飛び出すと、ツバサとことはは目の前の光景に目を疑った。
「そんな、どうして……」
かつてスカイが浄化したはずの、黒いキュアプリズムの衣装に身を包んだましろがララの言っていたひかるという少女と相対していた。
「闇の力に呑まれかけた前の私が、元に戻る時に出た余り物。それが『私』」
そう告げたましろは少ししてツバサ達が駆け付けたのに気付き、冷たい琥珀色の瞳をこちらに向けた。
「あぁ、やっぱり私を迎えに来てたんだ。ツバサ君もいるってことは、
自分たちを全滅寸前まで追い込んだ最悪の敵の再来に、ツバサは警戒するが、一方のましろはツバサ達のことなど歯牙にもかけない態度で、何かを待っているかのようにその場にたたずんでいる。
「ツバサ、今のましろはホープダイヤを持ってない。前にあげはを助けた時みたいに浄化すれば元に戻せるはず」
ましろが何もしてこない今を狙ってことはがツバサに一緒に浄化をするように促す。
どういう状況かは分からないが、目の前にプリキュアがいる以上、黒いましろと一緒にしておくことはできない。
それぞれフェリーチェとウィングに姿を変え、一直線にましろへ向かう。ウィングは以前のようにスカイ以外のプリキュアを目の敵にして襲い掛かってくると思っていたのだが、何もしないましろを見て眉をひそめる。
「待っててください、今助けますから」
フェリーチェはそれを見て、ましろが元に戻すのを望んでいると捉えたようで、フラワーエコーワンドを構えてましろを元に戻す構えを取る。だが―――
ましろから返ってきたのは、まるで失望したかのような溜息だった。
「プリキュア、エメラルドリイン―――」
フェリーチェがフラワーエコーワンドから技を放つ瞬間、ましろの指が空を撫でて、周囲に浮いていた泥の塊から腕が一本伸びて、奇妙な態度のましろに気を取られていたウィングを捕らえる。そのままウィングの身体はフェリーチェの前に突き出され、フェリーチェは放った技がウィングに直撃しないように明後日の方向にそらす。
「そんな、どうして……」
フェリーチェはましろがウィングを盾にした意図が分からず、その場にたじろぐ。反撃が来ると思い咄嗟に身構えるが、その時はやってこない。
「そのままじっとしててよ。そうすればウィングには何もしないから」
ましろはウィングを人質にしたまま、相変わらずその場から一歩も動かない。
「まし、ろん……?」
視界の外からした声にましろが目をやると、ララに肩を貸していたあげはが立っていた。
やっとの事でましろに会えたが、目の前の光景を受け入れられないようだった。
「なに、してるの……?それに、その姿……」
「これ?別にいいでしょ。どっちも『私』なんだから」
ウィングを拘束しているましろを正気ではないと思い、あげはがミラージュペンに手を伸ばす。だがそれをましろは見逃さず、あげはがバタフライに姿を変える前に黒い腕であげはの体を捕らえた。
「ねえ、どうしてみんな『私』を否定するの?前の私が持ってない力を使っているから?前の私が言わないような事を言ったから?」
そう問いかけるましろの目にはわずかに敵意が宿っており、少し強めの口調であげはに問いかけた。あげはも説得の余地があると分かったのか、ましろの心を戻すために口を開く。
「だって、私は早く元のましろんに戻ってほしくて―――」
そこまで言いかけた言葉がましろの逆鱗に触れてしまったのか、あげはの身体を締め上げる力が強くなり苦悶の声を上げた。
「元の私?それってどの『私』のことを言ってるの?いつもニコニコしてて、絵本が大好きな女の子になればそれでいいの?」
あげはの答えはましろの逆鱗に触れてしまったようで、ましろがあげはを睨みつける。
「私さ、知ってるんだよ。私の記憶が事故で無くなったなんてのも嘘。スカイランドが遠くの外国って言うのも嘘。どうして隠すの?私はあげはちゃん達の考える虹ヶ丘ましろちゃんでいなきゃいけないの?」
最初は穏やかだった声に徐々に怒りが籠ってくる。
ましろは余っている泥を集めて、手斧を作り出す。ましろの小さい手でも扱えるような小さな斧。大木を切断することはできなくても、あげはに致命傷を負わせるには十分すぎる大きさだった。
「私はあなた達の物じゃない。あなた達の勝手なイメージを私に押し付けないでよ……!」
頭に血の登ったましろはあげはの身体を宙に放り投げ、ゆっくりとあげはに歩み寄る。あげはのミラージュペンは少し遠くに落ちてしまい、地面にたたきつけられた痛みで立ち上がれないあげはには取りに行くことができない。
絶体絶命かと思われたその時、ましろとあげはの間にひかるが割って入った。
「どいて」
「どかないよ!どうしてこんなひどい事するの?ましろちゃんの友達なんだよね?」
「友達でも何でもないよ。いなくなった虹ヶ丘ましろちゃんが帰ってくるために『私』って器が必要なだけだもん。私の事なんて何も分かってない癖に」
ましろはひかるに離れるように迫るが、ひかるは一歩も引かない。
両者はしばらく睨み合っていたが、ましろは痺れを切らして持っていた斧を泥に戻した。矛を収めたましろを見て、ひかるは少しだけ安心したが、ましろは泥を集めて、空間に『孔』を作る。
「分かったよ、スターに免じて何もしない。でももうみんなとは一緒にいられない。私は私を認めてくれる場所に行くよ。じゃあね」
その言葉を最後に、ましろの身体が『孔』の向こう側へ消えていく。
「待ってください!」
拘束が解除されたウィングはましろを追って全速力で飛んだ。
もう既にましろの身体は『孔』の中へ消えており、ウィングの手は届かなかったが、それでもウィングは止まらずに『孔』の中へ飛び込む。
ひかるもましろを追いかけようとしたが、視界を横切ったユニに止められた。
「私が行くわ!スター、ましろの行き先に心当たりはあるわよね!?後で落ち合いましょう!」
それだけ言い残して、徐々に閉じていく『孔』にユニが飛び込んだのを最後に閉じてしまい、残されたメンバーでましろを追うしかなかった。
残されたのは、ララ、あげは、ひかる、ことはの4人。万全の状態で戦えるメンバーは残っているが、この状況を解決できる答えを持ったメンバーは、誰一人としていなかった。
『それで、ましろさんはあいつらのところに行ったのね?』
ことはが電話をしていたのは、廃教会へ向かっているあげはの車の中だった。あの後、何とかあげはは立ち上がって車を出してくれていたものの、その笑顔に元気がなかった。
「そうみたい。でもひかるの話だと、ましろは教団の人を追い払ってくれたらしいんだけど……」
『1人で全部終わらせるつもりなのかしら。だとしたら、早くましろさんを止めないとマズいわ。ましろさんの魔法は強すぎるの。この前みたいに全力で振るったら、その度に記憶や心が磨り減っていくわ』
「じゃあ、私たちのことも……」
『忘れてしまうでしょうね。私たちも今からそっちに行くけど、そっちに着くのは夕方を過ぎると思うわ。だからはーちゃん達に全部を押し付けるみたいで辛いけど―――』
「あげはさん!前!前!」
逃げていた人達が横断しようとしているのに気が付いたひかるに言われて、あげはが慌てて急ブレーキをかけた。ことはも前の座席に頭をぶつけ、リコとの会話が中断される。
『もしもし!?はーちゃん!?なにかあったの?』
前の方に飛んでいったスマホをひかるが拾い上げてことはに返す。あげはは運転に集中したいと言ってことはに状況の報告を託したのだ。
「ううん。大丈夫。ちょっと急ブレーキ踏んだだけ。やっぱりましろのことがショックだったみたい……」
引き続きこれからのことについてことはとリコが話を進めている。
「あげはさん、大丈夫?」
「平気平気、ちょっとぼうっとしちゃっただけ」
助手席で案内をしていたひかるに対して、必死に取り繕うあげは。
「あんな風にましろんに言われたの、初めてだったんだ。前のましろんと今のましろん、分けて考えなきゃいけなかったのにね」
横断していく人達を眺めながら、あげははましろに言われたことを思い返す。
「私、ましろんに謝らなきゃ。ちゃんと今のましろんと向き合わないと」
一度気持ちを整理して、再度アクセルを踏む。
こんなところで立ち止まるわけにはいかない。もし立ち止まってしまったら、自分を呪い続けることになりそうだった。
ツバサが目を覚ますと、プニバードの姿になっていた。周囲は何も見えない闇に包まれていて、一寸先の景色すら見えない。
「やっと目を覚ましたのね」
頭の上からユニの声がする。少し遅れて自分がユニに抱えられていると気づいた。首からはひかるやララが下げていたのと同じ、星があしらわれたインク壺のようなペンダントが下げられている。
「本当無茶するわ。あなた、消える寸前だったのよ」
ユニは時折ペンダントから発せられる光を見ており、それでましろの行き先を追っているようだ。
「あなたも宇宙人なのかしら?人間から鳥になった時はビックリしたわよ」
「僕はスカイランド出身です。一応地球出身、だと思います。多分」
異世界であるスカイランドを地球に含めていいかは分からないが、少なくとも宇宙ではないのでツバサはそう返したが、やはり地球かどうか自信がないので少し目線が泳ぐ。
「それで、ここはどこなんです?」
「私もよく知らないわ。世界の裏側とかそんな所じゃないかしら。普通の生き物だったらあっという間に闇の呑まれて消えてしまうでしょうね」
「ユニさんは平気なんですか?」
「ええ。似たようなことを前に経験したことあるもの」
ましろを見失わないように、定期的にユニはペンダントを周囲にかざし、反応が弱まっていないかを確かめている。
「ましろはこっちね。こんな空間でもちゃんとペンの反応は生きてるわ」
この真っ黒な空間にはただ平らな地面があるだけのようで、まっすぐ歩いていても壁にぶつかったり、足を踏み外して穴に落ちるような気配も無い。
何もない空間をひたすらに進むがましろの姿は見えない。だがユニの進む速さが緩むことはなく、ペンダントの反応を信じて進んでいる。
「少し退屈だし、昔話をしてあげる。昔ってほど前じゃないけど、ノットレイダーっていうはみ出し者の宇宙人の集まりがあったの。今はもう解散しちゃってるけどね」
ツバサもましろが見えるかと思って周囲に目を配っていると、退屈を紛らわす為にユニが話を始めた。ツバサも別に拒む理由は無かったので、それを黙って受け入れる。
「今回ましろを狙ってきた教団も、元を正せばノットレイダーの下部組織。ただのならず者の集まりが組織的に動くには、宗教の力を借りるのが一番手っ取り早かったわ」
ユニの話に出てくるノットレイダーの成り立ちは理にかなっている。この世界でも同じように宗教の力を借り、ただ戦争に明け暮れるだけの『群れ』が民族としてまとまり、国を作り、今のような世界を作った。
今でこそ意識されることはなくなったが、食べる前のあいさつや祝日、季節のイベントのような当たり前の習慣も、宗教の教えから来ているものも少なくない。
「じゃあ、今回の相手はそのノットレイダーの残党、ってことですか?」
「正確にはその中の過激派。前はダークネストっていう強い宇宙人がいて、そいつを崇めてたんだけど、今ダークネストは宇宙のどこかに消えたから、いなくなった信仰対象の代わりを探してる。あいつらの目的としてはそんなところでしょうね」
ツバサは当初、ましろの力を悪用する為に教団が狙っていると思っていた。ましろの魔法の危険性は身に染みて分かっている。
もしソラが助けられなければ、それこそ自分たちは全滅していただろうし、後で駆け付けたユニやララも黒いプリキュアとして暴れまわっていたかもしれないのだ。
「随分と詳しいんですね」
「化けて出入りしてたことがあるし、ブルーキャットやってた頃に情報目当てで取引もしたわ。こう見えてノットレイダーの内部情報はそれなりに詳しいの」
そう歩いているうちにペンダントの光が強くなり、遠くの方に白い『点』が見えてきた。
ユニの歩調は次第に強くなり、その点の前で足を止めた。
「……追いかけてきたの?」
白い点の正体はましろがこの暗黒の世界から出る為に開けた穴だった。この何も見えない世界で、穴から差す光がスポットライトのようにましろを照らしている。
ツバサ達が追いかけてくるとは思っていなかったようで、一歩下がって身構える。その表情には先ほど見せていたような敵意こそ見え隠れしていたが、それよりもユニ達に捕まる不安が勝っているように見えた。
「さっきも言ったよね。私はあなた達のところには帰らないって」
「別にいいわよ。帰ってこなくて」
せっかくましろを説得する機会がやってきたというのに、ツバサが口を開くより先にユニが答えた。しかも、ましろの離反を肯定するような返答にツバサはユニを疑ったが、彼女の真意が見えない以上、下手な口出しはしない。
「あなたの人生だもの。どこへでも好きに行けばいいわ。ただあなたが道具として使われるのが見過ごせないだけ。この先に行っても結局は捨てられるだけよ」
ユニは懐から一つの機械を取り出してましろへ向ける。ツバサはそれが一体何なのか分からなかったが、ユニが引き金のような部分に指をかけているのを見て、それが拳銃であるとやっと分かった。
「あなたに協力するのもやぶさかではないのだけれど、その前に聞かせてくれるかしら。あなた、その力で何をするつもりなの?」
あげは達との決別を宣言したましろに対し、ユニはその真意を問う。
拳銃という明確な武器を取り出したその意味するところが分からないツバサではない。
ましろの答え次第では、この場でユニがましろを処分するということなのだ。
虹ヶ丘ましろ(裏)
ましろの中に潜んでいたもう一人のましろ。
本人も表に出てくるつもりはなかったが、ましろが自分に魔法を使ったことで引きずり出される形で表に出た。
余り物でできた人格を自称し、闇の魔法を自在に操る。
その優しさ故に自分を責める表のましろとは対照的に感情的で、自身が気に入らないものに対しては容赦なく牙を向く。
世界の平和を守る正義の味方でも、世界を滅ぼす巨悪でもないため、第二のダークネストとして担ぎ上げたい教団と、それを阻止したい星空連合とでましろを巡る争奪戦が行われることになった。
尚、表のましろの後に生まれた人格であるため、双子の妹のような存在。