ひろがるスカイ!プリキュア Imaginary Episodes   作:パイシー

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Ch.4-2「壊滅の王都、目覚めの兆し」

 たどり着いたスカイランドの光景はあまりにも凄惨なもので、少し遠くからは煙が上がっているのが見える。

「随分と外れの方に出たわね。ここから移動するのかしら?」

 ユニは何かの間違いでここに飛ばされたと解釈し、本来の目的地に案内するように暗に促す。

 しかし想定外の事態なのは準備する側に回っていたソラ達も同じなようで、状況を把握する為にあちこちを調べて回る。

「少年、もしかして場所間違えた?」

「いえ、そんなはずはありません。昨日もこの設定でスカイランドに行ったはずですし」

 ツバサが操作するミラーパッド画面には、トンネルを繋いだ座標の履歴が表示されている。

 昨日シャララ隊長達と打ち合わせの為に開いた座標と、今回開いた座標を見比べてみるが、座標に狂いはない。

「何かで邪魔されたのかもしれません。何かないか探してみます!」

 ソラは予想外の事態に動揺する自分を抑えつけ、周囲を探し回って状況が分かる何かを探す。

 不安そうな顔をしているましろを前に、自分までも不安に吞まれる訳にはいかない。

 ふと足元に違和感を感じて下に目を向けると、瓦礫に混じって何か文字の書かれた板が足元に転がっていた。

 ソラは板に書かれた文字に心当たりがあり、急いで周囲を探して同じような板が無いかを探す。

 偶然にも同じような板は周囲に何枚か転がっていて、ソラはパズルのように組み立てて一つの文章にしていく。

「ツバサ、あれ……!」

 信じられない光景に息を吞んでいたエル達も、遠くに見えたあるものが目に入り、この場所が否が応にも分かってしまう。

「はい、間違いありません。ここは……」

 その先を言いかけてツバサは口を紡ぐ。それを口にしてしまえば、この最悪の状況を肯定せざるを得ない。

 言い淀んだツバサに代わり、何かの文章を組み立てたソラが一呼吸を置いて立ち上がる。誰かが告げなければならない。ここがどこなのかを。

 

「ここは、スカイランドの王都の中心です……。ここで、ましろさんをお迎えする予定でした……」

 

 ソラがか組み上げた文章は、スカイランドの文字で『ようこそスカイランドへ!』と書かれたもので、ましろの名前を入れていたであろう下半分が欠けている。

 エルとツバサの目に入った王城も、普段王都から見えている城と全く同じ大きさと向きで見えていたのだ。

「何が起こったのか知る為にも、シャララ隊長達と合流しましょう。私が探してきますから、ここで待っててください」

 ひとまずはここで待っていたはずの人達を探しにソラは駆け出す。

 普段は青の護衛隊の隊員として任務に当たっている為か、ソラは衝撃を受けても立ち止まることは無い。

 対照的にましろは未だ状況を呑み込めておらず、周囲を見渡して少しでも状況を理解しようとしている。

 そんなましろを見ていたユニは、ましろの前に手を差し出した。

「えっと……?」

「私と融合しなさい。要領は分かるでしょ?敵がまだ近くにいるかもしれないし、私の中に隠れてた方が安全だわ」

 確かにトゥインクルイマジネーションを宿したユニであれば、確かにましろとの融合に耐えられる。

 しかしそれはトゥインクルイマジネーション本来の役割とは違う為、何が起こるか分からない。

 それでも戦えないましろを確実に守るため、ユニはましろとの融合を申し出たが、先にリコがましろの手を取って止めた。

「ダメよ。一つになるのは本当に最後の手段。まだとっておきなさい」

 中々切り出すタイミングがつかめず、結局ユニには話せていないが、リコはひかるの身に起こった影響を知っている。

 それに、ましろ自身にどんな影響があったのかも掴めていないのだ。

 これ以上危ない橋を渡らせる訳にはいかない。

「ましろさんは影の中に隠れてて。安全だって分かったら声をかけるわ。それまでは出てきちゃダメ」

「う、うん!」

 リコに言われて、ましろはリコの足元から延びる影に手を当てて異空間へとつながる入口を開ける。

「待って。これ持ってなさい。ララから借りて来たわ」

 ましろが異空間に潜る前に、ユニは懐からふたご座のペンを取り出してましろに渡す。

 万が一はぐれた場合、ユニがましろを探し出すための発信機代わりになるアイテムである。

 ましろもそれを理解していたため、素直に受け取って影の中へ潜る。

 直後、何かの音を聞きつけたユニの耳がピクリと動いた。

「何か来るわ!」

 ユニが叫ぶと共に地面が崩れ、地中から巨大な影が飛び出す。

 反射的にあげは達は身をかがめ、飛び出してきた『影』はあげは達の頭上を通過した。

 轟音と共に着地した『影』は、無機質な駆動音を鳴らしながら正面に取り付けられたカメラでこちらを見つめている。

「あれって、アンダーグ帝国の残党、とかじゃないよね?」

 襲撃者の姿を見たあげはが言葉を漏らした。

 ノットレイダーの残党が教団として動き出したように、アンダーグ帝国の和平を良しとしない派閥の襲撃かと最初は予測していた。

 しかし目の前に降り立った『ソレ』は、アンダーグ帝国の戦力にしてはあまりにも[[rb:異質すぎた > ・・・・・]]。

 その襲撃者を見て、エルがつぶやいた。

「機械の、サソリ……?」

 地面から飛び出してきた影の正体は、鋼鉄でできた巨大なサソリだった。

 エルも図鑑で見たことのあるフォルムと酷似しているが、大サソリが放つ異様な雰囲気に思わず眉をしかめる。

 ランボーグやヨクバールにも引けを取らないほどの巨大なボディに、本来ハサミがあるはずの前脚は巨大なドリルになって回転している。

 その上サソリの特徴ともいえる鋭い尻尾の先には、戦争映画に出てくるようなガトリング砲が取り付けられ、黒鉄の銃口がこちらを見下ろしている。

 どうやらエル達を狙って飛び出してきたようで、全員無事であると分かるとすぐに尻尾の砲身が回転を始める。

「マジェスティックベール!」

 直感で攻撃が来ると察知したエルが、先にキュアマジェスティへ姿を変えて飛んできた弾丸の雨を受け止める。

 マジェスティに向けられた弾丸の雨はマジェスティックベールを通過したが、ベールが勢いがすべて吸収した為、マジェスティには小石をぶつけられたような痛みしかやってこない。

「なんなのよこれ……」

「とにかくやっつけよう!私が押さえてるから!」

「オッケー、任せて!」

 マジェスティに攻撃を任せてバタフライを抱えたウィングが天高く飛び立ち、大サソリの頭上を取る。

 見た限りの情報だが、敵の武器は尻尾の機関銃と前脚のドリルだけ。

 先ほどの様子を見るに、狙いを変えても、弾が飛んでくるまでわずかに時間がある。

 その間にあの尻尾を破壊すれば、後は押し切れるはずだ。

「ひろがる―――」

 空中でウィングから離れたバタフライが、そのまま大サソリを押し潰そうと身構える。

 大サソリもすぐに頭上の敵に気付き、尻尾の機関銃の回転が止まった。

 もう遅い、とバタフライの口元がほころぶ。この距離ではバタフライの落下速度の方が早い。

 しかしその予想は簡単に打ち破られ、大サソリの前脚のドリルが割れてハサミのように変形した。

 バタフライめがけて突き出されたハサミの中には、巨大なミサイルが鎮座している。

「嘘っ!?ヤバっ!」

 ミサイルはすぐにバタフライ目がけて発射され、すぐに体勢を変えてミサイルを防ぐ。何とか直撃は免れたものの、着弾の衝撃や無理に姿勢を変えたことが祟って体勢が大きく乱れる。

「これじゃバタフライプレスに繋げられない……!」

 まだ近くを飛んでいたウィングも大サソリの反撃を見ていて、急ぎバタフライの体を回収する。

 体勢の崩れたバタフライが地面に叩きつけられることはなかったものの、今度は攻撃のターゲットがウィングとバタフライに移る。

 すかさずマジェスティを先頭にルビーの力で変身したミラクルとマジカルが殴りかかる。

 しかしその重厚な見た目に違わず大サソリのボディは固く、衝撃でわずかにへこんだだけだった。

「かったぁ……。スカイランドの機械って頑丈だね……」

 腕力に特化したルビースタイルでも大サソリの装甲は破れず、逆に手を痛めたミラクルが手を押さえる。

「ルビーでも歯が立たないの……?」

 隙を晒したミラクルを捕らえようと大サソリのハサミが襲うが、すぐに後ろに引いて回避する。

 ハサミに捕らえられることは回避できたが、直後に大サソリはその場で回転して周囲にいた3人を薙ぎ払う。

 咄嗟に防御姿勢を取ったものの、それでも大サソリの一撃は重くマジカルはダメージの余り膝をついてしまった。

 すかさず狙いを外されたウィングとバタフライが空中から奇襲をかけるも、大サソリの装甲を破るには至らない。

 絶え間なく攻撃を続ければいつかは破れるかもしれないが、この猛攻を前にしてはこの場にいる全員の体力が尽きる方が先だろう。

「一体どうすれば……」

 フェリーチェも状況を伺っているが、その中でユニだけは違い、変身せずにカメラを取り出して大サソリを写真に収めている。

「あなた、一体何をしているんですか!?」

「見てたでしょ。無策に突っ込んでも勝てない。弱点を探すのよ」

 まるで必死に戦っているマジェスティ達を当て馬にするような発言にフェリーチェも憤るが、反論する材料がない。

 ユニに気を取られた一瞬、いつの間にか跳躍した大サソリが頭上に迫っていて、フェリーチェも身構える。

「来ます!」

 フェリーチェはすぐにバリアを展開して大サソリをそらす。いくら頑丈なバリアでも、あの巨体を受け止めれば押しつぶされるだけだ。

 すかさずキュアコスモに姿を変えたユニが回り込み、大サソリの尻尾の付け根を蹴り込む。

 返ってきたのは軽い金属音だけで、大サソリのボディに傷どころかへこみが付いてる様子もない。

「やっぱり私じゃパワー不足ね……」

 ブルーキャットとしての自分の延長線上にいるキュアコスモは、腕力よりスピードに重点をおいたプリキュアである。

 それに加えて、元々キュアスターを始めとする自分達5人は物理的な破壊力に乏しい。

 歪んだイマジネーションで動く機械は止められても、破壊したり乗っている人間を再起不能にすることはできないのだ。

 コスモにとってもそれは織り込み済みで、すぐに拳銃を取り出して大サソリめがけて連射する。

 脆い関節部を狙ったつもりだが、護身用の拳銃では簡単に弾かれてしまう。

 軽く舌打ちをしてチャフグレネードを取り出し、ピンを引き抜いて投げつける。

(無人機ならこれで止まるはず……!)

 大サソリの頭上で爆弾が爆ぜて、周囲に金属片が散らばる。

 一瞬大サソリの動きが止まったものの、それもほんの一瞬。すぐに大サソリは元通りの俊敏さでコスモに襲い掛かる。

「有人機……。随分と趣味の悪いのに乗ってるのね。デート向きじゃないわ、それ」

 負け惜しみをいいつつ襲い来る大サソリを回避する。

 自身のパワーでは勝てない、ララから調達した武器も通じない。

 であれば、ましろを回収して逃げるしかない。星空警察を相手にしても逃げきった自分ならたやすいことだ。

 そう考えていると、コスモの視界の端にこちらに向けて走ってくる人影が見えた。

「ヒーローガール―――」

 それはこの場を離れていた人物にして、今いるメンバーの中で、最も高い攻撃力を誇るプリキュア。

 変身前の状態でさえ簡単に岩を叩き割るほどの技を持つ彼女なら、どれだけの硬さを誇る相手でもいともたやすく破壊できる。

「スカイ、パンチ!」

 キュアスカイが大サソリとコスモの間に現れ、大サソリの尻尾を殴り飛ばす。

 スカイパンチの一撃で大サソリの尻尾はねじ切れ、バランスを崩された大サソリの巨体が地面に転がる。

 今の一撃でスカイには勝てないと判断したのか、大サソリはすぐにハサミをドリルへ変形させて地中へ撤退した。

「爆発音を聞いて戻ってきました。大丈夫ですか?」

「……助かったわ」

 自分を心配するスカイに対し、コスモは素っ気なく一言だけ返した。

 周囲に耳を澄ませるが、大サソリが戻ってくる気配はない。

 コスモが変身を解いたのに合わせて、全員が変身を解いて一安心する。

「街の人たちはお城に避難しているそうです。今私の仲間が近くに野営地を作っているそうですから、まずはそこに行きましょう」

 ソラを中心に全員が集まり、街の住人の無事を伝えた。スカイランドが壊滅したわけではないと知ってエルの顔がわずかに綻ぶ。

 ただしユニだけは気になる事があるようで、マジェスティの足元に転がっていた銃弾を拾い上げて注意深く観察している。

「ねえ、こっちから観星町に通信するには、一度ソラシド市に帰らないとだめかしら?」

 ユニは味方との合流より敵の正体を暴くことを優先したいようで、別行動を申し出た。

 ツバサもユニの意図を汲んで、ユニに歩み寄る。

「いえ、ミラーパッドがあれば向こう側と通信ができますよ。あくまで話しかできませんが」

「分かったわ。ララに繋いで、あのサソリの正体を確かめるわ。アレ、こっちの世界にはない物なんでしょ?」

 ユニの言葉にツバサは頷く。

 いくらソラシド市とスカイランドとで繋がることがあるとは言っても、あんな巨大な兵器が行き来できるはずがない。

 一旦は脅威が去った為、ましろを呼び戻そうとリコは足元の影に話しかける。

「ましろさん、もう大丈夫よ。出てきて」

 リコは優しく語りかけるが、影からの返答はない。軽く手を当ててみても、ただ硬い地面の感触がするだけだ。

「ましろ、もう出てきて大丈夫だよ?」

 たまたま近くに立っていたエルがリコの影に話しかけるが、ましろは姿を見せない。

 それから何度も呼びかけたり影を叩いたものの、ましろが何らかの反応を示すことは無かった。

 これが示す事実は1つ。

 影の中に隠れていたましろは、いつの間にか姿を消していたのだ。

 

 

 頭が割れるように痛い。

(ここ、どこ……?)

 リコに指示され、いつも通りに魔法を発動しただけなのに割れるような頭痛に襲われた。

 しかも前後の記憶もおぼつかず、靄がかかったように思考もまとまらない。

 必死にあがいて影の外に出られたものの、それでも頭痛が止むことは無い。

(早く、みんな所に戻らなきゃ……)

 スカイランドのどこに出たのかは分からないが、視界に見えているあの城は、エル達も知っている場所のようだった。

 きっと行けばソラ達と合流できるはずと信じ、リコに貰った箒をポケットから取り出す。

 闇の魔法でなければ大丈夫だと思ったが、元のサイズに戻そうとした瞬間、再び頭痛に襲われて箒を落としてしまった。

『大丈夫?私、変わろうか?』

 窓の反射に移り込んだ琥珀色の瞳をした自分が尋ねてくる。

 普段は意識を集中させなければできないもう一人の自分の声も、何故か今だけはハッキリと聞こえる。

「大丈夫。魔法を使わなきゃ、ちょっとは平気だから……」

 一度深呼吸をして、呼吸を整える。魔法を使おうとした瞬間こそ酷い頭痛に襲われるが、こうしていれば平気だ。

 空を飛べないのなら、ゆっくりと壁伝いに歩きながら遠くの城を目指すしかない。

 どれだけ時間がかかるか分からないが、今は前に進むしかない。

「あっ……ぐっ……!」

 歩き出して少しすると、『何か』が自分を食い荒らすかのような感覚が襲ってきて、思わず胸を抑えてうずくまる。

 この感覚は初めてのものではない。

 闇の魔法を使う際に襲ってくる感覚に近いが、今回はその比ではない。

 自分の思い通りの物を作ろうとしても、異空間へ繋がるゲートを開こうとしても、普段なら引くはずの苦しみは引くどころか強まる一方だ。

 むしろ、外部から流れ込んでくる『何か』が、自分を食い破って外に出ようとしてるような感覚に襲われ続けている。

「抑え、きれない……!」

 このままこの力がそのまま外に出てしまえば、スカイランドに甚大な被害が出る。

 立ち上がって少しでも前に進もうとするが、やがてはその力すらなくなり、その場に倒れ込んでしまう。

 いっそのこと、影の中で力を解き放ってしまおうか、とも考える。自分は無事では済まないが、このまま暴走させてしまうよりかは遥かにマシだ。

「みんな、バイバイ……」

 建物に伸びた自分の影に手を添えて、痛む頭を抑えて再び影の中に身を潜めようとした時、いきなり首根っこを掴まれて抱き起される。

「悪いけどバイバイじゃないの。悲劇のヒロイン気取ってんじゃないわよ」

 いきなり首筋に何かを押しあてられ、直後に鋭い痛みが走り、近くの壁に寝かされる。

 少し遅れて、先ほどの声の主はユニだと気付いた。

「これでいいのよね?」

 ユニの手には見知らぬ注射器が握られていて、なんらかの薬品が自分の中に入れられたのだと分かる。

 少し思考が明瞭になり、ユニの他にリコやソラ達の姿が目に入る。

「あなたにふたご座のペンを持たせてて正解だったわ。じゃなかったら見失ってたところだったもの」

 自分の異変に気付くや否や、ユニが真っ先に助けに来てくれたようだ。

「ええ。思ってたのとは少し違う状況だけど、これでましろさんの力も―――」

 そこまでリコが言いかけて、突如響き渡ったましろの絶叫が遮った。

 リコの用意した薬で楽になるはずが、ましろの呼吸は荒く、スカイミラージュを介さずにましろの身体が黒いキュアプリズムに変わる。

「ちょっと、薬の効き目は確かなのよね!?」

「そのはずよ!闇の魔法の基礎理論は魔法と同じ。だから魔法使い用の薬も効くはずなの!」

 薬の効果を疑いったユニがリコに詰め寄るが、そうしている間にもましろの変異は続く。

 黒いキュアプリズムの姿も徐々に別の『何か』の姿に変わっていき、同時に周囲に次々とブラックホールが生成される。

 プリズムは完全に能力を制御しきれておらず、わずかに無事だった建物も次から次へとブラックホールに呑まれて破壊されていく。

「ましろさん!しっかりしてください!もう大丈夫ですから!」

 力に呑まれそうになっているましろの傍で、ソラは声をかける。

 そのお陰で少しましろの表情が和らいだように見えたが、それでもましろの変異は止まらない。

「どこかで休ませましょう!横になれば少しは楽になるはずです!」

 ソラがプリズムの体を抱き上げた時、プリズムの瞳に真っ黒な星型の紋様が浮かび上がった。

 それを目にしたユニは血相を変えて、ポケットからスターカラーペンを取り出す。

「待ってよ!ましろんにプリキュアの力を使って大丈夫なの!?」

 いきなりプリズムを浄化して変身解除させようとしたユニを、あげはが腕を引いて止めた。

「この前だって傷一つ付けずに助けられたわ!殴る蹴るしかできないあなた達は黙ってなさいよ!」

 ユニの語気は普段以上に荒く、何が何でもましろを元の姿に戻そうと躍起になっているようだった。

 ソラの腕の中で苦しんでいるましろの姿はもう既にましろのものではなく、別の『何か』に変わりかけていたその時、突如横から誰かが割り込んできて、ましろの身体をソラから取り上げる。

「荒れ狂う川の流れを強引にせき止めた止めたところで、ただ洪水が起こるだけだ。覚えておけ」

 その人物は持っていたブローチをましろの服に取り付けた。

 するとプリズムの身体から黒いエネルギーのようなものが吸いだされ、ブローチに取り付けられた黒い宝石に吸い込まれていく。

 同時にプリズムの姿も元に戻り、ようやくましろを苦しめていた謎の症状も治ったようだ。

「安全装置を取り付けた。ここにいる間はそれを付けていろ」

 ただブローチを付けただけだというのに、一気に不調が改善した意味が分からず、ましろは不思議そうに割り込んできた人物を見上げた。

「あなたは……?」

 ソラやあげははその人物が誰であるか知っているようだったが、ましろにとっては初対面も同然である。

 相手もましろの事情を知っているようで、戸惑うことなく名乗った。

 

「私はカイゼリン・アンダーグ。ただの、手芸屋だ」

 

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