ひろがるスカイ!プリキュア Imaginary Episodes   作:パイシー

30 / 35
Ch.4-3「女帝の導き、大サソリの正体を追って」

 手芸屋を名乗ったカイゼリンに連れられ、ソラ達はカイゼリンが経営する店に向かっていた。

「カイゼリン、いつの間にかお店開いてたんだね」

「ダイジャーグを倒してから始めたんです。自分にできる範囲で罪滅ぼしをしたいそうです」

 道中、ソラは耳打ちをしてきたあげはに小さな声で返した。

 あげはも学校やましろの世話で忙しく、スカイランドに来るのは久しぶりである。こうしてカイゼリンと会うのもほぼ半年ぶりの事だ。

「お城に行くとあまり良い顔しない人も多いですから。それで、お城から少し離れたところでお店をやる事にしたんです。そこそこ賑わってるんですよ!」

 元アンダーグ帝国の首魁にして、エルの拉致を指示した張本人。

 スカイランド内での風当たりは強いのは容易に想像できた。

 一応彼女も被害者であると理解している為か、説明するソラはカイゼリンの行いを好意的に捉えているようだ。

「着いたぞ。ここが私の店だ」

 辛うじて町の外観が残っているエリアを進み、王城から少し離れた所にあるカイゼリンの店にたどり着いた。

 たどり着いた建物は2階建ての小さな小屋で、看板と店先に飾られているぬいぐるみが無ければ、手芸屋だとは分からなかっただろう。

「中には少し作業するスペースを作ってある。好きな所に座ると良い」

 店の扉が開けられて中に通される。

 中は手芸グッズの他に、手芸に使う糸や布が並べられている。

「あれって、カイゼリンさんと……エルちゃん?」

 ましろは店の奥の棚に飾られた2つのぬいぐるみを指さした。

 明らかに商品棚に並んでいるぬいぐるみとは別の扱いで、ホコリを被っている様子もない。

「いや、似ているが違う。私と、大切な友達。和平の証として城に送ったもののレプリカだ」

「カイゼリンは私たちのぬいぐるみも作ってくれたんだよ。私の部屋に飾ってあるから、後で見せてあげる!」

 後ろからやってきたエルに押され、ましろはそのまま奥のスペースに座る。

 ここにやってきた全員が店の奥まで入るのを確認すると、カイゼリンは扉を閉めて口を開いた。

「君たちももう見たかもしれないが、機械でできた大サソリがいきなり現れた。ましろを待っていた所を襲われたそうだ」

「そうだ、ってカイゼリンはその場にいなかったの?」

 あげはの問いかけに対し、カイゼリンは頷いた。

「そのブローチを渡すつもりだったのだが、うっかり忘れてしまってな。取りに戻っていた。戻ってきた頃には、一部の兵士を残して全滅していた」

「……青の護衛隊も、かなりの犠牲者が出ていました。シャララ隊長がなんとかみんなを励ましてはくれていますが、残ってる人達もいつまで無事か……」

 説明するカイゼリンにソラが付け加えた。

 具体的な被害状況を確認する前にましろ達と合流したため、誰が無事なのかは把握していない。

 ただ、血の染みた包帯を巻いたベリィベリーやアンリ副隊長の姿が脳裏をよぎり、ソラの手に力が籠る。

「っていうかズルくない?スカイランドにあんな武器持ち込むなんて、ただの弱い者いじめじゃん!」

「ズルくないよ」

 一方的に蹂躙されるスカイランドの兵士たちを思ってあげはが憤っていると、もみらいが口を挟んだ。

「だって相手を力でやっつけた方が話し合うより早いんだもん。自分より弱い相手の言う事なんて、聞かなくていいんだし」

 みらいの声はいつも以上に抑揚が無く、できるだけ感情を出さないようにしているのが伝わってくる。

 大学や仕事の手伝いで、国際社会に一歩踏み出した彼女だからこそ知っている。話し合いによる解決が叫ばれているのにもかかわらず、何故武力による争いが無くならないのかを。

「それに、お城を占拠される前にあの大サソリを止めないと取り返しがつかない事になると思う。エルちゃんやソラちゃんの大切な人達を人質にされたら、向こうの要求を呑むしかなくなるから」

 そうみらいは続けた。今回の襲撃に黒幕がいるかはまだ分からない。

 しかしスカイランドの戦力では撃退できなかったのは明らかなので、最悪の事態を回避できるのは自分たちだけということになる。

「そうですね。まだお城は健在です。避難できた人達も不安がっているでしょうから、早く解決しましょう!」

 ソラは自分を奮い立たせて立ち上がると、別行動をとっていたユニがツバサを連れて手芸店に入ってきた。

 ましろを保護した後、ララと通信を繋いだのだが、ララのロケットで資料の印刷を行う為に観星町まで来るように言われたのだ。

 ただ資料を受け取るだけの為、向こうの世界へ戻ったのは最高速で飛べるツバサとユニだけである。

「これがあのサソリの正体だそうよ。ララ達の見立てだと、星空界で研究中だった次元潜航艇の改造機みたい」

 ユニは持ってきた写真を一行に見せる。

 一目でサソリと分かるようなフォルムはしていないが、虫のようなフォルムをしているのは分かる。

 虫のように見える足や、ハサミのようになるドリルは改造前の時点で取り付けられていたようだ。

「じげんせんこーてー……?」

 いきなりユニが耳慣れない単語を口にしたので、エルが首を傾げた。

「要はワープの研究を行う機械。今星空界は地球に行く研究がトレンドなの。これもそれの一環で作られたものね」

 ユニは他に持っていた写真も取り出し、一同が座っているテーブルに並べて見えるようにする。

 没になった研究だからか、組み立て途中や完成直後の写真しかなく、いつサソリのようなフォルムへ改造されたかは分からない。

「ミラーパッド以外にも異世界に来られる機械って作れるんですね……」

「一応、ましろさんの世界の技術でも異世界へ行く事は可能よ。少し前、魔法界も襲われたことがあるもの。あれは未来から来た機械だったけど」

 ミラーパッド以外にも自在に行き来できる機械があると分かって驚いているソラに、リコが補足した。

 リコの知る限り、科学技術で魔法界へ行けるようになるには少なくとも数十年もの時間が必要である。

 もしそんなものが簡単に手に入るようになれば、魔法界かスカイランドにましろを匿う計画も使えない。

「いろんな世界へ行き放題、地球にも日帰りで行ける、って触れ込みで始まった研究だけど、お金が無くなって研究は廃止。試作機も破棄されたそうよ。ま、大方ブラックマーケットに流れたんでしょうけど」

 ユニ達が話を進めている傍ら、疑問に思ったましろが隣にいたソラに耳打ちをする。

「ねえ、ここって、そのミラーパッドでしか来れないんだよね?」

「スカイランドはたまにソラシド市とつながることがあるんです。ツバサ君も最初は偶然開いたゲートから落ちてきたんですよ」

 ましろはソラの説明に少し首を傾げる。

 正直な話、異世界というものがましろにはまだ分かっていない。

 このまま聞き続けても仕方がないので、一旦はミラーパッドはあくまで数ある手段の1つでしかないと理解するに留めた。

「でもさ、星空界から来たってことは、狙いはましろなんだよね?こんな派手に暴れたら隠されちゃうよ?」

 ユニが机の上に広げた写真ことはが拾い上げる。

 もし黒幕がましろを狙っているのなら、こんな大々的に襲撃を宣伝するようなやり方はあまり良くない。むしろ逆効果である。

「さっきの戦闘で、向こうはエルを真っ先に狙ったように見えたわ。恐らく狙いはましろじゃない。スカイランドに恨みを持つ誰かがブローカーか何かから買ったんじゃないかしら」

「いずれにせよ、調べなければなりませんね。あのサソリを誰が使っているのか」

 ソラが一旦の目的を決めると、カイゼリンは店の奥に姿を消し、程なくして戻ってきた。

「ならしばらくはここを自由に使ってくれて構わない。2階にベッドも少しだけだが用意してあるし、食料もある。何より、ましろを診れるのは私だけなのだろう?」

 カイゼリンは店のカウンターに銀色のカギを置いてソラに差し出す。

 このまま青の護衛隊の野営地に向かおうとしていたが、しっかりとした建物が使えるならそれに越したことは無い。

「普段はリコさんが診ているので、何かあったら2人にお任せします」

 鍵を受け取ったソラはそのまま調査に出かけようとし、ツバサやことはも続く。

「待って。二手に分かれましょう。いざって時にましろさんが一人になるってことは避けたいわ」

 全員が大サソリの捜索に向かおうとする中、リコが全員を引き留めた。

「ましろさんを影の中に隠すのは危ないって分かった以上、少しでも安全な場所に置いておきたいの。ここを守るチームと、あのサソリの正体を調べるチームとで分かれた方がいいと思うのだけれど、どうかしら?」

「あっ、じゃあ私も残った方がいいかな。私たちは2人いないと変身できないし」

 二手に分かれることを提案したリコに、みらいも自分が残ると提案した。

 リコはみらいの申し出に頷く。

「じゃあ私も残ろっかな。こっちに詳しいエルちゃんやソラちゃんは行った方がいいんじゃない?」

 続いてあげはが残る事を提案し、ソラやエルは調査に行くように促す。

 ミサイルの直撃も防いだバリアを張れる上に、場をコントロールできるキュアバタフライは確かに残った方が臨機応変に対応ができる。

「では僕とことはさんは調査するチームに。空を飛べた方が調べられる範囲も広がりますし」

「そうだね。じゃあよろしく!」

 各々の役割や得意分野を考えて、すぐにチーム分けは決まった。

 あげは、リコ、みらいの3人が残り、ソラ、エル、ユニ、ツバサ、ことはの4人が調査に向かうことになった。

「それじゃましろさん、行ってきますね!」

 自分だけ役割が決まらず、どうしていいか戸惑っているましろの手を取り、ソラは笑いかけた。

「大丈夫です。すぐに戻ってきますから。それまでおしゃべりでもして待っていてください」

 いつものようなトーンで話すソラに、ましろも少し安心したようで、不安の表情も少し晴れる。

「うん、いってらっしゃい。気を付けてね」

 ましろもソラを困らせないように笑顔を作って見送った。

 

 

「さて、何か話があるのだろう?」

 調査に出かけた面々が店を後にし、扉が閉じられるとカイゼリンが口を開いた。

 唐突にリコが二手に分かれることを提案した時点で、何か考えがあると見透かしたようだ。

 リコはましろの手を引いて自分の後ろに隠すと、怪訝な顔でカイゼリンを見る。

「このましろさんのブローチ、普通の材料じゃないわよね?私も似たようなものを作ったことがあるけれど、ただの宝石じゃこんなもの作れないわ」

 皮肉にも、自分がホープダイヤを作った経験が生きた。

 暴走するましろの能力を抑える方法はまだ確立されていない。

 それを、ただアクセサリーを付けただけで制御できるというのはあまりにも都合が良すぎる。

「ソラさん達の様子から、あなたが悪い人じゃないってのは分かる。でも、私も自分の教え子を守らなきゃいけないの」

 できるだけ感情的にならないように、冷静な口調で話す。

 もしこのブローチに何か細工がしてあって、ましろに危害が及ぶのであれば、すぐにでもこのブローチを外してソラシド市に逃げるしかない。

「君の言うとおりだ。そのブローチは私の生まれ故郷でしか採れない鉱石が必要になる。それが無ければ、ましろの身体はあっという間にアンダーグエナジーに乗っ取られる」

 カイゼリン自身もリコの態度は想定内だったようで、答えはすぐに返ってきた。

 いきなり聞きなれない単語が耳に入り、ましろは胸元のブローチに指をかける。

「元々、ましろの事情は彼女の祖母やソラから聞いていたからな。恐らく必要になるだろうと準備していた」

 カイゼリンはリコが警戒する態度を露わにしても動じることは無く、淡々と説明を続ける。

「ここは君たちの世界よりもアンダーグエナジーの海が近い。人間がそこから力を得ようとすれば、簡単に力に呑まれる。そのブローチはそれを防ぐためのリミッターだ」

 アンダーグエナジー、というものが何を指すかは分からないが、推測はできる。

 製錬方法が違うというだけで、恐らくは負の感情といったものが原料のエネルギー源だろう。

 ましろが魔法で操る『泥』も同じ原料から生まれるものだと考えれば、ましろが力を制御できなくなったのも納得だ。

「つまり、こっちの世界でましろちゃんが魔法を使おうとすると、そのアンダーグエナジーを呼びすぎちゃう、って事?」

「恐らくは、ね。あくまで魔法は手段。世界が変われば、起こる結果も変わってくるはずよ」

 元々闇の魔法自体、ムホーを人間が扱えるように体系化したものだ。

 そのムホーで操るエネルギーがアンダーグエナジーに類するものであれば、制御できてしまうのも納得がいく。

「あ、そうだ。みらいちゃんはバッタモンダーを見たことあるよね。ほら、ましろんがヒーローごっこしてた時」

 珍しく沈黙を貫いていたあげはが口を挟んだ。

 カイゼリンへの警戒を露わにしたリコをどう止めようか考えていたようだが、ようやく思いついた糸口がそれだった。

「そういえば、ましろちゃんと知り合いなんだっけ。あの人……人?」

 確かにみらいは1度バッタモンダーを目撃している。

 ましろがヒーローになりたいと言って、ユニの出した適当な指示でヒーローごっこをしていた時、偶然襲い掛かったのがバッタモンダーだったのだ。

「一応、人。だと思う……。カイゼリンはそのバッタモンダーの、上司みたいな人。闇っぽい力に関してはリコさん以上の専門家じゃないかな」

 あげは自身もバッタモンダーを人扱いしていいか迷ったが、少なくともカイゼリンに後ろめたいことは無いと示そうとする。

 みらいもバッタモンダーが襲われているところを思い返し、とあることに気が付いた。

「そういえばあの人もおでこに黒い石ついてたよね?見た目もすぐ変わったし、やっぱりましろちゃんと同じ闇の魔法を使うの?」

「いや違う。バッタモンダーの石は生まれつきだ。アンダーグエナジーで外見を偽るのも、奴の得意分野だな。まあ知らなければ魔法のように見えるのかもしれないが」

 最初みらいが目撃したのは、あくまで紋田として働いている姿だった。

 魔法学校の校長のように見た目を偽る魔法も存在している為、みらいはそれと同じ系列と考えていたのだが、カイゼリンはそれ否定する。

「そうそう。殆どコスプレみたいなものだって言ってたよ」

 カイゼリンとあげはの説明をみらいが聞いているのに対し、リコは少し考え込む仕草をする。

 一瞬で見た目が変わる術があると聞いて、自分の後ろで乾いた笑いを浮かべているましろに目を向ける。

「見た目だけ、ね……」

 誰にも聞こえないほど小さな声で、リコは呟いた。

 

 

 スカイランドに降り立った地点では、既にスカイランドの人間が逃げ遅れた人間の救助や敵の見張りを始めていた。

 人の声がするようになったお陰で、先ほどまでの張りつめた空気は一変している。

「青の護衛隊の人たちも何名か来ていますね。手伝ってもらいましょうか」

 ソラが先に警備をしていた隊員と合流して手伝ってもらえないかと交渉を始めたようだ。

 ユニはそんなことも気にせず、エルが立っていた場所にあたりを付けて、漁り始めて手掛かりを探す。

「ソラがへし折った尻尾は身に行かないの?」

「それよりも見つけておきたいものがあるの。早く無くなりそうだから」

 気になって声をかけてきたエルをよそに、ユニは何かの痕跡を探す。

「……あったわ」

 ガレキの下に何かを見つけたユニは手を伸ばし、見つけたものを手に取る。

 それは、エルがマジェスティックベールで弾いた弾丸だった。

 通常、弾丸は固い壁などにぶつかれば潰れてしまうが、マジェスティックベールは勢いだけを吸収したので、キレイなままで残っている。

「これが飛んできてたの?」

 銃弾というものを見たことが無かったエルは、周囲に落ちていたものを拾い上げて注意深そうに眺める。

 飛んできた、と言ってもツバサの作る飛行機とは違いすぎるフォルムのせいで、イマイチ想像ができない。

「やっぱりライフル弾ね。こんなものを乱射するなんてイカれてるわ……。ねえ、スカイランドの兵隊ってどんな格好をしてるか聞いても良いかしら?」

「うーんと……」

 ユニに尋ねられ、エルは城でよく見かけていた兵士の姿を思いだす。

 自分の護衛としても何人かは傍にいたが、もはや当たり前の光景になりすぎて改めて口で説明しようとすると少し考えてしまう。

「重そうな鎧を着てたかな。歩くとガシャガシャ音が鳴るから、近づいて来ればよく分かるよ」

「そう。街並みから予想はしてたけど、文明レベルが違いすぎるわ。鉄板を貫通するライフル弾の前じゃ、鉄製の鎧なんてただの重りにしかならないわ」

 対策を立てる為にも生き残りの兵士に話を聞こうかとも思ったのだが、エルの話を聞いてその必要はなくなった。

 話を聞くだけでもわかる。いきなり現れた巨大な鋼鉄のサソリを前に、訳も分からず兵士たちは虐殺されていったに違いない。

「あ、でも青の護衛隊の人たちは違うよ。ツバサとソラとで装備を作ったりしたから、あんまり鎧とかは無いみたい」

 ソラ達と一般の兵士との違いをエルは補足したが、ユニは生返事で返した。

 スカイランドがどのような防備を固めているかは知らないが、ソラが所属している少数精鋭の組織と、頭数を揃えることが目的の一般的な軍隊のような組織があるのは想像がついた。

(あくまで鎧を着ているのは兵士だけ。重装備じゃないのがかえっていい方向に働いたのかしら)

 ユニは次にソラがへし折った尻尾の近くまで移動する。少し周りを見ると、ソラと青の護衛隊のメンバーを中心に、他の面々も大サソリの捜索を始めていた。

 箒に乗ったことはが大サソリが開けた穴の中へと降りていき、どの方向へ向かったのかを探そうとしているのが目に入った。

「あなたはあっちにいなくていいの?」

「せっかくだからあなたについていく。分からないことが合ったら遠慮なく聞いて!」

 自分が頼ってもらえる側にいるとアピールのつもりか、エルは胸を張って見せる。

 普段の立ち姿などには気品が感じられるものの、こういう細かい仕草は妙に子供っぽい。

 見る限りではソラやましろと変わらないはずだが、やはり温室育ち故か、とユニは納得することにする。

「そう。じゃあ引き続きガイドを頼むわ。こっちも色々と調べたいし」

 ユニはしゃがみこんで、ソラがへし折った尻尾の断面を見る。

 専門のエンジニアではない為、それらの部品がどこから来たのかは突き止められない。それでも、宇宙船のメンテナンスの経験はあるので、どういう部品が使われているかは分かる。

「使われてるのは星空界の標準規格……。やっぱり外から持ち込まれたものね。誰が買ったのかしら」

「そんなことも分かるの?」

「そんなことしか、ね。少なくとも中に誰かが乗ってることだけは分かってるわ」

 これで教団のマークが書かれた部品でも出て来れば、大サソリは教団が売ったものと分かるのだが、それも分からない。

 仲介している可能性はあるが、まだ襲撃者の正体に迫る材料が少なすぎる。

「今ある証拠はこれだけ。やっぱり破壊するなりして引きずり出すしかないわね」

 ユニは手元の銃弾と、撮った写真の画像を見比べる。

 どれも断片的な情報で、今回の襲撃のあらましを暴くには至らない情報ばかりだ。

「やっぱり、宇宙人がこっちの世界に来たって事なのかな」

「いいえ。その可能性は一旦除外していいと思うわ」

 宇宙人であるユニの勢力が持ち込んだものだから、犯人は宇宙人だとエルは推理した。

 しかし断片的な情報でもユニには確信があったのか、その可能性を否定する。

「普通、大勢を相手にするなら爆弾とかもっと広い範囲を攻撃できる武器を用意するは。そうじゃないって事は、向こうはスカイランドの兵士がどんな装備かって知っている人間よ」

 鎧は来ていても、恐らく盾の類はあるのだろう。

 大砲の砲弾はあると考えれば、爆発物より貫通することに特化したライフル弾を選ぶのは理解できる。

 しかしライフル弾は星空界でも非常に珍しい弾で高価な代物である。

 そんなものをわざわざ持ち出すとすれば、近代兵器を使った戦闘にはあまり詳しくないのだろう。

「それにさっきの戦いを見る限り、囲まれてるのに一人一人を確実に倒そうとしてたし、操縦してるのは素人で間違いないわ」

 スカイランドに到着してからの戦闘で、ユニは一歩引いた立場から見ていたのでわかる。

 あの戦い方では多勢に無勢で押し切るのは難しくない。

 もし手練れが操縦していたのなら、足を止めないか、止めても弾をバラまいて近づけさせないのが定石だ。

 一瞬で勝負が決まる戦場では狙いを付ける時間がある以上、接近戦に持ち込まれれば銃火器は不利である。

「私が思うに、犯人はスカイランドに詳しいお金持ち。それも外の世界とやり取りができるんだから、それなりに身分もあるんでしょうね」

 大サソリが地中へ迷わず逃走したのも、スカイランドの土地勘があり、大まかな方向さえ分かれば任意の場所へ移動できると知っていたからだろう。

「お金持ち……って言ってもいっぱいいるよ?私もどっちかっていうとお金持ちだし」

 エルと話しながらユニは考えを整理する。

 物的な証拠が少ないのなら、あの大サソリがどのように戦っていたのかを思い返す。

 生きた人間が操縦しているのなら、無意識の癖は絶対に隠せない。

「無差別に街を壊して回ったってことは、何かの思想犯って可能性は低いわね。犯行声明も無いさそうだし、組織的に動いてる可能性も低い。となれば結構絞り込めるんじゃないかしら」

 王城を攻め入らない理由は分からないが、何か要求があったという話も無い。破壊そのものが目的ならば、相手はかなり短絡的に動いてる可能性が高い。

「こういうのって、大体金持ちのドラ息子が犯人だったりするんだけど、どうなのかしら」

 エルが着いてきたのは予想していなかったが、こうして話していると自然と考えも整理されていく。

 今回のこの襲撃は、自分が思ってる以上にくだらない話のように思えた。

「ユニさーん!何かわかりましたかー?」

 へし折られた尻尾を解体しようとドライバーを取り出した時、捜索の指揮を執っていたソラがやってきた。

「まあまあね。一応犯人像は絞り込めそうだけど、決定打が無い。後で王城に行って聞き込みでもしようかしら」

「そうですか……。こっちははーちゃんに穴の中を調べてもらいました。結構深いところまで掘られてるみたいで、掘られた方向と地図を合わせると―――」

 ソラがそこまで言いかけた時、遠くの方で爆発音と共に煙が上がった。

「あっちって……」

「ええ」

 スカイランドの土地勘が無いユニでも、あの方向に何があるのかは分かる。なにせ、自分たちが歩いてきた方向なのだから。

「カイゼリンの、お店がある方向です……!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。