ひろがるスカイ!プリキュア Imaginary Episodes   作:パイシー

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Ch.4-4「目覚める最強の力、私は正義の体現者」

 ソラ達を見送って少しした後、リコはカイゼリンとましろを遠目に見ていた。

「アンダーグエナジーは制御が難しいが、慣れれば身を守る盾になるし、傷を塞いで癒すこともできる。まずは試しにやってみろ」

 カイゼリンが指を鳴らすと、指先にアンダーグエナジーが集まって針のような形になった。

 ましろも続いて真似をするも、サイズが大きすぎたり、逆にすぐに霧散してしまったりと上手くいかない。

 何度かやってコツを掴んでやっとの思いで針の形にすることができても、すぐに霧散してしまう。

「リコさん、もしかして焼きもち?」

 リコがつまらなさそうに見ていると、カイゼリンにキッチンを借りてお茶を入れていたあげはが戻ってくる。

 お茶の注がれたマグカップを差し出され、リコはすぐに口にする。

「そんなんじゃないわ。ただ、私が研究に行き詰まっていたところとかを簡単に越えられちゃうと、先生として立つ瀬がないって思っただけ」

 そう言ってましろ達がいる方から目をそらした。

 今ここでカイゼリンに説明を求めたところで、満足のいく答えは返ってこないの分かっている。

 それでも、必死になって解明した闇の魔法のメカニズムを、ああも簡単に分析されてしまうのはあまりいい気がしない。

「でもすごいよね。あんな風に物を作れるなんて。まるではーちゃんみたい」

 対照的にみらいはカイゼリンを興味深そうな目を向けていて、今にもマネし始めそうな勢いだ。

(こういう所は昔と変わってないんだから……)

 リコもみらいと再会するまでの間の出来事を全部把握しているわけではないが、未知のものに対する好奇心は失われていないのだと分かる。

 カイゼリンがましろにアンダーグエナジーの使い方を教えていると、何の前触れもなく、外から大勢が移動する足音が聞こえてきた。

 硬い靴とも異なる奇妙な音を聞きつけ、カイゼリンはすぐにましろに伏せるように合図する。

 何かを察したリコ達も身構え、店のガラスに近づいて外の様子をうかがう。

「あれって……」

 外を歩いていたのは、顔面に大きく「N」と書かれた覆面を被った集団だった。

 全員が1秒の狂いもなく同じ挙動で動いていて、呼吸をしているような様子もない。

 機械的に何かを探している様子はまるで人形の行進のようだ。

「ユニさんが言っていたノットレイね。でもどうしてここにいるのかしら」

「あの大サソリを買った人が連れて来たのかも。ましろちゃんを売ってもっと強い武器を買おうとしてるとか」

 あり得ない話ではない。あの大サソリがましろを狙う教団が販売したものならば、売人がましろを交換条件にするのは当然だ。

 少ない情報からみらいとリコが推測を立てていると、ましろも異変を察知してミラージュペンに手を伸ばす。

 そのままプリズムに変身しようとしたのだが、カイゼリンがそれを止めた。

「君は隠れていろ」

「どうして?私だって戦えるんだよ!」

「奴らの狙いは君なんだろう?だったら、最前線で戦わせる訳にはいかない」

 カイゼリンは隠れているように諭すが、ましろはそれを無視して出ていこうとする。

 身をかがめていたましろが立ちあがると、すぐにあげはが腕を引いて引き留めた。

「お願い、ここは我慢して。ましろんがいなくなったら、ソラちゃん達も悲しむから」

 ソラの名前を出されてましろはミラージュペンから手を離す。

 しかし変身しようと立ち上がった為、店の外にいたノットレイの一機に姿を見られてしまい、店のドアが蹴破られてノットレイ達が入ってくる。

 ノットレイの大群が押し寄せてくるが、元々大人数が入れない広さだったのが幸いし、カイゼリン達が食い止めた。

「ここは私たちで食い止めるわ!あげはさんはましろさんをお願い!」

「オッケー任せて!ましろん、行こう!」

 あげはに手を引かれ、ましろは店の奥から階段を昇って2階に上がる。

 下からはリコ達が戦い始めた音が聞こえ、1階部分に入りきらなかったノットレイ達が壁をよじ登ってくる。

 ましろの姿を見るや否や、ガラスをたたき割って中に入り、徐々にあげはとましろが取り囲まれる。

 あげはは周囲を見てノットレイ達の包囲網の穴となる部屋に入り、目に入った窓を開け放つ。

「ましろん、箒!」

「でも私、まだ上手く飛べないよ?」

「大丈夫、リコさんに教わった通りに飛べばいいんだから!」

 ましろはまだ空を飛ぶことに自信は無かったが、あげはに励まされて、今度は成功するよう祈りながら箒を取り出して跨る。

 箒を出すのが少し遅れたせいか、部屋にもノットレイ達が入ってきて、ましろを捕らえんと押し寄せてくる。

「悪いけど、ましろんは渡さないから!」

 すぐにキュアバタフライへ姿を変えたあげはが割り込み、ノットレイ達の一団をバリアで押し返す。

「ごめんましろん!先に逃げてて!後でみらいちゃん達と追いかけるから!」

 ましろはバタフライに加勢したい気持ちもあった。だがそれでは、自分を逃がそうとしてくれたリコ達の努力を無駄にしてしまう気がして、箒を飛ばす。

「すぐにソラちゃん達を呼んでくるから!」

 出せる限りの速度を出して、窓から空へ舞い上がる。

 ソラ達のいる場所にあたりを付けようと、一気に高度を上げて高い所からソラ達を探す。

 正直な話、自分が今どこにいたのかは分からない。それでも最も街が荒れている場所へ向かえばソラに会えるはずだ。

(このままソラちゃん達の所へ……!)

 おおよそのあたりを付けて、そこへ向けてまっすぐ飛ぶ。またブレーキが間に合わず墜落してしまうかもしれないが、影をクッションにすればきっと怪我はしない。

 

 そう思っていた矢先、突如後ろで何かが爆ぜた。

 

「え……?」

 背中を灼熱のような熱さと激痛が襲い、ましろの身体が宙へ放り出される。

 何が起こったのか分からなかったものの、すぐにミラージュペンに手を伸ばして黒いプリズムに姿を変える。

 そのままヨクバールを呼び出そうと手を伸ばしたが、この空中ではそれができるだけの材料がない。

 誰も受け止めるもののいないましろの身体は地面に叩きつけられ、全身に走る激痛でうずくまる。

 なんとか魔法で影を柔らかくできたので致命傷は避けられたが、結局はピンチであることに変わりはない。

 現にこうして、自分は潜んでいた大サソリの銃口に狙われているのだから。

「どうして……」

 ソラがへし折った尻尾も既に新しいものが取り付けられており、今度は長い大砲のような砲身が伸びている。

「逃げないと!」

 プリズムは咄嗟に距離を取り、アンダーグエナジーを集めてバリアのように防御壁を展開しようとする。

 だがそれよりも早く大サソリの砲身が火を噴き、放たれた砲弾がプリズムの体を吹き飛ばす。

 吹き飛ばされた衝撃で頭を打ち、そのまま意識を手放してしまいそうになったが、必死にこらえて立ち上げる。

「ソラ、ちゃん……」

 ソラの所に逃げれば何とかなる。そう自分に言い聞かせて逃げようとする。

 おぼつかない足取りで走り出した時、いきなり体を強い力で挟まれて、大サソリの方へ引き寄せられた。

「離して!」

 最後まで諦めまいとハサミを殴りつけて逃れようとするが、大サソリはそれを鬱陶しく思ったようで、プリズムの体を無造作に放り投げた。

 壁に叩きつけられたプリズムはついに動けなくなり、抵抗できなくなった自分をさらおうと大サソリが迫る。

(おかしいな……立たなきゃ、いけないのに)

 必死に声を絞り出そうとしても何も出てこない。ただうめき声が漏れるだけである。

 立ち上がろうとしても身体が言う事を聞かない。今ので足の骨が折れたのか、それとも身体が相手に屈服して抵抗を諦めたのか。それすらも分からない。

(ごめんね、ソラちゃん、リコ先生……。()()()()私、みんなの足手まといにしかなれなかったよ……)

 もう意識を保っていられるだけの力もない。

 プリズムは自分の無力さを呪いながら、向かってくる敵を前に意識を手放した。

 

 

(あれ……?)

 しかし、異変はすぐにやってきた。

「痛い、だけ……?」

 手放しはずの意識がすぐに明瞭になっていき、鉛のように重かった体も羽のように軽い。

 全身に走る激痛は残っているものの。それだけだ。痛いだけで、むしろ全身に力がみなぎってくる。

「そっか、痛いだけなんだ」

 幽霊のような足取りで立ち上がり、足元に落ちた『何か』の破片を踏みしめる。

 大サソリも自分が立ちあがってきたことに驚いたのか、ハサミを開いてミサイルを差し向ける。

 だがそれも、プリズムが生み出したブラックホールに呑み込まれて自壊していく。

(抑える必要なんて無い。全力で振るっていいんだ……!)

 自分の中に絶えず力が流れ込んでくる感覚が少し遅れてやってくるが、それもこうして外に出してしまえば、自分の中で溢れてしまうこともない。

 常に体外へアンダーグエナジーを垂れ流すようになった影響か、自分の腕や衣服の所々に蛇のような紋様が浮かび上がっていく。

 逃げて体制を整えようとする大サソリをブラックホールの超重力で拘束し、ゆっくりと歩み寄る。

 大サソリは何が起こったのか理解すらできず、超重力に押しつぶされそうになった機体からは金属がきしむような音が聞こえる。

「やっと、これで私も戦える……!」

 赤い星のような紋様の浮かんだ琥珀色の瞳が、身動きが取れない大サソリに迫る。

 アンダーグエナジーを集めて大斧のような形に作り替える。自分の身の丈程にもなる巨大な斧を軽々と持ち上げて、大サソリめがけて振り下ろす。

 プリキュアの拳とは比べ物にならない程の圧倒的な質量を叩きつけられた機体は簡単に歪み、それを見たプリズムの口元が歪む。

 普段では持てない程重い斧も簡単に持てた喜びと、仲間たちが歯が立たなかった相手を蹂躙する快感に支配され、プリズムは自分の力に酔いしれる。

 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も斧を振り下ろし、大サソリを守っていた外殻の一部が剥がれる。

 むき出しになった内部には一人の男が座っていて、怯えた表情で操縦桿を握っている。

 一刻も早くプリズムから逃れたいようだが、超重力に捕らえられた機体は動かない。

(この人が、スカイランドをこんなにしたんだ……)

 今自分が握っている武器なら、目の前の男に正義の鉄槌を下すのは容易だ。

 大事な友達の故郷を滅茶苦茶にし、リコやみらい、あげはにも襲い掛かった。

 そうなれば、下す判決は一つ。

「死んじゃえ……!」

 斧を大きく振りかざし、目の前の敵に引導を渡さんと振り下ろした。

 自分は正義の味方(ヒーロー)。悪は排除しなければならない。

 

「やめてください!ましろさん!」

 

 ましろの振り下ろした刃が男に届くより少し前にキュアスカイの声が響き、大サソリの上にいたプリズムを引きはがす。

 その拍子に大サソリを捕らえていたブラックホールも閉じてしまい、自由になった男は大サソリを操縦してどこかへ去ってしまった。

「邪魔しないでよ!」

 得物を取り逃したプリズムは激昂し、今度はスカイへ向けて斧を振り下ろす。

 空を切った刃はそのまま地面に突き刺さり、すかさず駆け付けたトパーズのミラクルが作ったハンマーで打ち砕く。

「急いで追いかけてきて正解だったかな。まだましろちゃんの意識があるみたいだし」

 ミラクルがハンマーを元の光球に戻して様子をうかがっていると、ソラと一緒に追いかけてきていたユニも合流し、変わり果てたプリズムと対峙する。

「どうしてましろがスタープリンセスに似た姿に変身しているのよ?ましろはスタープリンセスなんて見たことないはずだわ」

 リコの薬を使用した時、一瞬だが覚醒の兆候はあった。

 しかしこうして変わり果てたプリズムと対峙すると、ユニも動揺を隠しきれない。

「考えるのは後です!今は助けましょう!」

「分かってるわよ!」

 プリズムへ向かっていくスカイ達をよそに、ユニの発言を聞いたマジカルの脳内にとある事実がよぎる。

 ひかるの絵に若干の変化が見られたように、ましろも何らかの影響を受けているかもしれない、という話。

 キュアスターではなく、彼女が戦った敵の姿に変異した理由は分からない。

 いずれにせよ、悠長に考えている真相を考えている時間はない。

「丁度良かった。リコ先生にも見てもらおうと思ってたんだ。私、こんなに強くなったんだよ?だからもう私に先生はいらない。私が皆の代わりに戦ってあげるんだ!」

 狂気的な笑みを浮かべるプリズムは、指先にアンダーグエナジーを集めてメイスを創り出し、軽々と振り回す。

「これで私も立派なプリキュア。悪い人はみーんなやっつける正義の味方だよ!」

「いいえ」

 自分は正義の味方だと言い切ったプリズムの言葉を、スカイは一切の迷いなく否定した。

「プリキュアは、正義の味方じゃないんです。私たちは、初めから世界を救う為に命を懸けたわけじゃありませんから」

 今ましろが立っている場所は、スカイもかつて立っていた場所。あるいは立ってしまいそうになった場所。

 みんなを苦しめる悪と戦う正義の味方。それこそが自分の憧れるヒーローだと思っていた。

 けれど違う。本当のヒーローは正義のために戦うロボットではないと気付いたから。

 自分の周りの日常を守る、たったそれだけのことが結果的に正義の味方として映っただけの事なのだと分かったから。

「私の邪魔をするんだ。じゃあソラちゃん達はいらないかな。私が倒してあげる。みらいさんも言ってたよね、強い方が正しいんだって」

 みらいの発言を自分の都合のいいように解釈し、プリズムはおかしそうに笑う。

 一度アンダーグエナジーを受け入れた身だからこそ分かる。乗っ取られることそこないが、早く助けなければ手遅れになる。

 プリズムは両手でメイスを携えて駆け出し、スカイの頭めがけて振り下ろす。

 対するスカイは襲い来るメイスを受け取めて、衝撃で少し足が地面にのめり込んだが、すぐに押し返した。

「すごいでしょ。私こんなに強くなったんだよ?もうみんなに守られてるだけの私じゃない。アンダーグエナジーを取り込んで、こんなに強くなったの!」

 自分こそが正義と信じて疑わないプリズムはメイスを大きく振りかぶり、スカイを叩き潰そうと襲い掛かる。

「強くなって、ましろさんはどうしたいんですか」

 スカイはプリズムの攻撃をかわし、プリズムからメイスを取り上げようと手を伸ばす。

「そうやって力だけ強くなっても、ましろさんのやり方をよく思わない人が絶対に出てきます!その人たちは、ましろさんを倒そうと強い武器を作るって分からないんですか!?」

「だったら私がそれよりも強くなればいいだけ!もっとアンダーグエナジーを使って、誰にも負けないプリキュアになればいい!」

 プリズムは避けられたメイスを蹴り上げて浮かし、勢いを乗せてスカイを狙う。

 スカイはメイスを受け流せず受け止めたが、衝撃は殺しきれなかったことも祟って右腕に激痛が走る。

 思わず苦痛に顔が歪み、プリズムは好機とみて更に追撃をしようとメイスを振り上げたが、ミラクルの投げたブーメランがメイスの軌道を変える。

「そうやって強くなるだけの戦いって、何も残らないんだよ?だから止めて。このままじゃ、ましろちゃんが取り返しのつかない事になるから!」

 スカイと同じことを言ったことがプリズムの逆鱗に触れたのか、プリズムは持っていたメイスを投げ飛ばした。

 直線的な軌道で飛んだメイスはミラクルには当たらず、簡単にかわされて背後にあった建物を破壊する。

 ミラクルに気を取られた一瞬を突いて、背後からパフュームを構えたコスモが迫るも、いきなり目の前にブラックホールが出現して距離を取らされる。

「完全に死角を突いたはずよ。後ろに目でもついてるの?」

 プリズムはコスモの問いかけを無視して、新たに作ったメイスをコスモめがけて振りかざす。

 しかし身軽なコスモに鈍重なメイスが当たるはずもなく、簡単に避けられてしまうが、今度は手をかざしてブラックホールをあちこちに開けてコスモの行動範囲を制限する。

「死角がないって厄介ね。正面突破するしかないじゃない」

 ましろが闇の魔法を使う原理は、片方が物体を作り、もう片方が異空間の穴を通じて影から取り出すというプロセスを踏んで発動する。

 2つの人格が中で連携し、表に出ていない片方が死角を塞いでいる考えれば合点がいく。

「2人揃って暴走中、って事かしら。自分の力ぐらい制御しなさいよ、まったく」

 悪態をつきながらプリズムと距離を取り、負傷したスカイから宙をそらすために駆け出す。

「マジカル、行くよ!」

「ええ!」

 プリズムの警戒から外れたミラクルとマジカルがプリズムの両脇から迫り、プリズムを拘束する為にロープを作る。

 しかし一瞬動きが止まったマジカルをプリズムは持っていたメイスで吹き飛ばし、ミラクルが拘束するよりも早く2人から距離を取る。

「マジカル!」

 痛む腕を抑えながら、スカイが蹴り飛ばされたマジカルに駆け寄った。

 当たり所が良かったのか、マジカルの意識はまだ残っていて、プリズムの方を見ている。

「大丈夫ですか❔」

「ええ。なんとか」

 スカイに助け起こされ、マジカルは脇腹を押さえながら立ち上がる。

 プリキュアに変身していればある程度は体へのダメージは抑えられる。しかし、頑丈になるだけで不死身になるわけではないのだ。

 コスモとミラクルがマジカルの方へ意識を向けさせないように立ち回っているが、ミラクルは単独で浄化できず、コスモも浄化の際に足が止まるせいで、そこを狙われる。

 なんとか隙を見つけてコスモシャイニングで元の姿に戻そうとするが、ブラックホールに大部分が吸われてしまい、残った飛沫がわずかに浄化する程度だ。

 そのわずかに浄化できた部分も、すぐにアンダーグエナジーに覆われて元に戻ってしまう。

「ましろさんを止めなきゃいけないって、頭じゃ分かってるけど、どうしてもましろさんに手を上げられない。やっぱり、私はましろさんの先生ね」

 マジカルは自嘲するように言う。

 以前黒いプリズムと戦った時とは違い、全く知らない仲ではなくなってしまった。

 確かにましろは救うべき存在だが、それ以前に2人は先生と教え子という間柄になってしまった。

 生徒のことを第一に考えるマジカルが、そう易々と手を上げられるわけがない。

「ミラクルと2人揃えば、ましろさんを浄化できますよね?」

 マジカルの心情を察したスカイは、再びプリズムの方へ向き直る。

 利き腕を痛めたせいで万全ではないが、プリズムの隙を作る分にはまだ動くはずだ。

「可能性はあるわ。ましろさんの中のアンダーグエナジーを分離すれば、元に戻るはず」

「私とコスモとでましろさんの注意を引きます。後は、頼んでも良いですか?」

「……分かったわ。私たちもできるだけましろさんを傷つけずに元に戻すわ」

 マジカルに後を託し、スカイはミラクル達の下へ向かう。

 スカイが飛び出してきたことで、ミラクルも何かを察し、入れ替わるようにしてマジカルと合流する。

「マジカル、怪我は大丈夫?」

「ええ。サファイアにチェンジして、すぐにましろさんを浄化しましょう。時間がないわ」

 一番威力を加減できるサファイアスタイルにチェンジし、ミラクルとマジカルは空高く飛び上がるとリンクルステッキを構える。

 地上で隠れていたモフルンからエネルギーを受け取り、まだ自分たちに気付いていないプリズムに狙いを定める。

 できるだけ威力を抑えて、プリズムの体に負荷を与えずに浄化できるように願いを込める。

「青き知性よ……」

「私たちの手に……!」

 2人の足元に魔法陣が展開され、プリズムを捉える。

 プリズムがそれに気付いた時には遅く、プリズムの動きが止まったのに気が付いたスカイとコスモがプリズムから大きく後ろに下がった。

 

「「プリキュア、サファイア・スマーティッシュ!」」

 

 直後、魔法陣から噴き出した水の奔流がプリズムの身体を包み込み、プリズムの体を覆っていたアンダーグエナジーが剥がされる。

 プリズムの中に溜まっていたアンダーグエナジーはすべて浄化され、元のましろへと戻っていく。

 変身に使用されたクリアブラックのスカイトーンも元に戻っていき、浄化が完了すると同時に本来の姿であるレインボー鉱石がましろの足元に転がった。

 倒れ込むましろの身体をスカイが受け止め、転がったレインボー鉱石をユニが拾い上げた。

「なんだ。あなた達なら元に戻せるんじゃない」

「戻ったのは偶然よ。それよりもましろさんは……」

 変身を解除して、ましろの下に集まる。

 無事に浄化されて元の姿に戻ったましろは、最初は何が起こったのか分からない、と言った様子だったが、徐々に朧気だった記憶が明確な輪郭を持つ。

 次に傷ついたソラやリコの姿が視界に飛び込んできて、ましろはソラの腕の中から逃げようとするが、ソラは逃さずにましろを強く抱きしめる。

「大丈夫、大丈夫ですから……。もう、終わった事ですから」

 ソラはましろの頭をなでてましろを落ち着かせる。

 大事な友達を傷つけてしまった事実に怯えるましろだったが、荒い呼吸も落ち着いて、やがてソラに体重を預けた。

 結果として大サソリは取り逃がしてしまったものの、それよりも大事なものを取り戻せたのだ。

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