ひろがるスカイ!プリキュア Imaginary Episodes   作:パイシー

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Ch.4-5「壊れかけた心、ましろが忘れた大事な事」

 なんとかましろを正気に戻したソラ達がカイゼリンの店に戻ると、既にカイゼリン達がノットレイ達を片付けた後だった。

 あげはやカイゼリンは事の顛末を知らなかったが、生気を失ったましろの表情を見て、決して穏便に事が進んだわけではないのだと悟った。

「そうですか、ましろさんが……」

 カイゼリンの店の2階を借りて、リコにましろを任せ、ソラ達が事の顛末を伝えた。

 相手がスカイランドを襲撃した張本人とはいえ、ましろが人を手にかける寸前だったと聞いて、ツバサも驚いていた。

「私たちが間に合わなかったら、危うく人の命を奪う所でした」

 暴走するましろの下へたどり着いた時、彼女は笑っていた。

 優しい彼女からは想像もつかない程の凶悪な笑みを浮かべていたのが未だに信じられない。

「ごめん、ましろんを一人にしなかったら、ましろんが変身することも無かったのに……」

「ううん。あげはちゃんのせいじゃないよ。2人で逃げてても、結局ましろちゃんは変身してたと思う。誰も悪くないんだよ」

 自分を責めるあげはをみらいが慰める。

 大サソリにダメージが与えられたのは今の所キュアスカイと黒いキュアプリズムだけ。2人で逃げたところで、どの道ましろはあげはを守ろうと変身していただろう。

 店全体が暗い雰囲気に包まれる中、2階でましろの様子を見ていたリコが降りて来た。

 リコの表情は暗く、決して楽観視できる状況ではないと伝わってくる。

「その、どうでした?」

「体の方は大丈夫だけど、問題は心の方。相当ショックを受けてるみたい。何度か話しかけてみたけど、ずっと黙ったままだわ」

 正気に戻ってからというものの、ましろは一言も言葉を発していない。

 ソラやリコの言う事は聞くのでここまで連れてこれたが、常に俯いていて表情も見えない。

 まだ休めるような状況ではないが、リコの気が少し抜けた拍子に脇腹に激痛が走ってよろめく。

「リコ!大丈夫!?」

 すぐにみらいが駆け寄り肩を貸し、そのままリコを椅子に座らせる。

 ましろを優先した為、満足に傷の手当も受けていないのが祟った。

「まださっきのダメージが残ってるみたい。少し休めば大丈夫なはず」

 負傷しても尚気丈に振舞うリコを見て、ソラも自分の右腕に目を落とす。

 ことはの魔法でほぼ万全の状態に戻っているが、アザができた自分の腕を見て思いつめたような顔をしたましろの顔が頭から離れない。

「無理もないよ。ましろ、ソラもリコも大好きだったんだもん。それを自分で傷つけちゃったんだから。今はそっとしておこう」

 ことはの言葉に誰も異を唱えず、静寂だけが流れる。

 今までましろが前向きでいられたのは、ソラに支えられ、リコに導いてくれるという様式の中で生きていたから。

 それを自分で壊してしまったのだ。そう簡単には立ち直れないだろう。

「強くなりたい、ね。どうしてあんなに強くなる事にこだわるのかしら」

 ましろから回収したレインボー鉱石を眺めながらユニがつぶやいた。

 それだけが引っかかっていた。自分のレインボー鉱石を奪った時も、ソラに説得された時も、彼女は強くなる事に異常にこだわっていたように見える。

 教団が絡んだ襲撃は今回で2回目。しかも記憶を失くして最初の1、2か月は何もなく、ただ普通に過ごしていたと聞いている。

 たったそれだけの事なのに、どうして強くなろうとしたのか。ユニはこれまでのましろの行動にヒントがあるのではないかと考え込む。

「あの姿になったのだって、ひかるさんと一つになった時に、ひかるさんの考える『強いもの』のイメージに影響を受けたからかもしれないわ。現に、ひかるさんの描く絵にも変化が出ているそうよ」

「強いもの、ね……」

 ひかるの性格を考えれば、ひかるはましろの『好きなもの』に興味を示したのだろう。

 対照的にましろはひかるの考える『強いもの』に興味を示した。

 結果、ひかるの画風はましろの影響を受け、ましろはダークネストに近づいてしまった。

 状況証拠だけで組み立てた推理だが、一応の筋は通っている。

「確かにひかるさんやユニさんと融合すればましろさんも戦える。でも、安易に融合を繰り返せば、その分ましろさんはダークネストに近づくわ。だから、本当に融合は奥の手にしたいの」

 やっとリコはユニに融合のデメリットを伝えられた。

 ユニも何かしらの不都合は被るだろうと考えていたが、その話を聞いて少し動揺の色が見える。

「でもましろさんがあの姿になるには、たくさんのアンダーグエナジーが必要なんですよね?だったら、カイゼリンのブローチをもう1つ用意すれば――」

「無理だ。今からどれだけ急いで作っても2、3日はかかる」

 またましろが力に呑まれないようにブローチの再製造をソラが提案したが、カイゼリンはそれを不可能だと断じた。

 正気に戻ったましろはブローチを付けていなかった。

 何らかの拍子で外れてしまったようで、裏を返せばあのブローチさえあればましろは力を制御できることになる。

 しかしそれは叶わぬ願いと知り、ソラは肩を落とした。

「だったら、ちょっとの間、あっちの世界で待っててもらうしかないよね。今回の件が片付くまでひかるちゃん達にましろんの事見ててもらおうよ」

 現状ましろを守りきれないと判断したあげはが提案した。

 暴走したましろが中破させたとはいえ、あの大サソリはまだ健在である。

 この店の場所も分かってしまっている以上、ひかるやまどか、ララのいる観星町にましろを移すのが安全だろう。

「そうですね。あちらにはララさんやまどかさんもいますから、何かがあっても大丈夫だと思います」

 そう言ってツバサがミラーパッドを取り出し、トンネルを開こうとした時だった。

「じゃあ私があの子を貰っても問題ないわよね?」

 じっと考え込んでいたユニが口を挟んだ。

 彼女の中で何かしらの結論が出たのか、冷淡な口調でましろを貰うと言い放った。

「貰う、ってどういう意味?ましろは物じゃないよ」

 まるでましろを物であるかのように言い放ったユニが許せず、エルが睨みつける。

 エルにとって、ましろは育ての親とっても過言ではない程大きな存在である。

 ユニはエルからましろを取り上げようとしているのだから、当然いい顔はしない。

「そのままの意味に決まってるじゃない。あなた達にましろが守れないなら私たちで管理するって言ってるの。こっちは星空連合がバックに付いてるんだから、あの家よりも何倍も安全よ」

「なにそれ、管理するってましろんを物みたいに言わないでよ!」

 これまで一緒に暮らしてきた家族を『管理する』と言われ、あげはが声を荒らげた。

 確かにましろの力は確かに野放しにしていいものではない。

 だからと言って、彼女が慕っているソラやリコと引き離して、ただ安全な場所に隔離していいものでもない。

 ましろの気持ちを無視したような発言を、あげはは見過ごせなかった。

「そうかしら。何も言わない、自分からは何もしない、リコやソラの言いなり。そんなの物と変わんないじゃない」

 ユニの言う通り、完全に塞ぎこみ、心も壊れる寸前のましろは道具と何も変わらない。

 それどころか、不安定になっている心に付け込み、手にした人間の思い通りに歪める事さえ容易だろう。

 あげはも何か言い返したかったが、何も材料が見つからず歯を食いしばる。

「今ましろを向こうの世界に帰せば、自分は捨てられたと思い込むでしょうね。今度はひかるに捨てられないように何でもするんじゃないかしら」

 暴走のリスクを克服できない以上、ましろを観星町に移すのは合理的ではある。

 ただしそれでは根本的な解決にならない。

 ましろはひかるに依存するようになるだろうし、対応を間違えれば完全に敵とみなされて和解が不可能になるかもしれない。

「でもましろさんを危険な所に置いとく訳には―――」

「その優しさがあの子を追い詰めたって分からないの?」

 ましろの為と言いかけたリコを黙らせる。

 スカイランドに来てましろが自身の能力を制御できなかった時、彼女は自分から消えようとしていた。

 十数年しか生きていない少女が、簡単に自分を諦めるというのはユニの目には異常に映った。

 悪意を持った誰かが近くにいたならともかく、ましろの周りにはそんな人間はいない。

 となれば、ましろがあそこまで思い詰めた原因はリコ達にあったとしか考えられない。

「危ないからって全部の危険から遠ざけて、あの子の気持ちがどうなるかなんて考えない。地球じゃそれが普通なの?まるで腫物みたいじゃない」

 ユニはそれだけ言って何も返ってこないと分かると、一同の前から立ち去り、ましろのいる2階への階段に足を向ける。

 どの道、教団の機械と戦うにはましろの力が必要になる。

 融合を繰り返せばダークネストに近づくと言われても、それでましろを守れなくては意味が無いのだ。

 

 

「待って!」

 階段を登っていると、後ろからエルに呼び止められた。

 このまま無視してもよかったが、明らかに敵意のこもった声だったので振り返る。

 エルは突き放すようなことを言ったユニが許せないようで、怒りの形相でこちらを見つめている。

「どうしてあんなひどいこと言うの!?ましろはプリキュアになれないし、何にも覚えてないんだよ!?ソラ達だってましろが困らないように色々と頑張ってるのに、どうして分かってあげないの!」

「そうだったの?ましろの芽を摘んでるようにしか見えなかったわ」

 エルを見下ろし、ユニはそう言い放った。

 ソラ達はましろが変身しないようにと色々と手を尽くしてきた。

 今のましろが変身していた黒いプリズムは、誰かに変身させられたのではなく、ましろ自身の意思で手に入れた姿である。

 見方によっては、変わろうとしたましろの気持ちをソラ達は全否定したと捉えられても反論ができないのだ。

「こっちに来た時、あの子は自分なりにあなた達の役に立とうとした。それなのにあなた達はそれを拒んだ。それがあの子を傷つけたって分からないの?」

「そんな訳ない!あそこでましろが戦ってたらいっぱい痛い思いをした!あなただって、ましろが傷ついたら嫌でしょ!?」

「その結果がこれじゃない。所詮はぬるま湯で育ったお姫様ね。綺麗ごとを並べ立てて自分を正当化しようとする。綺麗ごとだけで生きていけるとか本気で思ってるの?」

 この期に及んでまだ嫌味を言うユニに、エルは怒りに震える。

 俯いてしまったので顔は見えないが、歯を食いしばって今にもユニに殴りかかりそうな勢いだ。

「そんなの、分かんない……。でもそんなことばっかり言ってたら、周りの人みんな敵になっちゃうよ!」

「じゃあちょうどいいわ。私、集団行動って苦手なの」

 星空界の人間から疎まれ、挙句自分の力だけで生きることを強制されたユニと、周囲からの愛情を一身に受け、善意に助けられてきたエル。

 対照的な育ち方をした2人の話は平行線だった。

 少し睨み合った後、ユニは小さくため息を漏らした。

「話にならないわね。ともかくましろは貰っていくわ。でないとあの子はずっと自分を傷つけ続ける。そんなのを見過ごせるほど、私はあの子に無関心じゃない」

 程なくして店の方が騒がしくなり、ソラやリコ達の話声が聞こえてくる。

「行かなくていいの?大事なお城に大サソリが出たとかで盛り上がってるわよ?」

 ユニは店の方から聞こえてきた単語から、ましろが中破させた大サソリが出た事を聞き取った。

 それでもエルは動かず、ユニを睨みつけている。

「行かない。お城のみんなが傷つくのは嫌だけど、それでましろと会えなくなるのはもっと嫌。お城はソラ達に任せて、私はあなたを見張る」

「そう。好きにしなさい」

 ユニが階段を登り歩みを進めると、後ろからエルがついてくる音も聞こえる。

「何とも思わないわよ。今更嫌われたって」

 ましろの所へ向かう途中、ユニはエルに聞こえないように小さくつぶやいた。

 

 

 ユニがましろがいる部屋の扉を開けると、ましろはベッドの上で膝を抱えていた。

 生気を感じさせない虚ろな瞳をしているが、ユニが来たことは分かったのかこちらに目線を向ける。

 2人きりで話をしたかったので、エルが入ってこないように手早く扉を閉めて鍵をかける。

 ドアノブを動かす音や、扉を叩く音が聞こえるがユニは気にしない。

「城にあの大サソリが出たそうよ。あなたがあれだけ痛めつけたんだから、恐らく大サソリに乗ってたアイツと最後の勝負になるでしょうね」

「……」

 ましろは答えない。

(さて、段取りはできた。後はしくじらないようにしないとね)

 ここで彼女にかける言葉は慎重に選ばなければならない。

 かける言葉次第では完全にましろの心は壊れてしまい、本当にただの道具に成り下がってしまう。

 ユニはゆっくり考えて、ましろにかける言葉を探し、口を開く。

「……私ね、1度だけキュアスターに変身したことがあるの」

 選択したのは、この場にいないひかるの話だった。

 今ましろを壊れる寸前のところで踏みとどまらせている存在となれば、ひかるしか考えられなかった。

 事実、ひかるの名前が出てきてましろがわずかに顔を上げ、ほんの少しだけ目にも生気が戻ったような気がする。

(やっぱりひかるには反応するのね……)

 ソラやリコの名前を出せば、ましろの辛い記憶を呼び起こしてしまうだけだとは分かっていた。

 今、ましろのトラウマを刺激せずに気を引けるのはひかるしかいない。

 そこでユニが持ち出したのは、自分がプリキュアとして覚醒した時の事だった。

「変身した、って言っても見た目だけ。中身は私のままだから、ひかるともみ合いになった後に押し負けたわ」

 ましろからの返答がなくともユニは話を続ける。

 昔のことを思い返していると、ふと目の前の少女がかつての自分と重なった。

 身体一つで広い宇宙に放り出され、どうしていいか分からずに泣いていた頃の自分に。

 そう考えてみれば、自然とかける言葉も見つかっていく。

「キュアコスモになれるようになる直前の事だけど、その時の私は自分の事しか考えてなかった。滅んだ故郷を復活させるのに必死で、他のことまで気が回らないぐらいにはね」

 もう遠い過去のように感じるが、今でも鮮明に思い出せる。

 惑星レインボーでひかる達とペンの争奪戦を繰り広げたあの光景を。

「私がキュアコスモになれたのは、故郷は復活させたいけど、それって目の前の他人を不幸にしてまで叶えたい願いじゃない、って気付いたから。結局、自分の事しか考えてない人間が、プリキュアになれるわけがないのよ」

 ユニがキュアコスモとして覚醒したきっかけがそれだった。

 惑星レインボーは復興させたい。でも自分のために戦ってくれたひかる達を見捨てたくない。

 誰かのために戦いたい。そんな思いがユニをプリキュアにしてくれたと今ならハッキリと言える。

「ソラ達に見捨てられたくないからって、前のあなたを必死に真似しても上手くいくわけがないわ。だって今のあなたは前のあなたと違う景色を見ているし、違う人と一緒にいる。同じ人間じゃないのよ」

 例えば、以前のましろに星奈ひかるという友達はいなかった。

 例えば、リコから箒を貰って自由に空を飛ぶようなことも無かった。

 記憶がなく、すべてがリセットされたとはいえ、今のましろは前のましろとは違う時間を歩んでいる。

 仮に再度プリキュアに覚醒したところで、以前のキュアプリズムとは違う姿かもしれないし、そもそもキュアプリズムですらないかもしれない。

「まあ、今すぐ答えを出せとは言わない。どの道、他人に一緒にいて良い理由を求めてる内は完全なプリキュアになんてなれない。どうしてあなたはプリキュアになろうとしたのか、もう一度考えなさい」

 もう一人のましろは言っていた。記憶を取り戻しても、気持ちまでは分からなかったと。

 つまり、頑張ってプリキュアとして覚醒した理由を思い出しても、それがましろがまた戦えるようになる事とは別なのだ。

 今の彼女の気持ちと向き合わせ、ちゃんと形にしなければ、いつまでも彼女は不完全なキュアプリズムにしか変身できない。

「……嫌なの」

 ユニの話を黙って聞いていたましろがそこで初めて口を開いた。

 今にも消え入りそうなほど細い声で、ユニに胸中を打ち明けた。

「私のせいでみんなが傷ついたり、苦しい思いをするのが嫌。何かしてあげたいけど、何にもない私には、何にも返せない。だから、みんなを守れるぐらい、強くなりたかったの」

「それで、迷惑をかけるならいなくなった方がいいって思う訳?自分には助けてもらう価値はない、ってひかるに向かっても言えるの?」

 ユニの問いかけにましろは首を振った。

 もしましろの告白をソラやリコが聞いていたら、いくらでも優しい言葉をかけただろう。

 無理をしなくていい、つらい思いをしてまで頑張らなくていい、と。

 だからこそ、敢えてユニは肯定も否定もしない。

 やっとましろが本心を話す気になってくれたのだ。それを折る訳にはいかない。

「でも、怖いの。また変身して戦えば、自分が抑えられなくなるかもしれないし、取り返しのつかない事をしちゃうかもしれない」

「じゃあどうするの?降りかかる不幸は仕方ないってあきらめて、悲劇のヒロインでいるつもり?」

 悲劇のヒロイン。スカイランドに来た当初、ユニが言った言葉。

 あの時のましろは全部を諦めて、自分から消えようとしていた。

 自分に降りかかる不幸にめげずに抗い続けてきたユニからすれば、今のましろは越えられる壁を越えようとせずに逃げているようにしか見えなかった。

 ましろは悲劇のヒロインではない。何故なら、彼女は決められた物語を進むキャラクターではないのだから。

「それも、嫌……。でも……」

 これまでの話の流れで、ましろの中でも答えが出かかっているようだ。

 けれどもそれは彼女にとって辛い選択で、その先の言葉が出せない。

 ユニはその間、ひたすら待つことにした。ましろの中でハッキリと答えが出かかっているのを邪魔するわけにはいかない。

 やがて一つの答えを出したましろは自分で立ち上がり、震える手を必死に握りしめて前へ進む。

 ゆっくりとした足取りでユニの前に立つと、覚悟を決めるように深呼吸して、ユニの目を見据える。

「私、ヒーローになりたい。どんな辛い事にも諦めずに立ち向かえる、そんなヒーローに……!」

 身にかかる不幸を嘆く悲劇のヒロインではなく、逆境に抗う不屈のヒーロー。

 それが今のましろが決めた、理想の自分だった。

「これまでいっぱい迷惑をかけたし、これからもかけるかも。だから本当はこんなことを言う資格なんて無いのかもしれない。でも……」

 ましろは震える手をゆっくりユニに差し出す。

 これから先は前の自分とは違う道を行く。不安が無いと言えばウソにはなるが、これは越えなければならない壁だ。

 

「お願いユニちゃん、力を貸して。私、ソラちゃん達のスカイランドを守りたい!」

 

 迷いを振り切り、まっすぐ自分を見据えるましろを見て、ユニも満足げな笑みを浮かべてましろの手を取る。

「ええ、もちろん。私はあくまであなたの見張り役。あなたがそうしたい、っていうならついてくだけよ」

 ユニが差し出されたましろの手を取ると、同時に魔法陣が広がり闇が2人を包む。

 程なくして、ドアのカギが外から無理やり開けられて、慌てた様子のソラとエルが入ってくる。

「あら、あなたも残ってたのね」

 部屋の入口に広がっていた闇が晴れると、中からユニに似た一人の少女が姿を現す。

 この部屋にましろがおらず、ユニの顔つきが微妙に変化していたことでソラとエルは事態を察し、窓と入口を塞いでユニを行かせまいとする。

「ごめんね」

 ユニは普段とは違う声色と口調で謝罪し、一瞬戸惑ったソラ達の頭上を通って部屋の窓に足をかける。

「わがままかもしれないけど、これは私が決着を付けなきゃいけないことだと思うから」

 ソラ達を不安にさせまいと一瞬優しい笑顔を作り、カイゼリンの店を飛び出す。

 目指すは煙の昇るスカイランドの王城。

 これから一歩踏み出す為にも、この事態は自分で決着を付けなければならないのだ。

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