ひろがるスカイ!プリキュア Imaginary Episodes   作:パイシー

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Ch.3-2「リコ先生と観星町の月、そしてトロピカってるお客サマー!」

 ひかるやまどかがソラシド市に到着していた頃、ローラの前は一杯のカレーを前にしていた。

 ローラが空腹を訴えたため、ましろがすぐに用意できる料理として作ったものだ。

「ごめんね、すぐに用意できるの、レトルトカレーしかなくて……」

 ましろは先ほどの剣幕のせいですっかり怯えてしまい、リコの後ろに隠れてローラの様子を伺っている。

 明らかに警戒されてる状況にローラもため息をついたが、出された料理を冷ましてしまうのも悪いのでカレーに手を付ける。

「良いわよ別に。貝殻クッキー以外だったらなんでもいいわ」

 一晩ぶりに食事らしい食事出され、ローラは内心嬉しそうにカレーライスを口に運ぶが、直後にカレーを吹き出しそうになり、口を塞いでむせる。

 思わずカレーを吐き出しそうになったものの、何とかギリギリのところで堪えて飲み込んだ。たった一口食べただけだというのに、ローラの息は荒い。

「辛ッ!?何よこのカレー!?」

 なんとかカレーを飲み込んで飛び出した感想がそれだった。

 あまりの辛さに悶絶していたのにましろもビックリし、キッチンに置いてきたカレーの空き箱に書かれた商品名を読み上げる。

「超激辛、デッドオアアライブカレー、だって。ツバサ君のお友達が美味しいってオススメしてくれたんだけど……」

「もはや辛味を通り越して痛みよ。流石にこれをおいしいって食べる光景が想像できないわね……」

「ましろ、スマホ鳴ってたわよ」

 あまりの辛さに悶絶していたローラが驚いていると、ユニがましろにスマホを投げ渡してきた。画面には『星奈 ひかる』と表示されている。

「ひかるちゃんだ。何かあったのかな」

 事前にソラシド市に来るとは聞いていたが、気が付けば着くと言っていた時間を少しだけ過ぎている。

 初めて来る街なのでもしかしたら道に迷ってるのかもしれないと思い、すぐに通話に出た。

「ひかるちゃん?どうしたの?」

『あっ、ましろちゃん!さっきソラシド市に着いたんだけど、ちょっとそっちに行くの遅れるかも。ローラって子、そっちに届いてるよね?』

「ローラちゃん?うん、来てるけど」

 ましろの口からローラの名前を聞いたローラは立ち上がり、ましろの近くまでやってきてスマホを貸すようにジェスチャーを送る。

「借りるわね」

 断りを入れてましろからスマホを受け取ると、ローラはスマホを耳に当てて話し始めた。

「私がローラよ。そっちにまなついるんでしょ?ちょっと代わってくれる?……もしもしまなつ?……ええそう。ましろの家にいるわ。早く来なさいよね。ところでまなつ1人?……そう、さんごは一緒なのね。ええ。それじゃ、また後で。ましろに代わるわね」

 ローラは電話越しに話を終えると、ましろにスマホを返却した。

 知らない誰かと話すかもしれないと思い緊張したが、もう一度ましろがスマホに耳を当てると聞きなれたひかるの声が聞こえてきた。

『そういうことだから、少し遅れちゃうけど待っててね!』

「うん、待ってるよ!」

 通話を終えてスマホをしまう。ひかるにもうすぐ会えると知り、ましろは上機嫌で着替えと荷物を置きに部屋へ戻っていった。

 残ったリコはカレーと格闘を続けているローラを見たまま、先ほどまでの会話で気になったことについて質問を投げた。

「ねえ、まなつさん、だったかしら。どんな子なの?良かったら教えてくれないかしら」

「底抜けのバカよ」

 もしかしたら、まなつも魔法界から迷い込んだ人間かもしれないと思って尋ねたのだが、『バカ』の一言で返されてリコは思わず返す言葉を失った。

 しかしローラが言いたいことはそれだけじゃなかったようで、更にまなつについての説明を続ける。

「バカみたいに明るくて、周りを巻き込んでひたすらに前に前にって進んでくの。もしまなつと出会って無かったら私は今ここにいないし、プリキュアにもなれなかった。こうしてカレーを食べたりすることも無かったでしょうね。……にしても辛すぎよ、これ」

「そ、そうなの……。まなつさんは普通の人間なのね?」

「ええ。人魚なのは私だけだし、マホウカイなんて場所とは縁もゆかりも無いわ」

 もしかしたら、魔法界から流れ着いた人間のコミュニティがあって、ローラはそこから来たのかもしれないと思ったのだが、ローラの様子を見るにそれは見当違いだったと分かる。

 ナシマホウ界の人魚はリコの知っている人魚とは全く異なる生き物なのだと思い知らされていると、今度はローラが質問を投げてきた。

「で、さっきから色々と聞いてくるけど、結局あなた達こそなんなのよ。普通の人間が人魚の存在を知ってるなんておかしいわ」

 思えばこれまでの間で自己紹介をするのを忘れていた。リコとみらいは自己紹介をする為にローラの近くに集まり、ついでにモフルンもローラの前に差し出す。

「ああ、ごめんなさい。自己紹介してなかったわね。私が十六夜リコで、こっちが朝日奈みらいとモフルン。ましろさんの家庭教師をしているわ」

「家庭教師、ね。まなつも家庭教師がいたらちゃんと勉強してくれるかしら。学年末のテストだって、ギリギリ補習にならないぐらいの成績だったし」

 愚痴を交えながら再びカレーに手を付けるローラ。ぬいぐるみであるモフルンがカレーで汚れないように皿の位置を少しだけ動かしてカレーを口に運ぶ。

「動くぬいぐるみとかを連れてるし、魔法界なんて言葉も出てきたってことは、さしづめあなた達も魔女とかだったりするんでしょう?人間でも魔法って使えるのね」

 魔法。その単語がローラの口から出てきたのは意外だった。

 しかしローラが知っている魔法は自分たちが使うものとは少し違うようで、魔法界ではほとんど聞かない『魔女』という単語を使っているのが引っかかる。

「魔女、まあ魔法を使う女の人って意味じゃそうね。でもみんながみんな魔法を使えるわけじゃないの。素質のある人と専用の杖が揃って初めて使えるのよ」

「なるほどね。魔法を使えるあなたがましろの家庭教師をやってるってことは、ましろも魔法を使えるようになったのよね?」

 そう尋ねるローラの語気は強かった。

 久しぶりに会った友達が自分のことを忘れていた挙句、見知らぬ人間が傍にいたのだ。疑って当然である。

「……ええ。ましろさんも少しだけ魔法が使えるわ。私が教え初めて、もう2か月ぐらいになるかしら」

 リコは少し考えた後、正直に話した。ここで下手に隠してローラに怪しまれる必要もないと思っての判断だった。

 ましろは影で杖や箒を作れば、自分たちと同じように魔法を使える。影が必要になる都合、基本的には昼間しか使えないが、ちゃんと魔法使いとして成長している。

 闇の魔法についてもまだ不明な部分こそ多いものの、記憶が磨り減ったりと言ったことも無く、今のところは安定している。

 カレーを食べているローラとそんな話をしていると、玄関のドアが開けられてひかる達が入ってきた。

「お邪魔します!ごめんましろちゃん、遅くなっちゃった!」

 ひかるの声を聞きつけて、ましろも急いで部屋から出てきて嬉しそうにひかるを迎える。

「ううん、いいよ!いらっしゃいひかるちゃん!」

「あ、そうそう!途中でおいしい()()()買ってきたんだ!ここ置いとくね!」

 ひかるの顔を見たましろは急いで客を迎える準備を始め、ひかるも持ってきたお菓子をテーブルの上に置いた。

「……記憶が無いって聞いてびっくりしたけど、やっぱりましろはましろね」

 怯えた小動物のようだった先ほどまでの態度とは対照的に、嬉しそうにするましろを見たローラがそう呟いた。少し自信過剰な気が見られる彼女だが、そう語った時の顔だけはどこか寂し気に見えた。

「ローラ!よかったー、無事で!そのカレーおいしそう!私も一口貰っても良い?」

「本当にごめんね!うっかりラッピングするやつ間違えちゃって……」

 ひかる達と一緒に来ていたまなつ達もすぐローラに駆け寄り無事を確認する。うっかり宅配便で送ってしまい心配していたが、何事もなかったかのようにカレーを食べているところを見て、すぐに安心したようだ。

「まさか友達の家に配送されるなんて思わなかったわ」

 本当はこの場で文句を言ってもよかったのだが、ローラは目の前に残ったカレーを見て、ニヤリと笑ってカレーを一口さんごに差し出す。

「さんご、疲れてるでしょ?このカレーおいしいから、一口分けてあげるわ」

 何も知らないさんごはそのままカレーを口にして、その辛さにビックリしてローラ同様にせき込む。

だがローラと違って相当堪えたのか、少しだけ涙目になっている。何か言いたいようだが、口の中の辛さが抜けず言葉が出てこないようだ。

「私を間違えてラッピングした罰よ。こっちは一晩貝殻クッキーで過ごしてたんだから、これで()()()()

「え?そんなに辛いの?あっ、本当だ!辛い!」

 さんごがむせたカレーの辛さが気になったのか、ローラからスプーンを受け取ったまなつも食べて感想を口にする。辛いとあらかじめわかっていたからか、流石にむせたりはしなかったものの、その辛さに驚いていた。

 一方辛さのあまりしゃべれなくなったさんごは、持参した商品を取り出してましろに差し出した。

 喋ろうとしても上手く舌が回らないので、ジェスチャーゲームの要領で謝罪の意を示す。一見ふざけているようにしか見えないが、その表情を読み取ったましろに気持ちは伝わったようで、嬉しそうに商品を受け取った。

「これがみらいさんが言ってた新商品なんだ……!」

 さんごから化粧水を受け取り、渡された瓶を眺める。ネットの画像では分からなかったが、ずっしりとした重みを感じ、一歩先に進めたような気がして思わず胸が躍る。

 ましろが嬉しそうにしているのを見たさんごの気持ちも晴れたようで、少し嬉しそうにした。

「ましろちゃんお化粧するの?」

「うん。今度ソラちゃんやツバサ君が生まれた場所に行くから、身だしなみとしてってみらいさんが教えてくれることになったの」

「そうなんだ!私もソラちゃんがどんなところで育ったか気になるし、ついてっても良いよね!」

「ダメですよひかる。連休が明けたら中間テストがあるのですから。それに備えなければなりません」

 自分もスカイランドに行くと言い出したひかるを、残ったまどかが止めた。

「そういえばそうだったっけ……。うーん、じゃあまた今度連れてってもらおうかな……」

「ううん、大丈夫だよ。帰ってきたらお土産持ってくから!最近、飛ぶのもちょっとだけ上手くなって、この前みたいに墜落はしなくなったんだよ!」

 落ち込むひかるをましろが励ましているのをよそに、まどかはまっすぐリコの前までやってきてあいさつをする。

「あなたが十六夜リコさんですね?はじめまして、ひかるの友人の香久矢まどかです。ひかるから話は聞いております」

 リコの前に立ったまどかはごく自然な手つきで名刺を取り出して差し出した。

 少しぎこちない動作で名刺を受け取り、書かれている情報を見る。

(内……府、宙、特別……ダメね。読める漢字だけ拾っても分からないわ……)

 こちらの中学に通っていたことがあるとはいえ、それももう5、6年も前の話。日常生活に差し支えないレベルで読み書きはできる一方で、日常生活であまり目にしない文字は読めないし、読めたとしても意味が分からない単語も少しはある。

 見慣れない文字に悪戦苦闘していると状況を見守っていたみらいが近くまでやってきて、名刺の文字に目を通す。

「内閣府……ってこれ本物?」

「はい。父が勤めている職場です。今はまだボランティアという立場ですが、できる範囲で仕事を手伝ったりしているんですよ」

 名刺に書かれた肩書にみらいは驚いているが、リコにはどうすごいのか具体的な実感が沸かない。

 どうすれば良いか迷っていると、みらいにつつかれて、予め用意していた名刺を差し出すように促される。

 再びこちらの世界に腰を落ち着けるとなった時、みらいが自己紹介代わりになるからと用意してくれたものがあるのだ。

 小さいカードの受け渡しに何の意味があるのか分からなかったが、無意味に反抗することもないので、頭の片隅には置いていた。

「えっと、私の名刺は……」

 慣れない手つきでまどかの真似をして名刺を差し出す。

 電話番号と名前以外は偽の情報で、それっぽく体裁を整えただけのものだが、受け取ったまどかが怪しむ様子はない。

(本当にカードの受け渡しで自己紹介するのね……)

 こちらに比べて人の絶対数が少ない魔法界にはない文化に驚いていると、ユニもこちらにやってきた。

「久しぶりね。最後に会ったのって半年前だったかしら」

「ええ、お久しぶりです。この前は父の手伝いで不在で、ひかるに全部を任せてしまい申し訳ありません」

「気にしてないわよ。こっちも誰の支援も受けられない前提で動いてたんだし」

 ひかるの友人同士やはり面識はあったようで簡単にあいさつを済ませる。

 再会を喜ぶまなつ達や、スカイランドの話で盛り上がっているましろ達とは対照的に、2人が交わしたのは淡泊な会話だった。

「ということは、あなたもプリキュアなのかしら?」

「もちろんです。ましろさんの事を聞いて、私もわずかながらお力添えをしたいと思いまして」

 まどかはリコ達に、ひかるやユニが持っているのと同じペンダントを見せた。ましろを狙う勢力がどこからやってくるか分からない以上、戦力が増えるのは心強い。

「本日はみなさんをパーティーに招待しようと思って参りました。元々父が準備していたのですが、あいにく中止になる所でしたから、少し無理を言って使わせてもらえるようにしました」

 まどかは持っていたバッグからからパンフレットを取り出してリコ達に渡す。

 パンフレットには綺麗な船の写真と、パーティーの様子を映したものと思われる写真が載っている。

「あいにく日程は明日と急なのですが、もしよろしければご参加ください」

「これ、ましろちゃん達も呼ぶんだよね?」

「はい。せっかくひかるに新しい友人ができたのですから、思い出作りに良い機会だと思いまして」

 そう言ったまどかは一例をしてリコ達の前から去っていく。ましろにもこの話をしに行ったようで、船の上でパーティーという日常生活じゃ体験できない話を聞いたましろは参加する気満々のようだ。

「気を付けなさいよ。まどかはかなり頭が回る方だから、うっかりしてると足元をすくわれるわよ?」

 一部始終を聞いていたユニが口を挟んできた。だがそれは友人と再会したというのに、まるで敵対者であるかのような言い方である。

「そういうのは良くないわ。まどかさんとは一緒に戦った仲間なんでしょ?」

「一応、ね。間違ってもましろを力づくで奪うような子じゃないけど、何の目的もなくこんなのを開いたりもしないから気になったの。知ってる?あの子、数百円のドーナツで10憶もするペンを落札したのよ」

「何をどうしたらドーナツが億単位のお金で売れるのよ……」

 どうやってそこら辺で売られているドーナツを10億で売ったのかは不明だが、ユニの言い分はもっともだった。

 今のましろは光の戦士でもなければ、悪の手先でもない。ましろを心配して善意で保護しようとしたり、危険視して襲ってくるプリキュアがいないとは断言できない。

(プリキュアも敵になるかもしれない、か……)

 まどかが悪意で動く人間には見えない。リコはまどかが見立て通りの人間であってほしいと思いながら、パーティーへの参加を決めた。

 

 

 その晩、ましろの家に集まった全員で夕食にしようと思ったのだが、それをやるには食材から何まで準備ができていなかった。

 仕方がないのでそれはパーティーまでのお楽しみということにして、二手に分かれての夕食となった。

 ましろの家には連絡係も兼ねてひかるだけが残り、それ以外のみらいとリコ、まどか、ローラ達3人の計6人は別行動となった。

「今回は急なことでしたから、取れたのがこちらのホテルだけでした。料金の支払いは済ませておりますので、お金の心配は不要です」

 まどかが案内したのは、意外にもリコが宿泊しているホテルだった。

 確かにソラシド市の中心に近い所にあり、駅やその他の場所へのアクセスは容易なのだが、まさか同じ場所に泊まることになるとは思わなかった。

「それでは私はやる事がありますからここで失礼いたします。私の名前を伝えればまなつさん達の部屋のカギは出していただけるはずですので、後はご自由にどうぞ」

 まどかは一礼してホテルの中に入っていった。かしこまる必要がない場面にもかかわらず、細かい所作にもその育ちの良さがにじみ出ている。

「どうする?私たちが泊まる部屋の確認しとく?」

「それよりもおなかすいたー!先にどっかで食べてからにしようよ!」

「お金ならちょっと持ってきたけど、どうしよっか」

 まなつ達がこれからの事を話し合っているそばで、リコはみらいにこれからの事を訊いた。あまり帰りが遅くなると両親が心配するだろうと思っての事だ。

「私はまなつさん達と一緒にいるけど、みらいはどうする?今から飛んで帰っても結構遅くなっちゃうでしょ?」

「今日はリコのところに泊まろうかな。折角の2人部屋なんだし」

 みらいは迷わずリコの部屋に泊まると言った。

 これからどうするかを話し合っていたローラ達の方針も同時に決まったようで、代表してローラがこちらにやってきた。

「ねえ、私たちこれからご飯行くけど、リコとみらいはどうするの?」

「私たちもついていくわ。もう暗くなってきたし、あなた達だけで外を歩くのは危ないし」

「そっか!じゃあ一緒に行こう!」

 身体一つでここまで来たまなつ達は一度ホテルで休んだりはせず、その足で夕食を取りに出かけた。意外にも先頭を歩いていたのはさんごである。

 ここに来る道中、たまたまオシャレな見た目のお店を見かけたらしく、そこで夕食を取りたいらしい。

「リコ先生ってましろの家庭教師もしてるんだよね?ましろってどんな高校に進むの?」

 まなつ達と店に向かっている最中、そんな話がまなつの口から出てきた。

 表向きはそういうことになっているのだが、実際にましろの勉強を見ているのはみらいで、リコは魔法の指導に注力している。

 先日も勉強を教わってはいたようだが、肝心のましろの成績についてはリコもよく分からない。

「まだ具体的な進路は決めてないわね。今はできるだけ成績を上げて、いざって時に困らないようにしてるわ」

「そうなんだー。私たち来年受験だから、この時期って何してんのかなーって思ったけど、意外と普通なんだね」

「思えばあすか先輩も普通に部活してたもんね。スポーツ特待生で入ったけど、勉強もそこそこしてたらしいし」

 初めての受験に対して漠然とした不安を抱いているまなつ達を横目に、進路の話が出てきて、来年以降のましろの事を考える。もしましろがこちらの世界で暮らしたいと言った場合、どのような進路を取るのだろうか。

 絵の好きな彼女の事だから、絵の学校に進むのかもしれない。そんな事を思っていると、さんごが店の前で足を止めた。

「ここがそのお店、すごいきれいな見た目だって思ったんだけど……」

 さんごが指を指したのは、ネオンサインで書かれた店名が輝く店だった。

 レンガ造りに似せた外観こそオシャレなものの、リコ達はこの店に入らずともどんなお店かは分かった。

「ここ、バーだよね……?多分、さんごちゃんが見たって言うのはランチ営業してるところだったんじゃないかなぁ……」

 みらいの言う通り、この店に入っていく人間の年齢層は高く、どう見ても中学生が利用する店には見えなかった。

「でも入ってみないと分からないよ!たーのも―――」

 それでもまなつはさんごを信じて中に入ろうとしたのだが、流石にそれを見逃すリコではなく、反射的にまなつの首根っこを掴んで制止する。

「待ちなさい。子供がバーに入るのを黙って見過ごすわけにはいかないわ」

「えー、でもおなかすいたし……」

「私がよく行くファミレスがあるの。そっちだったらこの人数で入れるし、そっちに行きましょう」

 今度はリコが先頭に立ち、みらいともよく行っている店へ行き先を変える。

 行きたかったお店に行けず残念がるさんごを宥めつつ、まなつ達もリコに続いてファミレスへと向かった。

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