ひろがるスカイ!プリキュア Imaginary Episodes   作:パイシー

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Ch.2-7「手にした平和と残った悩み、正しいことは悪いこと?」

 ましろを説得し、何とか連れ戻すことに成功したあげはは、痛む体に鞭を打って車を停めた場所に向かっていた。

 だがましろの命が狙われている現状は何も変わっていない。むしろ、ようやくスタートラインに立ったと言える程である。

 まずはララ達と合流してこれからの算段を考えなければならないのだが、どこで準備を進めているのか分からなかった為、一度ましろを休ませる為に車を目指していた。

 ようやく自分の車が見えてきた頃、車の前にユニが立っているのが見えた。

「そっちは終わったみたいね」

「うん、何とか。ひかるちゃん達は後で来るよ」

「そう。こっちよ。何とか通信設備は復旧できたから、ララが先に交渉を始めてる」

 ユニに連れられ、あげはが案内された先は廃教会から少し外れた森の中だった。巨大なロケットが木々に紛れるように鎮座しており、所々壊れているのが外からでもわかるが、中の明かりがついている。

「へえ、これがララルンのロケット?壊れてるって聞いてたけど、こんな簡単に直せちゃうんだ」

「まだ応急処置をしただけ。今回の事が終わったら、しばらくは修理で忙しくなるわ」

 あげはが中に入ると、ララがモニター越しに誰かと話しているのが見えた。言語こそ日本語に翻訳されているものの、耳慣れない単語が多く内容まではよく分からない。ただ、ララの表情を見るに、思ったような結果にはなっていないようである。

「このカプセルの中にお願い。すぐにメディカルチェックが始まって、ララのところにデータが行くわ」

 指示された通りにましろの身体を寝かせると、すぐにカプセルの蓋が閉じて、ましろの身体の状態を調べ始めた。身長、体重、脈拍などのデータが次々と備え付けられたモニターに表示されている。

「ララは逃がす前にメディカルチェックを終わらせてたし、私も集められる範囲で証言記録を集めてたけど、向こうは難癖をつけてましろを処分したいみたい。政治家ってこれだから嫌いなのよ」

 ララはあげは達が入ってきたことに気付いていなかったようだったが、メディカルチェックの結果がいきなり転送されてきたことで気づいたようで、こちらに目線を向けた。

 メディカルチェックが終わると、カプセルの蓋が開き、ましろの身体が解放される。あげははそのまま寝かせておこうと思ったが、ユニはましろの服を漁って何かを探し始めた。

「ま、それより私は返してほしいものがあるのだけど……」

 ユニはましろの身体をくまなく探し、ようやくポケットに入っていたクリアブラックのスカイトーンを取り出した。

 黒いプリズムの変身が解除された後も残り続けたスカイトーン。今回はプリズムに対して浄化せずに変身を解除した為、そのまま残り続けたようだった。

「これ、どうやって戻すのよ」

「いや私に言われても……」

 軽く指でつついたり、息を吹きかけたりするが、スカイトーンが戻る様子はない。

 あげはも力を貸したいが、魔法に関する知識はなく、ユニの納得のいく答えを返せない。

「そういえば魔法を使う子、いたわよね?ちょっと探して呼んでくるわ」

 そう言い残してユニはロケットを後にした。

 あげははララの手伝いができないかと様子を伺うも、政治的なやり取りは一切したことが無い自分には手伝えないと悟り、大人しく成り行きを見守ることにした。

 モニターの向こうでは、あげはも知らない世界が広がっていて、ララはそこにいる政治家を相手に必死に交渉を続けている。

 少し自信が無かった声も、ましろを保護できたという事実のお陰で自信が宿ってくるのが分かる。

 自分たちにできるだけのことはやった。ましろを保護し、追ってきた宇宙人達の問題もひと段落している。やっと事態を解決するスタートラインにしか立っていないのかもしれないが、あげはは不思議と達成感を感じていた。

「いい方向に行くといいね、ましろん」

 あげはは眠っているましろの頭をなでながら、平和も取り戻せることを祈った。

 

 

「うーん、これはリコじゃないと分からないかなぁ」

 ユニに連れられてロケットにやってきたことはは差し出されたスカイトーンを見て眉をひそめた。

 何としてもレインボー鉱石を取り戻したかったユニはその返答を聞いて肩を落とした。

「魔法でパパパッっと戻しなさいよ。ララの傷だって癒せたんだし、なんとかならない?」

「そんななんでもお願いを叶えるみたいなことはできないよ……。私も魔法で物は作れるけど、仕組みとかはよく分からないし。あげは、またスマホ借りても良い?」

「うん、いいよ」

 あげはは再びスマホを貸し、受け取ったことはが電話をかける。このままリコの到着を待ってもよかったのだが、早く取り戻したいユニのことを考え、先に聞ける話だけでも聞こうとした。

「もしもしみらい?リコに代わってくれる?」

 少し待って、ことはは電話口の向こうに状況の説明を始めた。もう一人のましろが再度黒いプリズムに変身し、なんとか説得して保護したこと、スカイトーンに変異してしまったレインボー鉱石を元に戻してほしいと思っている人がいること。

「って状況なんだけど、リコ、何かわかる?」

 あげははジェスチャーでスピーカーホンに切り替えるように促し、ことはも不思議そうな顔であげはのスマホを操作した。

『話を聞く限りじゃ何とも言えないわね……。リンクルストーンだって作れたんだし、あり得ない話ではないけれど、元に戻す方法は私にも分からないわ』

 スマホを耳に当てなくても通話ができることにことはが驚き、手を滑らせてスマホを落としそうになったが、近くに立っていたツバサがスマホを受け止めた。

「そっかぁ。リコでも分からないんだね」

『でもましろさんを連れ戻してくれて助かったわ。持てる限りの道具を持ってきたから、そっちに着いたら詳しいことが分かるかもしれない。はーちゃん達も疲れてるでしょ?今はゆっくり休みなさい』

「うん、じゃあまた後でね!」

 ことはは電話を切ってあげはに返した。あのスカイトーンがすぐには元には戻せないと知り、ユニが悔しそうな顔をしていた。

「そんなに大事なものなんですか?あの宝石」

 ユニをあまり感情を表に出さないタイプだと思っていたツバサが口を開いた。ここまで冷静に振舞ってきた彼女が、ここまであの宝石に執着する理由が分からなかった。

「当たり前よ。私の故郷の大事な宝なの。そこそこ取り返せてはいるけれど、宇宙中に売り払われたから全部はまだ。まさか教団が売らずに持ってたなんてね」

 ノットレイダーに所属していた過去のあるユニも、レインボー鉱石の売却先は調査していたが、ノットレイダー内部で留保していたという発想自体が無かった。解散した今となっては調べようもない事なのだが。

 ことはが通話を終えて少しして、交渉を終えたララとひかるが戻ってきた。ひかるの名前は星空界でも知られていたようで、ユニの提案で交渉に加わってもらうこととなったのだ。

「疲れたルン……」

「結構頑固な人達だったね。あんなに首を縦に振らない人、見たことないよ」

 ぐったりはしているが、その表情は明るく、交渉が良い方向に行ったことを示していた。

 少し呼吸を整えて、ララが交渉の結果を告げた。

「なんとか執行を1年待ってもらえることになったルン。本当は取りやめさせたかったけど、期限を延ばすのが精いっぱいだったルン」

 たったの1年とはいえ、元々数日後に命を奪われる予定だった事を考えれば十分な成果なのだが、望む結果を得られずララは肩を落とした。

 ましろの行方も分からなくなり、この世界のどこかで命を落とす。そんな最悪の事態は回避されたものの、ララとひかるの表情は暗い。

「それで、ましろちゃんのお目付け役が欲しいって言われたんだけど、どうする?まどかさんと相談して決めようと思うんだけど……」

「私が付くわ。あのレインボー鉱石を元に戻して貰わないと困るし、教団がレインボー鉱石を持ってるなら、ましろの近くにいた方が集められそうだわ」

 ましろの監視役として、真っ先にユニが手を上げた。

 最優先懸念事項だったましろの処分の延期に成功し、評議会に再検討を刺せるという目的は達成したものの、ましろの命を救えたわけではないという現状が、この場の空気を重くしていた。

「ま、ひと段落したんだし、ちょっとお祝いしよっか。私、買い出しに行ってくるね。ひかるちゃん、近くのスーパーかコンビニに案内してくれる?」

「いいよ!ちょっと遠いけど、あげはさんの車ならすぐだと思う!」

「じゃあお願い。ララルン達はテーブルとかの準備進めといてもらっても良い?もちろん、ましろんの分もお願いね!」

 重くなった空気を打ち破るように、あげはは祝勝会の開催を提案した。ひかるもこの重くなった雰囲気を解消するべく賛同し、2人はロケットを後にする。

 残されたメンバーもこの空気を払しょくしたい思いで、ロケットの修理や、祝勝会の準備に手を付けた。

 

 

 祝勝会の準備、とは言ってもコップや皿を並べたりする程度で、ツバサ達の準備はあっけなく終わった。その為、ツバサにはあげは達の帰りを待つ間、ロケットの外で一人で考え事ができるだけの時間ができた。

 他の面々はロケットの中で設備の修理を行っており、ドーナツを作る装置を直しているらしい。

「えいっ!」

「オヨッ!?ちょっと何してるルン!?」

「みらいの持ってた漫画だとこうやったら直ったよ?」

「そんなんで直る訳無いルン!精密機械は蹴っちゃダメルン!」

 ことははララを振り回している声が聞こえたが、今のツバサにはそれを嗜められるほどの余裕はなかった。

(正しいだけじゃ、届かない、か……)

 黒いプリズムの目的を暴き、双方に戦う必要ないと伝えたが、結局打開策を開いたのは、捨て身の説得を行ったひかるだった。

 冷静になって考えてみれば、感情的になった相手に正論だけを振りかざしても同意は得られない。そんな当たり前のことさえも見落としていた。優しいましろなら、自分の言葉を受け入れてくれるかもしれないとどこかで期待していたのかもしれない。

 あの時ああしていれば、もっとこうしていたら、結局どうすれば正解だったのか、そんな思いばかりがツバサの脳裏を駆け巡る。

「あれ、ツバサ君だけ?はーちゃんとかあげはちゃんは?」

 ロケットの階段に腰かけて考え事をしていると、みらいとリコがやってきていた。リコはましろのことが気になるのか、ツバサの横を通ってロケットの中に入っていく。

「ことはさんは中でロケットの修理を手伝ってます。あげはさんは買い出しに行くって言って出かけてます」

「そっか。隣、いいかな?」

 残ったみらいがツバサの隣に座った。ロケットの修理を手伝うより、自分のことが気になるのか、自分の顔を覗き込んでくる。

「なんですか?」

「難しい顔してたからさ、相談ぐらいは乗ってあげようかなって。ほら、私も年長者だし」

 正直なところ、ツバサはみらいに対して苦手意識があった。悪人ではないことは知っているが、今一考えが読めず、目の前で話しているはずなのにどこか距離を感じる。大人びているといえばそうなのかもしれないが、社交的なあげはとはどこか対照的に映った。

「それで、どんなことで悩んでたの?別に遠慮しなくてもいいよ。ツバサ君ぐらいだったら、ちょっとくらいワガママぐらいがちょうどいいんだし」

「ワガママって……。僕はお邪魔してる立場ですし、あんまり皆さんに迷惑をかける訳にはいきませんよ」

 ソラシド市に落ちてきてから、そういう負い目のような感情があった。自分はよそ者、外からやってきた異物だから、自分で解決できる問題は自分で解決するべきであるという思いがツバサの中では強かった。

「別にかしこまらなくてもいいんじゃないかなぁ。そんな心の狭い人って、ツバサ君の周りにいないんだし」

 そんなことは分かっている。ましろと暮らし始めた頃のソラを見れば、あの家の人たちは少しくらい失礼だったくらいで追い出したりはしない。だが自分はソラとではないというのに、同じように振舞えというのは土台無茶な話である。

「そうだなぁ……。私が最初ソラちゃんと会った時の話をするけど、私、ましろちゃんに会いたくてソラちゃんを探してたんだよね」

 ソラからみらいを紹介した時、黒いプリズムの呪いで苦しんでいた所を助けてもらったと言っていたのを記憶している。ツバサはその後みらいがプリキュアとしても助けてくれたと聞いて、あまりにもできすぎているのでは?と疑っていたが、案の定だった。

「リコがましろちゃんを保護したいっていうから、ましろちゃんが会いに行くって言ってたソラちゃんを探してた。もし先にましろちゃんを捕まえてたら、ツバサ君達とましろちゃんの奪い合いをしてたかもね。リコは事情を話すつもり無かったみたいだし」

 それはあり得ない、とは断言できない。今こうしてみらいが隣にいるには、ソラとみらいが出会わなければならない。つまり2人が出会わず、ましろを有無を言わさず連れ去ってしまったら、自分たちはましろを取り返そうとみらいやリコと対峙していただろう。

「あの時の私はリコの為に行動してたよ。リコの為にましろちゃんを捕まえようとしたし、言っちゃえば、ましろちゃんに会えればソラちゃんなんてどうでもよかった。でもツバサ君は私は間違ってたと思う?」

「いえ……。みらいさんは、間違ってないと思います。だって悪意があって動いてたわけじゃないですし、魔法界の事ってあまり大げさにはできないんですよね?」

 少し自信のない声で答える。みらいは敢えて自分が憎まれるような言葉を選んだが、それでもツバサはみらいを憎めなかった。もしあげはやエルの為に誰かを利用しなければならないとなれば、自分だってそうしていただろう。

「うん、でもソラちゃんだったら答えに悩んでたかな。ましろちゃんを助けたいって頭じゃ分かってても、黙ってましろちゃんを奪おうとしたのを許せない気持ちで板挟みになって動けなくなってたかも。でもツバサ君は、頭で考えた事を優先したいんだよね?」

 ここでソラの名前が出てくるとは思ってもみなかった。だがみらいの予想は、ツバサからも容易に想像がついた。最初に黒いプリズムに苦しめられたのも、ソラがましろに攻撃できなかったからこそあそこまでの騒動に発展したのだ。

「私ね、『正しい』っていうのは毒だと思うんだ。色んな選択肢あるのに、誰かが『正しい』ってシールが貼るとそれ以外全部ダメって捨てられちゃう。結局私が選べるのなんて1つしかないんだけど、ちょっと息苦しいかなって思うよ」

 みらいは立ち上がり、ツバサと向き合う。あまり場を固くしないように笑顔を作っているが、その笑顔にはどこか影を感じた。

「毒って、なんでそんな風に言うんですか?だって、みらいさんは正しい事をしていると思ったからプリキュアとして戦ったんじゃないですか」

「うん。思ってた。でもね、たまたまお母さんの仕事に付いてって、色んな国に行ってさ、知っちゃったんだ。『正しい』って言葉がどれだけ危ないかって」

 そう語るみらいはどこか枯れているような印象を受けた。絶対的な正義なんてない。口にしているのはそんな一般論に過ぎないはずなのに、妙な説得力を持っていた。

 しかもそれは、相手からの印象を悪くしないためのものではなく、まるで自分に何かを言い聞かせるように語る。それが、今話してツバサが感じた朝日奈みらいという女性の印象だった。

「ま、なんかすごいこと言ったけど、要はさ、ぼーいずびーあんびしゃす、かな。ツバサ君の夢って、空を飛ぶことだったよね?夢をかなえて何をしたいのか、どんな人になりたいのか、私ちょっと気になっちゃった。もし決まったら教えてね」

 みらいはそのままツバサとすれ違うようにロケットの方へ向かう。丁度ましろの治療も終わったのか、ロケットの入口から姿を見せたリコが目に入ったようだ。

「ましろさんの状態はどうでした?」

「怪我をしてるだけ、ってところかしら。全身を強く打った以外は問題ないわ。ただ、目を覚ました時にどこまで記憶が残っているかは分からない」

 リコに続くようにしてロケットの中に入ると、ララの指示でことはが装置を直しており、その傍らで変わらずカプセルの中でましろが眠りについている。

 カプセルの傍には何故かソラが待機していたが、目つきや立ち方に違和感があり、ユニが化けているのだとすぐに分かった。

「パニックを起こして逃げ出したら大変だから、カプセルは蓋をしてあるし、ユニさんにはソラさんに化けてもらったわ。万一記憶が無くなってても、落ち着かせてあげられるはず」

「それより、これ、早く元に戻しなさいよ」

 リコにスカイブラックのクリアトーンを渡して、ユニが元に戻すように迫るが、リコは動じずにスカイトーンを見つめる。

「これの元の形が何なのか分からないけど、多分無理ね。ましろさんの魔法を打ち消せる薬も使ってしまったから、ましろさんにお願いして戻して貰うしかないと思うわ」

 そう言われたユニが眠っているましろを睨みつける。まだましろが目を覚ます様子はない。もう一人のましろに何かを言いたくても、今その言葉は彼女には届かないのだ。

「1つ分からないのは表と裏、それぞれのましろさんがどうやって入れ替わったのかって事ね。記憶を失くしてからの3か月の間暮らしてたソラさん達からも2人目のましろさんの事は知らないみたいだったし、何かの拍子で出てくることは無いと思うけれど」

「あのましろさんは、表に出てくること自体がおかしい、って言ってましたから、自分からは出てこないんだと思います。となると……」

 表のましろが呼び出した。そう言いかけてツバサが口ごもる。大人しかったましろが、感情的に暴れまわる自分を肯定していたとは想像もしたくなかった。

「人格を切り替える魔法、かぁ。まず心が2つあるってこと自体がレアだし、流石にリコでも難しいかな?」

「ええ。魔法界じゃ心の病にかかる人自体が希少なのよ。だからこっち程研究されてもいないし、元に戻すなら私の知識だけじゃ無理ね」

 そこまで聞いて、ユニが溜息を吐いた。今は成り行きを見守るしかない。何度考えを巡らせてもその結論にたどり着いてしまうと分かってしまったようだった。

「分かったわ。こうなったら最後まで付き合うわよ。今回は事が事だったから使わなかったけど、私もプリキュアだもの。何が何でも守ってやるわ」

 ユニはひかるが持っているのと同じペンダントを見せた。ましろを見守るだけではなく、直接介入する。そういう意思表示だった。

「……ん」

 そんな中、カプセルの中から眠っていた少女がゆっくりと、目を開けた。

 

 

 ごめんなさい。

 みんなが望むましろちゃんになれなくてごめんなさい。

 みんなから受けた優しさに何も返せなくてごめんなさい。

 私はなんにもない、空っぽの器。

 だからこのまま黒いもので染まって、私が消えるのが正しいんだと思う。

 私が消えればきっと元のましろちゃんになれる。

 虹ヶ丘ましろちゃんから奪ったモノを全部返してあげられる。

 だから消えよう。

 このまま全部、暗闇に身を委ねて。

「そんなことないよ」

 消えようとしていた私の前に誰かが現れた。

 ずっと見てきた顔、何度も聞いた声。

 忘れたくても忘れられない、もう一人の私。黄色い目をしたもう一人の私。

「ひかるちゃんがね、言ってくれたんだよ。もっと私たちのことを知りたいって。あげはちゃんも、私たちに向かって謝ってくれたの。このまま私が表に出たままになったら、ソラちゃんもビックリしちゃうかもね」

 もう一人の私は私の前に立って、外でのことを教えてくれた。

 私の力を受けても、ひかるちゃんは私に歩み寄ってくれた事、あげはさんがちゃんと私たちの事を見てくれるって約束してくれたこと。

 でも、私なんかでいいのかな。

「私なんか、なんて言っちゃダメだよ。あなたは前の私の心を受け継いだ私。一番強い所を受け継いだ私なんだから。あなたも立派な私の一部。だから、2人で頑張ろう?」

 うん、分かった。もう少しだけ頑張ってみる。

 ソラちゃんも、私の目が黄色くなってたらビックリしちゃうもんね。

「じゃあ、いってらっしゃい。みんな待ってるよ」

 もう一人の私に送り出されて、私は閉じていた目を開けた。

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